2009年10月30日

ドラフトに感じる一抹の寂しさ

先日、プロ野球ドラフト会議が行われた。
初めて約1,000人程の観客を導入して行われた今回のドラフト会議。
1位指名で初めの4球団が、注目の菊池を指名しなかったことにおこるざわめき。
6球団のくじ引きで、当たりを引いた西武渡辺監督のガッツポーズとともに、自然とあがるどよめき。
指名権を手にした直後の渡辺監督のインタビューも意外だった。
上気した渡辺監督のコメントに、会場からも笑いが起こる。
初めての試みは大成功だったといってよいだろう。

花巻東の菊池の指名権は、初めにくじを引いた渡辺監督の強運に他の球団はさらわれた格好だ。
東北生まれの自分としては、地元である楽天へ、と思っていたがその願いもかなわず。
ただ、菊池という才能ある投手にとって、西武という球団は結果的によかったのではないだろうか。
古くは松坂、近年では涌井や岸という年齢の近い好投手がいる球団である。
(投手に限らず)選手育成はのびのびやる球団で、日本一の投手を目指して頑張ってほしい。

感心したのは、菊池の受け答えだ。
記者達の質問にしっかり自分の言葉で真摯に応える姿勢。
やはり並の高校生ではない。
菊池の素晴らしさは投手としての能力ではなく、実はこの視線の高さ、自分を知ることなのではないだろうか。
あるいは、自分を高めようとするどん欲さ、ぶれない姿勢。
持っているものだけでは、6球団から指名は来ない。
原石を磨いてこそ、ダイヤとして光るものだ。
今日見せた真摯な受け答えの中にも、強気な言葉がちりばめられている菊池の心持があれば、これからどんな困難があっても、それを糧にしていくことが出来るだろう。

今年のドラフトは、12球団で66名、育成選手を含めると83名(育成選手は17名)となった。
1球団平均すると、約5名(育成含めて約7名)ということになる。
ずいぶん少ないなぁという感じがしたので、10年前のドラフト指名選手を調べてみた。
1998年:75名
1999年:79名
2000年:86名
となっており、育成選手を含めるとそれほど大きな変異はしていないということになる。

毎年各球団6~7名しかプロになることが出来ないということは、相当厳しいことである。
もう少し間口を広げてもいいのではないだろうか。
現役選手との兼ね合いもあるだろうが、そこは支配下登録選手の上限撤廃で対応し、もっと夢のある世界にしたほうがよいように感じる。
先日まで行われていたCSシリーズにもかかわることだが、本来なら球団数がもっと増え(少なくとも16チーム)、本当の意味でプレイオフが開けるくらいになれば、もっともっと盛り上がるはずだ。
球団を増やすとなると、今後は地方に根付いた球団となるだろう。
新潟では、プロ野球を誘致するという話も以前読んだことがある。
勇気あるオーナー(候補)が、新球団を設立し、地域ごとにプロ野球球団が出来る。
そして、数年後には今回の北海道で見ることが出来た、日ハム対楽天のような北日本対決もみることができたなら、地元の野球少年は、目を輝かせて今まで以上に熱心にプレーするであろう。

もちろんこれは理想論であり、現実にはいろいろクリアしなければならない問題が山積みである。
ただ、改めて考えると1球団6、7人は少ないのか、(それともプロなんだからというところで行くと)多いのか。
自分としては、その人数の少なさに、間口の少なさに、若干さみしさを覚える。

今回のドラフトで選ばれた未来ある選手達。
願わくは、全員がその力を発揮して、新聞やテレビをにぎわす選手になってほしい。
特にスカウトの真骨頂と言える、下位指名選手の大化けに期待したい。
未来のイチロー、前田智徳、そして鉄平のように。。。

posted by ballgame |23:52 | プロ野球 | コメント(10) | トラックバック(0)
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2009年10月29日

みたいのはそこじゃない(浅田真央を思う)

フィギュアスケートのGPシリーズの第1戦、第2戦と連戦で出場し、2位と5位に終わった浅田真央。
今までにない成績、思うようにいかないスケーティングに演技中の表情は曇りがちである。
得点を待つ間の笑顔は相変わらず素敵だが、不安に思っている方も多いであろう。

先日、帰国した浅田真央のインタビューを読んで思ったことがある。
「失敗してもトリプルアクセルを入れる」
浅田真央の得点の低さは、トリプルアクセルの失敗とショートプログラムの低調な出来にある。
なので、こういったコメントが出るのも、報道陣から質問がでるのも当然である。

だが、果たしてそうなのだろうか。
方向性が間違っていないだろうか。
山があるから登る。
高みを越えていく。
大いに結構である。
だが、それよりなによりスケートに対する楽しさ、愛情はどこに行ってしまったのだろうか。
気持ちがマイナスなのは、うまくすべれないからだろう。
それはジャンプが飛べた飛べないというところからきているのだろうか。
もっと根本的に、みんながスケートって楽しいだろうなぁと感じるあの笑顔が必要なのではないか。
高みを目指すがゆえに、高い点を取る要素となるジャンプやテクニックにとらわれすぎではないだろうか。
成績から思ってしまうのだろうが、今の浅田真央からはフィギュアスケートを滑れる楽しさを感じることは難しい。

五輪で金メダルを取るという力強いコメントはそのままであるのは頼もしいところ。
一皮むけるためには必要なことなのだろうが、そのためにはまず、自らが滑れる喜び、感謝を感じなければならないだろう。
浅田真央の一番の魅力は、完璧な演技でもトリプルアクセルでもない。
100%自然な笑顔で、心から楽しく滑っている姿勢である。
コーチからは、良い演技をたくさんの人にみてもらえるように準備しなさいといわれたようだ。
観客は良い演技ももちろんだが、それよりも浅田真央の無邪気な笑顔こそ見たいと思っている。
大人への階段を上る最中だからとはいえ、哀愁を漂わせる必要はない。
なにより、彼女のはじける笑顔以上に光るメダルなどないのだから。

口で言うのは簡単だが、技と心、バランスを取るのは難しい。
心さえしっかりすれば、苦しんだ分、以前より成長した浅田真央を見ることが出来るだろう。
厳しい寒さを経験したバラは美しく咲く。
そして、今まで以上の素敵な笑顔も。
目標は高いが、まずは一歩一歩楽しんでもらいたい。
楽しむことが一番の近道のような気がする。

posted by ballgame |23:51 | フィギュアスケート | コメント(53) | トラックバック(0)
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2009年10月28日

短期決戦は「たんき」にあらず(プレーオフの醍醐味)

いきなり謎かけのような問いかけから始まってしまった。
日中はともかく、朝晩は確実に秋の訪れを感じる肌寒さ。
それでも今年はそれほど寒さは感じない。
感じないどころか、内側から湧き上がる興奮でかっかかっかしている。
そういう野球ファンは多いのではないだろうか。
朝はMLBプレイオフ、夜はプロ野球のCSと、至福の日々が続いたからだ。

プロ野球のCSもわくわくする展開だったが、MLBのプレイオフはそれに輪をかけた面白さ。
ア・リーグ、ナ・リーグとも第7戦まではもつれこまなかったにせよ、きわどい接戦が続いた。
例えば20日には、エンゼルス、フィリーズともサヨナラ勝ちで試合が決まった。
ア・リーグは2試合連続だ。
ファンにとっては嬉しいことである。
熱狂的なあるチームのファンでなくとも、最後まで目が離せない展開でうれしい悲鳴が上がる。

ア・リーグ中心に観戦していたが、試合の流れがはっきり変わるプレーが特に目立つ。
それも素晴らしい打撃というよりは、どちらかというと信じられないミスの面で。
記憶に残っているのは、ア・リーグ第4戦だ。
大差でヤンキースが勝利したが、試合の流れを変えたのも一つのプレーだった。
0-0の4回、1死2、3塁でヤンキースのカノのセカンドゴロをホームに送球。
ランニングスローとなったため、送球が高くそれ、きわどいタッチプレーもホームはセーフとなる。
A・ロッドの気合の入った喜び方が印象的だ。
ある程度前進守備をしていたからとはいえ、まだ4回。
無難にファーストでアウトを稼いでもよい場面だった。
シーズン中なら確実にそうしていたはずだ。
手堅いプレーで容易に離されないエンゼルスでさえこうである。

これが短期決戦の怖さである。
負け越していること、先発がサバシアであること、先取点はやりたくない。
そんな思いが普段見れない焦りを感じるプレー、信じられないエラーにつながる。
傷つくことを恐れ、より深く傷つく。
怖さのため腰が引けてスキーをすると、よりスピードが出てしまうのと同じようなものだ。
考えてみると終盤の逆転が恐ろしく多いプレイオフである。
その冷静さ、チームに対する自信とでもいうのだろうか。
それが喪失しているのだ。
タイトルにも書いた「たんきはたんきあらず」
短期決戦は「短気」では勝てない。

自分達日本人は高校野球で、短期決戦の素晴らしさ、怖さ、流れは実際にあることを知っている。
高校野球で1戦必勝の戦いに、全力で戦う姿に、その刹那的な戦いは野球ファンの胸を打つことが多い。
その戦いを世界最高峰のMLBの選手達がやったら…こういう接戦になるのだろう。
先がない戦い、先を考えなくていい戦いに、最高の技をもった選手達が今持てるものをすべてさらけ出す。
やはり迫力は他の追随を許さない。
もともと戦力に差がないのもあるだろう。
試合を分けるのは、やはり細かなミス、そしてホームのファン、観客、テレビ観戦している脚本家の筋書きだ。
筋書きが見事すぎる戦いが多すぎる。
高校野球より、細かなミスだったり四球に付け込むことが素晴らしい。
狡猾であり、強者でもある。
だからこそ見ないわけにはいかない。

それ以外にも魅力はある。
本塁打で追いつくという劇的な展開も、高校野球にはない展開だ。
また、抑えが打たれることも目立つ。
ワールドシリーズを熱心に見るようになって数年立つが、年々チャンピオンシップを取りたいという執念は強くなっているように思う。
もちろん、昔からそれを勝ち取るために戦っており、その長いMLBの歴史があるからこそ、執念だったり尊厳だったりを感じる。
一生に残る栄誉を勝ち取りたい、その思いが強すぎて、シーズン中の試合を締めくくってきたクローザーでさえも、その役割を果たせないのだろう。

強者とはなんだろうか。
それは相手が勝手に転んでしまうことではないだろうか。
そして、それは相手を強いと認めてしまっていることにも関係する。
実際有名人や尊敬する人にあったら、それほど大きな人でもないのに大きく見えることがあるだろう。
そう見せることができる、または相手を小さく感じさせるという威圧感とでもいうのだろうか。
ヤンキースとフィリーズ、この両チームはどっしり構える歴代の大横綱のように受け止め、相手を転がすことのできる存在だ。
本当の意味で強者といえるだろう。
よもや、この2チームは固くなることはなかろう。

フィリーズは連覇を狙う権利をもったチームである。
近年のMLBに久しく出なかった王者の出現。
毎年優勝チームが変わることも楽しいが、そろそろ心のどこかでは強者の出現、王者の君臨を望んでいる部分もある。
NBAで例えるなら、ジョーダンがいたころのブルズだったり、コービー・シャックがいたレイカーズだったり。

そうはさせじと立ちはだかるはヤンキース。
MLBの歴史を振り返れば、直近で連覇したチームと言えば98~00のヤンキースにさかのぼる。
歴史あるチームであり、伝統を賭け復活にかける思いはどのチームよりも強いはずだ。
自ら作った歴史を目の前で塗り替えられるわけにはいかない。
それに新球場の1年目を優勝で飾り、新たな歴史の1ページを刻みたいところだ。

第1戦はNYで行われる。
正直、寒さの影響が心配である。
エンゼルス戦の第1、2戦、NYでの試合は、野球をする環境ではなかった。
気温は10度を切っていたはずだ。
冬の時期に行われるNFLではよく見る光景だが、雪の中や息も凍るほどの中での戦い(さすがに雪の中では野球は中止になるだろうが)。
広いアメリカを想像すると共に、だからこそ多くの野球選手の中で頂点を決める戦いの過酷さ、名誉さが感じられる。
ホームの絶大な力もだ。
ヤンキースはホームの2戦は勝って当たり前。
逆にフィリーズが1勝でもするようなら、フィリーズ有利になるだろう。
2連勝でフィリーズのホームに乗り込むことで、やっとヤンキースが有利な状況が作れると言ったところだろうか。
これでは、フィリーズファンだということがばれてしまうが(笑)
(フィリーズファンというよりも、レッドソックスや楽天にも共通する赤色に反応しているかもしれない)

個人的に注目するのは、ヤンキースはリベラ。
このプレイオフは圧倒的だ。
他のチームのリリーフが軒並み調子を崩す中、安定感がすばらしい。
対するフィリーズはイバニェスだ。
未だにマリナーズから去っていってしまったことが時折悲しくなる。
プレイオフでは今一つ調子が上がっていないが、たたき上げのこの選手、大舞台で大輪を咲かせてほしいものである。
我らが応援する松井秀は守備の練習をしていたといううれしいニュースもあるが、まずはDHでの出場となるだろう。
松井が打てばヤンキースは勝てるとは言い切れないが、打たなければヤンキースは苦しくなることは間違いない。
A・ロッドのマークがきつくなることから、ますます重要度は大きくなるであろう。

劇的な展開があり得ないほど多く感じる今年のプレイオフ。
考えてみれば、この2チームで頂点を争うのもなにか定められた運命のように感じる。
因縁はないが意地はある。
フィリーズは連覇を、MLBの王者として君臨するために、直近で連覇したチームを叩くことで改めて証明できる。
ヤンキースはその野望を止め、自らが覇者であることを再び知らしめる礎としたい。
出てきてほしい、観たい対決ではない方もいるだろうが、この対決は自然であり、雌雄を決しなければならないのだ。

MLBのプレイオフ、まさに野球の世界一を決める短期決戦が始まる日に、プロ野球ではドラフトが行われる。
総決算、結果が求められる日、短期的な戦いと、夢や希望、これからのチームの長期的な計画が決まる日が同日とはなにか面白い対比を感じないだろうか。
短期決戦というが、チーム全体で行う我慢大会のような部分も持つ。
そしてそのチームを支える骨となる選手達を選ぶドラフト。
結果が求められる一方で、夢を託す日。
なにか数奇なものを感じずにはいられない。
不思議な縁を感じる日に、第1戦が始まる。
その戦いが面白くないわけがない。
野球ファンにとって今年を締める戦いを、手に汗握る熱戦を見守りたい。

posted by ballgame |23:50 | MLB | コメント(3) | トラックバック(0)
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2009年10月27日

君の涙は…(ドラフトは29日)

花巻東のエースは、その決定を報道陣の前で発表した後、大粒の涙を流した。
いったい、その涙はどんな思いで流れたのだろう。
花巻東の野球部長いわく「大リーグ球団への申し訳ない気持ちから」ということだが、その部分が一番大きいのは間違いない。
ただ、理由はそれ以外にもあるだろう。
メジャー行きについて批判する声も聞こえてくるなど、精神的にも追い詰められていたはずだ。
なにより、チームメイトとの関係からわかる通り、つながりを大事にする男。
今回の決断で、一区切りついたことから流れた涙かもしれない。
いろいろ想像できるが、こればかりは本人にしか、いや、本人でさえすべては分からないかもしれない。

この決断まで、いろいろ悩むこともあったろう。
監督や両親との話し合いがあったにせよ、最終的には自分で決めた道だ。
この涙とともに、きっともやもやした思いも菊池の中から流れ出たことだろう。
そうして出た本人の決断は、素晴らしいことであり、一番いい形だ。
もしそうでなくとも、菊池は自分で決断した進路を一番いい形にする才能を持っている。
その才能は野球の才能だけでなく、並はずれた向上心であり目標をかなえるプロセスであり、努力し続けることができることでもある。

外野からの声はいろいろあったろう。
一番多いであろう率直な気持ちは、日本でも見たいし、海外で大きく活躍する選手にもなってもらいたいという欲張りな気持ちだろうか。
この18歳という年齢で、日米沢山の球団から話を聞くことが出来て、迷うのは当然だ。
真剣だからこそ迷う気持ちが出てくるもの。
才能があるからプロ野球へ、という思いよりも、今この時期真剣に将来のことを考えられる経験は、菊池にとってプラスになったのは間違いない。
真剣に考え、悩み抜いたうえでの決断ならば、きっとどちらを選んでもうまくいくはずだから。
本人の言うように、日本一の投手になるべく、また高い目標を持って努力を重ねるはずだ。

考えてみれば、ゴルフ界で活躍する石川遼もこの菊池とは同い年。
彼が世界で活躍しているのならば、菊池も出来ると思うのは当然である。
競技が違えど、自分の才能を信じ、努力を重ねてきたことについては、どちらも同じようにすごしてきたのだから。
日本でのプレーも、今回の経験で将来の素晴らしい夢を具体的にイメージしながら、努力を続けられるのは菊池にとって大きなメリットとなる。

今回の騒動、日米のスカウトの違いが目立って面白かった。
MLBはやはり、アピールのうまさに一日の長がある。
実際にMLBの現役選手を連れてきたり、あえて厳しい言葉をかけたり、ジャッキー・ロビンソンになれる、等々。
もちろん、自由競争という点も大きいであろう。
日本はドラフトがある。
だが、その違いを頭においても、MLBの各チームの真剣度は菊池の胸を強く打ったことであろう。
情に訴える日本、球界全体を考えてほしいという日本。
自分のチームならば、とやりがいを進めるMLB。
個人的には、レンジャースでライアンの下、育成されたら面白いのではと思っていたが、それはさておき。。。

今回の菊池の決断で、ほっとしたプロ野球球団。
MLBで大きく成長する姿も見たかったが、プロ野球で、間近で活躍する姿を見られるのもうれしいものだ。
今回、松坂と比較して話をした球団もあったが、貴重な左腕とは言え、今時点では高校時代の松坂には劣るであろう。
だが、その分荒削りで原石の魅力は強く感じる。
我らが東北からでた才能ある投手、じっくり焦らず、大きく育ってほしいものである。

今のところ、巨人、広島、横浜以外は菊池を指名する可能性がある。
今までは、野茂の8球団が最高のドラフト指名。
その記録を更新するだろうか。
はたまた、どの球団が指名を獲得するのだろうか。
甲子園で白河の関を越えられなかった思いを、楽天でかなえてほしい。
岩隈、田中、永井に続き、あの広島の投手王国時代を抜く新たな帝国が見たい、と思うのは東北生まれの自分の勝手な思いである。
ドラフトは29日に開催される。
今回は生放送があるとのことだが、どんなドラマが生まれるだろうか。
非常に楽しみである。
願わくは、若手育成に定評のある球団が指名することを望みたい。
菊池の決断に幸あらんことを!


(追記)
巨人の代表も行っていたが、このままの制度でいいわけがない。
今回、菊池は日本のプロ野球を選び、どの球団でもと言っているが、将来才能を持った選手が行きたい球団があった場合を考えてみよう。
それが、MLBの例えばヤンキースであったり、ドジャースであったりした場合、その球団から声がかかれば、光栄とばかりMLBに行ってしまうのではないだろうか。
もちろん、その才能があり、文化や言葉の壁を越えても挑戦したいという強い決意があれば別だ。
それでなくても、プロ野球のドラフト(くじ引き)とMLBの自チームに来てほしいという勧誘。
どちらが強く興味を持つかはわかりきったこと。
勧誘する側からしても、やりやすさは格段に違う。

個人的な意見では、ドラフトを以前のように指名制に戻すのには反対だ。
となると、MLBへの挑戦は、他の選手同様MLBのドラフトにかけるのが平等な取り扱いなのではないだろうか。
MLBのドラフトは毎年6月。
それまで1年程ブランクは空いてしまうが、それはMLB挑戦へのマイナス面として受け入れる。
自分で書いていても、欠陥がすぐ出てきそうな案である(笑)
みなさんの中にも、いろいろな考えがあるだろうが、ここではあまり詳しく述べないでおこう。
もちろん自分としては、才能ある選手が、MLBという異国の地で自分の力を試してみたいという思いは賛成であり、どんどん挑戦すべきであると思っている。
ただ、現状のままでは、あまりにもプロ野球側に不利な状況ばかりな面が目立つ。
ことが起こってから怒っても遅い。
今時点で、きっちり制度を決める必要があると思う。
CSシリーズを見ても、決して魅力が欠けているわけではないプロ野球。
制度さえしっかりすれば、あとは才能ある選手の自己責任になる。
ただ、罰則気味な制度だけはやめてほしい。
これを機に、転ばぬ先の杖ではないが、ドラフト以外の制度と絡めて(FA制度や支配下選手枠など)すべてをトータルで考える時期に来ているのは間違いない。


posted by ballgame |23:54 | プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年10月26日

伸びる若者、悩む実力者(混戦の男子ゴルフ界)

先日行われた男子ゴルフ、ブリジストン・オープンは最終日7アンダーを叩きだした池田勇太が逆転優勝を果たした。
2週間前から右手の甲を痛めていてテーピングを巻いていたが、痛がるそぶりをみじんも見せず、ウィニングパットを鎮めると穏やかにほほ笑んだ。
貫録というのだろうか、それともほっとしたのだろうか。
歓喜を爆発させるわけでもなく、ただ穏やかに。
湖面を染める紅葉のように、その存在は鮮やかで、当然とばかりにいなくてはならない存在になってきた。
これで池田勇太は今季4勝目、賞金王争いでも石川遼を抜いてトップに立った。

ジャンボ尾崎にあこがれ、同じメーカーであるブリジストンと提携している池田。
この大会のホストでもあり、このコースは自宅から20分。
ゴルフを教えてもらった祖父と初めて観戦したプロツアーだったそうだ。
想像してほしい。
子供の頃の強烈な印象で、今時点の職業を選んでいる人もいるだろう。
あるいは夢に向かっている人も。
その印象は決して色あせることのないもので、もしかすると年々強くなっていくものかもしれない。
そのあこがれの場所(あるいは人だったり)で、子供の頃の夢がかなう。
「人生意気に感ず」ではないが、これこそ生きている証であろう。

太く上向きの眉、力強い光を放つ瞳がなければ、田舎の田んぼにもいそうな愛きょうを感じるキャラクターである。
腰が重いというか、粘り腰というか、重心が低いイメージ。
数十年前のゴルフファンにとっては、当たり前のファッション、ぶっきらぼうな口調。
決して口数は多くないが、その言葉にウソはなく、有言実行の男。
東北生まれの自分からすると、どこかしら懐かしいにおいがする。

彼は余りにも普通の口調で言った。
「トップに立つことはやはり気持ちいい。今年いっぱい、この位置を守れるように頑張ります」
絶叫でもなく、上ずってもなく、リップサービスでもなく。
あくまで自然な口調であるがゆえに、その決意が感じられる。

池田勇太は今季4勝。
今大会も含めて、最終日にビックスコアを出し優勝している点が頼もしい。
メジャー大会で活躍する強豪は、必ず最終日にその本領を発揮し、猛チャージをかける。
真価が問われるのは、最終日、狙って攻められるか、スコアを伸ばせるかというところである。
石川遼にも通じるこの猛チャージ、たくましさを感じないだろうか。

一つの夢がかなっても、愛すべき我らが池田勇太は歩みを止めることはない。
石川遼18歳、池田勇太もまだ23歳である。
まるで対照的な2人であり、ファン層もおそらく違うであろう。
清廉された石川遼に、荒々しい魅力の池田勇太。
池田勇太には、浪花節的な感じもする。
きっと長年のゴルフファンは、石川遼に素晴らしい可能性を感じながら、親近感は池田勇太にあるのではないのだろうか。

だがこの2人、負けず嫌いはどちらも相当なものであろう。
爆発した時の力も、お互い他の日本選手に感じないわくわく感がある。
どちらが賞金王をとっても、最年少での賞金王となる。
自分は石川遼のファンでもあるが、彼にそう簡単に賞金王を取らせてはいけない。
空気を吸っても成長する石川遼には、王道を歩きながら数多くの試練があればある程その土台はしっかりとしてくるのである。
お互い意識したままの残り6戦、プロ野球やMLBのプレイオフに負けないような、季節に合わない熱い戦いを期待したい。
いや、自然にそうなるに違いない。
ゴルフファンであり、野球ファンでもある多くの方は、温暖化とはまた違った冬の訪れの遅さを感じるであろう。

そこで心配なのが、現在賞金王3位の片山晋呉だ。
この大会では、こんなことを言っていた。
「ファイトがわいてこないのは確か。ボギー取って悔しいとか、バーディーでうれしいとかがないのよ」
「あの2人(石川、池田)の感覚とかも分からない。全然刺激にならないし、“どうぞ”って感じ」
本来、この若い二人を跳ね返す役目を果たすべき実力者がこの状態である。
新しいモチベーションを見つけられないというから、大問題である。
片山は、ゴルフを仕事と捉えて惰性的に行うことはできない。
むしろ、なにかしらの障害やチャレンジすべきものがあればある程燃えるタイプである。
今までは、難コースであったり、海外のメジャー大会であったりしたのだ。
まだ36歳、燃え尽きるような歳ではないと思うのだが。。。
ゴルフはメンタルのスポーツ、「いじわるなおじさん」としてモチベーションを上げて対抗してほしいものだ。

posted by ballgame |23:41 | ゴルフ | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年10月25日

世界一の幸せ者(パ・リーグCS最終戦を振り返る)

8回裏、細身のエースのストレートは褐色のたくましい腕に握られたバットではじき返され、ライトスタンドの一角を埋めていたえんじ色の集団へ無情にも飛び込んで行った。
その数は千人ほど、中には北海道でありながら数少ない楽天ファンもいたであろう。
また、奇跡を信じて、もっと素晴らしい試合が見たくて、津軽海峡を越えてきた人も少なくない。
それだけに、この本塁打で起こった残酷なまでのコントラストは、明白な試合の結末を示し、すなわちCSシリーズの終了を意味していた。
東北で寒さに慣れているとはいえ、北海道は楽天ファンにとってより厳しい環境だった。
だが、後悔はない。
だって素晴らしい試合が見れたから。
楽天ファンにとっても、北海道の地は野球にとって最適な場所だったから。
そして、野球場ではなかなか見ることのできないシーンを見ることが出来たから。

試合終了後、表彰式などが終わり、日ハムの選手達はファンの声援にこたえるため、一列に並んでいたマウンド付近からレフトスタンドへ向かった。
一方、その光景を目に焼き付け、次こそは自分達がここに並ぶんだと胸にとどめるために、その一挙手一投足から目を離さなかった楽天の選手達。
ベンチの前に並んでいた彼らもまた、日ハムの選手達とファンの歓喜を渦を邪魔しないように、ライトスタンドへ向かった。
完全アウェーという野球場では珍しく感じるこの状態でも、第1戦の敗北を引きずることなく1勝を返せたのは、現地で声を枯らせて、選手を信じて応援してくれた楽天ファンのおかげでもある。
ライトスタンドの一角に陣取る楽天ファン。
そして、その前できれいに一列に並ぶ楽天の選手達。
もちろんその列の前には、コンダクターとしてCSのステージまで引っ張ってきた老将が立つ。
その老将がこの試合でチームを離れることを改めて思い出した日ハムのファン。
楽天のファンとともに、ライトスタンドから声援が、拍手が広がっていった。

深々と頭を下げる野村監督。
そして、楽天の選手達に囲まれるようにして、ゆるゆるとベンチに引き揚げようとする。
しかし、そのスピードはゆっくりであり、あたかも帰りたくないとひそかにだだをこねる年長の子供のようだった。
またはなにかを待っているか。
そのなにかは、勝者にも関わらずライトスタンドまで全員で来てくれた。

吉井コーチが、梨田監督が握手を、抱擁を交わす。
近くには稲葉も、武田もいた。
自然と去りゆく老将の周りに人垣が出来た。
そして、赤白がまじりあい、老将は宙を舞った。
実際は、CSを制覇して、日本シリーズを制覇して行いたかったこの胴上げ。
しかし、例えそれが成就しようとも、この日の老将が浮かべていた笑みには勝てなかったかもしれない。
少なくてもこの清涼感は、この状況でなければ感じることが出来なかったはずだ。

今日のこの日に日本シリーズを決めた日ハム、そして東京の地で同じく出場を決めた巨人の監督、選手達は幸せだろう。
だが、それ以上に今日は、世界中で野球をやっている人たちの中で一番幸せな人はこの野村監督なのは間違いない。
確かに、今シーズンの野球はこれで終わりである。
そして戦いの最中に、どれだけ成績を残そうと来シーズンの指揮が取れない事がわかっていたという、つらい状況だったことは確かだ。
しかし、両方の選手から胴上げをしてもらえる選手、監督は実際にいるだろうか。
プロの各球団に教え子がいて、その遺伝子は脈々と受け継がれている。
その教えに触発されている指揮官、コーチもいることだろう。
自らも言っていたが、正に野球冥利に尽きるのではないだろうか。

胴上げ後、老将は一塁側ベンチへ戻るために、歩みを進めた。
彼の足取りは重く、それは疲れのため、年齢のためもあった。
だが、一番大きいのはやはり去りがたき野球の魅力、愛情がそうさせたのだろう。
その遅い歩みに続く選手、コーチはいない。
日ハム、楽天の監督、コーチは知っていた。
だから、さりげなくお互いを讃えるために肩をたたき、抱き合ったり、話をしたりしていた。
もちろん、楽天の選手達は心からの祝福だろう。
ただ、これは選手、コーチの粋な計らいである。

ただ一人、ゆっくり、ゆっくりグラウンドを歩く老将。
時折帽子をとり、ファンにこたえる。
ピンスポットは当たっていないが、その姿はあの巨人の長島の引退式にも負けない素晴らしい引き際だったように思う。
自らを月見草と例えたこともある野村監督。
月見草は夕方に白い花を咲かせる。
見てほしい。
スタンドは日ハムの応援で、白いユニフォームでびっしりだ。
まるで、沢山の月見草が咲き乱れ、その雄姿を見送っているようではないか。
老将の動きに、スタンドは、白い月見草は揺れ動く。
決してひっそりとなんかしていない。

この日、世界で一番幸せだった老将はグラウンドでお互いを讃える選手達を残し、舞台から退場した。
後には、それを寂しがるかのようにスタンドの白い月見草達が揺れていた。
月見草が輝いた日々はひとまず終わった。
それでも野球は続いていく。
ただ、自分達野球ファンは、いたるところに月見草ならではの匂いや光を見て、感じることが出来るだろう。

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2009年10月23日

一人二役、それ以上(パ・リーグCS第3戦)

1球投げるごとにプレートの後ろに立ち、膝を軽く曲げロージンを触る。
そこはマウンドではなかった。
まるで相撲の仕切りのように、投げ終わった後の決まった動作。
決着の時まで、1球ごとに気合が入っていくのがよくわかる。
プレートを仕切り線とし、ロージンを塩代わり。
まゆがつりあがったその様子は、力強い鬼のような形相だった。
青春時代を育った第2の故郷と言っていい北海道で鬼となる。
すべてはチームの勝利のため。
この8回の、いや稲葉の打席からイーグルスの先発田中は役割を変えたのだ。

この日の田中は手抜きをしていた。
いや、手抜きというと語弊があろう。
最初から全力で行ける所まで、というファイターズの先発八木とは違い、田中は余力を持った投球をしていた。
CS第1ステージで野村監督が言っていた「ペース配分」という言葉に表れるだろうその投球。
八木は知っていた。
飛ばしに飛ばし、後は中継ぎに任せればよいと。
田中は覚悟していた。
今日の試合は一人で投げ切らなければいけない事を。
決してチームを信じていないわけではない。
打線の助けがなければ勝てないのだ。
だが、その考えが田中に駒大苫小牧時代のように、チームの勝利は自分次第という、よいわがままさが出たのだ。
なにがあっても今日は一人で投げ抜く。
高校時代当然だった考えに、マウンドで自分の感覚を信じて投げる懐かしさがこみ上げる。
迎える打者を抑えて当然といった余裕も。

だが、そのペース配分を考えた投球が与えてはいけない先取点を与えてしまう。
長打さえ打たれなければいいという考えのもと、すっと不用意に投げた外角ストレート。
4番高橋に初球をライトスタンドにライナーで飛び込むソロホームランを打たれる。
余りに不用意な1球。
飛び込んだ先が、ライトスタンドの一角で、海を渡り、声をからして応援するえんじ色の中というのが皮肉である。
球場の大部分が盛り上がる中、ホームランボールを奪い合おうとはしないイーグルスファン。
ここ2戦の悪い流れを象徴するような対照的な姿が、今日もなにか悪いものに引きずられているように感じる。

3回もピンチを迎えるが、なんとか抑えた田中に応えるべく、イーグルスも奮起する。
ここまで好調だった八木が、突如捕まる。
打順が一回りしたこともあったのだろう。
4回表、先頭の渡辺が内角に食い込むシンカーをうまく巻き込み、レフトスタンドへ飛び込むホームラン。
同点に追いついた後も、攻撃の手を緩めず、連続ヒットで1死1、3塁。
左投手にめっぽう強い6番中島が、内角ストレートをうまく引っ張り、レフト前のタイムリー。
これで逆転。
続くリンデンの当たりは、ショート深い位置へのボテボテのゴロ。
ショートの金子は打球をさばき、即座にセカンド送球。
画面で見ていて、「よしっ、満塁」と声を上げた刹那、塁審はアウトの判定。
明らかに疑惑の判定である。
いつもよりゆっくりとベンチから抗議に出る野村監督。
それは、野球場にそぐわない、のんびりとした動きだった。
一瞬時が止まったような感覚が襲う。
抗議よりも、移動の時間の方が長いほど。
しかし、判定は覆るよしもない。

ゆっくりとベンチに帰る野村監督。
逆転したとは言え、明らかに悪い流れである。
ホームアドバンテージというにも、当てはめずらい状況。
だが、この野村監督が作った時間がイーグルスの選手達に冷静さを、考える時間を与えた。
続く草野が外角ストレートを逆らわず、レフトへ流し打つ。
突っ込むレフトの森本。
森本のグラブより先に万有引力が勝った。
打球が先に落ちたのは草野の、イーグルスファンの執念かもしれない。
ダイビングキャッチのような形になったが、うまいのは森本。
間に合わないと思った瞬間、体で後ろにだけはそらさないようにしようと態勢を変えたことだ。
結局球をはじいたが、後ろではなく横にはじいただけ。
1塁ランナーの帰還までは許さなかった。

森本のうまさはそれだけではない。
3点追加で、なお2死1、3塁。
中谷が、内角ストレートを引っ張り、レフト線抜けるかと思われたが、森本がダイビングキャッチ。
守備位置も抜群だが、まるで内野がライナーに飛び込むような素軽い動き。
一か八かの飛び込みではないのだ。
表現が難しいが、わかっていただけるだろうか。
守備の上手さが存分に感じられる、センスのあるキャッチ。
ファイターズの外野は固い。
追加点をこれ以上許さなかった。

だが、楽天は勝ち越した。
打線につながりが出てきたこと。
そして、そのつながりは内角はひっぱり、真ん中・外側の球は差変わらず流すという打撃の基本が戻ってきたこともいい材料だ。
昨日は1-3で負け、今日はこの時点で3-1。
このままリベンジを果たせるかと思われた方は、非常に楽天的な方だ。
第1戦、第2戦と続けてみている人は、このまま終わるはずがないと思われた方が多かったであろう。
ファイターズファンからするその期待、イーグルスファンからするその不安は、望む望まないにかかわらず実現した。
観客が真剣に想像すれば、見たいと思えば、実現しやすい空間。
それが、CSである。

動いたのはやはり8回裏だった。
連続ヒットの後、送りバントで1死2、3塁。
打席は2番の森本。
ここから田中は変身していく。
この場面、三振か内野フライが捕りたい場面である。
初球、高めのボールとなるストレートをファール。
見ているファンはもちろん、森本でさえも次の投球は予想できたろう。
田中もそれを避けなかった。
力で抑え込もうとした同じ高めのストレートを、森本は力でセンターに運ぶ。
犠牲フライとなり、1点差。

やはり野球の神様はいる。
でなければ、この場面でこの人に回ってくるわけがない。
ファイターズの心臓といっていい稲葉が左打席に入った。
田中は、ここから役割を変えた。
先発の役割を捨て、みずからリリーフへと役割を変更した。
ここはピンチでもあるが、チャンスでもある。
ファイターズの支柱である稲葉を完膚なきまでにたたけば、この試合の勝利はおろか風向きも変わる。
それを田中は、自らが持っている動物的カンで感じていた。

ペース配分などくそくらえ。
球に乗せるは、理論でも体力でもなく、自ら燃やす気迫のみだ。
大人の仮面を脱ぎ棄て、田中は子供に戻った。
自らが一番だという自負を前面に出すために。
1球投げるごとにプレートの後ろに立ち、膝を軽く曲げロージンを触る。
まるで相撲の仕切りのように、投げ終わった後の決まった動作。
プレートを仕切り線とし、ロージンを塩代わり。
試合というより一騎打ちだ。

スライダー:ボール
ストレート:空振り
ストレート:ボール
ストレート:空振り
ストレート:ファール
ストレート:ボール
フォーク:ボール

149→150→153と球威が上がっていく。
4球目、ストレートを空振りした後、稲葉は思わず「はえぇ」とつぶやいていた。
ぐいぐいとストレートで押す。
球速はもちろん、伸びも抜群。
田中は力でねじ伏せることしか考えていない。
稲葉はそれをはじき返すことしか考えていない。
ファンは、点差よりもこの真っ向勝負を望んでいた。
田中もさるものながら、稲葉もさすがである。
ボールにつられることなく2-3。
7球目はフォークで勝負!
この球が真ん中に投げられていたら、稲葉のバットは回り切っていただろう。
内角低めから落ちたために、稲葉のバットは止まったのだ。
結果は四球。

個人的な勝負は、稲葉に軍配が上がったが、忘れてはいけないのはこれは野球の試合であることだ。
自分もこの漫画にでも出てきそうな、理想的な勝負を堪能してしまい、状況を忘れてしまったほど。
まだ点をとられたわけではない。
打席には、ホームランを放っている4番高橋。

田中の本当にすごいのはここだった。
スライダー:ボール
スライダー:空振り
ストレート:見逃し
スライダー:空振り

稲葉にはあれほどストレート勝負にこだわったにも関わらず、次打者にはきっぱり頭を切り替えていることだ。
外角低め一辺倒、4球中3球がスライダーという極端な冷静さ。
稲葉との野球選手として至福の勝負を目の前で見ていただけに、この変貌には高橋も驚いたことだろう。
容易に対応出来るものではない。
狙っていたであろうストレートも外角低めぎりぎりにコントロールされ、手を出すことすらできない。
3球目と同じ軌道で、ボールとなるスライダーに手が出てしまうのは仕方がないところである。

田中とはなんという投手なのだろうか。
あれほど気合を前面に出しながら、頭はクール。
それでいて、球には気合を乗せることが出来るのである。
よく「体はホットで頭はクール」とは聞くが、あれほど自在に操っている選手を見るのは初めてだった。
稲葉の7球目、高橋へのスライダー勝負、今でも信じられない。
きっと田中は稲葉ジャンプも、高橋への大声援をもしっかり耳に入っていただろう。
それほど冷静で、なおかつその声援を自分のものにできるというわがままさ。
投球の組み立ては、10年選手かと思うほど落ち着いている。
思い出しても信じられなく、ただ首を振るばかりだ。
高橋への4球目(決め球)を投げる前に、田中はマウンド上で「あと1球だ」とつぶやいている。
あれは決意というより、その瞬間未来が見えたのではなかろうか。
思い通り空振りさせる姿が。
その瞬間、自分は鳥肌が立ってしまった。

松坂やイチローのように、なにかを持っている選手だとは思っていたが、今日改めて再認識できた。
そして、今までにないタイプの投手だということを。
一人二役をやる投手は大エースならば、当たり前かもしれない。
ただ、それにその状況を実況しながら楽しむことができる選手は数少ないだろう。
そして気合を注入しながら、澄み切った頭で配球をも考える。
文字にするとウソみたいに感じるが、今日の、あの場面の田中はそういったことが出来ていた。
これは間違いない。
喜びよりも先に、恐ろしさを感じてしまう。
将来どういった投手になるのだろうか。

9回裏、最後の打者糸井の打球はスライダーを上手くとらえ、いい角度でレフトへ飛んだ。
強振したわけではないが、レフトがフェンスまで下がっていく。
第1戦、スレッジの打球を想像させるようでドキッとさせたが、無事レフトのグラブに打球はおさまった。
「あぶねー、あぶねー」を連発しながらマウンドで無邪気な表情を見せる田中。
これがあの大きな仕事を成し遂げた投手の顔である。

これで、イーグルスは永遠に来ないかと思われた勝利を手にできた。
成績は1勝3敗(アドバンテージ1敗分含む)。
田中の投球は見事だった。
自分一人で投げ抜くという覚悟は本物で、それを実行していた高校時代からさほど時代が離れていないのも功を奏したのかもしれない。
なぜなら、プロではなかなかない考えだからだ。
惜しむらくは、8回稲葉から三振(凡打でも)を奪い、第1戦のように1勝以上の価値を得たかったところである。
だが、それは高望みしすぎだろう。

まずは1勝しなければ何も起きない。
千里の道も一歩から。
大逆転チャンスなどありはしないのだから、何が何でも1日1勝していかなければならない。
逆に目標はシンプルである。
イーグルスファンにとっては、それでも…という方がいるかもしれない。
山崎の不調や、1つ負けたら終わるなど不安要素は沢山ある。
次期監督に元広島監督のブラウンに声をかけたという記事も見かけた。
うわさ通りでもあり、なぜこの時期なのだろうと首をひねりたくなる。
だが、このすばらしい札幌ドームでの観客の前では、そんな騒動も吹き飛ぶ。
野球冥利に尽きる環境を、プレーする喜びの場を観客は作ってくれている。
遠い地でテレビを見ている、自分たちファンもそうだろう。
そんな前で、将来のことを考えている選手はいない。
(おそらく当事者の野村監督もそうだろう)
自分たちの最高のプレーを披露したい、チームの勝利に貢献したいという思いでいっぱいだろう。

甲子園は野球の聖地とも言われている。
だが、今日までの3戦を見ると、この札幌ドームこそが、このすばらしい観客を含めて、ここが聖地だと胸を張って言いたい。
今日負ければ終わりという厳しい中、第1戦より明らかに数が増えているイーグルスファン。
ファイターズのあきらめない気持ちを支えている、北海道の冬を思い出させる白で客席を埋め尽くす老若男女のファイターズファン。
それにふさわしい野球を見せてくれている両チームの選手達もしかりだ。
北海道は熱い熱い。
週末にまだこの1戦を見ることができる喜びをかみしめたい。
それだけで素敵な休日になることは間違いない。
その結末が月曜日まで伸びることがあれば…。
明日の試合が熱戦にならないわけはない。
第4戦はデーゲームだ。
セ・パ、セ・パとチャンネルを変えていた人もひと安心。
明日の戦いも楽しみでならない。

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2009年10月22日

すべてが足りない(パ・リーグCS第2戦)

細身のエースはマウンドで泣いていた。
それはこの回から明らかに投球フォームがおかしくなった原因の、右足の痛みからだろうか。
それとも、逆転を許したことに対する自らの不甲斐なさだろうか。
もしかすると、チームに対する不満ではないだろうが、ひょっとすると追いつけないのではという絶望からだろうか。
6回までの気迫のこもったまなざしから発していた目の輝きとは別の光があった。
実際に泣いて見えたのは、楽天ファンの気持ちの表れからかもしれない。

熊のように大きな体をした不惑の男は、ベンチでうつろな目をしていた。
打席ごとに回ってくるチャンス。
昨日の試合後にチームに活を入れた男だからこそ、責任感は重くのしかかり、自分が何とかしようという思いは迷いのあるスイングにつながっていた。
これまでチームを引っ張ってきた、結果を残してきたと自他ともに認めている主砲であるからこそ、この結果が不甲斐なく、そしてあからさまに不満を表すことが出来ない。
なぜなんだ、なぜなんだ。
迷いは思い切りを奪い、打ちたい気持ちは空回りする。
バット一本でしか貢献できないポジションであるからこそ、ベンチで考える時間は多く、迷いが迷いを生む。

劇的な試合で勝利を飾ったファイターズよりも、どうしても視線は撃沈したイーグルスに目がいってしまう結果となった第1戦。
誰が見ても素晴らしい試合であり、そしてイーグルスにとってあまりにも後に残る敗戦なのは間違いない。
「勝っていれば…」「あそこでこうしていれば…」という思いは、反省でも何でもない。
次の試合の妨げにもなるし、瞬時のプレーを引きずるだけである。
だが、だが。。。
そういった思いを断ち切るために、いつもの勝利への期待の他に、少なからずの悲壮感をのせて、イーグルスの岩隈は先発のマウンドに上がった。

ファイターズの先発は糸数。
4回にイーグルスはセギノールがバックスクリーンへの本塁打で先制すれば、ファイターズもすぐさま追いつく。
先頭の稲葉がレフトへの大きな飛球を放ち、レフトのリンデンがグローブに収めるも、フェンスにぶつかり球をこぼしてしまう。
この後1死3塁となり、昨日のヒーロースレッジがファーストへ鋭い打球を放つ。
だが、ファーストのセギノールがファインプレー。
なんとか抑えられるかという楽天ファンの期待を打ち砕いたのは6番小谷野。
2球目の外角へのストレート、決して簡単な球ではないように思えたが、素直に打ち返し、ライト線へのタイムリーツーベース。
これで同点に追いつく。

昨日とは立場を逆にしたかのような展開。
取られたら取り返すファイターズ。
毎回ランナーを出しながら、チャンスをつかみながら、なかなか点に結びつかないイーグルス。
岩隈でも無失点に抑えられないか。
同点にされ、さらに焦りが募るイーグルス。

こんな状況を見て、思い出したことがある。
麻雀をやる方ならご存知だろう、無敗の雀士と言われた桜井章一の話だ。
彼は麻雀でのぎりぎりの競り合いをこんな風に例えている。
「水を張った洗面器に顔をつけ、どれだけ我慢できるかという状態」
イーグルスは早く楽になりたい、早くリードしたいという気持ちが出ている。
昨日のサードで止めたコーチャーのように、落ち着いたところがない。
今の状態では、我慢比べに耐えられないのかもしれない。
短期決戦が「短気」につながっている。
それも仕方がないかもしれない。
なにせ、あの第1戦の後だから。

象徴的なシーンは7回だ。
2死2塁からイーグルスは3番好調の鉄平。
迷わずファイターズは敬遠を選ぶ。
2死1、2塁。
昨日も似たようなシーンがあり、そこでは山崎が意地のタイムリーを放っていた。
だが、今日は違っていた。
同じ左方向へのフライには違いないが、昨日はフェンスまで深く下がったレフトの森本は前進してキャッチ。
またしても、点が入らない。

7回裏、2死2、3塁から稲葉を敬遠。
2死満塁で、4番の高橋と勝負を選ぶ。
コインの表裏のように、同じ状況が現れる。
しかし、結果は違っていた。
このコイントスに勝ったのは、高橋だった。
岩隈のシュートを詰まりながら、ショートの頭を越えるヒットで2点を勝ち越し。
この試合、初のリードを奪われる。
4番の一振り、なんと大きなものか。

イーグルスも一筋縄ではいかない。
取られたら取り返す。
ただで帰るわけにはいかない。
あちらに傾けば、すぐその反動でこちらにチャンスがくるという野球の法則を知っているイーグルスは、すぐさまチャンスを作る。
代わった宮西から連続ヒット、四球で無死満塁。
この試合最大の山場だ。
投手は3人目金森。
代打憲史の打球は、高く弾むぼてぼてのファーストゴロ。
ここで目を疑った人は多いのではないだろうか。
自分はファイターズのファースト高橋の送球が、ホームに投げられるのを信じられない目で追っていた。
そして、少しばかりの笑みと軽く握りしめかけた拳と。
それはほんの瞬間だった。

ボーンヘットかと思われたプレーは、適切なプレーだった。
サードランナーのセギノールの足が遅く、ホームはフォースアウト。
ざわめく球場。
各家庭のテレビの前で見ていた野球ファンもきっとなんらかの声を出したはずだ。
おそらく「うそだっ」というニュアンスを含む言葉を。

昨日の9回に続き、信じられない結果。
続く打者が打ち取られ、無死満塁が0点に抑えられるのをただぼーっと眺めることしか出来なかった。
まるで、札幌ドームに濃い霧がかかったような展開。
夢のような出来事だ。
これもファンの後押しだろうか、それとも勢いの差だろうか。

8回まで投げ切った岩隈の力投もむなしく、ファイターズが3-1で勝利、早くも日本シリーズに王手をかけた。
イーグルスにはすべてが今一つ足りなかった。
まるで彼女が初めて料理本を見ながら作った味噌汁かスープのようだ。
食べれない事もないが、塩だろうか、だしだろうか、なにか足りない。
そんな思いでいっぱいのこの試合。

第1戦は中継ぎの弱さ。
第2戦は主砲の出来、あるいは打線のつながりが欠けていた。
線ではなく、点になった攻撃。
そして、野村監督らしからぬ采配ミス。
8回のセギノールへ代走を出さなかったのは、厳しいかもしれないが采配ミスと言っていいのではないだろうか。
普通のランナーなら、明らかにセーフだった当たりである。
采配ミスとまではいかないかもしれないが、選手任せの消極的な采配だと言えよう。
チームとして、なにかちぐはぐさを感じた第2戦。
これもすべて、第1戦の衝撃がまだ残っているのだろうか。
止められた勢いの残骸は、これほどもろいものなのか。

ファイターズには余裕が感じられた。
内容を見ると、そんなに完璧な内容ではない。
第1戦と同じように、中継ぎの不安定さが感じられたこの試合。
だが、それも致命傷にならないのは、チームの総合力を信じているからではないだろうか。
イーグルスが1つの敗北で吹き飛んでしまったものが、ファイターズにはある。
もちろん、勝敗の差で余裕があるのも大きいだろう。
だが、それだけではないような気がする。
この2戦、無形の力の計り知れない大きさを感じる。

イーグルスは、打線のつながり、エースの力、主砲の力、すべてを止められた上での敗戦となる。
そして、星勘定の上でも崖っぷちに追い込まれた。
何一つ明るい兆しが感じられないかもしれない。
だが、試合内容でそこまで圧倒されているわけではない。
2連勝されたファイターズに付け込む隙はある。
チャンスを作れてないわけではない。

正直、これをひっくり返すには並大抵ではない。
なにかとてつもないことがなければ苦しいとは思うが、第3戦の先発は田中だ。
高校時の地元である北海道で、快刀乱麻(ノーヒットとまでいかなくても1安打完封など)の投球をすれば、もう一度チーム全体が自分たちの力を信じるきっかけにもなる。
幸い、何かを持っている田中の先発というのがまだ一縷のツキを感じる。

待ちに待った北日本対決。
3戦のみで終わってしまうのは忍びない。
冬の訪れはまだ先でいい。
熱戦続きだったこの2戦、まだまだ野球の醍醐味を味わいたいものだ。
まずは1戦ずつ、それが週末への楽しみにもつながる。
第3戦も熱戦を期待したい。

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2009年10月21日

かすむ1勝、1勝以上の価値あるもの(パ・リーグCS第1戦)

完璧なはずだった。
2連勝、ほどよい打線のつながり、ソフトバンクとの戦いで得た自信をそのまま活かし、9回までは完璧なはずだった。
これで坂道を転がるように、さらに勢いがつくと。
イーグルスファンは思っていた。
圧倒的多数の白のユニフォームの中、一角だけ目立つえんじ色のユニフォームを着ながら「来たかいがあった」と。

信じていた。
5点差つこうが、9回にダメ押しの得点をとられても。
先発や中継ぎが勢いを抑えることが出来なくても、うちの打線のつながりはそれ以上だと信じていた。
ファイターズファンは願っていた。
超満員で埋まった球場は、数万人の頭の中はひとつのシナリオが等しく書かれていた。
そしてそれは実現した。
逆転サヨナラ満塁ホームラン。
白の津波が、声の地鳴りが球場をうねる。
人は喜びが頂点に達すると、真っすぐ歩けなくなるようだ。
とんでもないことを起こした張本人、スレッジはかにのように横向きにスキップしてダイアモンドを一周した。
それが観客に表情をお披露目しているかのように。。。
こんな第1戦はあっただろうか。
信じていたもの、願っていたもので幸不幸は分かれてしまったが、それでも生涯に残るような試合を見たのは共通している。

間隔が開いたファイターズだったが、1回に固さの見えるイーグルス先発の永井から選手点を奪う。
だが、ほどよい試合間隔で臨めるイーグルスもすかさず次の回、同点に追いつく。
同点の4回、追い込みながら、ファイターズの武田はセギノールに死球を与える。
左ひじに当たり痛がるセギノール。
だが、痛みをこらえ1塁に向かうセギノールに自然と拍手が起こる。
いい雰囲気だ。
CS4打数3安打、この試合もすでに1本打っている中島が、センターオーバーの2塁打を放つ。
センターの肩がいいとは言え、サードコーチャーはストップさせる。
無理はさせない、焦りがない。
つながりを、チーム力を信じているからだ。
1死1、2塁。
下位打線の中心と言える草野が初球のストレートを完璧に捉え、センター最深部への犠牲フライ。
そして続くは、ごたごたがあった張本人のリンデン。
このリンデンはシーズン中、武田に対して2打数0安打の2三振。
追い込まれるまで、外のスライダーに全くタイミングが合ってなかった。
だが、追い込んでからのスライダーがかすかに内に入った。
捉えた当たりはバットの先端、センター前にポトリと落ちる。
この回2点を追加したイーグルス。
選手起用がばっちり当たる。
そして、選手達のセンター中心に返すという意識が徹底している。
この試合もいけると感じる瞬間。

6回裏、この人が打つと盛り上がる。
1死後、稲葉が右中間へ2塁打を放つ。
稲葉ジャンプといい、4回のセギノールの拍手といい、頂点を決めるにふさわしい球場であり、ファンでもある。
まさに野球冥利に尽きる。
ここからが圧巻だ。
4番高橋が追い込まれながらも粘り、四球をもぎ取る。
1死1、2塁。
自分はいろいろな応援を見てきたが、この日のこの回、スレッジへの応援ほどすごいものを見たことがない。
イーグルスに肩入れしてみていながら、この応援でプレー出来るファイターズの選手達は強いはずだと思った。
札幌ドームにも入ったことが無いし、普段あまり見る機会がないからかもしれない。
もし毎回こんな応援なら、プロ野球のホームアドバンテージに対する考え方を変えなければならない。
それほどすごかった。

説明が難しいが、応援が2段階なのだ。
古くさくあるが、広島の前田智の応援を思い出してもらえればよい。
多分、その2段階が男の応援、女の応援と分かれているのだろう。
いつも聞いている野太い低い声、そのあとに高い音程での応援。
これは今までに聞いたことのない応援で、非常に耳に残る。
何をいまさら…という人もいるだろう。
出無精な野球ファンだと責める声もあろうがお許しを。
驚いたのが、男・女に分かれるほどファン層がしっかりしているということである。
女性ファンが多いこと、それがミーハーではなく野球を通していることがすごい。
地域に根差した姿がそんなところにまで感じられて、ファイターズの強さの源が表れているようにも感じて、鳥肌が立った。
(ひょっとすると応援のスタイルは間違っているかもしれない。。。)
最近目立ちがちなゴルフ界でのマナーの悪さが、ここではありえない。

だが、永井も精神力が強い。
この場面カーブを有効的に使い、なんとか無失点に切り抜ける。
さすが、岩隈、田中と並ぶ3本柱だ。
イーグルスの強さはこの投手力だけでなく、流れをつかむことにたけている点だ。
点を取られたら取り返す、ピンチの後にチャンスあり。
6回裏のピンチを乗り越え、7回表チャンスを作る。
ヒット、2塁打と続き(ここでもコーチャーは無理をしない)、1死2、3塁。
2死となったところで、3番鉄平を敬遠し、満塁策で山崎と勝負を選ぶ。
試合を決める場面。
0-2からのストレート、狙っていた山崎の打球はレフトに上がる。
レフト森本はフェンスにはりつきジャンプする。
高く上がった打球、しずまる球場。
タイミング良くジャンプした森本のグローブに打球は入らず、走者一掃の3点タイムリー二塁打。
主砲のタイムリー、賭けに勝ったイーグルス。
これ以上何を求めるだろうか。

北日本以南で観戦しているファンが想像するより、ずっと寒い北海道。
そして、試合間隔が空いたファイターズはエンジンのかかりが遅かったようだ。
そのエンジンがいよいよ動き出したのは8回からだった。
1点をとり、先発の永井を引きずり下ろす。
イーグルスは小刻みに投手を交代するが、なかなか勢いを止めることが出来ず、ファイターズはこの回4点を奪う。
これで2点差だ。

だが、これで焦るイーグルスではない。
大人の、プロの集団と成長したイーグルス。
点を取られて黙っていない。
先頭打者がヒットで出る。
2死2塁で、打席は鉄平。
鉄平は左腕林の投げたスローカーブを完璧に捉え、ライトスタンドへの2ランホームラン。
本当にうまいバッティングだ。
首位打者となったことが、敬遠をした理由を証明する一発。

球場の静けさは恐ろしいほどだった。
ポール際ではあったが、明らかにホームランとわかる当たり。
だが、あまりの鎮まりっぷりに、投げた林はファールと一瞬思ったほどだった。
なにが起こったか解らない。
そんな混乱が、球場のえんじ色を着たユニフォームのファン以外を襲っていた。
これで再び4点差。

イーグルスは守護神福盛を送る。
ここからは、まさに夢のようだ。
1死後、3連続ヒット、追い込みながら4番高橋は粘り、四球を選ぶ。
満塁で、スレッジの登場。
後はご存じの通り。
外角ストレートを完璧にとらえ、打球はファンの夢を乗せてレフトスタンドにぐんぐん伸びていき、飛び込んだ。

ファイターズはアドバンテージがある状態とはいえ、それは静止したスタート状態と言える。
一方、後ろの位置からスタートするイーグルスは、そのスタートラインまでは助走をつけてスタートを切る状態だと言っていいだろう。
例えるなら、陸上のバトンを渡すような状況だろうか。
目印となるラインに着たら、次走者はスタートを切る。
先にスタートしたとはいえ、勢いがついているから追いつかれてしまう。

そういった有利な点はあったにしても、イーグルスはアドバンテージがあるファイターズを第1戦で破ることが重要だった。
現に試合中、いや9回表までは理想的な展開で、助走をつけた部分をうまく活かしていた。
ただ、誤算だったのはファイターズがスタートしてからの勢いが想像以上に速かったことだ。
目測を誤っても仕方がない。
シーズン中ならあり得ないこと、CSシリーズだからこそ起こりえたことだと思う。
ファンの夢が、期待があれほど一致しなければかなわない現実。
それがかないやすい場が、CSシリーズであることは、MLBのプレイオフでも実証されている。
だから、シーズンを勝ち抜いたものだけが参加できる夢の舞台なのだろう。

現実に戻って話を進めよう。
この1敗はイーグルスにとって、非常に痛い1敗だ。
この試合で勝てなかったら、どの試合を勝てるというのだ。
CS第1ステージでは目立たなかったが、やはり中継ぎ以降に不安が残ることがもろに露呈した展開となってしまった。
懸念していたこと。
圧倒的な先発の力で弱点は覆っていたが、表に出るとこれほどはっきりと出てしまうとは。。。
これでファイターズは、先発さえ下ろしてしまえば(つまり岩隈、田中、今日投げた永井など)という希望を再確認できた。
試合中あきらめることは無くなってしまったのだ。
もちろん、どんな点差でもあきらめる選手はいないだろうが、ふと心の中で思うことはあろう。
ヤンキースのリベラのように、圧倒的な存在感をもっているリリーフならば、沢山の打者にそう思わせることができる。
ファイターズにとって、この自信は1勝以上の価値がある。
確信のない自信こそ、ひょっとすると素晴らしい武器となりうる。

そしてイーグルスにとっては、アドバンテージ分も含めて、ダメージが残る敗戦となってしまった。
このシリーズは休息日がない。
気持ちの切り替えは難しいと思うが、なんとか切り替えて粘り強く戦ってほしい。
山崎がロッカールームでこう鼓舞したそうだ。
「暗くなるな。ダルビッシュに負けて0勝2敗だと思えばいいじゃないか。切り替えてやろう」
選手全員がこういった気持ちで開き直れれば、五分以上に戦えた第1戦同様、ずるずると負けることはあるまい。

見ごたえのあった、そして夢にも出そうな試合展開だった。
札幌を中心に、上着の要らないほどの熱気が伝わってきた第1戦。
西高東低というと冬型の気圧配置だが、野球ファンにとっては札幌に高気圧が居続ける。
願わくば、長く長く第6戦までみたいところだ。
2戦目以降も楽しみにしたい。

posted by ballgame |23:55 | プロ野球 | コメント(6) | トラックバック(0)
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2009年10月20日

北日本が熱帯となる日々(パリーグCS第2ステージ)

第1戦、11-4、第2戦、4-1。
CS第1ステージ、仙台で行われた決戦は、楽天イーグルスが強敵福岡ソフトバンクを2連勝で破った。
自分は第1戦しか観戦することが出来なかったが、その試合はド派手な立ちあがりだった。
結局あの初回の攻撃で、一気に押し切ることができたという気がする。
杉内を打ち砕いた初回の2本の本塁打。
すべて高めのボール球を運んだ攻撃には、「やれる!」と誰もが胸を躍らせたはずだ。
思わず立ちあがっていた自分がいる。
先発は岩隈。
3回の追加点。
突然の乱調にどきっとしたが、駄目押しもきっちり、終わってみれば快勝だった。

ダイジェストでしか見ることのできなかった第2戦も、点差は少ないものの田中の安定したピッチングが光る内容だったのだろう。
大差勝ち、安定勝ち。
監督の采配がいらない試合だったともいえる。
以前書かせて頂いたブログで、監督解任騒動の影響を大きく懸念し、悲観もした自分は、昔の中国で、杞の国に住んでいた男より心配性だったようだ。

結果的に楽天イーグルスの選手達は、上手く野村監督からの独立を果たした。
大人の集団、プロの集団だと言える。
自分の役割を果たすことでチームへの勝利をもたらす。
監督に依存するわけではなく、自らの力を発揮し、勝利すること。
「野村監督のために」という浪花節的な気持ちはあるだろうが、それを内に隠し、良い意味での緊張がある。
選手達が気負っていない、入れ込んでいない。
感謝の気持ちを、うまく実力発揮で表現している。
東北人は口数が少なく、有言実行すると言われることが多い。
野村監督の気質にもあっているし、楽天の選手達がそうなっているのかもしれない。
地域に密着しているチームの証でもある。

2連勝の内容もいい、これは強い。
ひょっとして一皮むけたのかもしれない。
野村監督自身もこうコメントしている。
「100点満点ではないけど、70点から80点。この2戦は選手個々の成長を感じた」
そして、一皮むけた皮膚はさらに厚くなり、これから寒くなる季節にも負けない力を内面に隠し持っている。
この成長、この結果はファンの後押しも大きい。
野村監督の解任騒動は、逆に福岡ソフトバンクに遠慮させたのかもしれない。

ただし今度は北海道で、CS第2ステージは行われる。
今では日本一かもと思わせる球場の盛り上がりを感じる北海道日本ハムのファンだ。
楽天ファンが海を大挙して渡れば、ひょっとして…と思うが、圧倒的ホームの力もあり、非常に強敵だ。
1勝分のアドバンテージもあり、難しい戦いになるのは間違いない。
ただ、パ・リーグの日本シリーズに出場するチームを決める戦いが、北海道と東北に拠を構えるチーム同士だということを嬉しく感じる。
まるで夏の甲子園で、(南・北)北海道代表対東北(6県のどこか)代表の決勝を見るようにわくわくしてしまうのは自分だけではないだろう。
日本の中心からはるか離れた地が、野球ファンにとってこの1週間はまさに首都となる。

岩隈、田中、永井と先発投手陣3人を要する楽天は力強い。
特に短期決戦では大きなウェイトを占める。
ただ、間がない本当の6連戦となるこの戦いは、この3人だけでは勝ち抜けない。
結局総合力の戦いになる。

日ハムはダルビッシュが完全な形で復帰してほしかったが、残念ながら間に合わないようだ。
だが、ダルビッシュを欠いていても、シーズンで1位をとったチームだ。
総合力はピカ一。
今度は野村監督の手腕が試されるだろう。
第1ステージは、野村監督が喜ぶ様しか見ていない。
山崎との抱擁が一番の大仕事という珍しい状況。
失礼な言い方だが、普段の野村監督の采配から比べると、ほとんど何もやっていないのではないか。
ただ、策がいらないということは強者の証でもある。
第2ステージは果たしてどうだろうか。
山崎の2戦連続本塁打も大きい。
投打の主役が力を出しつくし、てっぺんをとってもらいたい。

岩隈の言葉が、この週末耳に残ったままだ。
「てっぺん獲るのは本気ですから!」
照れ笑いも、ほほを赤らめることも、言わされた感もない。
自分のやるべきことに自信を持った人に共通する、かすかな笑みを含んだ落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
比べるのは野暮な話だが、彼の言葉はかのサッカー日本代表監督の言葉より重い。
この言葉を聞き、奮い立つファンは多かったはずだ。
夢を見てもいいですね?
いや、夢をかなえるために、第1ステージ以上に応援の声を、祈りを、テレビの前からでも、遠く離れた地からもあげていきたい。
きっと届く、必ず届く。
てっぺんに届くまで。

海の向こうでも、ア・リーグ、ナ・リーグともサヨナラで試合が決まるという白熱した試合が続いている。
日本のプロ野球も負けていないはずだ。
第2ステージは明日から。
北日本は明日から6日間、日本で一番熱くなる。

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posted by ballgame |23:53 | プロ野球 | コメント(5) | トラックバック(0)
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