2009年04月18日
記録より大切なもの(イチロー日本人最多安打達成)
桜が散り、田んぼには水が引かれる。 自然界にあるすべての色が濃くなり、生きるということを強く感じるこの季節。 今週始めには4月も中旬に入ったというのに、なにかしっくりこない。 季節だけでなく、野球好きにはたまらないプロ野球開幕を迎えたにもかかわらず。 楽天の開幕からの連勝や、金本の打棒大爆発など見所がいっぱいなのに。 5月病?まだ早い。 WBCの余韻?それもあるだろうが、すでに1ヶ月ほども前の話。 WBCに出場した日本人選手のように、ピークを春先に持ってきたために、疲労や怪我とはいわないが、自然と燃え尽きて、調子が下降気味なのだろうか。 中古で買った本が面白かったが、どうもどこかのページが抜けているような、このもやもや感。 窓を閉めたはずなのに、どこかから風が入ってくるようなそんな変な違和感があった。 そう、それは一昨日解決した。 屈伸をしてまっさらな左打席に入る。 無精ひげ、細い目をさらに細め、投手を射抜くように鋭く光り、出した右手はさながらスコープのようにバットを掲げる。 イチローがいなかったからだ。 いつも当たり前のように、ほぼ毎試合出場していたイチロー。 その彼が今年初となる試合は一昨日だった。 ケーブルテレビなどに入っていなければ、プロ野球よりもむしろ見ることが多いであろうMLB。 生活の一部となったMLB観戦で、毎試合見ることが当たり前だったイチローがいないとなると、こうした違和感を感じた方も多かったのではないだろうか。 当たり前がない毎日。 例えば、朝起きていつも聞こえてくるまな板の音、味噌汁のにおいなど、あまりに当然すぎて、すごさも感じない。 しかし、いざそれがなくなったとすると、どうだろう。 母親の病気かもしれない。 一人暮らしをはじめたのかもしれない。 当たり前のことを当たり前にやること。 毎日出来ることを続けること。 そういったことは、なくして初めて分かるものかもしれない。 MLBでは珍しく、ほぼ毎日試合に出続け、結果を残すイチロー。 今回が初となるDL入りが、逆にイチローのすごさを感じさせる。 それはひょっとすると、年間安打数より、通算安打数よりも称えるべきことなのだろう。
前置きが長くなってしまった。 さて、張本の日本人最多安打まであと2本としての今シーズン。 イチローの開幕は遅れたが、出場した最初の試合で一気に並んだ。 それも満塁本塁打というこれ以上ない結果でだ。 その余韻も残る今日の試合、イチローが記録更新できないと思う人はおそらくいなかったであろう。 第2打席、0-2からのストレートをライト前へのヒット。 あっさりといっていいほどの記録更新だ。 イチローの更新した記録は素晴らしいものだ。 しかし、マスコミが大げさに褒め称えるほど、本人の中でこの記録は大きな割合を占めていないと感じるのだ。 例えば、プロ野球の名選手が目指すであろう200勝、2000本安打というような、それを達成しなければならないという目標として、イチローはとらえていないはずである。 日々のイチローがイチローとしてのプレーをし続けていく上での課程、そこで達成した記録が、日本人最多安打としての大記録だったというだけのことだ。 「だけのこと」とは失礼に聞こえるかもしれない。 素晴らしい記録であることは間違いないし、けなすつもりもない。 マスコミが調べ上げたような記録、言われて意識するような記録といったら大げさかもしれないが、「達成すべきこと」というよりも「道の途中で見れる名勝地を教えられた」というほうがしっくりくる。 イチローのコメントは生で見ることが出来なかったが、その中にも感じられる。 トップに立ったと聞かれたイチローのコメントである。 「単純に、張本さんが見ていた景色はどんなものなのか。頂の景色がどんなものなのか、見てみたかった。それがきょう、あのヒットでそこに上ったんですけど、まあ、すごく晴れやかな感じで、いい景色でしたね」 イチローの中では、ゴールではなく、途中の風景。 そして、マスコミなどの祝福はその地点が山の頂上だと感じていることの違いからくるのであろう。 だからこそ、イチローは去年に終わらせたかった記録であろうし、喜びの中にも、冷静な部分が多く残っているのであろう。 決して記録達成をけなしているわけではない。 素晴らしい記録であり、褒め称えるべき記録である。 しかし、それよりもイチローの復帰について心配だったことがある。 それは、個人成績よりもマリナーズとしてのチーム成績だ。 イチローが欠場していた8試合、マリナーズは6勝2敗と好調だ。 監督が代わり、グリフィーも戻ってきた。 新たなチームとしてのスタートにチームを引っ張るイチローがいないにもかかわらず好調のチーム。 そこにイチローが入ってどうなるかと、心配だったが、復帰2戦では1勝1敗。 今後数試合見ていかなければ分からないが、これが杞憂に終わるよう願っている。 WBCでもコメントしていたが、イチローはチームリーダーとしての役割に否定的である。 「それぞれが、向上心を持って、何かを得ようとする気持ちがあれば、そういった形は全くいらない。むしろ、ない方がいい」 といった内容を述べている。 何よりも一人一人の意識が大切だということを、口にしている。 ここ数年のチームの不振の原因にも取られかねない大きな力を持つイチロー。 背中で引っ張るようなタイプであるイチローとチーム内の選手との不協和音を記事で見た方も多いであろう。 選手すべてに高いレベルを求めるイチロー。 ぐいぐい引っ張っていって欲しい他の(一部の)選手。 「人は見たいと思う現実しか見ない」 とは、ローマ帝国のカエサルの言葉。 冷静に高所から俯瞰するような見方が出来る人は少ないともいえよう。 そうでなくても、自分の考え以外は受け入れなくなってしまうこともよくある。 今年は違う。 不幸にもイチローは開幕から8試合欠場した。 その間、ダグアウトにイチローのユニホームを掲げようと言い出したのは、スウィーニーとドン・ワカマツ監督。 グリフィーもすぐに同意したそうだ。 一人ひとりの意識が上がってきたと同時に、チームとしてのまとまりを感じる。 チームがイチローを必要としているのは例年以上である。 日本からの加熱報道が収まった今、イチローがいない間、チームが勝ち進んでいるこれから、イチローには個人記録は勿論、そのチームの必要性に応えなければならない。 イチローが唯一といっていい公言する目標として、年間200本安打がある。 過熱気味の日本の報道が一段落し、またイチローは自分の精一杯のプレーを、できることをやるという日々を続けていくのだろう。 そしてその先にある、MLB最多となる9年連続200本安打達成が見えてくるだろう。 これこそ「当たり前のことをやる」というイチローへの最大の賛辞となる記録である。 しかし、それ以上に、久しぶりにプレイオフに出る、マリナーズを見てみたい。 WBCとは違う興奮に包まれて、とんでもないプレーをするイチローが見てみたい。 期待が高ければ、ハードルが上がるほど、せせら笑うように壁を越えていくイチロー。 期待通りで期待以上の期待外れ。 そんなイチローをマリナーズとして応援したいファンは少なくないはずだ。 野球ファンはもっと欲張っていいはずだ。 イチローが復帰して、野球ファンにはいつもどおりの生き生きとした季節がやってきた。 (松坂、黒田、城島の怪我は残念だが・・・) 季節はめぐっていく、四季は移り変わる。 これからどんどんすごしやすくなるが、毎年訪れる季節だからといわず、その当たり前の日々を、感受性豊かに改めて感じるのも一興である。 イチローの復活を喜んだように。。。 MLBに限らず、プロ野球もますます面白くなる幸せな季節がやってきた。 記録達成おめでとう、イチロー! *長文を最後までお付き合いいただきありがとうございます。
posted by ballgame |00:36 |
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