2009年11月13日

もっともな言い分(千代大海の発言)

15日から今年最後となる大相撲九州場所が始まる。
先場所は朝青龍の復活優勝で盛り上がったが、果たして今場所はどういう場所になるだろうか。
連続優勝を目指す東の横綱朝青龍に、安定感抜群の白鵬が東の横綱の地位の奪取を目指す。
最近影が薄くなってきた日馬富士に、力強さが戻りつつある琴欧州。
最多出場を目指す魁皇もいれば、若手の中から把瑠都や鶴竜の成長も楽しみだ。
まだ横綱には勝利していないが、大関陣とは互角以上の戦いを見せる把瑠都。
把瑠都の勝利者インタビューでの、意外にシャイな口調がまたほほえましく感じる。

今年の締めくくりとして、見どころが沢山ある九州場所だが、大関千代大海が自分の進退について明言したという記事を見た。
内容は、例え今場所負け越しても引退はしない。
来場所の大関復帰を目指して、相撲を取り続けるということだ。
場所前に発表するということは、あまり体調が良くないのだろう。
自信の無さの表れともいえる。

場所前の異例な発表をせざるを得なくさせる一番の原因は、外野の声だろう。
先場所では、横綱審議委員会でも千代大海について、引退勧告も…という話も出たほどだ。
最近とやかく言われる横綱審議委員会、賛否両論あるだろうが、この件に関しては完全に余計なお世話だ。
精一杯戦っている力士の引退を決める権利がどこにあろうか。
それは、大相撲ファンであっても同じことだと思う。

千代大海自身も自分の引退が近いのは、はっきりと感じてきているだろう。
だが、その去り際は自分が決めるべきである。
大関にも関わらずぎりぎりの勝ち越ししかできない、そして勝ち越し⇔負け越しの繰り返しが見苦しい、という声もあるだろう。
確かに大関としては不甲斐ないと感じる。
だからといって、「引退すべきだ」とは真剣に勝負している力士に対して失礼というほかない。
相撲が好きでここまで一番一番を戦ってきただろう千代大海。
その力が衰えていても、昔のような前に出るつっぱりが出なくても、引き落としが目立っていてもいいではないか。
今時点の力を出し切って、タイミングを見計らう引き落としは、よくいえば職人芸とも言えるだろう。

無気力な相撲をしているのなら、断固引退すべきとの声を上げるべきだ。
千代大海は戦っているではないか。
見苦しいから、もうそんな弱い姿は見たくないから、やめてくれ。
大関という地位にいるからこそ、そのような批判はある程度受け入れなければならないだろう。
だが、引き際に関しては他人に言われたからとは言え、それに従うことはない。
自らの内なる声に従って、自分で決めるべきだ。

もちろん、最終的には親方や家族との相談で、来るべき時が来たら決めることだろう。
だが、周りの声で引退しては、きっと自分が後悔する。
千代大海の親方である九重親方は「いろいろな見方があるが、頑張っている姿を見てもらいたい」と語っている。
九重親方=千代の富士は、まだまだ出来そうだったにも関わらず、引退を決意したではないか。
この場合と逆の立場だが、結局最後は自分の決断ということだ。

魁皇にも同じことが言える。
心行くまで大好きな相撲を取り続けてほしい。
以前の力が無くても、精一杯戦っている姿は決してカッコ悪くはない。
自分の期待と違うから引退しろとは、ファンやマスコミのエゴが強すぎるように思う。
もちろんこれも極論であり、個人のエゴともいえよう。
だが個人的には、大関から陥落しても、雅山や出島のように自分の気力が続くまで相撲を取り続けてほしいと思う。

この発言を受けて、朝青龍はこうコメントしている。
「まだ場所が始まってもいないのに、弱気な発言してどうするの。土俵に集中してほしい」
朝青龍自身もマスコミや横綱審議委員会などから、親の敵のように言われている。
一時期は、それは千代大海よりも強く引退すべき、という声も上がっていただろう。
それを跳ねのけてきた朝青龍だからこそ、心からの発言といえる。
たしかに、マナーやその他の面で朝青龍には「?」と首をひねることがある。
だが、外野の強烈なブーイングの中、優勝し復活する朝青龍こそ、今の相撲界を支えている第一人者だ。
それだけに、その言葉は強く重い。
千代大海の気力を振り絞る言葉となるだろうか。

今場所は当然、朝青龍と白鵬の優勝争いになるだろう。
注目は日馬富士、琴欧州、把瑠都がどれだけ場所をもりあげることができるか。
本割、決定戦で朝青龍の連続優勝に期待したい。
もちろん、千代大海にも注目だ。
とにかく、この九州場所、面白くないわけがない。
今年最後の大相撲、15日間じっくりみたい。

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2009年09月29日

「ヒンカク」とは(朝青龍の優勝で考える)

先週日曜日まで行われていた大相撲秋場所。
千秋楽は横綱対決で大いに盛り上がった。
万全ではない取り口で、なんとか1敗にとどまっていた白鵬が、本割で見事な立会いを決める。
腰高に立った朝青龍を一気に寄り切り、とどめとばかり左からの上手投げで土俵に叩きつける。
1敗で並び、優勝決定戦で2度目の対決。
今度は朝青龍の立会いが素晴らしい。
両前みつをがっちり取って、白鵬を破った。
敗れたとはいえ、体制不利になりながら、容易に負けない白鵬の強さも目立つ内容。
お互い力を認めているもの同士だからだろうか、立会いにけれんみが無く、仕切りから溜めていた気合を100%ぶつけた熱戦に、思わずこぶしを握っていた。
熱のこもった勝負を2番を見れたことがうれしい。

朝青龍はこれで、北の湖に並んで24回目の優勝。
一時期は、大鵬の32回も抜くのではないかと思っていたが、自身の怪我、白鵬の成長でその記録に追いつくには容易ではなくなってきた。
ただ、場所前の様子から今場所の優勝候補筆頭とは、ファンでさえ言えなかった状態からの見事な復活優勝は、もっと讃えてもいい。
満身創痍の中、優勝を勝ち取ったのは、朝青龍の心の強さが図抜けているということだろう。
一番の武器は立会いの鋭さでもなく、動きの速さでもなく、追随を許さない負けず嫌いなところ。
怪我で体が動かなくなるということではなく、その気持ちが無くなった時こそ、引退の時期になるのだろう。
寂しいことを言ってしまった。
まだ30歳に達していない朝青龍だ。
大横綱として、まだまだ活躍を見続けたいものである。

大相撲で大きな記事といえば、その優勝よりもある意味注目されたのは、朝青龍のガッツポーズであろう。
横綱審議委員会で、早速話題に挙がったことは、みなさんもご存じのとおり。
ちなみに横綱審議委員会とは、横綱の権威を保つために、相撲に造詣が深い有識者によって横綱を推薦してもらおうということで、1950年に発足したそうだ。
古くから相撲を愛好している人たちばかりなので、横綱昇進のみならず様々な提言や苦言も呈し、相撲協会のご意見番的役割も担っている。
最近は、横綱を推薦するというよりも、別な面で目立っているところがある。
今場所の話題では、不振の千代大海に関しての意見でも注目されている。

その横綱審議委員会で出た、気になるコメントがあるので、紹介したい。
「心が充実せず、技も磨かれず、けいこ不足で体がぷよぷよ。優勝はまぐれだ。心技体を鍛えて出直していらっしゃい」
ある文脈の一部かもしれないが、こういった発言があったのは間違いないようだ。
これを聞いて、大きく首をひねった。

この中にある「優勝はまぐれ」というのであれば、他の力士に対する力の差はどう感じるのだろうか。
その発言は、ここ数十場所も優勝していない日本人力士を先頭に、他の力士をも侮辱しているように感じる。
侮辱は大げさな表現だが、他の力士がだらしないということにつながるとは思わないのだろうか。
まぐれを許した対戦相手としてだ。
他の力士の「技・体」はどうなのだろう。
ある一点に集中しすぎると、周りが見えなくなる。
そんな捉え方もできる言葉だ。
第一、まぐれで優勝できるほど相撲は甘くはないだろう。

言葉尻を捉えて、批判するつもりはない。
愛情こもってこその、厳しい表現かもしれない。
個人の好みがあるから、意見はさまざまだろうし、相撲界全体を考えて、相撲界をよくしたい思いからの言葉であろう。
しかし、せめて
「優勝は立派。さらなる高みを目指して、稽古を積んだり、ガッツポーズを控えたりしてほしい」
などと言えないものだろうか。
「ヒンカク」とは何だろう。
横綱の品格というが、他の力士の品格は、委員会に参加されている品格はと、少し考えさせられた発言だった。

このガッツポーズについて、横綱審議委員会の中でも意見が分かれたそうだが、スポーツとしては自然な気持ち。
特に朝青龍の個人的な資質からすれば、嬉しさを表す(当然の)行為だったのだろう。
ただ、国技としての相撲という固い見方をすれば、礼に始まり礼に終わるということもある。
やはり、全力を尽くした敗者をけなすことが無く、喜びは内にとどめるということもわかる。
それが「心」というところなのだろう。

個人的には、勝負が決まった後の小さなガッツポーズはよしとしても、やはり土俵を降りる際の大きなガッツポーズはいただけないかなと思う。
実力と、それ以外の部分はしっかり分けてみてもらいたいなぁと思ってしまう。
そして、せっかくの優勝がもったいなぁとも。
観る側にとっても、幕内の取組を熱心に追う相撲ファンのお父さんも、夕食の支度を少し止めて横綱戦だけ見ているお母さんも、意見が分かれるところではないだろうか。

朝青龍ファンでもある自分は、この復活劇は素直に喜びたい。
あとは、横綱らしくとまではいかないし、品性公正とまではいわないまでも、稽古をしっかりして、息の長い相撲人生を送ってほしいと思う。
悪意なく見れば、成績的には立派な、10年に一度の大横綱である。
こういった記事を見ると、強すぎた千代の富士が嫌いだった子供時代を思い出す。
今考えると、その強さを見れたことにうれしさしか感じない。
飛び抜けた者、そして性格からもどうしても目立ってしまうところもあるのだろう。
相撲界ではとびぬけて、だれもかれも気になる存在である。

これからも白鵬と2人で、対照的な横綱として、この千秋楽の火の出るような大一番を何度も何度も観てみたい。
ちょっとの敗者への礼儀と、とどまることのない闘争心をもって。
第一、朝青龍がいないと相撲もつまらない。
早いもので、今年最後の九州場所は11月。
2か月先が楽しみである。

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2009年07月28日

百花繚乱の中で…(盛り上がった名古屋場所)

関東では梅雨明け宣言をしたが、それでもまだ全国的にぐずぐずな天気が続いている。
梅雨といえば、紫陽花がきれいに生え、じめっとした気持ちに花を咲かせる。
からっとした夏がくれば…南国に咲くような色とりどりの花が待っている。

そんなイメージに負けなかったのが、大相撲名古屋場所だ。
大相撲名古屋場所は、白鵬が千秋楽で朝青龍を下手投げで破り、14勝1敗で11度目の優勝を飾った。
今年に入り、白鵬は安定した成績を収めているが、優勝はまだ2度目。
高次元で安定した成績の割には、優勝が少なく感じる。
それは期待の裏返しだろうか、それともあまりの安定度からくる錯覚だろうか。
白鵬はより下半身が安定し、盤石の態勢を築きつつある。
本人の目標は双葉山と言っているだけあり、その可能性は十分ある。
年齢も24歳と若い中、あの落ち着きは恐ろしくもある。

しかし、その「木鶏」となるべく精進している白鵬の落ち着きぶりが目立つのは、やはりもう一人の横綱、朝青龍の存在があるからだ。
白鵬が「水」なら、朝青龍は「火」。
白鵬が「山」なら、朝青龍は「風」。
横綱の模範とも思える白鵬が「王道」ならば、朝青龍は自ら険しい道を切り開く「覇道」だ。
もちろん、その険しい道を歩いているのは、本人の激しすぎる性格ゆえの、周りとの軋轢のせいでもある。
それにしても、最近の朝青龍バッシングは、あまりにひどすぎると思うのだが。。。

朝青龍もまだ28歳だ。
最近のけいこ不足さえなくなれば、まだまだ白鵬には譲らないような力を持っているはず。
今場所に限らず、最近の場所は、怪我のため激しいけいこができないせいもあろうが、過去の遺産、反射神経で相撲をとっているといってもいい。
それでいて、今年の初場所に優勝するのだから、力は全力士で随一と言えるのではないだろうか。
しっかり怪我を治す、そして本人のやる気が燃えるような何かがあればいいのだが。。。
朝青龍は周りから言われても、自分で気持ちが盛り上がらなければ、やる気が起きないだろう。
親方でも無理だ。
どうしても、善玉=白鵬、悪玉=朝青龍、としたほうが報道もしやすいのだろう。
しかし、人気はどうして朝青龍のファンだという声も少なくない。
感情を表にだす、稀勢の里や朝青龍のようなタイプは好き嫌いが分かれる。
憎たらしいなぁ、と思う時もあるが、こんなガキ大将みたいな力士もいなければ相撲は盛り上がらない。
もし引退してしまったらと思うと、何割楽しさがなくなってしまうだろう。
面白くなくなるでしょ?
ぜひ大鵬の32回の優勝記録とまではいかなくても、30回は行ってほしいと願っている。
現在23回、白鵬の成長があるので難しいかもしれないが。。。

今回、綱取りを狙った日馬富士の成績は残念だった。
現在強さを発揮している白鵬も、綱取りのチャンスを1度ならず逃している。
焦る必要はない。
しっかり地力をつける時だろう。
そして来年の今頃には、横綱としての日馬富士を見てみたい。

琴欧州の強さも光った。
前日のコラムにも書いたので詳しくは書かないが、もともと恵まれた体、力は大関にはとどまらない。
今場所見せたハートが本物なら…来場所、来来場所が楽しみになる。

こう書くと、上位が外国人ばかりだなぁ、と嘆く方がいるかもしれない。
案じることはないと思う。
日本人の活躍は確かに見たいが、これが今の大相撲なのだ。
想像してみてほしい。
白鵬、朝青龍、琴欧州、日馬富士がいなかったらと。
とてもつまらない場所になるだろう。
強いものが集まり、強いものがだれか決める戦い。
地震をも止めるという横綱には、やはりどの国も関係ない強者が座るべきだろう。
わざわざ日本まで来ていただいているのだ。
嬉しいことではないか。
地元の琴光喜も12勝を挙げた。
まさに戦国時代、百花繚乱ではないか。
場所が終わったばかりだが、もう続きが見たくなる大相撲。
今度は、どんな華が、どんな色が舞うのだろう。
楽しみだ。

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2009年07月27日

やさしさの奥に潜むもの(琴欧州の瞳)

大相撲名古屋場所、千秋楽。
琴欧州対日馬富士。
この対戦に負けると、結びの一番の前に白鵬の優勝が決まってしまう。
いつものじりじりするような、のんびりした琴欧州の立会い。
多少息は合わなかったが、勢いよくぶつかる日馬富士。
ぶつかった瞬間、琴欧州は左の前みつに指をかける。
つく日馬富士。
耐える琴欧州。
指がかかっただけの左の前みつをぐっと引きよせ、その瞬間勝負は決まった。
日馬富士は、引き寄せられ、体を入れ替えられ、後はあっさり寄り切られた。
琴欧州の完勝だ。
強い。

たまりで結びの一番を見上げる琴欧州。
これが、あの精神的にもろいといわれていた琴欧州だろうか。
親方に「横綱になりたいか」と問われ、「はい」と答えた琴欧州。
それだけで別人だとわかるエピソード。
いや、別人ではない。

停滞していたように感じたのは、琴欧州というグラスに水を入れている最中だったのだろう。
そのグラスは透明ではなく、中は見えない。
変化がないと思っていたのは、見かけだけで、その大きな体にあうだけの容量を埋めるのは時間がかかった。
やっとあふれだす水とともに、周りも彼の強さを感じた。
そして成長した姿に気づいた。

白鵬対朝青龍は、素早い巻き替えが続き、熱戦となったが、白鵬の下手投げが決まり、優勝決定戦とはならなかった。
下手投げで土俵下に転がった二人は、ちょうど琴欧州の左わきだった。
その時の琴欧州の目を忘れない。
あの優しそうな青い瞳の色は変わらない。
しかしその瞳の奥には、いた。
獣のように感じるなにか異質なものだ。
一瞬ではあるが、隣に転がっている朝青龍を見る目は、軽蔑さえ感じられる冷たい眼だった。
そこには、野生が確かに存在した。
見間違いだったらどんなにいいことか。
そう思わせるような瞬間だった。

悔しさを表情に表すわけではなく、あっさりと支度部屋に戻った琴欧州。
白鵬がどっしりと腰を下ろしてインタビューを受ける姿をテレビで見て「自分が代わりに座りたかった」と悔しさをにじませたそうだ。
婚約者のご当地ということで勝ちたかったところもあるだろう。
しかし、それより自分の力に自信があったからこその悔しさではないだろうか。
あの瞳の奥にいたもの、これが間違いでなければ…うまく飼い慣らせれば…来場所の優勝候補は琴欧州だろう。

左上手をがっちり引き、相手に何もさせないような力強い取り口をものにした今場所。
もともと大きな体、その力強さは大関にはおさまらない力を持っている。
そして、横綱への願望を口にしたこと、精神面の成長もうかがえる。
心技体の「体」だけだった印象が、「心」「技(左上手)」がやっと追い付いてきたように感じる。
そしてあの瞳。。。
やさしさの中に強さが潜む琴欧州。
今までにない落ち着きを感じたのは、一本芯の通ったやさしさになったからではないだろうか。
強くなろうと決断したからではないだろうか。

決定戦になっていたら…と思うと悔しいが、楽しみは来場所に取っておこう。
来場所の琴欧州から目が離せない。

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