2009年11月11日

狙って揃った3拍子(イチロー、ゴールドグラブ賞受賞)

今年のイチローのリズムも3拍子だった。
リズムは達成感とも言い変えられる。
毎年変わらず、それが9年続く。
変わらない確かな結果を出し続けることがどれほど大変か。
毎朝変わらず、湯気の出るいいにおいのする味噌汁や温かいご飯を出してくれる奥さんやお母さんの大変さがなかなか感じられないように、イチローのこの記録ももはや当たり前のものとなっている。
しかし、本当はとてつもなくすごいことであり、もっともっと讃えるべきことなのだ。
話がすこしそれてしまった。

MLBのゴールドグラブ賞(守備を讃える賞)が発表となり、イチローは9年連続で受賞した。
200本安打に続く、イチローが心から喜ぶ個人成績のように思う。
9年連続、つまりMLBに挑戦してからずっとゴールドグラブ賞を獲得しているということだ。
今年は単純なエラーも目立ったが、それでもランナー一塁でのライト前ヒットで、ランナーがサードへチャンレンジするのを阻止しているなど、記録に残らない貢献が大きいのだろう。
「エリア51」、結構お気に入りの言葉である。

野球人として、誰しもあこがれる走攻守3拍子揃ったプレーヤー。
守備に関しては唯一の賞、選考は監督やコーチである。
それにMLBは対象人数の多いこともあり、日本のように「?」と首をひねる人選も少ないのではないだろうか。
守備は守備の人としっかりと評価される。
そこが、この価値を高めている証にもなる。
(古くは常連のオジー・スミスなど…ずいぶん古い例えだが)
好き嫌いのはっきり分かれるイチロー評だが、監督やコーチ、そして選手達にはもはや「日本人としては」というくくりではなく、MLBの顔として、世界有数のプレイヤーとしてのイチローなのだと、改めてそのあこがれの選手となっていることが分かる。

自分も昔は外野を守っていたことがあるが、確かに内野より守備機会は少ない。
ひょっとすると1試合に1球くるかこないかということもある。
(軟式だったので余計にそうだ)
内野から外野にコンバートされ、最初はフライの感覚に戸惑ったが、なれてくればこれほど面白いポジションはないと個人的には思う。
(逆に草野球では、フェンスのない球場で延々ボールを追いかけることもあるが。。。)

対空時間の長いフライならば、追いついて見せる。
これぞ外野の見せどころと思って、よく追いかけたものだ。
打球から目を切り、一目散に走り、見当をつけて振り返る。
間を抜かせないプレーに味方投手はグラブを叩いて喜び、好打をキャッチされて相手打者は意気消沈する。
(日本ハムの外野守備でも感じたし、個人的にはイチロー、田口がいたオリックス時代が一番外野の守備が堅かった記憶がある)

同じく9年連続この賞を獲得しているハンターもそうだが、フライが上がった後の打球の追い方で守備の上手さがわかる。
安心して投手が投げれるかどうか、そして相手チームに打ちあげる打球では追いつかれてしまうという多少の恐怖感を与えることが出来るか、打球から目を切って追うことができるか。
打撃だけではなく、守備のわくわく感を感じさせてくれる選手は貴重である。
ダイビングキャッチをする選手が上手いわけではない。
イチローやハンター、日ハムの稲葉にも感じたが、守備位置から上手い。
そして、打球に追いつくスピードが速いからこそ上手さを感じないのだ。
打撃では3塁打がもっともエキサイティングだと言われているが、守備ではそれを阻止するようなプレー(背走してのキャッチ)は、見事な併殺プレーに負けないエキサイティングなプレーと言える。
気象士のように打球を予想し、数学者のように落下地点を予測し、ロケットのようにその地点で打球とドッキングする。
まさに奇跡のようなプレーは、野球の醍醐味がきゅっと詰まっている。
金を払っても見たいプレーであり、玄人好みといえるだろう。

そして、イチローといえば、レーザービーム。
ランナー2塁でライト前ヒット。
または、ランナー3塁でライトにフライが上がる。
マリナーズファンとしては、応援するチームのピンチにもかかわらず、なぜか胸がドキドキする。
それは、一直線に飛ぶ、まさにレーザーのように後を引くような返球が返ってくるから。
ランナーの足と球の競争、キャッチャーのブロック、興奮が止まらない。

イチローは毎年3つの目標を立てていると思う。
攻撃では唯一公言していた200本安打、それ以外ではオールスター出場とこのゴールドグラブ賞が目標であり、うれしくもあり、取って当たり前だと感じているものだろう。
目標は高く、それ以上にプロ意識の高いイチローはそれを9年間続けて実行し、達成してきた。
松井のプレイオフの活躍もそうだが、改めてこの9年を振り返ると、よりイチローを誇りに思い、鳥肌が立つ思いである。
松井は松井、イチローはイチローである。
それぞれの役割を果たしていることは変わらない。
そして、イチローであり続けることをやめないイチロー。
来年以降も、きっと走攻守とどの場面でも楽しませてくれることだろう。
野球って、どの場面も面白いんだよと体で表現するイチローが好きだ。
これほど魅せる選手はなかなかいない。

打撃を証明する年間200本安打、守備を証明するゴールドグラブ賞、そして人気を証明するオールスター出場。
または自らの力で手にする200本安打、監督やコーチに選ばれるゴールドグラブ賞、そしてファンに選ばれるオールスター出場とも言いかえられる。
走攻守ではないが、攻・守・人気の面を、自分自身・監督やコーチ(選手ももちろん)・ファンすべてに認められているイチロー。
それを9年間である。
1年でも、この1部門を達成することすらすごいことなのだ。
それを当たり前のように表現するイチローは、MLB選手の中で有数のコンプリート選手と言えるであろう。

イチロー自身はどうやってモチベーションを上げていくのだろう。
それは自分が一番の野球好きであり、自分自身に期待しているからだろう。
それを証明するために、日々の努力を大切にしている部分が大きい。
昨日より今日の自分が成長していて、野球も上手くなっている。
そんな期待や喜びがイチローを支えているに違いない。
もちろん高いプロ意識も欠かせないところである。

そんなイチローにも、欠けている物がある。
それは、今回のワールドシリーズを見た方はすぐピンとくるだろう。
そう、あの舞台に立つイチローである。
松井の活躍は、日本にいる野球ファンの胸を打ち、誇りを与えてくれた。
ワールドシリーズで、松井は一段高いステージに登ったのは間違いない。
それほど光り輝いていた。
(パレードで観た松井は、ハリウッド俳優もかくやという存在感だった)
イチローが今年のWBCの経験を基に今シーズン、大きく成長したのと同じだ。
来年の今頃、プレイオフで、ワールドシリーズでの走攻守揃った活躍を見てみたい。
そして、それを証明する時期にも来ているし、手に入れてない大きなものはあの指輪以外にはなかろう。
あの舞台に立つことで、イチローはまた一段レベルアップするはずだ。
来年こそ、3拍子から4拍子への変化を期待したい。
おめでとう、イチロー!

posted by ballgame |23:50 | MLB | コメント(3) | トラックバック(0)
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2009年11月07日

我慢比べと軸の強さ(ワールドシリーズを振り返る)

熱戦続きだったワールドシリーズ、ヤンキースが4勝2敗で頂点に立った。
瞼を閉じると、まだこの1週間の濃密過ぎる野球の熱気を思い出すことが出来る。
簡単ではあるが、今回のワールドシリーズを振り返ってみたい。

○我慢比べ
頂点を争う2チームはヤンキースとフィリーズ。
それまでの戦いも熱戦続きであったが、結果を見ればフルセットまでもつれることがなく勝ち上がってきた。
まさにMLBの最強の2チームが勝ち進んできた。
両チーム、同日に奇跡的な逆転劇(サヨナラ勝ち)を収めたこともある。
ここ数年来無かった熱戦でありながら、この2チームが勝ち進んだ理由は1つ。
それは我慢くらべに勝ったということだ。
相手チームが勝手に転んだとも言えるだろう。

熱戦が続いたのは、お互いのチーム力が拮抗していたことが大きい。
ここ数年の傾向では、ワイルドシリーズの出場チームや、シーズン終了ぎりぎりに勢いをつけてプレイオフの切符を勝ち取ったチームが、激流の流れに乗ってあれよあれよと勝ち上がっていくことが多かった。
今年の戦いでその傾向が見られなかったのは、ヤンキース、フィリーズとも相当に高いチーム力を持っていたのだろう。
おそらく、ファンが予想するよりも、グラウンドで実際に戦っている選手達が感じていた差が大きいはずだ。
それが、信じられない守備のミスや救援の失敗につながったのであろう。
まさにこの2チームは両横綱であり、がっぷり四つに組めば相手は動き疲れて、腰砕けになる。
リードを奪わなければやられる、相手チームはそう思っていた。
同点、あるいは1点差で終盤までいけば俺達なら大丈夫、この2チームは余裕を感じていた。

チームの肺活量の差は、思ったより大きかった。
聖書にあるロトの妻のように、相手チームは振り返ってしまったのだ。
決して振り返ってはいけなかったのに。
苦しくても、水面から顔をあげてはいけなかったのに。
そんな自滅が多かったのが熱戦続きでありながら、最終的な成績はフルセットにもつれ込まなかった理由といっていいだろう。

そして、ヤンキースとフィリーズ。
お互い、同じような我慢強さを持っている強者同士の対決であるが、ここで試合を分けたのはヤンキースの好機に対する嗅覚だ。
フィリーズのかすかな隙を捉えての集中は大きかった。
今までの戦いならミスにならなかった些細なものを見逃さない嗅覚はハイエナ以上だ。
ハイエナとは失礼だろう。
ここはヤンキースのチームとしてのまとまりをほめるしかない。
今年のヤンキースは後半になるにつれて、チーム内の団結が良くなってきた。
個人能力が高い選手達がそろっているヤンキース。
それが一つにまとまろうと言うのだから強くなるわけだ。
まとまった要因は監督の技量などいろいろあるだろうが、新球場の1年目というものが大きかったように思う。
「新しさ」の象徴である新球場で、今までの「古い」積み重ねてきた伝統を活かそうとする。
その相反する2つのものがマッチして、信じられない程の勝負強さに変わったのだと思う。

○軸の強さ
チームには様々な役割がある。
足の速い者、中軸を打つ者、守備で活躍する者、下位打線で力を発揮する者。
だが、やはりチームを支えるのは主砲である。
ヤンキースの主軸と言えば、やはりA・ロッドであろう。
ワールドシリーズでも、ヒット数は少なかったが、「ここだ!」というところでしっかり打ち、チームの勝利に貢献してきた。
一流から超一流への成長、ファンの期待にこたえられる選手として、新しいステージに上がったのは間違いない。

対するフィリーズは、4番のハワードを抑えられたことが痛い。
第6戦でようやく一本が出たが、それも遅きに喫した。
ヤンキースもフィリーズも主砲を抑える大切さはわかっていた。
フィリーズのアトリーが絶好調だったが、彼の本塁打と主軸の本塁打ではやはりその重要性が違うということなのかもしれない。
日本シリーズでも、第6戦に限って言えば、稲葉の不調(打撃だけでなく守備でもミスをしていた)が日ハムの涙に変わったのは、主砲の存在の大きさが分かる例なのかもしれない。
主砲は大きくチームに勢いを与えるし、逆に大きく勢いを削ぐこともある。
ヤンキースはそれがプラス面に出て、フィリーズはマイナス面に出た。
フィリーズを責めるのはおかしいかもしれない。
守備でミスにならないミスをしていたA・ロッドが、普通からすれば大事な場面で打てるはずがないのだが、なんとなんとそれが関係ないのだから。

チームの軸は主砲だけでない。
ヤンキースには、他にはない強みがある。
それは、試合を締める守護神の存在である。
そう、リベラがいることだ。
まさに圧倒的な存在だった。
野球の神様がいるのなら、案外こんな感じなのかもしれないと思わせる有無を言わせぬ投球。
MLBでは珍しくインコースで勝負する投球は、左打者のバットを何本折ったかわからない。
彼が出てくるだけで、相手チーム、ひいては熱狂的ファンの心までへし折っていた。
リベラは右投手だが、左打者のほうが打ちづらいだろう。
近年不振がち(それまでが圧倒的だった)だったが、やはり大舞台では強い光を放っていた。
ヤンキースはこの投打の主軸がしっかりしていたことが大きかった。


日本の野球ファンにとっては、ひょっとすると日本シリーズよりも身近に感じたかもしれないこのワールドシリーズ。
日本だけでなく、世界中の日本人が、「日本人で良かった」と誇りに思う場面を見ることが出来たのは幸せの一言に尽きる。
映画や小説でもなかなか感じることのできない誇りは、日にちがたってもまだ胸に残っている。
それは、彼のおかげでもあるだろう。
あえて名前を出す必要もない、背番号55を背負った日本人だ。
彼の活躍があってこその頂点でもあるが、ここでは詳しくは述べる必要はないだろう。

優勝パレード、全選手の先頭を切って登場し、掛け値なしの大歓声を受けていた松井。
紙吹雪が舞う姿を見て、なぜか歌舞伎の雪景色を思い出してしまった。
それほど、堂々として絵になっていた証拠でもあるのだろう。

松井の今後が大きく報道されている。
心配される方もいるだろう。
ある記事では「自分自身は受け身」と表現している松井。
受け身ではなく、受け入れることを恐れないのだろう。
松井は、MVPのインタビューで語っている。
決して受け身ではなく、しっかり自分の意見を主張したのだ。
最終戦で見せた、大活躍の後の表情を緩めないところ。
堂々とした見逃し、達観したような表情。
すべてを受け入れ、それに対応していこうという姿勢だ。
自分の道はどこへ続いても大丈夫と。

素晴らしく大きく成長した松井の前途は洋々だ。
高いプロ意識を持って、チームに最大限に貢献する松井はこれからも輝き続ける。
「野球が好きで、勝ちたいと思っている」
そして、「つらいことはなかった」と語るのは、すべてを自分の成長につなげることが出来るからだ。
自分達ファンにとっても、もっともっと長くその活躍を見てみたいところでもある。
イチローとともに50歳まで…とは難しいだろうが、まずは体のケアをしっかりして、来シーズンは走攻守に活躍する松井に期待したい。
1年でも長く、長く共に歩んでいきたい。


ワールドシリーズ、日本シリーズともに終わってしまった。
野球ファンにとっては寂しくなるが、スポーツはこれだけではない。
ゴルフしかり、これから熱くなるラグビーしかり。
球技だけでなく、冬には五輪も待っている。
スポーツを通じれば、今年の冬は寒がっている暇はない…かもしれない。
これからも楽しみである。

posted by ballgame |23:58 | MLB | コメント(2) | トラックバック(0)
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2009年11月05日

日本人のためのワールドシリーズ(ワールドシリーズ第6戦)

その走りを緩め、悠々とスタンディングで2塁に到達したその男の背番号は55。
鳴りやまない拍手と歓声、甲高い口笛で観客は、心から栄誉、おらがチームへの貢献を讃えた。
55という主役にしては少々大きすぎる番号を背負っている男は塁上でも、喜びを表すわけでもなく、ただそこにいた。
打席中にも聞こえていた「M・V・P!」という声は、球場全体を包むほど大きくなった。
スタジアムは寒さのためか、ヤンキースのスタジアムジャンパーを着ているため、ほぼ真っ黒(濃紺)に染まっている。
あたかもそれは、日本で在籍した盟主と言われる球団と同じ色だった。
そのときの活躍を思い出したかのように。
そして、そのとき以上の活躍をしでかしたことを喜ぶわけでもなく、ただそこにいた。

第1打席、粘って8球目、真ん中ストレートを豪快にライトスタンド2階席へ叩きこむ2ランホームラン。
第2打席、3球目、外角高めのストレートを逆らわず、センター前にはじき返す。
長距離砲として活躍したかと思えば、一転して好打者に変身。
シーズン中、個人記録で騒がせたあの日本人選手が乗り移ったかと思われるような素晴らしいヒットを放つ。
あるいは本当に乗り移ってたのかもしれない。
日本人選手の夢を乗せて、松井は未知なるゾーンに入っていった。
先制、中押し、そして駄目押し。。。

5回裏、1死1、2塁。
三度ランナーがいる場面で打席が回ってきた。
フィリーズはここで、左腕のハップへ投手交代する。
定石通りの投手起用、ただ松井は左投手を苦にしない。
内心ほくそ笑んでた?
それとも、新たに気合を入れていた?
どれも違う。
松井は「無」だった。

打席に向かう松井に、観客はスタンディングで応える。
期せずして起こる「M・V・P!」のコール。
球場全体ではないが、少なからずそう思ってくれるファンがいる。
我らの松井ぞ!
太平洋を隔てても、その感動は薄れない。
冷静な口調が売りの解説伊東(元西武の監督)もBSのアナウンサーも、どこか興奮を隠しきれないようだ。

打席に入り、いつものように肩をぶるっと震わせる。
イチローがバットを掲げるように、決まったルーティン。
ジンクスとでも言っていいだろう。
この震えは、ワールドシリーズという舞台での武者震いだろうか。
はたまた、好調な自分を抑えきれない、歓喜の震えだろうか。

初球、2球目ボールの後、3球目外角へのスライダーをピクリともせず見逃す。
見逃し方がいい。
迷いがなく、心の落ち着きを感じる。
「人事を尽くして天命を待つ」「明鏡止水」こういった言葉がぴったり当てはまる、生きる百科事典となっていた。
悪い時は肩でタイミングを取る場合が多いが、この日は右腰で、下半身でうまくタイミングをはかっていた。
1-3からの5球目、肩口から外角に逃げるスライダーを、ひきつけるだけひきつけ、とらえた打球は高い放物線を描いて右中間へ。
1打席めと同じように、なにかボールがバットに吸い込まれるようなバッテイング。
ライトフェンス直撃のタイムリーツーベースだ。

歓喜を表して、ホームを駆け抜けるA・ロッドとは対照的に、塁上で表情を変えない松井。
勝負はわからない。
野球に、勝負に集中している様がはっきり表れていた。
まさに「不言実行」、日本人らしいではないか。

そしてもう一つ。
塁上の松井は、きっとさめた目で自分を見つめる自分がいたはずだ。
何か達観したかのような表情に、無我の境地を感じる。
それよりも、ここまでの素晴らしい打撃を忘れたくない。
喜びで逃がしたくない、次につなげたいという純粋な打者としての思いもあったことだろう。
今なら何でもできる、どんな球でも打てる。
球場を包む「M・V・P!」コールも、松井の耳には遠く潮騒のように感じていた。

松井の勝負所を把握する力は、驚異的に鋭かった。
6点差となった6回表、ここまで大不振のフィリーズ四番のハワードに、2ランホームランが飛び出す。
今まで何十回と空を切ったであろう外角のスライダー。
それを逆らわず、レフトスタンドへ放り込んだのだ。
待ちに待った主砲の一発、だが遅きに喫した感はある。
それも松井の駄目押しがなければ…と少しぶるっとする。

ヤンキースは8回途中から、ここまで完璧な仕事をこなしているリベラを登板させた。
打の松井と同様、リベラも表情を変えず、自分の仕事を全うした。
粘るフィリーズ打線にも気持ちを切らすことなく、きっちり無失点で抑え、ヤンキースは頂きに上った。

松井は、この試合6打点。
1試合6打点はワールドシリーズタイの記録で、1960年までさかのぼらなければならない。
イチローにせよ、松井にせよ、古い記録を掘り起こしている。
MLBの長い歴史、積み重ねを我らが誇りとする日本人が認識させている。
古くは野茂がストライキの痛手から立ち直らせ、イチローの、そして松井の今回の記録で、改めてMLBの懐の深さを実感する。
なんと痛快なことだろうか!

クイーンの「We are the Champion」が流れる中、マウンド付近で抱き合い、喜ぶヤンキースナイン。
観客も口笛とともに、高らかに歌声を上げている。
歓喜のユニフォームの中、黒いスーツ姿の男が松井に話しかける。
松井は振り返り、「オーケー、オーケー」と2度応えた。
おそらく本人にMVPが伝えられた瞬間だろう。
松井は穏やかな表情を変えずに、チャンピオンのTシャツ、帽子をかぶり、次々とハグを交わしていた。

13打数8安打、3本塁打、8打点。
数字以上に、大事な場面で打ったという記憶がある。
どうしてもひいきしてしまう日本の野球ファンだけでなく、現地のファンも認める文句なしのMVPだ。
おそらく松井がいなければ、リベラこそMVPだろう。
無失点で抑えるだけでなく、持ち球のカットボールで左打者のバットを折るかのように、相手の気持ちをへし折るほどの圧倒的な存在感は、救援陣が逆転を許した他の球団とは違っていた。

この2人には共通することがある。
それは、自分の力を最大限に発揮することのみに特化していることだ。
チームの勝利に貢献するために、自分は今何ができるかということを知っている、非常に高いプロ意識を持っている。
そして、謙虚であり、ある特定の役割を持っているということも。
リベラは、チームが勝っている状態でなければ自分の登板がない抑えの役割。
松井は、他のナインが守備をしっかりこなしているからこそ、他のナインが塁に出てくれるからこそ、成り立つDHだ。
限定された役割だからこそ、自分の仕事をするのみ、1打席に集中している様は素晴らしい。
チームに貢献してこその自分、それを知っている選手は今のMLBにも少ないのではないだろうか。

松井が歓喜の輪から離れた。
日本のアナウンサーのインタビューに応えるためだ。
喜びの邪魔をして申し訳ないが、遠く日本の地から見ていた野球ファンの、本人の声を聞かせてほしいというわがままを許してほしい。
淡々とインタビューに答える松井の表情は穏和だった。
「夢みたい」という言葉通り、どこか夢見がちな表情だ。
松井の表情、その答えを聞くごとに、画面の前でうなずき、顔をほころばせる自分がいた。

一番印象に残った言葉がある。
質問は忘れてしまったが、松井はこう答えた。
「やはり野球がしたい、勝ちたいと思ってやってきたので、つらいことはなかった」
手首の骨折、両膝の怪我などここ数シーズンは苦しい思いをしたことは間違いない。
今まで当たり前のように試合に出てきたし、野球というゲームを走攻守にわたり、プレーを楽しみ、チームに貢献してきた松井にとって、計り知れないほどの恐怖もあったことだろう。
それをおくびに出すこともなく、「つらいことはなかった」と微笑みさえ浮かべながら語る松井。
2003年からずっと、「ワールドシリーズに勝つためにヤンキースにやってきた」と述べてきた本人にとって、その言葉が出たのは、今日のこの結果がくることを強く信じていたからだろう。
ひょっとすると、この日が来ることをわかっていたのだ。
だからこそ「つらくはなかった」と、この日を迎えるために必要なことだったとすべてを受け入れることが出来たのだ。
その言葉を聞いて、急に画面がぼんやり見えたのは、けっしてテレビの故障ではない。
自分も含めて、そんな方もいたのではないだろうか。

チームに貢献することが一番の自分の役割だと知っていた松井のバットは、その本人の気持ちとは裏腹に殿堂入りするそうだ。
これで2005年からずっとチャンピオンリングを獲得したチームには、日本人選手が所属していることとなる。
さらっと書いているが、これは相当すごいことではないだろうか。
その役割によって、大なり小なり貢献度は違えども、チームの勝利のために必要な選手だったことは間違いない。
なんと誇らしいことか。

松井の契約最終年?
優勝した日に、そんな話は無粋だ。
松井が語っていたではないか。
「自分はヤンキースが好きで、ニューヨークが好きで、ここのファンが好き」
これがすべてだ。
観客に応え、球場を一周するヤンキースの選手たち。
同い年のジーターと松井が先頭で、帽子を挙げ、歓声に手をふる。
強く印象に残った。

熱戦が続き、面白い試合続きだったこのワールドシリーズ、できれば第7戦まで観たいという、野球ファンのよくばりな思いがあった。
だが、こんな大円団なら納得するしかない。
おかしな表現かもしれないが、まさに「日本人のためのワールドシリーズ」でもあった。
この温かい思いを胸に、シーズンオフとなる今年の冬も乗り切れそうだ。
松井はワールドシリーズの歴史にその名を残し、ヤンキースは新球場に箔をつけ、新たな伝説を歩み始めた。
おめでとう、ヤンキース!松井!

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2009年11月02日

かくも繊細なあや(ワールドシリーズ第4戦)

第3戦に引き続き、またも投打の主役の出来が試合を決めることとなった。
それは繊細な、細いあやを手繰り寄せた結果でもある。

8回裏、ヤンキース1点リードで、マウンドにはチェンバレンが上がった。
5番ワース、6番イバニェスを連続三振にとって波に乗るチェンバレン。
だが、この最高の出来が彼にとって最悪の事態を引き起こした。
連続三振はすべて自慢のストレートだ。
高めのボール球を振らせる辺りは、球に勢いがある証拠である。

フルカウントとなり、勝負の球は当然ストレート。
それまでタイミングのあってない空振りをしていたが、今日好調のフェリスにとって、迷いなく狙い球を絞れるカウントが幸をそうした。
フェリスは最高のスイングを披露し、チェンバレンは投げ終えた後、脱力したように横を向いた。
チェンバレンのその様子は、まるであたかも打者が見逃したかのように錯覚するしぐさ。
その奇妙なしぐさは一瞬で、打球の行方を追うのを拒否するかのように、真後ろを向き、膝に手を置いた。

チェンバレンはわかっていた。
内角へのストレートを巻き込むように捉えた当たりは、球場の真っ赤な願いを乗せてレフトスタンドへライナーで飛び込むことを。
何かが爆発したかのような球場の騒ぎ。
赤いユニフォーム、赤いフードをかぶった観客が、誰かれ構わず隣とハイタッチを交わす。
日本一熱いと思われる応援を見せている札幌ドームでも、かくやという盛り上がりだ。
ここには原始的な喜びの感情が溢れている。
8回2死からの同点劇。
9回には、「守護」神でありながら、顔色一つ変えない「攻撃的」なヒットマンのように仕事をするあの男が控えているだけに、これは大きい。

9回、フィリーズは抑えのリッジが登板。
松井が代打で出るも、簡単に追い込み、変化球でショートフライに打ち取る。
続くジーターも空振り三振。
盛り上がらないわけがない。
球場は白いハンカチで、さながら出港する船を喜びで見送る波止場の家族のようだ。
続くデイモンも追い込み、さらに盛り上がる観客。
立ち上がり、声を上げ、腕もちぎれよとばかりにハンカチを振る。
粘るデイモン、7球目、落ちる球にバットが空を切る。
バックネット裏で両手を上げ、この日一番の盛り上がりを見せる観客。
だが、判定はファール。
わずかにバットに当たっていて、キャッチャーが捕球した時はかすかにワンバウンドしていたのだ。
ほんの小さな出来事だが、これがフィリーズの運命を暗転させるとは、このホームでは誰も気付かない。

デイモンは、さらに粘り、9球目をレフト前ヒットで出塁する。
3番テシェイラの時に、デイモンは盗塁。
キャッチャーは座ったまま送球するも、ランナーを気にしない投球モーションで、デイモンがセカンドに到達した時も、まだ送球は二塁に入ったサードが捕球していなかった。
サード?
これは誤りではない。
キャッチャーの送球を受けたのはサードだ。
そして、デイモンはスライディングから素早く立ち上がり、サードへ向かった。

実際に試合を見ていないとわからないだろう。
そして、実際に試合を見ていた自分は驚いた。
デイモンが走り出したのは、なにかとちくるったのではないかと思ったほどだ。
送球をエラーしたわけではない。
ただ、一目散にサードへ走り出すデイモン。
ポカンと見ていた自分は、そのあと余裕でアウトになるデイモンがどういう表情をするか見ようと身を乗り出した。
送球を受けたサードが追いかける。
わずか2、3メートル、三塁に投げて終わり…にはならなかった。
後を追いかけるが、足の速いデイモンには追いつかない。
その前になぜ投げない?
デイモンはスタンディングで三塁に到達した。
球場のざわめきが、この異様さを表していた。

なぞ解きは、打席にはテシェイラが立っていたということだ。
テシェイラシフトを引いていたため、ショートは2塁ベースよりファースト側、三遊間はサードしか守っていないという状況。
だから、セカンドへの送球はサードが処理し、3塁ベースはがら空きだったということだ。
すばらしいデイモンの判断。
サインプレーではなかろう。
だが、考える瞬間は感じられず、体がそのまま動いたというような、スライディングの後の動作だった。
野球センスが抜群に感じられる走塁。
漫画の「ドカベン」で殿馬辺りがやりそうなシーンそのままである。

ほんの2分前までとは、まるで違う状況。
2死3塁。
そして何より、起こり得ない事が起こった事に動揺が隠せないリッジ。
テシェイラには死球を与えた。
ここでフィリーズは廻してはいけない打者、ヤンキースには絶好の打者が登場した。
そう、主砲のA・ロッドである。
だが、リッジもフィリーズの守護神。
気持ちを切り替えて、A・ロッドに向かっていった。
初球内角低めストレート、ストライク。
2球目も内角の厳しいコースにストレートを投げ込む。
A・ロッドは差し込まれながらもフルスイング。
決していい当たりではなかったが、打球はレフトへのタイムリーツーベースとなった。

守護神リッジの投球を、フィリーズの観客の願いさえ打ち砕く、文字通りA・ロッドの力で運んだヒット。
バットの芯など無視したかのような、棒で球を押し運んだとさえ言える原始的な力強さだ。
主砲とはかくあるべきだというような活躍。
この打席まで3打数0安打である。
だが、主砲はいいのだ。
大事な場面で、一振りの活躍でチームを勝利に導く。
第3戦に続き、まさに主砲の矜持が表れたシーンである。
A・ロッドはひょっとすると、この活躍で一気にスーパースターの仲間入りをしたのかもしれない。
今までが一流じゃなかったのか、というわけではない。
誰もが認める素晴らしい選手だが、それに「夢をかなえる」という要素が加わった。
数々の栄誉を果たしながら、唯一欠けていた素質。
それを手に入れたのかもしれない。

ヤンキースはこの後も追加点を重ね、3点リードの9回裏、言わずと知れたあの投手が出てくる。
そう、リベラだ。
昨日に引き続き、バックネット裏に空席ができる。
あれだけの熱狂的な応援をしていたにもかかわらずだ。
これがリベラの評価である。
その評価にたがわず、あっさり3者凡退。
ヤンキースがチャンピオンリングに王手をかけた。

打の主役、A・ロッドが打ち、投の主役、リベラが抑える。
まるで水戸黄門の印籠のように、ずるさすら感じる圧倒的な存在感。
これこそが主砲の存在だ。

フィリーズにも、ヤンキースの9回に似た場面はあったのだ。
7回、3番アトリーがライトスタンドに特大のホームランを叩きこみ、1点差に迫る。
先発のサバシアを降板させる打撃。
スタンドは、皆立ち上がり声援を送る。
舞台は揃った、期待も揃った、ここで待ち望んだ千両役者の登場だ。
そう、フィリーズの4番ハワードである。
観客のボルテージは上がる一方。
ヤンキースは2番手、左腕のマルテだ。
初球、外角低めにスライダー、見逃しストライク。
2球目、真ん中高めにストレート、空振り。
初球で半分、2球目でさらに3分の2。
わずか30秒程の間に、球場で立ちあがっている観客は座り込み、最悪の事態を想像する。
そして、その想像は実現する。
ハワードは4球目を打ち上げ、レフトフライに倒れた。

絶好のチャンスにこたえることが出来ないフィリーズの主砲。
連続三振してもいい。
凡打を繰り返してもいい。
だが、その試合で一番のキーポイントに打席が回り、それにこたえるのが主砲の役割である。
いわば、その一振りのために存在している。
ヤンキースとフィリーズの主砲は、その試合最大の場面で回ってくることは同じだが、結果で天国と地獄に分かれた。

前回ブログにも書いたが、主砲とはなんぞや、と問いかけるような試合が続いている。
ヤンキースの主砲はそれにこたえ、フィリーズの主砲は残念ながら、未だ結果を出せていない。
そして、打の主砲だけでなく、投の守護神さえも打ち砕かれたフィリーズ。
1勝3敗という成績以上に、この結果は深刻だ。
8回裏に、劇的な展開で同点にしただけに、ショックは大きい。
高く持ち上げて、勢いをつけて落とされたようなものだ。
幸いは、第5戦ホームで戦えるということだ。
そして、唯一の勝利を上げているリーの先発。
ほんの些細なあやで競り負けているフィリーズ、チャンスがないわけではない。
だが、厳しくいえば、その小さなあやを味方にしなければ、チャンピオンリングには手が届かないのだろう。
それほどの戦いをしなければ手に入れられない頂点の座。
果たして、第5戦はどうなるのだろう。
これで終わっては、冬が早すぎる。
日本列島は寒波を迎えているが、心まで寒くなるのは勘弁だ。
フィリーズの奮闘に期待したい。

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2009年11月01日

4番の哲学(ワールドシリーズ第3戦)

4番とは、チームの主砲とは、なんと大きな影響力を持つのだろう。

フィリーズの主砲、ハワード。
ヤンキースの主砲、A・ロッド。
右と左と言う違いはあれど、共通する部分は沢山ある。
ワールドシリーズに勝ち進んできた中で、欠かせない選手。
強力打線が売りのチームの中でも、要になる打者でもある。
相手投手は、この打者を抑えることにもっとも神経を使う。
そして、ワールドシリーズ2戦を終わった時点で、お互い絶不調の状態にいることである。
とはいえ、A・ロッドがノーヒットに対して、ハワードは2安打1打点を挙げてはいる。
だが、ハワードは第2戦、4打数4三振を喫している。

フィリーズのハワード、不調とはかくあるものかという見本のような状態である。
ヤンキース先発の左腕ペティットに全くいいところがない。
ストレートに振り遅れ、カーブにタイミングが合わない。
チームの4番を任されているだけに、形が崩れるということはないが、それでもどこに投げればバットに当たるのだろうという状態だ。
そんな状態でも、フィリーズは先取点をたたき出すのだから、地力のあるチームである。

一方、ヤンキースのA・ロッド。
こちらは打撃の不調が守備にまで出ている。
昔から、守備に難ありと言われていたが、プレイオフ地区シリーズまでは目立つようなミスはなかったように思う。
だが、このワールドシリーズ、すべての試合をじっくり観れたわけではないが、少なくても3つのミスを犯している。
明らかな送球ミスは1つだが、それ以外は厳密にいえば、ミスとは言えないプレーでもある。
だが、サードにとって足元の強い当たりは必然の打球であり、見せどころでもある。
体を倒し、打球を追えるため、比較的取りやすい打球だと思うのだが、それでもグローブの下を抜けてしまう。
球際に弱いとでもいうのだろうか。
まさに、打撃の不調が守備にまで影響している負の連鎖。

素晴らしいバッターと言われながら、なかなか評価を得られなかったのは、彼の勝負弱さにあった。
だが、今年のA・ロッドは違う。
明らかに一皮むけたA・ロッドは、4回にワールドシリーズ初ヒットとなる本塁打を放つ。
主砲が打つと、その得点以上に影響があるのは、チームの恐ろしいまでの勢いだ。
1点差に詰め寄った5回には、なんと投手のペティットにまでタイムリーヒットが出る。
今年のヤンキースは、流れの波に乗るのが素晴らしく上手い。
こうなれば俺達のものとばかり、集中打で逆転を果たした。

主砲の存在とは、なんと恐ろしいものだろう。
それがたとえソロホームランでも、ただの1点ではない重みがある。
だからこそ、4番に置かれ、ファンの期待と相手チームからの執拗なマークが集まるのだろう。
ドジャースのマニーしかり、日本シリーズでの日ハムの稲葉しかり。
(第2戦の日ハムのつながりも、稲葉の一発から始まった)
この試合、フィリーズの中軸の一角である5番ワースはホームラン2本を放った。
大事な先取点であり、追撃の得点をたたき出した貴重な本塁打だ。
だが、おそらく、この2本の本塁打は、ハワードの一発ほどチームにインパクトを与えることはないだろう。
この日の結果に限らずだ。

中軸やムードメーカー、ラッキーボーイが打つ本塁打とは明らかに違う重さを持っている。
わくわく感、膨らむ期待、胸の高鳴り、どきどき感が止まらない。。。
期待通りに来てくれて、期待以上の活躍をしてくれる正義のヒーロー…それが「4番」であるのだろう。
(もちろん、チーム状況により4番ではなく、3番や5番、あるいは2番と打順は違うかもしれないが…)
ワールドシリーズ第3戦と日本シリーズ第2戦。
奇しくも同じ日に、主砲の存在を深く考えさせられた試合だった。

そしてもうひとつ、触れておかねばならないのは、やはり松井の本塁打だろう。
3点リードの8回、代打で登場した松井。
フィリーズのホームからおこるブーイングは少なくなかった。
相手チームのファンに認められている証拠でもある。
単純な愛憎といった感情からではなく、目の肥えているMLBファンからの自然とおこるブーイング。
そのブーイングがうれしくもある。

初球ボールの後の2球目、外角高めのストレートを思い切り振った。
強振にも程があるというスイングだ。
場面は2死走者無し。
一発狙ってもいい場面であり、気楽な場面でもある。
なにより、松井には迷いが無い。
空振りではあるが、松井の良い状態(精神状態も含めて)が見てとれる。

その見立ては間違いではなかった。
3球目、同じようなコース(外角高め)へのストレート。
先程、ボールの下をくぐったバットは、今度は完璧に芯を捉えた。
強振ではなく、まさにボールを捉えるためのスイング。
その逆らわないバッティングは、「行った!」という日本中の声と共に、レフトスタンドにライナーで飛び込んだ。
4点差、駄目押しとなる一発は、まさに打撃の矜持といったところである。
ライトスタンドへの高々とあがるホームランバッター特有の当たりも美しいが、今回の逆方向へのあれだけ強い当たりほど力強さを備えた美しさはない。
イチローとは違い、打つことだけでチームに貢献している松井。
だが、形は違えど自分の役割、できることをきっちり果たしている松井に、同じプロとしての意識の高さを感じることが出来る。

雨で開始が遅れた試合、松井の打席で強くなった雨脚は、ダイアモンドを一周する松井に静かに降り注いだ。
この場面での雨脚の変化、これはまさにフィリーズファンの涙となった。
最終回、ソロホームランで1点返し3点差。
だが、ヤンキースはあの男が出てくる。
守護神リベラの登場である。
あの熱狂的なファンが集うフィリーズのホームも、バックネット裏でさえ空席が目立ってきた。
試合を締める野球の神様というより、なにかハードボイルドな保安官といった雰囲気を漂わせるリベラは、いとも簡単に残りの打者を片づけた。

フィリーズは、3戦すべて先制点を取りながら、結果は1勝2敗となってしまった。
内容は悪くはないのだが、それよりもヤンキースの集中力が勝っているような試合展開。
第1戦、絶対的エースのサバシアを打ちこんだときは、このまま勢いにのるかと思われたが、逆に先行される展開となった。
だが、実力者同士の対決、よもやこのままあっさりと終わるわけがない。
大ファンであるイバニェスも言っている。
「うちのチームには負けてうつむくような選手はいない」
自分のチームの力を信じているからこそであろう。

第4戦は流れを変えるにはもってこいの舞台がそろった。
なにせ、ヤンキースの先発は中3日のサバシア。
タフな相手だが、逆に言うとこれはチャンスでもある。
今日の試合からも、主砲が打てば盛り上がることは証明されている。
ならば、相手のエースを打ち崩せば、それは自チームに対する勢いに変わるであろう。
リベラからサヨナラ打を放つよりは難しくないし、それと同等の流れをつかむことが出来る。
主砲ハワードの不調にもかかわらず、先制点を挙げ、互角の戦いを見せているフィリーズ。
そのハワードに1本でも出れば、ホームの地で、どばっと土石流のように勢いは止まらなくなるだろう。
第4戦も熱戦が期待できる。
明日こそが、フィリーズにとって本当の勝負どころとなる。
楽しみである。

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2009年10月28日

短期決戦は「たんき」にあらず(プレーオフの醍醐味)

いきなり謎かけのような問いかけから始まってしまった。
日中はともかく、朝晩は確実に秋の訪れを感じる肌寒さ。
それでも今年はそれほど寒さは感じない。
感じないどころか、内側から湧き上がる興奮でかっかかっかしている。
そういう野球ファンは多いのではないだろうか。
朝はMLBプレイオフ、夜はプロ野球のCSと、至福の日々が続いたからだ。

プロ野球のCSもわくわくする展開だったが、MLBのプレイオフはそれに輪をかけた面白さ。
ア・リーグ、ナ・リーグとも第7戦まではもつれこまなかったにせよ、きわどい接戦が続いた。
例えば20日には、エンゼルス、フィリーズともサヨナラ勝ちで試合が決まった。
ア・リーグは2試合連続だ。
ファンにとっては嬉しいことである。
熱狂的なあるチームのファンでなくとも、最後まで目が離せない展開でうれしい悲鳴が上がる。

ア・リーグ中心に観戦していたが、試合の流れがはっきり変わるプレーが特に目立つ。
それも素晴らしい打撃というよりは、どちらかというと信じられないミスの面で。
記憶に残っているのは、ア・リーグ第4戦だ。
大差でヤンキースが勝利したが、試合の流れを変えたのも一つのプレーだった。
0-0の4回、1死2、3塁でヤンキースのカノのセカンドゴロをホームに送球。
ランニングスローとなったため、送球が高くそれ、きわどいタッチプレーもホームはセーフとなる。
A・ロッドの気合の入った喜び方が印象的だ。
ある程度前進守備をしていたからとはいえ、まだ4回。
無難にファーストでアウトを稼いでもよい場面だった。
シーズン中なら確実にそうしていたはずだ。
手堅いプレーで容易に離されないエンゼルスでさえこうである。

これが短期決戦の怖さである。
負け越していること、先発がサバシアであること、先取点はやりたくない。
そんな思いが普段見れない焦りを感じるプレー、信じられないエラーにつながる。
傷つくことを恐れ、より深く傷つく。
怖さのため腰が引けてスキーをすると、よりスピードが出てしまうのと同じようなものだ。
考えてみると終盤の逆転が恐ろしく多いプレイオフである。
その冷静さ、チームに対する自信とでもいうのだろうか。
それが喪失しているのだ。
タイトルにも書いた「たんきはたんきあらず」
短期決戦は「短気」では勝てない。

自分達日本人は高校野球で、短期決戦の素晴らしさ、怖さ、流れは実際にあることを知っている。
高校野球で1戦必勝の戦いに、全力で戦う姿に、その刹那的な戦いは野球ファンの胸を打つことが多い。
その戦いを世界最高峰のMLBの選手達がやったら…こういう接戦になるのだろう。
先がない戦い、先を考えなくていい戦いに、最高の技をもった選手達が今持てるものをすべてさらけ出す。
やはり迫力は他の追随を許さない。
もともと戦力に差がないのもあるだろう。
試合を分けるのは、やはり細かなミス、そしてホームのファン、観客、テレビ観戦している脚本家の筋書きだ。
筋書きが見事すぎる戦いが多すぎる。
高校野球より、細かなミスだったり四球に付け込むことが素晴らしい。
狡猾であり、強者でもある。
だからこそ見ないわけにはいかない。

それ以外にも魅力はある。
本塁打で追いつくという劇的な展開も、高校野球にはない展開だ。
また、抑えが打たれることも目立つ。
ワールドシリーズを熱心に見るようになって数年立つが、年々チャンピオンシップを取りたいという執念は強くなっているように思う。
もちろん、昔からそれを勝ち取るために戦っており、その長いMLBの歴史があるからこそ、執念だったり尊厳だったりを感じる。
一生に残る栄誉を勝ち取りたい、その思いが強すぎて、シーズン中の試合を締めくくってきたクローザーでさえも、その役割を果たせないのだろう。

強者とはなんだろうか。
それは相手が勝手に転んでしまうことではないだろうか。
そして、それは相手を強いと認めてしまっていることにも関係する。
実際有名人や尊敬する人にあったら、それほど大きな人でもないのに大きく見えることがあるだろう。
そう見せることができる、または相手を小さく感じさせるという威圧感とでもいうのだろうか。
ヤンキースとフィリーズ、この両チームはどっしり構える歴代の大横綱のように受け止め、相手を転がすことのできる存在だ。
本当の意味で強者といえるだろう。
よもや、この2チームは固くなることはなかろう。

フィリーズは連覇を狙う権利をもったチームである。
近年のMLBに久しく出なかった王者の出現。
毎年優勝チームが変わることも楽しいが、そろそろ心のどこかでは強者の出現、王者の君臨を望んでいる部分もある。
NBAで例えるなら、ジョーダンがいたころのブルズだったり、コービー・シャックがいたレイカーズだったり。

そうはさせじと立ちはだかるはヤンキース。
MLBの歴史を振り返れば、直近で連覇したチームと言えば98~00のヤンキースにさかのぼる。
歴史あるチームであり、伝統を賭け復活にかける思いはどのチームよりも強いはずだ。
自ら作った歴史を目の前で塗り替えられるわけにはいかない。
それに新球場の1年目を優勝で飾り、新たな歴史の1ページを刻みたいところだ。

第1戦はNYで行われる。
正直、寒さの影響が心配である。
エンゼルス戦の第1、2戦、NYでの試合は、野球をする環境ではなかった。
気温は10度を切っていたはずだ。
冬の時期に行われるNFLではよく見る光景だが、雪の中や息も凍るほどの中での戦い(さすがに雪の中では野球は中止になるだろうが)。
広いアメリカを想像すると共に、だからこそ多くの野球選手の中で頂点を決める戦いの過酷さ、名誉さが感じられる。
ホームの絶大な力もだ。
ヤンキースはホームの2戦は勝って当たり前。
逆にフィリーズが1勝でもするようなら、フィリーズ有利になるだろう。
2連勝でフィリーズのホームに乗り込むことで、やっとヤンキースが有利な状況が作れると言ったところだろうか。
これでは、フィリーズファンだということがばれてしまうが(笑)
(フィリーズファンというよりも、レッドソックスや楽天にも共通する赤色に反応しているかもしれない)

個人的に注目するのは、ヤンキースはリベラ。
このプレイオフは圧倒的だ。
他のチームのリリーフが軒並み調子を崩す中、安定感がすばらしい。
対するフィリーズはイバニェスだ。
未だにマリナーズから去っていってしまったことが時折悲しくなる。
プレイオフでは今一つ調子が上がっていないが、たたき上げのこの選手、大舞台で大輪を咲かせてほしいものである。
我らが応援する松井秀は守備の練習をしていたといううれしいニュースもあるが、まずはDHでの出場となるだろう。
松井が打てばヤンキースは勝てるとは言い切れないが、打たなければヤンキースは苦しくなることは間違いない。
A・ロッドのマークがきつくなることから、ますます重要度は大きくなるであろう。

劇的な展開があり得ないほど多く感じる今年のプレイオフ。
考えてみれば、この2チームで頂点を争うのもなにか定められた運命のように感じる。
因縁はないが意地はある。
フィリーズは連覇を、MLBの王者として君臨するために、直近で連覇したチームを叩くことで改めて証明できる。
ヤンキースはその野望を止め、自らが覇者であることを再び知らしめる礎としたい。
出てきてほしい、観たい対決ではない方もいるだろうが、この対決は自然であり、雌雄を決しなければならないのだ。

MLBのプレイオフ、まさに野球の世界一を決める短期決戦が始まる日に、プロ野球ではドラフトが行われる。
総決算、結果が求められる日、短期的な戦いと、夢や希望、これからのチームの長期的な計画が決まる日が同日とはなにか面白い対比を感じないだろうか。
短期決戦というが、チーム全体で行う我慢大会のような部分も持つ。
そしてそのチームを支える骨となる選手達を選ぶドラフト。
結果が求められる一方で、夢を託す日。
なにか数奇なものを感じずにはいられない。
不思議な縁を感じる日に、第1戦が始まる。
その戦いが面白くないわけがない。
野球ファンにとって今年を締める戦いを、手に汗握る熱戦を見守りたい。

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2009年10月12日

中身の違う三連敗(ア・リーグプレイオフ)

結果を事前に知っていても、実際に映像で見ても信じられなかった。
9回2アウトランナー無し、2球目の内角高めの釣り球に思わず手が出て、カウント2-0。
立ち上がる観客達、拍手で、歓声で試合終了の時を待つ。
8回にオルティーズのシリーズ初ヒット、2試合不振のローウェルのタイムリーで1点を追加したレッドソックス。
安全圏といえる2点差をつけてのこの展開だ。
マウンドはもちろんパペルポン。

ここからの場面は悪夢のようだ。
内角高めを狙ったストレートが外角に抜け、センター前にはじき返される。
まだランナー1人だしただけだ。
盗塁されても、ランナー2塁でも、まだ2点差ある。

ここまでノーヒットの1番フィギンスに、コントロール悪く0-3とする。
慎重になっているというより、抑えが効かないといった投球だ。
2-3まで盛り返すも、ストレートが高めにすっぽ抜けて、四球を出す。
これで1、2塁。
次はエンゼルスで今一番いい打者のアブレイユ。
ここまで8打数4安打。
めぐりがいいエンゼルスの強さの一面を知る。
2番という打順も絶好の采配だ。

ストレートで押すパペルポン。
だが、2球ともタイミングのあったファールがバックネットに飛ぶ。
2-0となり、さらにストレートで押すがファールを重ねる。
決めに行ったストレートがシュート回転して外角高めに抜ける。
9回だけでもこの球が多い。
テニスのボレーのように、バットを合わせた打球は、ぐんぐん伸びてグリーンモンスター直撃の2塁打。
クッションボールの処理がうまくいったため、ランナーが一人帰っただけ。
1点返されて、なおも2、3塁。

2死後、追い込んでは立ち上がることを何度も繰り返し、拍手を、歓声を送っていたファンもそのボルテージが下がっていく。
ざわめきが広がる。
2死2、3塁。
打者はハンター。
ここでなんと敬遠だ。
なぜここで。
ゲレーロよりハンターのほうが勝負しやすいのではないだろうか。
ざわめきは戸惑いに変わり、ほんの少しブーイングも聞こえる。
ここはあのフェンウェイパークだろうか。
うまく表現できないが、スタンドとレッドソックスのタイミングが合っていない。
すべてが一体化した、熱狂的なコンサートのような盛り上がりはどこにいってしまったのだろうか。
ここ数年、プレイオフでのレッドソックスの戦いを見ているが、こんなシーンは初めて見た。
こんなにちぐはぐなフェンウェイパークは初めてだ。

ゲレーロへの初球。
低めの速球を、素手で握ったバットで捉えた打球はセンター前へポトリ。
決して芯でとらえた辺りではない。
むりくり運んだ、力でもっていった当たりは、その打球の強さと反比例してレッドソックスファンの夢を打ち砕く強烈な一撃となった。
ハンターの敬遠の時に感じた、この球場で初めての感覚。
ファンがレッドソックスから距離を置いているような覚めた部分を感じた時点で、この敗北は決まっていたのかもしれない。

今書いていても、気を抜くと放心してしまう。
完全な勝ちパターンだったはずなのに。。。
不振のオルティーズ、ローウェルに当たりが戻ったといういい流れで次戦へ行けるはずだったのに。。。
8回にパペルポンを出した時点で、レッドソックスには焦りがあったのだろう。
それ以上にエンゼルスのそつのない強さが目立った。
「勝つ」というよりも「負けにくい」チームだろう。
緒戦で、レッドソックスへの苦手意識を払しょくするような完璧な勝利を得たのも大きいと言える。


ア・リーグのプレイオフは、エンゼルスとヤンキースが3連勝で、地区優勝を賭け戦うことになった。
ヤンキースの3連勝は、エンゼルスの3連勝とは内容が違う。
ツインズはヤンキースと互角に戦っていた。
惜しむらくは、大事な場面での走塁ミスが目立ったことだ。
第2戦でもしかり、最終戦となった第3戦でも大きなミスがあった。
1点負けている状況で、無死2塁。
打球は高いバウンドで投手の頭を超える当たり。
セカンドランナーはセンターに抜けると予想し、三塁をオーバーラン。
打球を抑えたショートがホームへ、それを受けたキャッチャーがサードに送球して、ランナーはタッチアウトとなった。
この場面は、無理する必要はまったくなかった。
接戦で終盤こういったミスが出ていては、勝利の女神に愛想をつかれる。

その隙をそつなくついたヤンキースの自然なうまさが目立った3連勝。
かたや実力が上と見れるような完璧な内容で勝ち進んだエンゼルスの3連勝。
同じ3連勝でも、中身が違って面白い。

ヤンキースと同じ地区のレッドソックスとの対決が見られないのは残念だ。
ただ、オルティーズが6番を打ち、ヒット1本では勝ちぬくのは難しいだろう。
オルティーズは最近好不調の波が大きい。
やはり、ドジャースへいったマニー・ラミレスの存在が大きいのだろうなぁといまさらながらに感じる。
(もちろんベイも素晴らしい活躍をしているが存在感が違う)

完敗のレッドソックス。
宿敵といえるヤンキースを自らの手で破ることが出来なかったせめてもの抵抗は、エンゼルスにこれ以上ない勢いをつけさせたことだろう。
短期決戦はミスと勢いが勝負に大きくかかわる。
ヤギの呪いではないが、(レッドソックスの計算したわけではだろう)エンゼルスへの加勢は果たして(笑)
地区プレイオフは3連勝が3チームと、結果だけ見るとあっさりとした戦いが多い。
(もちろん1戦1戦は中身が濃いが)
実力の面でも文句ない2チームの戦いは見ごたえたっぷりだろう。
松井の活躍とともに、じっくり観戦したい。

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2009年10月09日

破られたジンクス、登れなかった高み(エンゼルス対レッドソックス第1戦)

完敗だった。
それ以外言いようがない負けだった。
レッドソックス打線は、エンゼルス先発のラッキーから点が入る気配も感じないほど沈黙させられた。
このラッキー、なにがいいという特徴はないのだが、ともかく凡打を積み重ねる。
低めを丁寧につき、打者の手元で動くボールでことごとくタイミングをずらしていた。
剛腕というよりは繊細。
日本投手のように打ち取る投球を心掛けていた。
地区シリーズ1戦ということもあっただろうが、石橋を叩いて渡るような丁寧さで、7回1/3を安打4、三振4の投球。
その投球内容以上にたんたんと投げるテンポで、平坦な試合の流れとなり、あっさりと試合が終了したイメージが残る。
実際、4回までは息詰まる投手戦ではあったのだが。
派手な見せ場がある程に燃え、力を発揮するレッドソックス。
それをわかっているかのように、一定のリズムを刻んだラッキーの投球術がきらりと光った。
なんとなくなんとなくで抑え込まれたレッドソックス打線、これは後を引きそうである。

レッドソックスの先発はレスター。
事前の情報を得ておらず、てっきりベケットだと思っていたが、それほど腰の調子が悪いのだろうか。
(第2戦の先発予定だから心配するほどでもないだろうが)
去年、今年とぐんぐん安定感を増しているレスターだが、首脳陣の信頼も厚いのだろう。
シーズンでは、それも当然と言える投球を見せてはいた。
自分の中では、ベケットは絶対的なエースだという大きな思いがあるので、複雑な気持ちになる。
優勝した2007年のワールドシリーズの投球を見たら、誰でもそう思うだろう。
今まで見た中で、あれほど絶対的な投球を見せた投手は未だかつてない。

話がそれてしまった。
栄えある第1戦を託されたレスターだが、その抜擢に恥じない投球をしていた。
この試合、ファースト、サードの判定で疑問に思う場面が多く出たが、それにも負けず、いつもの精神力の強さを見せた力強い投球。
特に対角線を使ったクロスファイアーは魅力たっぷりだ。
惜しむらくは5回、1死3塁からのアブレイユへの四球だろう。
レスターの投球を責めるよりも、アブレイユの選球眼を、なんとしても塁に出るという強い思いをほめるべきだろう。
この試合、アブレイユは4四球を選んだのだ。
5回の四球も追い込まれてからの四球を選ぶ粘り強さ。
そう足の早い方でもないが、こんな打者が2番に控えるエンゼルス、強いわけである。

エンゼルスの中軸はアブレイユ、ハンター、ゲレーロとなる。
これが2~4番に控える打線は面白い(一つ繰り上がっている)。
ただ、穴とみられるのはやはりハンター。
穴と言うのは失礼だろうが、この中では隙が多く打ち取りやすい打者と言える。
実際、ボール球に手を出している場面もあり、「当たらなきゃ…」と思っていた第2打席。
ハンターの捉えた打球は、左中間深いところ、アナハイム独特の岩場があるところに飛んで行った。
着地と共に飛び出る花火。
ホームランの時は打ちあがる仕組みになっているのだろうが、まさにこの打球が花火の上がるところに落ちた。
上がる花火に、跳ねるボール。
エンゼルスの爆発する歓喜がよく表れた一場面だった。

レスターは6回3失点。
ランナーを背負いながら、要所を押さえる投球で、シーズン中なら合格点を与えられるところだ。
だが、これはポストシーズン。
特に相手投手のラッキーの出来が、というよりもレッドソックス打線の湿り気が目立つこの展開で、3ランは大きすぎた。
ゲレーロをうまく押さえていただけに、ハンターの打席よりもアブレイユへの四球が痛すぎた。

試合の見せ場は5回裏だったが、自分が注目したのは7回。
2番手のラミレスが不調で、無死満塁。
この厳しい場面で登場は、我らが斎藤だ。
3点負けている場面で、この厳しい状況。
だが、これはチャンスでもある。
ここを抑えることができれば、まだこの試合の流れを大きく変えれるかもしれない。
普段の敗戦処理とは違う重みを持つ一戦一戦。
3年連続プレイオフに出場している斎藤はわかっていた。

簡単に追い込み、外角ストレートで押す斎藤。
粘る5番のリベラ。
点差は関係なく、ぐっと拳を握る。
リベラの打球がフェアゾーンに飛ぶ。
サードゴロだ。
サードのローウェルがホームへ、ホームからなんとキャッチャーのマルティネスはサードへ送球!
ハンターの緩慢な走塁でサードもアウト。
(タイミングはアウトでも、送球がそれたため、ベースへのタッチプレーとなったが、足のほうが早かった。この試合はこういった誤審が目立つ)
珍しい5-2-5のゲッツーで2死1、2塁。
普通なら2死2、3塁の場面。
これはついている。

6番モラレスの打球は、完全に打ち取った当たり…だが無情にもレフト前にポトリと落ちるタイムリーヒット。
サードへの送球が悪送球となり、ベースカバーに入っていた斎藤の懸命のホーム送球も間に合わず、1塁ランナーもホームに返る。
2点追加だ。
7番ケンドリットにもライト前に運ばれたが、ここはライトの返球、キャッチャーのブロックがうまくいき、ホームでアウトとなる。
重い重い2点。

ベンチに戻った斎藤は、紙コップを投げつけ、壁を叩いていらだちをあらわにする。
投手コーチだろうか、頭から湯気が立ったままベンチに腰掛ける斎藤をたしなめる。
斎藤のいらだちは当然だ。
無死満塁という厳しい状況で、無失点に抑えることは難しい。
2点を取られたとは言え、試合の流れはその前から完全にエンゼルスだった。
仮に斎藤が抑えていても、結果論にはなるが、逆転していたとは思えない。
だが、レッドソックスの一方的に悪い流れを断ち切る大きなチャンスだった。
流れを持ってくるのは攻撃だけではない。
この試合の勝敗に関係ないとはいえ、3勝したものが勝ちあがる地区シリーズの中では、次戦以降が大事になる。
その意味では、勢いに乗らせない、守備からの攻撃のチャンスだったのだ。

厳しい状況なのはわかる。
実際、斎藤の打たれたヒットはいずれも勢いのない、打ち取ったといっていい当たりだった。
球の勢い、コントロールも問題無かった。
それでも、結果は2失点。
この場面でしっかり抑えることができれば、斎藤の中継ぎの役割、重要性は格段に上がったであろう。
中継ぎは何人いてもいい。
それが信頼に足る投手であればあるほどいい。
岡島しかり、パペルポンしかりだ。
そういった存在に斎藤はなれる、はずだった。
斎藤は新たなるステージへ上がる階段を踏み外してしまった。
いかに打ち取った当たりでも、いくら不運であっても。。。
斎藤の大ファンであるだけに、今日のレッドソックスの完敗と同様、ショックが大きい。

今後も斎藤の出番は必ずある。
それは間違いない。
ただ、その出番の質を上げる絶好のチャンスを斎藤は自ら手放してしまった。
厳しい状況だからこその証明のチャンス。
自らの手でつかむチャンス。
今年1年の悪い流れを断ち切れない斎藤が残念でならない。

「短期決戦はあそこを抑えてこそ流れを引き寄せられるので、役割的にはいいところで使ってもらった」
斎藤本人もこう言っている。
「絶体絶命の場面。1球たりとも失投できない、バットに当てさせたくない状況だったので悔しいですねぇ」
着替えた後、斎藤はいすに座り込み、しばらく微動だにしなかった。
この時ばかりは、チームの敗北よりも自分の不甲斐なさに悔しさを隠しきれないだろう。
「何とか気持ちを切り替えて次のマウンドに向かいたい」
と語った斎藤。
まだ挽回のチャンスはあるだろう。
回り道となってしまうが、ぜひその機会を大切にしてもらいたい。

エンゼルスにとってこの1勝は大きい。
地区シリーズでは過去に3回対決しているが、通算で10回対戦して1勝9敗。
その中での先勝、しかも完勝ともいえる内容だから、これは大きい。
斎藤は高みに登れず、レッドソックスは今までの相性の良さをまったく吐き出してしまった。
いいところなしの第1戦、ここだけみれば悲観するばかりだが。。。
逆にこれほどまでの完敗をしただけに、気持ちの切り替えはしやすいのかもしれない。
レッドソックスには大きなアドバンテージがある。
それは、第2戦にベケットが控えているということだ。
この大エースが、敵地も完敗も吹き飛ばすような圧倒的な投球をすることを願いたい。
多くの利点を失った第1戦だが、まだ1戦が終わったばかり。
明日の第2戦は、祈りを込めて見つめたい。
がんばれ、レッドソックス!

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2009年10月08日

求められるもの(松井の役割)

がっぷり四つに組み、じりじりと寄る。
万全の態勢で寄り切ったという展開だった。

ア・リーグ地区シリーズ第1戦、ヤンキース対ツインズは、7-2でヤンキースが先勝。
ツインズの勢いから面白いのではないかと思っていたが、ヤンキースのホームで地力を存分に発揮された戦いをされてしまった。
当日の移動、そして到着が午前3時というのも影響したのだろうが、それは言い訳にならない。

ツインズは3回表、2死から先取点を奪う。
パスボールを絡めた2得点を先取。
これは!と思わせたが、さすがにヤンキースといったところ。
その裏、ジーターの2で同点に追いつく。
4回、スウィッシャーのタイムリーで勝ち越し。
5回、A・ロッドのタイムリー、そして松井の2ランでとどめを刺したヤンキースは、その強さを存分に発揮した。

松井は、1・2打席の内容が良くなかった。
ゴロキングと言われていた不調時を一瞬思い出させるように、球をひっかけて内野ゴロ二つに終わっていた。
打ち気にはやり、強引なバッティングが目立つ。
しかし、今の松井の状態を表したのは第3打席だった。
外角低めのストレートを捉えた打球は、センターへ。
このセンターの動きで松井の状況がわかる。
ライト側に守っていたセンターは、一瞬真横に球を追った。
そのあと、打球の勢いを読み間違い、背走するも打球はバックスクリーンへ飛び込んだ。
センターの守備は下手なわけではなく、スムースに追いかけていたので、目測を誤ったわけではない。
松井の打球は、打った瞬間深いセンターフライだと感じたほどである。
それほど勢いが感じられず、高く上がった打球は追い風の影響もあっただろう。
しかし、センターの追い方を見ても、松井のパワーが存分に打球に乗った証拠ではないだろうか。

これからわかる通り、松井の調子は好調を持続していると言っていい。
自分が印象に残っているのは、ライトへライナーで飛び込むホームランが多い。
それが、今日の打球は日本時代の高い弾道を保った軌道だった。
最近あまり、松井の打席を見ていないこともあるが、久しぶりに長距離砲としてのホームランを見ることが出来てうれしい。
それより大きいのは、試合を決める場面で打てたことだ。
決勝点ではなく、駄目押しの一打だが、それでもツインズの息の根を止めた一打であるのは間違いない。
先日のブログにも書かせてもらったが、松井に求められているもの、それは試合を決める一打である。
4打数1安打でいい。
それがホームランでなくてもいい。
大事な場面で、チームの勝利につながる打点を稼ぐこと、それが松井が求められていることである。

プレイオフの緒戦、ジーター、A・ロッド、松井と中軸がそろって打てたのも大きい。
緒戦をツインズに取られると勢いが止まらないと思っていたが、ヤンキースファンにとっては、まずはひと安心と言ったところだろう。
そして、太平洋を挟んで朝早くから応援している自分達日本の野球ファンも、松井の活躍にほっと胸をなでおろしている。
やはり、ヤンキースで松井は非常に大きな役割を背負っている。
勝つにせよ、負けるにせよ、松井の名前が出てくる確率は非常に大きいだろう。
ここ数シーズン、怪我で出遅れた感が強い松井がその力を溜めに溜めて、チームのために爆発する。
そんな場面が見れるようならこんなにうれしいことはない。
ヤンキースの中の松井。
今、松井の存在は、「one for all」という言葉がよく似合う。
自分のすべきことを了解していて、それがチームの力に直結する。
プレイオフのような短期決戦には、松井のような存在がチームに必要となる。
「ミスター・オクトーバー」あながち大げさではない。

まだ1試合だが、ヤンキースの強さを感じた試合だった。
ツインズは1DAYプレイオフを制した勢いで先制点を奪ったが、それを活かせなかったのは痛い。
ただツインズ側からすると、過密日程の中、1日試合が空くのは勢いが止められた今、大きなメリットとなるだろう。
ヤンキースとしては、続けて試合がしたかったところではあるが、致し方ない。
サバシアが第4戦に使える日程であるのも大きいだろう。

さぁ、いよいよプレイオフが始まった。
明日からは、レッドソックス対エンゼルス戦も始まる。
レッドソックスファンである自分は、強敵のエンゼルスではあるが、相性の良さを活かし、まずは先勝してほしいところである。
かたや、ナ・リーグではドジャーズ、フィリーズが先勝し、早くも予想が外れている。
やはり鬼に笑われることをしてしまったが、予想通りの戦いではつまらない。
これからの熱戦、大いに期待できる。
明日以降も楽しみだ。

posted by ballgame |23:46 | MLB | コメント(3) | トラックバック(0)
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2009年10月07日

濃密な1カ月(MLBプレイオフ開幕)

非常に強い台風が日本列島に沿って北上している。
なにかレールに乗っているような予想軌道。
まるで日本で行われる野外のスポーツは全部中止にして、MLBプレイオフに集中しようと言っているかのようだ。
規模が大きい台風なだけに、備えや注意が必要だし、停電にでもなったらプレイオフどころではないことに気付いた。

冗談はさておき、台風の前の日はなにか遠足の前の日のように、いまだにどきどきする。
大人になれば、遠足という行事は無くなり、昔の体験からそう思っているだけかもしれない。
ただ、なぜかどきどき、わくわく感があるのは間違いない。
遠足という行事が無くても、毎年この時期になると同じようなわくわく感で次の日が楽しみになる。
早く次の日に、と思うのだがなかなか寝れない。
そう、MLBプレイオフの開幕だ。
長いシーズンを戦ってきて、各地区の1位、そしてそれ以外の勝率1位が頂点を賭けての戦いが始まる。
シーズンとプレイオフの間隔が無い(少ない)のも魅力だ。
ここまで盛り上がってきた気持ちを持続したまま、むしろそこからまた高ぶる気持ち。
実現は大変であろうが、日本のプロ野球で一番MLBに見習ってほしい部分でもある。

野球ファンであるなら、1試合たりとも見逃したくないこの熱い戦い。
ただ、野球ファンであると同時に、日本人である自分達はどうしても、日本人がいるチームに肩入れしてしまうことが多い。
今年は8チーム中、3チームに日本人選手が所属している。
・ドジャーズ:黒田(首痛のため地区シリーズは欠場)
・ヤンキース:松井秀
・レッドソックス:岡島、斎藤、松坂

自分の観戦手段がBS主体ということで、どうしてもア・リーグに目が行ってしまう。
きっちりした予想は、しっかりした解説者に任せるとして、希望的観測を入れた展開を予測してみたい。
あまりデータに基づいたものではないので、通過する台風とともに流されてしまいそうな軽さでもあるが(笑)

○ヤンキース対ツインズ
ツインズはタイガースとの1DAYプレイオフで、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。
3点を先制されたツインズは7回に逆転するも、8回にすぐ追いつかれた。
延長10回に勝ちこされ、追いつき、延長12回にサヨナラという先日の石川遼以上の素晴らしい逆転劇を見せた。
残り4試合でタイガースとのゲーム差は3ゲームもあった。
そこからタイガースが1勝3敗、ツインズは4連勝という考えられない展開で1DAYプレイオフを迎え、それに勝った。
タイガースの失速も大きいが、最後まであきらめないツインズの姿勢が野球の神様に好かれたのだろう。
この試合が、ホームでの戦いとなったことも大きい。
レイズと同様、閉鎖されたドームなので歓声、ブーイングが響く。
テレビからもうるさく感じるのだがら、実際には耳をつんざくような状況だろう。
このファンの攻撃は、均衡を保っていた勝負の秤を傾けた大きな要因である。

ツインズは休む間もなく、ニューヨークへ移動し、ヤンキースとプレイオフを戦う。
下馬評はヤンキースだが、果たしてそこまで圧倒的な差はあるだろうか。
自分は逆に、ツインズが有利なのではないかとさえ思ってしまう。
今のツインズは、数年前のミラクルロッキーズの再来を感じるのだ。
(今年のロッキーズも勢いはすごいが)
休みなく戦ってきたツインズ。
プレイオフは短期決戦である。
疲れより、選手を休ませることができた余裕より、一番必要なのは勢いである。
ツインズは逆転優勝以外にも、サヨナラでというおまけのターボまで付いている。
シーズンそのままの勢いを乗せて、いわば徹夜明けのなんでもおかしく感じるハイな状態だともいえる。
もし第1戦を、ヤンキースはホームで落とすとなると…そのまま押されることにもなりかねない。
NBAでも、間隔が開いたチームは緒戦を落とすことが応々にしてある。
それに地区シリーズは5戦(3勝先取)だ。
ツインズの勢い、そしてあのホームでの白いハンカチを振っているドームの雰囲気を見ると、なにかあり得ると思ってしまう。
あまのじゃくな見方なのは承知で、ツインズの健闘をひそかに期待している。

とはいえ、ヤンキースに所属している松井秀の活躍も長く見たい。
前半戦はどうなることかと思われたが、後半戦は確実にチームを引っ張る活躍を見せた。
本塁打や打点の数よりも、松井秀に求められるのは、チームが優勝を決めたあの活躍だろう。
宿敵レッドソックスからの、しかも斎藤から打ったライト前ヒット。
それが決勝点となり、ヤンキースは優勝を決めた。
先が見える方は「来年の契約のために」と言うかもしれないが、今はそれどころではない。
松井秀に求められるのは、打率3割でも1試合3本塁打でもない。
試合を決める一打だ。
それさえあれば残り3打席三振でもいい。
ぜひ、新しいミスターオクトーバーとなり、チームを高みに引き上げてほしい。
ヤンキースが松井に賭ける比重は、遠く日本から見ているよりもきっと高いものだろう。
先発投手のように、松井秀の出来が確実にチームの勝利につながるわけではない。
ただ、松井の不出来が敗北につながり、松井秀の出来が勝利を呼び込むのは間違いない
1試合目は5番を打つという情報がある松井秀。
松井秀のチームに貢献する打撃を期待したい。

○レッドソックス対エンゼルス
残念ながら、レッドソックスの先発に松坂は入らなかったようだ。
復帰後の投球が良かったが、やはり信頼を置くには至らなかったのだろう。
だが、必ず松坂の出番はあるはずだ。
実力はもちろん、大舞台に強い松坂の強運を活かさなければ強敵エンゼルスを破るのも困難であろう。

シーズン後半は、BSでずっとエンゼルス戦を見ていたような気がする。
松井秀がいるヤンキース、イチローがいるマリナーズ、レッドソックスという対戦が続いていたからだ。
ここ数年ずっと思うが、エンゼルスはそつのない野球をする。
いいチームだなぁと、素直に思う。
簡単に破れるということが無い。
野球を知っているチームという印象が強い。
自分も好きなチームだが、敵に回すとこれほど厄介なチームはない。
アブレイユ、ゲレーロ、ハンターの中軸も強力であるが、やはり選手全体の意識が統一され、野球頭脳が高い選手たちで切れ目が感じられないのが怖い。
レッドソックスはプレイオフで、エンゼルスにここ数年相性がよいというデータがあるようだが、今年のシーズンは5勝4敗(レッドソックスから見た成績)。
短期決戦であるから、どうにもやりにくい相手とエンゼルスが思っているならこれは大きいことだ。
レッドソックスもそう思っていれば、戦いやすい。
ここ数年で、王者というより覇者として貫録が出てきたレッドソックスだが、今年は久しぶりに挑戦者としての立場になるだろう。
レッドソックスには、胸を貸す立場というより、なにかこちらのほうが似合うように思う。
今年こそ期待である。

注目選手は松坂より岡島であろう。
大事な場面、見ているこちらも胃がきりきりする場面での登板が待っているはず。
シーズン後半に連続失点をしてしまった時もあるが、それでも信頼度は高い。
そして信頼度以上に活躍しなければ、チームの勝利はない。
そういった意味でいくと、個人的なファンとして、斎藤を挙げないわけにいかない。
シーズン中は、重要な場面での登板が少なかった斎藤だが、このプレイオフになっても役割がすぐに変わるとは思えない。
しかし、斎藤も今年で3シーズン連続のプレイオフの経験を持つ。
その経験、そして斎藤が持っている熱い思いを投球にのせることができれば、松坂よりもきっとチームの救世主となる可能性は高いと思う。

「もっと強いところでやりたいと言ってドジャースを出た。いよいよ、ここから」
「やることはいつも変わらずシンプル。自分のもってるものすべてを出す」
と語る斎藤。
シーズンのピリッとしなかった投球をすることはもはやないだろう。
球に気持ちをのせ、切れが増すタイプの斎藤である。
ファンなだけに願望も強く入っているが、やはりリーグ優勝戦は、ヤンキース対レッドソックスで、松井秀にリベンジする斎藤を見てみたい。

05年から連続して、ワールドシリーズ優勝チームに日本人選手が所属している。
今年もぜひ続いてほしいと願う。
個人的に見たいのは、ドジャーズ対レッドソックス。
07年優勝時に家族のような一体感があったチームの中心にいたラミレス対レッドソックスの投手陣の対決が見てみたい。
チームの勢いでは、ツインズ対ロッキーズ。
順当ならば、レッドソックス(ヤンキース)対カージナルス(フィリーズ)だろうか。

予想をすると鬼が笑い、さらに高笑いするような予測だが、みなさんの中にもこだわりがあるはずだろう。
いよいよ始まるMLBプレイオフ。
日本は台風時の高鳴りとともに、心は最高潮に達している。
10月も野球三昧。
短期決戦特有の熱い戦い、ドラマに満ち溢れることだろう。
うーん、幸せである。

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