2009年11月25日
先日行われたプロ野球(若手)選抜対大学選抜の試合は、試合内容もさることながらそれ以上に意義のある「はじめの一歩」。
その栄えある試合は、1イニング1投手でどんどん変わっていったので、大学選抜はもちろんプロ側も快音はきかれず、締まった投手戦となった。
お互い手の内がわからず、またファンもどちらかの勝利よりも純粋に野球を楽しみたいという思いからか、初体験にふさわしい、ぎこちないながらもほどよい緊張が支配した試合内容だったと言える。
歴史の1ページの証人ともなった方々はお目が高い。
すべてのプレーにほぼ満足して帰路に就いたことだろう。
ほぼ…それは日ハム中田の走塁以外は。
甲子園をわかせ、2008年に4球団競合からドラフト1位で日ハムに入った中田。
その打撃のセンスは抜群であり、期待されている方も多いであろう。
まだ1軍に定着していないとはいえ、イースタンリーグではシーズン本塁打記録を更新する30本をマーク。
二軍での活躍にうれしさ半分、もどかしさ半分といったところだろうか。
まだ二十歳の選手、この試合でもわかる通り、投手より打者の方がプロとして対応するのは難しいように思う。
来年こそは一軍での活躍を楽しみにしている…というのが中田側に立った見方だろう。
この試合で唯一ブーイングを受けていたのは中田の走塁だ。
左中間を抜ける当たりで一塁に止まり、ライト前ヒットでサードへの走塁でアウトとなる。
アウトになるのが悪いのではなく、目の肥えたファンは二塁を回った時点で一瞬止まろうとしていたところを見ていたのだ。
確かに怠慢としか取られない走塁。
ある記事に中田の言葉が載っていた。
「あれはエキシビション。次(ミスを)やらなきゃええ。オレは足は遅くない。本番で失敗しないようにしたい」
この言葉だけを取り出してどうこういうのはフェアではないかもしれない。
ひょっとすると、インタビューの中のある部分を抜き出しただけかもしれず、文脈がぶつぎりになっているかもしれないからだ。
中田は、才能あふれる打棒以外にも、歯に衣を着せぬ言葉でも有名だ。
リップサービスの面もあるのだろうし、注目を集める選手だからこそ目立ってしまったところもあるだろう。
だが、それでも首をかしげてしまう。
梨田監督やダルビッシュからの小言を受けての言葉だそうだが、どうも中田本人が認識しているところがずれているようにしか感じない。
言いたいところは走塁ミスの部分ではない。
足が遅いとか、走塁センスを磨けと言っているのではない。
野球に対する心構えを言っているのだ。
「エキシビションだから」いわば本番でやればいいと、手を抜いているその心構えを危惧しているのだと感じているのだろうか。
練習から真剣にやらなければ、毎日自分がやるべきことをしっかりとやらねば一流選手にはなれない。
日々を大切にしているイチローも再三言葉にして残している。
小さいことの積み重ね、やるべきことをやる、それがプロ。
イチローと同様、日本を代表する投手にまで成長したダルビッシュこそ日々の練習に対する取り組みを大切にしている選手だろう。
MLBにいる遠い大スターだけでなく、身近にお手本となる存在がいるにもかかわらず、苦言を呈してくれているにもかかわらず。
まだ二十歳、まだまだ勉強が足りないのはしょうがないと言うべきか、それとも若いうちから手抜きを覚えてと見るか。。。
コメント一つをとって、非常にうがった見方をしているのかもしれない。
現に、記事ではランニングやウエートトレーニングで減量に励んでいるという。
だが、物事の本質、プロとはなんぞやという高い意識が欠けている状態では、同じことを繰り返してしまうかもしれない。
才能ある選手だからこそ、来年は上のステージで見たいからこそあえて言いたい。
その心構えで大丈夫か。
行間に漂う想いをしっかりとらえているだろうか。
監督やチームメイトはもちろん、野球ファンはみんな待っている。
今回行われたこの試合(プロ選抜対アマ選抜)、交流は遅すぎたきらいもあるが、変化を恐れず実際に行動に移せたのが大きい。
中田の覚醒も数年もかからぬよう望みたいところ。
夢を見せてくれる選手だけに、早めの覚醒に期待したい。
もっと魅力的な、もっとプロらしい選手として。
並みの一流となるか、超一流となるか…案外こんなささいなところが分岐点なのかもしれない。
がんばれ、中田!
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2009年11月24日
めっきり寒くなってきたこの季節、ストーブが必要とまではいかないまでも、プロ野球界はドラフト指名選手との契約やFAなどストーブリーグが活気を帯びてきた。
もう11月も下旬、各選手の契約更新も始まる季節だが、この時期また野球が見られるとは思わなかった。
少し古くなるが、先日行われたプロ野球若手選抜対大学選抜をそんな意外な喜びを持ってご覧になった方も多いであろう。
プロ野球セ・パ誕生60周年を記念して行われたこの試合。
歴史的試合とマスコミは騒ぐが、こればかりは大げさではないだろう。
試合内容がではなく、こうした試合を組めたことの意義がだ。
この試合をやっとと見るか、これからと見るかは、野球ファンそれぞれの捉え方によるだろう。
個人的には「やっと」という感じもあり、「これから」にしていかなければならないと思う。
プロアマ交流に時間がかかった事は否めないが、その過去を振り返るよりは、これを継続していく方が大事である。
続けることで習慣となり、もっと思い切った事につなげることが出来る。
まずはそのとっかかりとして、大きい一歩だということはみなさんも同意見ではないだろうか。
さて、堅苦しい意見はさておき、試合の方をざっと振り返りたいと思う。
MLBのプレイオフやプロ野球のCS・日本シリーズなど、思い入れたっぷりで肩がこる観戦が続いていたため、こんなにリラックスしていいのかと思うほど、野球を楽しんで見ていた。
勝敗は関係なく、純粋に投手が投げて、打者が打つといった各々のプレーを楽しんでいた方が多いのではないだろうか。
もちろん、そこには「プロ側が圧倒してほしい」だったり「大学生もやるんだというところを見たい」という思い入れはあるだろう。
だが、その思いは心の中にあったとしても、東京ドームの雰囲気を見ていると鳴り物もなく、お気に入りの選手や一つ一つのプレーを心いくまで楽しもうという穏やかな雰囲気が漂っていた。
プロの試合というよりも、土日に近所の公園にある球場で行われる草野球を見ているような雰囲気と言った方がわかりやすいかもしれない。
本当に野球好きが集まった暖かい雰囲気。
そんなものを感じながら、試合を見ていた。
注目はやはり「ハンカチ王子(はもう死語なのだろう)」こと早大の斎藤佑だろう。
初回に登場し、1点を取られてしまった。
(この失点が唯一のプロの得点だ)
解説者は「フォームがまとまりすぎて面白くない」と言っていたが、自分は斎藤佑を追いかけているわけではないのでそこまで解らない。
巨人の坂本、阪神の新井に打たれたヒットもそれほど良い当たりではなかった。
特に新井のライト前ヒットは、ストレートに押された当たりが上手く一二塁間を抜けたと言ってもいい不運な当たりでもあった。
球の球威はある。
だが、やはりこの2人のヒットはやっぱりプロなんだなぁと感じる当たりでもある。
多分、同じ大学生同士ならばヒットにはならなかったであろうこの投球。
プロの打者であるがゆえに、坂本には態勢を崩しながらスライダーをレフト前に運ばれたし、新井には詰まらせながらもライト前へのタイムリーにつながったと言える。
まさにプロの技、言いかえればプロの(単純な)力とも言える。
斎藤佑自身もなめていたわけではないが、これには驚いたのではないだろうか。
自信があるからこその驚き、けっして甘く見ていたわけではない。
ただ、これによってもう一度斎藤佑は自らの視点を高く設定したことだろう。
クレバーな投手だからこそ、自分の位置をしっかり見据えた斎藤佑は楽しみであろう。
プロ代表も若手(26歳以下)選手が出ていたので、大学選抜と同い年の選手も出ていた。
高校でプロに入った選手、大学に行った選手、やはり違いが出る。
それは体力の違いであり、視野の違いであろう。
練習量がもちろん違うし、野球を職業としているのと、(建前は)学業と両立している選手の意識の差は大きい。
同じ年でも、やはりプロ側は自信を持って、いい方は悪いがなめてかかっているように、相手を飲んでかかるように対戦していた。
大学選抜はといえば、回が重なるごとに緊張はほぐれて行ったが、序盤はガチガチだった。
そこには実力差以上に、メンタル面での違いが見て取れた。
結果を問わなければ、さすがはプロといったところだろう。
この差は考えてみると面白い。
やはり、日々行っていること、心がけ、環境でこれほどの差が出るということだ。
以前はA選手の方が上だと思われていたが、プロでもまれているうちに今ではB選手の方が良く見える。
もちろん、そこには個人差があるだろうし、選んだ道が正しいかどうかは今の時点では早すぎるだろう。
ただ、やはりその差は打者を比較すると大きく目立つ。
大学選抜の唯一の得点も、ショート坂本のエラーによるもの。
当たり自体は力負けしたものだった。
プロとアマ、意識の差だけではない。
投打にも差が出ていた。
はっきり言って、大学選抜の投手はどの投手も素晴らしかった。
特に4回に出てきた東浜は圧巻だった。
ストレートの伸びは素晴らしく、ユニフォームさえ違えばプロとしても通用するような投球だった。
中継が途中で終わってしまったが、9回に投げた菅野も素晴らしいという記事も見た。
MLBでは日本投手は何十人も通用するという話を聞く。
レベルは違うが、プロとアマでもやはり投手は通用するということなのだろうか。
意識の差、投手と打者でこれほど差がでるのも面白いと思った。
この素晴らしい意義のある試合。
まずは開催できたことを喜びたい。
試合は1-1の引き分け。
これをどう見るかは、各々の意見があるだろう。
個人的には、投手の一人一回は短すぎるように思う。
実力を発揮すればこのような形になるだろうし、アマ側はもちろんプロ側だってなかなか点数を取れるわけではない。
もう少し投手を絞って、オールスターのように複数回投げれるような形の方が試合として面白いのではないだろうか。
選抜されたという意義も出る。
もう少し長い回を見てみたいと思わせる投手が多かったということだろう。
投手優先の印象が強かったせいもある。
もちろん、この試合は交流が目的と言う部分が大きいのだから、より多くの選手が出れるに越したことはないのだろうが。。。
プロ野球セ・パ誕生60周年を記念して行われたこの試合。
ひょっとして何年後、何十年後から見ると、想像以上に大きな意義のある試合だったのかもしれない。
それに立ち会えたことに感謝したい。
そして、これからもこの歩みを止めることなく続けていくことが大切である。
こうした大壇上に構えなくても、才能ある若い選手達のプレーをこんな時期に見ることが出来て、野球ファンとしては幸せな一日だった。
お気に入りの選手の成長はどうだったろうか。
これからも追いかけていきたいと思わせる選手はいただろうか。
いい選手はいるものだと改めて思う。
バックネット裏で熱心に草野球を見つめるおじさんたちの気持ちがわかるような試合、うーん満足満足。
体がほっこりした一日だった。
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2009年11月19日
「新」といえば、何を想像するだろう。
フレッシュ、きれい、ぴかぴか、一度も使われていない、などなど。
新しい人とかいて「新人」。
社会人では入社1年目のスーツがまだ似合っていない、学生とサラリーマンのなにかぎこちない様子を思い浮かべるのではないだろうか。
ぎこちない礼儀作法、右も左も初めてのことばかり、だがその先にひろがる無限の可能性を秘めている。
イメージの多くは、今後の成長に期待しているというプラスイメージがあるだろう。
季節は冬に向かい、新人を思い浮かべるにはふさわしくない季節だが、そんなことを考える出来事があった。
そして、新人とは単なる年齢の若いだけじゃないことも。
先日、プロ野球のMVP、新人王、ベストナインが発表された。
個人的に注目したのは新人王だ。
セ・リーグ新人王は巨人・松本哲也外野手(25)。
3年目の今季は129試合に出場、打率が293、27犠打16盗塁。
その数字以上に2番打者として相手の嫌がるスタイル、そして積極的な守備がチームの力になっていた。
育成選手として2007年に支配下選手となり、1軍デビューは去年。
高橋由の怪我など外野手の怪我などがあり、運に恵まれた面もあるだろうが、それは関係ないだろう。
その運を活かし、しっかり巨人のセンターとして定着したのは、彼の絶え間ない努力の結晶だ。
パ・リーグはソフトバンクの攝津正(27)。
2008年にドラフト5位で入団。
中継ぎとして5勝2敗34ホールド、防御率1.47。
ソフトバンクの試合に欠かせない存在となった。
こちらも勝敗や防御率以上にすごいのは、その登板数。
1年目ではあるが、70試合に登板したことは特筆すべき点である。
かたや育成選手からチャンスを活かし、レギュラーとして定着した25歳。
かたやドラフト5位ながら、試合をきゅっと締める投手として欠かせない存在の27歳。
年齢だけみると、プロ野球界ではとても新人とは想像できない。
もちろん、世間一般の社会人でも新人から中堅社員になる年齢だろうか。
新人王といえば、ドラフト1位がその期待通り活躍し、獲得するようなイメージがある。
それこそみんなが納得する新人王という形なのだろう。
だが、こういった形で年齢を問わない形(ある程度は必要なのだろうが)での受賞は、予想以上にうれしいものだ。
ドラフト下位、あるいは育成選手からの新人王という頂点にたどり着くのは、正にスカウト冥利につきる。
そして、「新しい人」の「王」となった今回の2人からは、「新人」とはなんぞやということに思いを馳せさせる。
年齢は関係ない。
新しい環境に行けば、誰でも新人なのだ。
新たなチャレンジを恐れず、常に前を向き続けた選手の頂点が「新人」の頂きに立つ。
立派な数字よりも、なにかそういったスピリットまでも評価したような印象を受けて、なにかすがすがしく感じる。
MLBでも、野茂や佐々木、イチローといった海を渡った日本人たちが、年齢を問わず新人王を獲得している。
その経緯には、全員が賛成しているわけではないが、これも成績よりも新人らしいチャレンジを評価した部分もあるのではないか。
そう感じると、今まで個人的にあまり注目していなかった新人王がにわかに色彩を放つ。
「新人」王ならぬ、「チャレンジ」王としてもいいかもしれない。
来年以降も、地面の下で根を張っていた期間が終わり、一気に花が開いたような選手が活躍するのを期待したい。
そう、自分達でも明日から場面によっては新人という環境に立つこともあろう。
そんなとき野球ファンならば、新人王を取った2人がふわっと後ろから背中を押してくれそうな、そんな感じがする。
おめでとう、松本、摂津!
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2009年11月12日
MLBではワールドシリーズ、プロ野球では日本シリーズがほぼ同時期に終わり、はや1週間程たった。
野球ファンとしてはなんとなく気が抜けたように過ごしている方もいるかもしれない。
実際の試合は見ることはできないが、来季に向かって早くも各チーム動き出している。
熱戦続きの疲れを、たまの息抜きでぼーっとしているのもいいが、ストーブリーグと言われるこの時期も、よく見てみると面白いものだ。
MLBではGM会議が終わり、選手の移籍も徐々に見えてきた。
FA申請も出てきて、これからが本番と言ったところだろう。
個人的には、レッドソックスのナックルボーラー、ティム・ウェィクフィールドが2年間の契約を結んだことがうれしい。
今シーズンは前半戦で11勝をあげたが、後半戦は椎間板ヘルニアの手術をして、登板機会がなかった。
通算189勝を挙げている43歳のナックルボーラーが、また来年以降も見られることは、チームを越えてMLBの見どころの一つといっていい。
大げさに言えば、「重要文化財」のようなものだ(笑)
43歳と年齢を気にされるかもしれないが、ナックルボーラーは肩の消費があまりない。
予想以上に投手寿命が長いのである。
成績次第ではあるが、来年以降もこの魔球をこころゆくまで堪能したい。
それ以外では、グリフィーのマリナーズとの1年契約が決まったこと。
レッドソックスのバリテックの契約延長などが身近に感じられる。
特にグリフィーの再契約は、イチローにとってもチームにとっても、もちろんマリナーズファンにとってもうれしいことである。
日本人としては、松井秀の動向、そしてブレーブスの川上の身辺も気になるところ。
松井秀に関しては、守備にもつきたいという意向と、ヤンキース側はDHとして考えているというギャップがあるようだ。
野球人としての思いか、伝統あるチームへの愛情か、難しいところである。
川上の身辺もきな臭い。
ブレーブスは先発が豊富だ。
現在、先発6番手評価の川上はトレード要員に上がっているそうだ。
こちらも目がはなせないところ。
ところは変わり、日本では11日に甲子園で第1回トライアウトが実施された。
投手27人、野手15人の計42人が参加したが、当日はあいにくの雨。
甲子園の室内練習場で行われたそうだ。
詳しくはわからないが、室内練習場のため、自分の実力を披露する場としては少々手狭なのは否めない。
人生がかかる場である。
選手達には晴天の中、自分の実力を遺憾なく発揮できる野外で、のびのびとプレーしてほしかったのが心情的にある。
もしかするとこれは野球の神様の、去りゆく者たちへの涙雨だったのかもしれない。
毎年10名程の選手がプロ野球チームと契約しているが、今年はどうなるだろうか。
心配していた工藤は、トライアウトを受けずに西武(楽天という話も出ている)から声がかかっていると聞く。
それ以外では、やはり阪神の今岡だろうか。
広島あたりが興味を持っているということだが、それ以外にも興味を持っている球団はあるはずだ。
他には、元ソフトバンクの山田投手はロッテ入りが確定的だという記事も見かけた。
有名どころでは、阪神の辻本投手やオリックスの山口投手、41歳のロッテ高木投手などがいる。
トライアウトを受けている選手は、ちょっとした運命や舞台の変化で光り輝くものを持っている選手ばかりだろう。
逆にその機会を活かせてないから、解雇という憂き目にあっているとも言えるが。。。
トライアウトで再契約した選手のその多くは1年後に解雇される場合が多い。
それ以前にも、再契約という前に見える再生の道は限りなく細く、険しい。
しかし、精一杯野球人生をやり遂げたという後悔が残らないよう、2回あるトライアウトに賭けている選手達は、自分の実力を100%発揮して、自分の今出来ることを精一杯行ってほしい。
プロ野球以外にも、MLBや競輪界からもスカウトが訪れているらしい。
願わくはより多くの人に、再チャンスが与えられることを祈りたい。
それがどんな形であっても、振り返ることなく第2の人生を進まん事を。。。
ストーブリーグ、陰もあれば陽もある。
それぞれ好みのチーム、好みの選手の動向を追っていきたいものだ。
そして来年の開幕まで、野球冬眠の中、頭の中でチームを動かすためにも、スローテンポではあるが、これからも目が離せないだろう。
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2009年10月30日
先日、プロ野球ドラフト会議が行われた。
初めて約1,000人程の観客を導入して行われた今回のドラフト会議。
1位指名で初めの4球団が、注目の菊池を指名しなかったことにおこるざわめき。
6球団のくじ引きで、当たりを引いた西武渡辺監督のガッツポーズとともに、自然とあがるどよめき。
指名権を手にした直後の渡辺監督のインタビューも意外だった。
上気した渡辺監督のコメントに、会場からも笑いが起こる。
初めての試みは大成功だったといってよいだろう。
花巻東の菊池の指名権は、初めにくじを引いた渡辺監督の強運に他の球団はさらわれた格好だ。
東北生まれの自分としては、地元である楽天へ、と思っていたがその願いもかなわず。
ただ、菊池という才能ある投手にとって、西武という球団は結果的によかったのではないだろうか。
古くは松坂、近年では涌井や岸という年齢の近い好投手がいる球団である。
(投手に限らず)選手育成はのびのびやる球団で、日本一の投手を目指して頑張ってほしい。
感心したのは、菊池の受け答えだ。
記者達の質問にしっかり自分の言葉で真摯に応える姿勢。
やはり並の高校生ではない。
菊池の素晴らしさは投手としての能力ではなく、実はこの視線の高さ、自分を知ることなのではないだろうか。
あるいは、自分を高めようとするどん欲さ、ぶれない姿勢。
持っているものだけでは、6球団から指名は来ない。
原石を磨いてこそ、ダイヤとして光るものだ。
今日見せた真摯な受け答えの中にも、強気な言葉がちりばめられている菊池の心持があれば、これからどんな困難があっても、それを糧にしていくことが出来るだろう。
今年のドラフトは、12球団で66名、育成選手を含めると83名(育成選手は17名)となった。
1球団平均すると、約5名(育成含めて約7名)ということになる。
ずいぶん少ないなぁという感じがしたので、10年前のドラフト指名選手を調べてみた。
1998年:75名
1999年:79名
2000年:86名
となっており、育成選手を含めるとそれほど大きな変異はしていないということになる。
毎年各球団6~7名しかプロになることが出来ないということは、相当厳しいことである。
もう少し間口を広げてもいいのではないだろうか。
現役選手との兼ね合いもあるだろうが、そこは支配下登録選手の上限撤廃で対応し、もっと夢のある世界にしたほうがよいように感じる。
先日まで行われていたCSシリーズにもかかわることだが、本来なら球団数がもっと増え(少なくとも16チーム)、本当の意味でプレイオフが開けるくらいになれば、もっともっと盛り上がるはずだ。
球団を増やすとなると、今後は地方に根付いた球団となるだろう。
新潟では、プロ野球を誘致するという話も以前読んだことがある。
勇気あるオーナー(候補)が、新球団を設立し、地域ごとにプロ野球球団が出来る。
そして、数年後には今回の北海道で見ることが出来た、日ハム対楽天のような北日本対決もみることができたなら、地元の野球少年は、目を輝かせて今まで以上に熱心にプレーするであろう。
もちろんこれは理想論であり、現実にはいろいろクリアしなければならない問題が山積みである。
ただ、改めて考えると1球団6、7人は少ないのか、(それともプロなんだからというところで行くと)多いのか。
自分としては、その人数の少なさに、間口の少なさに、若干さみしさを覚える。
今回のドラフトで選ばれた未来ある選手達。
願わくは、全員がその力を発揮して、新聞やテレビをにぎわす選手になってほしい。
特にスカウトの真骨頂と言える、下位指名選手の大化けに期待したい。
未来のイチロー、前田智徳、そして鉄平のように。。。
posted by ballgame |23:52 |
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2009年10月27日
花巻東のエースは、その決定を報道陣の前で発表した後、大粒の涙を流した。
いったい、その涙はどんな思いで流れたのだろう。
花巻東の野球部長いわく「大リーグ球団への申し訳ない気持ちから」ということだが、その部分が一番大きいのは間違いない。
ただ、理由はそれ以外にもあるだろう。
メジャー行きについて批判する声も聞こえてくるなど、精神的にも追い詰められていたはずだ。
なにより、チームメイトとの関係からわかる通り、つながりを大事にする男。
今回の決断で、一区切りついたことから流れた涙かもしれない。
いろいろ想像できるが、こればかりは本人にしか、いや、本人でさえすべては分からないかもしれない。
この決断まで、いろいろ悩むこともあったろう。
監督や両親との話し合いがあったにせよ、最終的には自分で決めた道だ。
この涙とともに、きっともやもやした思いも菊池の中から流れ出たことだろう。
そうして出た本人の決断は、素晴らしいことであり、一番いい形だ。
もしそうでなくとも、菊池は自分で決断した進路を一番いい形にする才能を持っている。
その才能は野球の才能だけでなく、並はずれた向上心であり目標をかなえるプロセスであり、努力し続けることができることでもある。
外野からの声はいろいろあったろう。
一番多いであろう率直な気持ちは、日本でも見たいし、海外で大きく活躍する選手にもなってもらいたいという欲張りな気持ちだろうか。
この18歳という年齢で、日米沢山の球団から話を聞くことが出来て、迷うのは当然だ。
真剣だからこそ迷う気持ちが出てくるもの。
才能があるからプロ野球へ、という思いよりも、今この時期真剣に将来のことを考えられる経験は、菊池にとってプラスになったのは間違いない。
真剣に考え、悩み抜いたうえでの決断ならば、きっとどちらを選んでもうまくいくはずだから。
本人の言うように、日本一の投手になるべく、また高い目標を持って努力を重ねるはずだ。
考えてみれば、ゴルフ界で活躍する石川遼もこの菊池とは同い年。
彼が世界で活躍しているのならば、菊池も出来ると思うのは当然である。
競技が違えど、自分の才能を信じ、努力を重ねてきたことについては、どちらも同じようにすごしてきたのだから。
日本でのプレーも、今回の経験で将来の素晴らしい夢を具体的にイメージしながら、努力を続けられるのは菊池にとって大きなメリットとなる。
今回の騒動、日米のスカウトの違いが目立って面白かった。
MLBはやはり、アピールのうまさに一日の長がある。
実際にMLBの現役選手を連れてきたり、あえて厳しい言葉をかけたり、ジャッキー・ロビンソンになれる、等々。
もちろん、自由競争という点も大きいであろう。
日本はドラフトがある。
だが、その違いを頭においても、MLBの各チームの真剣度は菊池の胸を強く打ったことであろう。
情に訴える日本、球界全体を考えてほしいという日本。
自分のチームならば、とやりがいを進めるMLB。
個人的には、レンジャースでライアンの下、育成されたら面白いのではと思っていたが、それはさておき。。。
今回の菊池の決断で、ほっとしたプロ野球球団。
MLBで大きく成長する姿も見たかったが、プロ野球で、間近で活躍する姿を見られるのもうれしいものだ。
今回、松坂と比較して話をした球団もあったが、貴重な左腕とは言え、今時点では高校時代の松坂には劣るであろう。
だが、その分荒削りで原石の魅力は強く感じる。
我らが東北からでた才能ある投手、じっくり焦らず、大きく育ってほしいものである。
今のところ、巨人、広島、横浜以外は菊池を指名する可能性がある。
今までは、野茂の8球団が最高のドラフト指名。
その記録を更新するだろうか。
はたまた、どの球団が指名を獲得するのだろうか。
甲子園で白河の関を越えられなかった思いを、楽天でかなえてほしい。
岩隈、田中、永井に続き、あの広島の投手王国時代を抜く新たな帝国が見たい、と思うのは東北生まれの自分の勝手な思いである。
ドラフトは29日に開催される。
今回は生放送があるとのことだが、どんなドラマが生まれるだろうか。
非常に楽しみである。
願わくは、若手育成に定評のある球団が指名することを望みたい。
菊池の決断に幸あらんことを!
(追記)
巨人の代表も行っていたが、このままの制度でいいわけがない。
今回、菊池は日本のプロ野球を選び、どの球団でもと言っているが、将来才能を持った選手が行きたい球団があった場合を考えてみよう。
それが、MLBの例えばヤンキースであったり、ドジャースであったりした場合、その球団から声がかかれば、光栄とばかりMLBに行ってしまうのではないだろうか。
もちろん、その才能があり、文化や言葉の壁を越えても挑戦したいという強い決意があれば別だ。
それでなくても、プロ野球のドラフト(くじ引き)とMLBの自チームに来てほしいという勧誘。
どちらが強く興味を持つかはわかりきったこと。
勧誘する側からしても、やりやすさは格段に違う。
個人的な意見では、ドラフトを以前のように指名制に戻すのには反対だ。
となると、MLBへの挑戦は、他の選手同様MLBのドラフトにかけるのが平等な取り扱いなのではないだろうか。
MLBのドラフトは毎年6月。
それまで1年程ブランクは空いてしまうが、それはMLB挑戦へのマイナス面として受け入れる。
自分で書いていても、欠陥がすぐ出てきそうな案である(笑)
みなさんの中にも、いろいろな考えがあるだろうが、ここではあまり詳しく述べないでおこう。
もちろん自分としては、才能ある選手が、MLBという異国の地で自分の力を試してみたいという思いは賛成であり、どんどん挑戦すべきであると思っている。
ただ、現状のままでは、あまりにもプロ野球側に不利な状況ばかりな面が目立つ。
ことが起こってから怒っても遅い。
今時点で、きっちり制度を決める必要があると思う。
CSシリーズを見ても、決して魅力が欠けているわけではないプロ野球。
制度さえしっかりすれば、あとは才能ある選手の自己責任になる。
ただ、罰則気味な制度だけはやめてほしい。
これを機に、転ばぬ先の杖ではないが、ドラフト以外の制度と絡めて(FA制度や支配下選手枠など)すべてをトータルで考える時期に来ているのは間違いない。
posted by ballgame |23:54 |
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2009年10月25日
8回裏、細身のエースのストレートは褐色のたくましい腕に握られたバットではじき返され、ライトスタンドの一角を埋めていたえんじ色の集団へ無情にも飛び込んで行った。
その数は千人ほど、中には北海道でありながら数少ない楽天ファンもいたであろう。
また、奇跡を信じて、もっと素晴らしい試合が見たくて、津軽海峡を越えてきた人も少なくない。
それだけに、この本塁打で起こった残酷なまでのコントラストは、明白な試合の結末を示し、すなわちCSシリーズの終了を意味していた。
東北で寒さに慣れているとはいえ、北海道は楽天ファンにとってより厳しい環境だった。
だが、後悔はない。
だって素晴らしい試合が見れたから。
楽天ファンにとっても、北海道の地は野球にとって最適な場所だったから。
そして、野球場ではなかなか見ることのできないシーンを見ることが出来たから。
試合終了後、表彰式などが終わり、日ハムの選手達はファンの声援にこたえるため、一列に並んでいたマウンド付近からレフトスタンドへ向かった。
一方、その光景を目に焼き付け、次こそは自分達がここに並ぶんだと胸にとどめるために、その一挙手一投足から目を離さなかった楽天の選手達。
ベンチの前に並んでいた彼らもまた、日ハムの選手達とファンの歓喜を渦を邪魔しないように、ライトスタンドへ向かった。
完全アウェーという野球場では珍しく感じるこの状態でも、第1戦の敗北を引きずることなく1勝を返せたのは、現地で声を枯らせて、選手を信じて応援してくれた楽天ファンのおかげでもある。
ライトスタンドの一角に陣取る楽天ファン。
そして、その前できれいに一列に並ぶ楽天の選手達。
もちろんその列の前には、コンダクターとしてCSのステージまで引っ張ってきた老将が立つ。
その老将がこの試合でチームを離れることを改めて思い出した日ハムのファン。
楽天のファンとともに、ライトスタンドから声援が、拍手が広がっていった。
深々と頭を下げる野村監督。
そして、楽天の選手達に囲まれるようにして、ゆるゆるとベンチに引き揚げようとする。
しかし、そのスピードはゆっくりであり、あたかも帰りたくないとひそかにだだをこねる年長の子供のようだった。
またはなにかを待っているか。
そのなにかは、勝者にも関わらずライトスタンドまで全員で来てくれた。
吉井コーチが、梨田監督が握手を、抱擁を交わす。
近くには稲葉も、武田もいた。
自然と去りゆく老将の周りに人垣が出来た。
そして、赤白がまじりあい、老将は宙を舞った。
実際は、CSを制覇して、日本シリーズを制覇して行いたかったこの胴上げ。
しかし、例えそれが成就しようとも、この日の老将が浮かべていた笑みには勝てなかったかもしれない。
少なくてもこの清涼感は、この状況でなければ感じることが出来なかったはずだ。
今日のこの日に日本シリーズを決めた日ハム、そして東京の地で同じく出場を決めた巨人の監督、選手達は幸せだろう。
だが、それ以上に今日は、世界中で野球をやっている人たちの中で一番幸せな人はこの野村監督なのは間違いない。
確かに、今シーズンの野球はこれで終わりである。
そして戦いの最中に、どれだけ成績を残そうと来シーズンの指揮が取れない事がわかっていたという、つらい状況だったことは確かだ。
しかし、両方の選手から胴上げをしてもらえる選手、監督は実際にいるだろうか。
プロの各球団に教え子がいて、その遺伝子は脈々と受け継がれている。
その教えに触発されている指揮官、コーチもいることだろう。
自らも言っていたが、正に野球冥利に尽きるのではないだろうか。
胴上げ後、老将は一塁側ベンチへ戻るために、歩みを進めた。
彼の足取りは重く、それは疲れのため、年齢のためもあった。
だが、一番大きいのはやはり去りがたき野球の魅力、愛情がそうさせたのだろう。
その遅い歩みに続く選手、コーチはいない。
日ハム、楽天の監督、コーチは知っていた。
だから、さりげなくお互いを讃えるために肩をたたき、抱き合ったり、話をしたりしていた。
もちろん、楽天の選手達は心からの祝福だろう。
ただ、これは選手、コーチの粋な計らいである。
ただ一人、ゆっくり、ゆっくりグラウンドを歩く老将。
時折帽子をとり、ファンにこたえる。
ピンスポットは当たっていないが、その姿はあの巨人の長島の引退式にも負けない素晴らしい引き際だったように思う。
自らを月見草と例えたこともある野村監督。
月見草は夕方に白い花を咲かせる。
見てほしい。
スタンドは日ハムの応援で、白いユニフォームでびっしりだ。
まるで、沢山の月見草が咲き乱れ、その雄姿を見送っているようではないか。
老将の動きに、スタンドは、白い月見草は揺れ動く。
決してひっそりとなんかしていない。
この日、世界で一番幸せだった老将はグラウンドでお互いを讃える選手達を残し、舞台から退場した。
後には、それを寂しがるかのようにスタンドの白い月見草達が揺れていた。
月見草が輝いた日々はひとまず終わった。
それでも野球は続いていく。
ただ、自分達野球ファンは、いたるところに月見草ならではの匂いや光を見て、感じることが出来るだろう。
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2009年10月23日
1球投げるごとにプレートの後ろに立ち、膝を軽く曲げロージンを触る。
そこはマウンドではなかった。
まるで相撲の仕切りのように、投げ終わった後の決まった動作。
決着の時まで、1球ごとに気合が入っていくのがよくわかる。
プレートを仕切り線とし、ロージンを塩代わり。
まゆがつりあがったその様子は、力強い鬼のような形相だった。
青春時代を育った第2の故郷と言っていい北海道で鬼となる。
すべてはチームの勝利のため。
この8回の、いや稲葉の打席からイーグルスの先発田中は役割を変えたのだ。
この日の田中は手抜きをしていた。
いや、手抜きというと語弊があろう。
最初から全力で行ける所まで、というファイターズの先発八木とは違い、田中は余力を持った投球をしていた。
CS第1ステージで野村監督が言っていた「ペース配分」という言葉に表れるだろうその投球。
八木は知っていた。
飛ばしに飛ばし、後は中継ぎに任せればよいと。
田中は覚悟していた。
今日の試合は一人で投げ切らなければいけない事を。
決してチームを信じていないわけではない。
打線の助けがなければ勝てないのだ。
だが、その考えが田中に駒大苫小牧時代のように、チームの勝利は自分次第という、よいわがままさが出たのだ。
なにがあっても今日は一人で投げ抜く。
高校時代当然だった考えに、マウンドで自分の感覚を信じて投げる懐かしさがこみ上げる。
迎える打者を抑えて当然といった余裕も。
だが、そのペース配分を考えた投球が与えてはいけない先取点を与えてしまう。
長打さえ打たれなければいいという考えのもと、すっと不用意に投げた外角ストレート。
4番高橋に初球をライトスタンドにライナーで飛び込むソロホームランを打たれる。
余りに不用意な1球。
飛び込んだ先が、ライトスタンドの一角で、海を渡り、声をからして応援するえんじ色の中というのが皮肉である。
球場の大部分が盛り上がる中、ホームランボールを奪い合おうとはしないイーグルスファン。
ここ2戦の悪い流れを象徴するような対照的な姿が、今日もなにか悪いものに引きずられているように感じる。
3回もピンチを迎えるが、なんとか抑えた田中に応えるべく、イーグルスも奮起する。
ここまで好調だった八木が、突如捕まる。
打順が一回りしたこともあったのだろう。
4回表、先頭の渡辺が内角に食い込むシンカーをうまく巻き込み、レフトスタンドへ飛び込むホームラン。
同点に追いついた後も、攻撃の手を緩めず、連続ヒットで1死1、3塁。
左投手にめっぽう強い6番中島が、内角ストレートをうまく引っ張り、レフト前のタイムリー。
これで逆転。
続くリンデンの当たりは、ショート深い位置へのボテボテのゴロ。
ショートの金子は打球をさばき、即座にセカンド送球。
画面で見ていて、「よしっ、満塁」と声を上げた刹那、塁審はアウトの判定。
明らかに疑惑の判定である。
いつもよりゆっくりとベンチから抗議に出る野村監督。
それは、野球場にそぐわない、のんびりとした動きだった。
一瞬時が止まったような感覚が襲う。
抗議よりも、移動の時間の方が長いほど。
しかし、判定は覆るよしもない。
ゆっくりとベンチに帰る野村監督。
逆転したとは言え、明らかに悪い流れである。
ホームアドバンテージというにも、当てはめずらい状況。
だが、この野村監督が作った時間がイーグルスの選手達に冷静さを、考える時間を与えた。
続く草野が外角ストレートを逆らわず、レフトへ流し打つ。
突っ込むレフトの森本。
森本のグラブより先に万有引力が勝った。
打球が先に落ちたのは草野の、イーグルスファンの執念かもしれない。
ダイビングキャッチのような形になったが、うまいのは森本。
間に合わないと思った瞬間、体で後ろにだけはそらさないようにしようと態勢を変えたことだ。
結局球をはじいたが、後ろではなく横にはじいただけ。
1塁ランナーの帰還までは許さなかった。
森本のうまさはそれだけではない。
3点追加で、なお2死1、3塁。
中谷が、内角ストレートを引っ張り、レフト線抜けるかと思われたが、森本がダイビングキャッチ。
守備位置も抜群だが、まるで内野がライナーに飛び込むような素軽い動き。
一か八かの飛び込みではないのだ。
表現が難しいが、わかっていただけるだろうか。
守備の上手さが存分に感じられる、センスのあるキャッチ。
ファイターズの外野は固い。
追加点をこれ以上許さなかった。
だが、楽天は勝ち越した。
打線につながりが出てきたこと。
そして、そのつながりは内角はひっぱり、真ん中・外側の球は差変わらず流すという打撃の基本が戻ってきたこともいい材料だ。
昨日は1-3で負け、今日はこの時点で3-1。
このままリベンジを果たせるかと思われた方は、非常に楽天的な方だ。
第1戦、第2戦と続けてみている人は、このまま終わるはずがないと思われた方が多かったであろう。
ファイターズファンからするその期待、イーグルスファンからするその不安は、望む望まないにかかわらず実現した。
観客が真剣に想像すれば、見たいと思えば、実現しやすい空間。
それが、CSである。
動いたのはやはり8回裏だった。
連続ヒットの後、送りバントで1死2、3塁。
打席は2番の森本。
ここから田中は変身していく。
この場面、三振か内野フライが捕りたい場面である。
初球、高めのボールとなるストレートをファール。
見ているファンはもちろん、森本でさえも次の投球は予想できたろう。
田中もそれを避けなかった。
力で抑え込もうとした同じ高めのストレートを、森本は力でセンターに運ぶ。
犠牲フライとなり、1点差。
やはり野球の神様はいる。
でなければ、この場面でこの人に回ってくるわけがない。
ファイターズの心臓といっていい稲葉が左打席に入った。
田中は、ここから役割を変えた。
先発の役割を捨て、みずからリリーフへと役割を変更した。
ここはピンチでもあるが、チャンスでもある。
ファイターズの支柱である稲葉を完膚なきまでにたたけば、この試合の勝利はおろか風向きも変わる。
それを田中は、自らが持っている動物的カンで感じていた。
ペース配分などくそくらえ。
球に乗せるは、理論でも体力でもなく、自ら燃やす気迫のみだ。
大人の仮面を脱ぎ棄て、田中は子供に戻った。
自らが一番だという自負を前面に出すために。
1球投げるごとにプレートの後ろに立ち、膝を軽く曲げロージンを触る。
まるで相撲の仕切りのように、投げ終わった後の決まった動作。
プレートを仕切り線とし、ロージンを塩代わり。
試合というより一騎打ちだ。
スライダー:ボール
ストレート:空振り
ストレート:ボール
ストレート:空振り
ストレート:ファール
ストレート:ボール
フォーク:ボール
149→150→153と球威が上がっていく。
4球目、ストレートを空振りした後、稲葉は思わず「はえぇ」とつぶやいていた。
ぐいぐいとストレートで押す。
球速はもちろん、伸びも抜群。
田中は力でねじ伏せることしか考えていない。
稲葉はそれをはじき返すことしか考えていない。
ファンは、点差よりもこの真っ向勝負を望んでいた。
田中もさるものながら、稲葉もさすがである。
ボールにつられることなく2-3。
7球目はフォークで勝負!
この球が真ん中に投げられていたら、稲葉のバットは回り切っていただろう。
内角低めから落ちたために、稲葉のバットは止まったのだ。
結果は四球。
個人的な勝負は、稲葉に軍配が上がったが、忘れてはいけないのはこれは野球の試合であることだ。
自分もこの漫画にでも出てきそうな、理想的な勝負を堪能してしまい、状況を忘れてしまったほど。
まだ点をとられたわけではない。
打席には、ホームランを放っている4番高橋。
田中の本当にすごいのはここだった。
スライダー:ボール
スライダー:空振り
ストレート:見逃し
スライダー:空振り
稲葉にはあれほどストレート勝負にこだわったにも関わらず、次打者にはきっぱり頭を切り替えていることだ。
外角低め一辺倒、4球中3球がスライダーという極端な冷静さ。
稲葉との野球選手として至福の勝負を目の前で見ていただけに、この変貌には高橋も驚いたことだろう。
容易に対応出来るものではない。
狙っていたであろうストレートも外角低めぎりぎりにコントロールされ、手を出すことすらできない。
3球目と同じ軌道で、ボールとなるスライダーに手が出てしまうのは仕方がないところである。
田中とはなんという投手なのだろうか。
あれほど気合を前面に出しながら、頭はクール。
それでいて、球には気合を乗せることが出来るのである。
よく「体はホットで頭はクール」とは聞くが、あれほど自在に操っている選手を見るのは初めてだった。
稲葉の7球目、高橋へのスライダー勝負、今でも信じられない。
きっと田中は稲葉ジャンプも、高橋への大声援をもしっかり耳に入っていただろう。
それほど冷静で、なおかつその声援を自分のものにできるというわがままさ。
投球の組み立ては、10年選手かと思うほど落ち着いている。
思い出しても信じられなく、ただ首を振るばかりだ。
高橋への4球目(決め球)を投げる前に、田中はマウンド上で「あと1球だ」とつぶやいている。
あれは決意というより、その瞬間未来が見えたのではなかろうか。
思い通り空振りさせる姿が。
その瞬間、自分は鳥肌が立ってしまった。
松坂やイチローのように、なにかを持っている選手だとは思っていたが、今日改めて再認識できた。
そして、今までにないタイプの投手だということを。
一人二役をやる投手は大エースならば、当たり前かもしれない。
ただ、それにその状況を実況しながら楽しむことができる選手は数少ないだろう。
そして気合を注入しながら、澄み切った頭で配球をも考える。
文字にするとウソみたいに感じるが、今日の、あの場面の田中はそういったことが出来ていた。
これは間違いない。
喜びよりも先に、恐ろしさを感じてしまう。
将来どういった投手になるのだろうか。
9回裏、最後の打者糸井の打球はスライダーを上手くとらえ、いい角度でレフトへ飛んだ。
強振したわけではないが、レフトがフェンスまで下がっていく。
第1戦、スレッジの打球を想像させるようでドキッとさせたが、無事レフトのグラブに打球はおさまった。
「あぶねー、あぶねー」を連発しながらマウンドで無邪気な表情を見せる田中。
これがあの大きな仕事を成し遂げた投手の顔である。
これで、イーグルスは永遠に来ないかと思われた勝利を手にできた。
成績は1勝3敗(アドバンテージ1敗分含む)。
田中の投球は見事だった。
自分一人で投げ抜くという覚悟は本物で、それを実行していた高校時代からさほど時代が離れていないのも功を奏したのかもしれない。
なぜなら、プロではなかなかない考えだからだ。
惜しむらくは、8回稲葉から三振(凡打でも)を奪い、第1戦のように1勝以上の価値を得たかったところである。
だが、それは高望みしすぎだろう。
まずは1勝しなければ何も起きない。
千里の道も一歩から。
大逆転チャンスなどありはしないのだから、何が何でも1日1勝していかなければならない。
逆に目標はシンプルである。
イーグルスファンにとっては、それでも…という方がいるかもしれない。
山崎の不調や、1つ負けたら終わるなど不安要素は沢山ある。
次期監督に元広島監督のブラウンに声をかけたという記事も見かけた。
うわさ通りでもあり、なぜこの時期なのだろうと首をひねりたくなる。
だが、このすばらしい札幌ドームでの観客の前では、そんな騒動も吹き飛ぶ。
野球冥利に尽きる環境を、プレーする喜びの場を観客は作ってくれている。
遠い地でテレビを見ている、自分たちファンもそうだろう。
そんな前で、将来のことを考えている選手はいない。
(おそらく当事者の野村監督もそうだろう)
自分たちの最高のプレーを披露したい、チームの勝利に貢献したいという思いでいっぱいだろう。
甲子園は野球の聖地とも言われている。
だが、今日までの3戦を見ると、この札幌ドームこそが、このすばらしい観客を含めて、ここが聖地だと胸を張って言いたい。
今日負ければ終わりという厳しい中、第1戦より明らかに数が増えているイーグルスファン。
ファイターズのあきらめない気持ちを支えている、北海道の冬を思い出させる白で客席を埋め尽くす老若男女のファイターズファン。
それにふさわしい野球を見せてくれている両チームの選手達もしかりだ。
北海道は熱い熱い。
週末にまだこの1戦を見ることができる喜びをかみしめたい。
それだけで素敵な休日になることは間違いない。
その結末が月曜日まで伸びることがあれば…。
明日の試合が熱戦にならないわけはない。
第4戦はデーゲームだ。
セ・パ、セ・パとチャンネルを変えていた人もひと安心。
明日の戦いも楽しみでならない。
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2009年10月22日
細身のエースはマウンドで泣いていた。
それはこの回から明らかに投球フォームがおかしくなった原因の、右足の痛みからだろうか。
それとも、逆転を許したことに対する自らの不甲斐なさだろうか。
もしかすると、チームに対する不満ではないだろうが、ひょっとすると追いつけないのではという絶望からだろうか。
6回までの気迫のこもったまなざしから発していた目の輝きとは別の光があった。
実際に泣いて見えたのは、楽天ファンの気持ちの表れからかもしれない。
熊のように大きな体をした不惑の男は、ベンチでうつろな目をしていた。
打席ごとに回ってくるチャンス。
昨日の試合後にチームに活を入れた男だからこそ、責任感は重くのしかかり、自分が何とかしようという思いは迷いのあるスイングにつながっていた。
これまでチームを引っ張ってきた、結果を残してきたと自他ともに認めている主砲であるからこそ、この結果が不甲斐なく、そしてあからさまに不満を表すことが出来ない。
なぜなんだ、なぜなんだ。
迷いは思い切りを奪い、打ちたい気持ちは空回りする。
バット一本でしか貢献できないポジションであるからこそ、ベンチで考える時間は多く、迷いが迷いを生む。
劇的な試合で勝利を飾ったファイターズよりも、どうしても視線は撃沈したイーグルスに目がいってしまう結果となった第1戦。
誰が見ても素晴らしい試合であり、そしてイーグルスにとってあまりにも後に残る敗戦なのは間違いない。
「勝っていれば…」「あそこでこうしていれば…」という思いは、反省でも何でもない。
次の試合の妨げにもなるし、瞬時のプレーを引きずるだけである。
だが、だが。。。
そういった思いを断ち切るために、いつもの勝利への期待の他に、少なからずの悲壮感をのせて、イーグルスの岩隈は先発のマウンドに上がった。
ファイターズの先発は糸数。
4回にイーグルスはセギノールがバックスクリーンへの本塁打で先制すれば、ファイターズもすぐさま追いつく。
先頭の稲葉がレフトへの大きな飛球を放ち、レフトのリンデンがグローブに収めるも、フェンスにぶつかり球をこぼしてしまう。
この後1死3塁となり、昨日のヒーロースレッジがファーストへ鋭い打球を放つ。
だが、ファーストのセギノールがファインプレー。
なんとか抑えられるかという楽天ファンの期待を打ち砕いたのは6番小谷野。
2球目の外角へのストレート、決して簡単な球ではないように思えたが、素直に打ち返し、ライト線へのタイムリーツーベース。
これで同点に追いつく。
昨日とは立場を逆にしたかのような展開。
取られたら取り返すファイターズ。
毎回ランナーを出しながら、チャンスをつかみながら、なかなか点に結びつかないイーグルス。
岩隈でも無失点に抑えられないか。
同点にされ、さらに焦りが募るイーグルス。
こんな状況を見て、思い出したことがある。
麻雀をやる方ならご存知だろう、無敗の雀士と言われた桜井章一の話だ。
彼は麻雀でのぎりぎりの競り合いをこんな風に例えている。
「水を張った洗面器に顔をつけ、どれだけ我慢できるかという状態」
イーグルスは早く楽になりたい、早くリードしたいという気持ちが出ている。
昨日のサードで止めたコーチャーのように、落ち着いたところがない。
今の状態では、我慢比べに耐えられないのかもしれない。
短期決戦が「短気」につながっている。
それも仕方がないかもしれない。
なにせ、あの第1戦の後だから。
象徴的なシーンは7回だ。
2死2塁からイーグルスは3番好調の鉄平。
迷わずファイターズは敬遠を選ぶ。
2死1、2塁。
昨日も似たようなシーンがあり、そこでは山崎が意地のタイムリーを放っていた。
だが、今日は違っていた。
同じ左方向へのフライには違いないが、昨日はフェンスまで深く下がったレフトの森本は前進してキャッチ。
またしても、点が入らない。
7回裏、2死2、3塁から稲葉を敬遠。
2死満塁で、4番の高橋と勝負を選ぶ。
コインの表裏のように、同じ状況が現れる。
しかし、結果は違っていた。
このコイントスに勝ったのは、高橋だった。
岩隈のシュートを詰まりながら、ショートの頭を越えるヒットで2点を勝ち越し。
この試合、初のリードを奪われる。
4番の一振り、なんと大きなものか。
イーグルスも一筋縄ではいかない。
取られたら取り返す。
ただで帰るわけにはいかない。
あちらに傾けば、すぐその反動でこちらにチャンスがくるという野球の法則を知っているイーグルスは、すぐさまチャンスを作る。
代わった宮西から連続ヒット、四球で無死満塁。
この試合最大の山場だ。
投手は3人目金森。
代打憲史の打球は、高く弾むぼてぼてのファーストゴロ。
ここで目を疑った人は多いのではないだろうか。
自分はファイターズのファースト高橋の送球が、ホームに投げられるのを信じられない目で追っていた。
そして、少しばかりの笑みと軽く握りしめかけた拳と。
それはほんの瞬間だった。
ボーンヘットかと思われたプレーは、適切なプレーだった。
サードランナーのセギノールの足が遅く、ホームはフォースアウト。
ざわめく球場。
各家庭のテレビの前で見ていた野球ファンもきっとなんらかの声を出したはずだ。
おそらく「うそだっ」というニュアンスを含む言葉を。
昨日の9回に続き、信じられない結果。
続く打者が打ち取られ、無死満塁が0点に抑えられるのをただぼーっと眺めることしか出来なかった。
まるで、札幌ドームに濃い霧がかかったような展開。
夢のような出来事だ。
これもファンの後押しだろうか、それとも勢いの差だろうか。
8回まで投げ切った岩隈の力投もむなしく、ファイターズが3-1で勝利、早くも日本シリーズに王手をかけた。
イーグルスにはすべてが今一つ足りなかった。
まるで彼女が初めて料理本を見ながら作った味噌汁かスープのようだ。
食べれない事もないが、塩だろうか、だしだろうか、なにか足りない。
そんな思いでいっぱいのこの試合。
第1戦は中継ぎの弱さ。
第2戦は主砲の出来、あるいは打線のつながりが欠けていた。
線ではなく、点になった攻撃。
そして、野村監督らしからぬ采配ミス。
8回のセギノールへ代走を出さなかったのは、厳しいかもしれないが采配ミスと言っていいのではないだろうか。
普通のランナーなら、明らかにセーフだった当たりである。
采配ミスとまではいかないかもしれないが、選手任せの消極的な采配だと言えよう。
チームとして、なにかちぐはぐさを感じた第2戦。
これもすべて、第1戦の衝撃がまだ残っているのだろうか。
止められた勢いの残骸は、これほどもろいものなのか。
ファイターズには余裕が感じられた。
内容を見ると、そんなに完璧な内容ではない。
第1戦と同じように、中継ぎの不安定さが感じられたこの試合。
だが、それも致命傷にならないのは、チームの総合力を信じているからではないだろうか。
イーグルスが1つの敗北で吹き飛んでしまったものが、ファイターズにはある。
もちろん、勝敗の差で余裕があるのも大きいだろう。
だが、それだけではないような気がする。
この2戦、無形の力の計り知れない大きさを感じる。
イーグルスは、打線のつながり、エースの力、主砲の力、すべてを止められた上での敗戦となる。
そして、星勘定の上でも崖っぷちに追い込まれた。
何一つ明るい兆しが感じられないかもしれない。
だが、試合内容でそこまで圧倒されているわけではない。
2連勝されたファイターズに付け込む隙はある。
チャンスを作れてないわけではない。
正直、これをひっくり返すには並大抵ではない。
なにかとてつもないことがなければ苦しいとは思うが、第3戦の先発は田中だ。
高校時の地元である北海道で、快刀乱麻(ノーヒットとまでいかなくても1安打完封など)の投球をすれば、もう一度チーム全体が自分たちの力を信じるきっかけにもなる。
幸い、何かを持っている田中の先発というのがまだ一縷のツキを感じる。
待ちに待った北日本対決。
3戦のみで終わってしまうのは忍びない。
冬の訪れはまだ先でいい。
熱戦続きだったこの2戦、まだまだ野球の醍醐味を味わいたいものだ。
まずは1戦ずつ、それが週末への楽しみにもつながる。
第3戦も熱戦を期待したい。
posted by ballgame |23:56 |
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2009年10月21日
完璧なはずだった。
2連勝、ほどよい打線のつながり、ソフトバンクとの戦いで得た自信をそのまま活かし、9回までは完璧なはずだった。
これで坂道を転がるように、さらに勢いがつくと。
イーグルスファンは思っていた。
圧倒的多数の白のユニフォームの中、一角だけ目立つえんじ色のユニフォームを着ながら「来たかいがあった」と。
信じていた。
5点差つこうが、9回にダメ押しの得点をとられても。
先発や中継ぎが勢いを抑えることが出来なくても、うちの打線のつながりはそれ以上だと信じていた。
ファイターズファンは願っていた。
超満員で埋まった球場は、数万人の頭の中はひとつのシナリオが等しく書かれていた。
そしてそれは実現した。
逆転サヨナラ満塁ホームラン。
白の津波が、声の地鳴りが球場をうねる。
人は喜びが頂点に達すると、真っすぐ歩けなくなるようだ。
とんでもないことを起こした張本人、スレッジはかにのように横向きにスキップしてダイアモンドを一周した。
それが観客に表情をお披露目しているかのように。。。
こんな第1戦はあっただろうか。
信じていたもの、願っていたもので幸不幸は分かれてしまったが、それでも生涯に残るような試合を見たのは共通している。
間隔が開いたファイターズだったが、1回に固さの見えるイーグルス先発の永井から選手点を奪う。
だが、ほどよい試合間隔で臨めるイーグルスもすかさず次の回、同点に追いつく。
同点の4回、追い込みながら、ファイターズの武田はセギノールに死球を与える。
左ひじに当たり痛がるセギノール。
だが、痛みをこらえ1塁に向かうセギノールに自然と拍手が起こる。
いい雰囲気だ。
CS4打数3安打、この試合もすでに1本打っている中島が、センターオーバーの2塁打を放つ。
センターの肩がいいとは言え、サードコーチャーはストップさせる。
無理はさせない、焦りがない。
つながりを、チーム力を信じているからだ。
1死1、2塁。
下位打線の中心と言える草野が初球のストレートを完璧に捉え、センター最深部への犠牲フライ。
そして続くは、ごたごたがあった張本人のリンデン。
このリンデンはシーズン中、武田に対して2打数0安打の2三振。
追い込まれるまで、外のスライダーに全くタイミングが合ってなかった。
だが、追い込んでからのスライダーがかすかに内に入った。
捉えた当たりはバットの先端、センター前にポトリと落ちる。
この回2点を追加したイーグルス。
選手起用がばっちり当たる。
そして、選手達のセンター中心に返すという意識が徹底している。
この試合もいけると感じる瞬間。
6回裏、この人が打つと盛り上がる。
1死後、稲葉が右中間へ2塁打を放つ。
稲葉ジャンプといい、4回のセギノールの拍手といい、頂点を決めるにふさわしい球場であり、ファンでもある。
まさに野球冥利に尽きる。
ここからが圧巻だ。
4番高橋が追い込まれながらも粘り、四球をもぎ取る。
1死1、2塁。
自分はいろいろな応援を見てきたが、この日のこの回、スレッジへの応援ほどすごいものを見たことがない。
イーグルスに肩入れしてみていながら、この応援でプレー出来るファイターズの選手達は強いはずだと思った。
札幌ドームにも入ったことが無いし、普段あまり見る機会がないからかもしれない。
もし毎回こんな応援なら、プロ野球のホームアドバンテージに対する考え方を変えなければならない。
それほどすごかった。
説明が難しいが、応援が2段階なのだ。
古くさくあるが、広島の前田智の応援を思い出してもらえればよい。
多分、その2段階が男の応援、女の応援と分かれているのだろう。
いつも聞いている野太い低い声、そのあとに高い音程での応援。
これは今までに聞いたことのない応援で、非常に耳に残る。
何をいまさら…という人もいるだろう。
出無精な野球ファンだと責める声もあろうがお許しを。
驚いたのが、男・女に分かれるほどファン層がしっかりしているということである。
女性ファンが多いこと、それがミーハーではなく野球を通していることがすごい。
地域に根差した姿がそんなところにまで感じられて、ファイターズの強さの源が表れているようにも感じて、鳥肌が立った。
(ひょっとすると応援のスタイルは間違っているかもしれない。。。)
最近目立ちがちなゴルフ界でのマナーの悪さが、ここではありえない。
だが、永井も精神力が強い。
この場面カーブを有効的に使い、なんとか無失点に切り抜ける。
さすが、岩隈、田中と並ぶ3本柱だ。
イーグルスの強さはこの投手力だけでなく、流れをつかむことにたけている点だ。
点を取られたら取り返す、ピンチの後にチャンスあり。
6回裏のピンチを乗り越え、7回表チャンスを作る。
ヒット、2塁打と続き(ここでもコーチャーは無理をしない)、1死2、3塁。
2死となったところで、3番鉄平を敬遠し、満塁策で山崎と勝負を選ぶ。
試合を決める場面。
0-2からのストレート、狙っていた山崎の打球はレフトに上がる。
レフト森本はフェンスにはりつきジャンプする。
高く上がった打球、しずまる球場。
タイミング良くジャンプした森本のグローブに打球は入らず、走者一掃の3点タイムリー二塁打。
主砲のタイムリー、賭けに勝ったイーグルス。
これ以上何を求めるだろうか。
北日本以南で観戦しているファンが想像するより、ずっと寒い北海道。
そして、試合間隔が空いたファイターズはエンジンのかかりが遅かったようだ。
そのエンジンがいよいよ動き出したのは8回からだった。
1点をとり、先発の永井を引きずり下ろす。
イーグルスは小刻みに投手を交代するが、なかなか勢いを止めることが出来ず、ファイターズはこの回4点を奪う。
これで2点差だ。
だが、これで焦るイーグルスではない。
大人の、プロの集団と成長したイーグルス。
点を取られて黙っていない。
先頭打者がヒットで出る。
2死2塁で、打席は鉄平。
鉄平は左腕林の投げたスローカーブを完璧に捉え、ライトスタンドへの2ランホームラン。
本当にうまいバッティングだ。
首位打者となったことが、敬遠をした理由を証明する一発。
球場の静けさは恐ろしいほどだった。
ポール際ではあったが、明らかにホームランとわかる当たり。
だが、あまりの鎮まりっぷりに、投げた林はファールと一瞬思ったほどだった。
なにが起こったか解らない。
そんな混乱が、球場のえんじ色を着たユニフォームのファン以外を襲っていた。
これで再び4点差。
イーグルスは守護神福盛を送る。
ここからは、まさに夢のようだ。
1死後、3連続ヒット、追い込みながら4番高橋は粘り、四球を選ぶ。
満塁で、スレッジの登場。
後はご存じの通り。
外角ストレートを完璧にとらえ、打球はファンの夢を乗せてレフトスタンドにぐんぐん伸びていき、飛び込んだ。
ファイターズはアドバンテージがある状態とはいえ、それは静止したスタート状態と言える。
一方、後ろの位置からスタートするイーグルスは、そのスタートラインまでは助走をつけてスタートを切る状態だと言っていいだろう。
例えるなら、陸上のバトンを渡すような状況だろうか。
目印となるラインに着たら、次走者はスタートを切る。
先にスタートしたとはいえ、勢いがついているから追いつかれてしまう。
そういった有利な点はあったにしても、イーグルスはアドバンテージがあるファイターズを第1戦で破ることが重要だった。
現に試合中、いや9回表までは理想的な展開で、助走をつけた部分をうまく活かしていた。
ただ、誤算だったのはファイターズがスタートしてからの勢いが想像以上に速かったことだ。
目測を誤っても仕方がない。
シーズン中ならあり得ないこと、CSシリーズだからこそ起こりえたことだと思う。
ファンの夢が、期待があれほど一致しなければかなわない現実。
それがかないやすい場が、CSシリーズであることは、MLBのプレイオフでも実証されている。
だから、シーズンを勝ち抜いたものだけが参加できる夢の舞台なのだろう。
現実に戻って話を進めよう。
この1敗はイーグルスにとって、非常に痛い1敗だ。
この試合で勝てなかったら、どの試合を勝てるというのだ。
CS第1ステージでは目立たなかったが、やはり中継ぎ以降に不安が残ることがもろに露呈した展開となってしまった。
懸念していたこと。
圧倒的な先発の力で弱点は覆っていたが、表に出るとこれほどはっきりと出てしまうとは。。。
これでファイターズは、先発さえ下ろしてしまえば(つまり岩隈、田中、今日投げた永井など)という希望を再確認できた。
試合中あきらめることは無くなってしまったのだ。
もちろん、どんな点差でもあきらめる選手はいないだろうが、ふと心の中で思うことはあろう。
ヤンキースのリベラのように、圧倒的な存在感をもっているリリーフならば、沢山の打者にそう思わせることができる。
ファイターズにとって、この自信は1勝以上の価値がある。
確信のない自信こそ、ひょっとすると素晴らしい武器となりうる。
そしてイーグルスにとっては、アドバンテージ分も含めて、ダメージが残る敗戦となってしまった。
このシリーズは休息日がない。
気持ちの切り替えは難しいと思うが、なんとか切り替えて粘り強く戦ってほしい。
山崎がロッカールームでこう鼓舞したそうだ。
「暗くなるな。ダルビッシュに負けて0勝2敗だと思えばいいじゃないか。切り替えてやろう」
選手全員がこういった気持ちで開き直れれば、五分以上に戦えた第1戦同様、ずるずると負けることはあるまい。
見ごたえのあった、そして夢にも出そうな試合展開だった。
札幌を中心に、上着の要らないほどの熱気が伝わってきた第1戦。
西高東低というと冬型の気圧配置だが、野球ファンにとっては札幌に高気圧が居続ける。
願わくば、長く長く第6戦までみたいところだ。
2戦目以降も楽しみにしたい。
posted by ballgame |23:55 |
プロ野球 |
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