2009年10月05日

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

傾く日差しの中で、イチローが達成したものは、間違いなく今年一番大きなものだった。

長いシーズンも今日で最終戦。
マリナーズはホームにレンジャーズを迎えた。
1点リードの9回、抑えのアーズマが投げたストレートで相手打者は空振り三振。
マウンドでガッツポーズのアーズマと、しっかりと抱き合う捕手のジョンソン。
それは優勝を決めたという激しい喜びではなく、家族がするような温かな抱擁だった。
大仕事をやりきったという仲間同士の穏やかな満足感が漂う抱擁。
ブルペンの投手陣でも、同じ光景が見られた。

最終戦、マリナーズはほぼ満員のホームの中で、試合を終えることが出来たという幸せな結末を迎えた。
観客が総立ちの中、熱狂的というよりは、温かみを持った拍手で選手を迎えたことは、この試合が勝利で終えたこともあるだろう。
しかし、それよりも大きなものは、今年のマリナーズの戦いの中に久しぶりのわくわくを感じられたこと、そして来シーズンへの期待からきているものだろう。
残念ながら、今シーズンもプレイオフ進出を逃し、地区3位に終わってしまったマリナーズ。
だが、チームは勝ち越し、それ以上に応援したいと思わせるいいチームへと変貌していた。
例年なら負けが続くとずるずる行くところでも、今年はなんども踏みとどまってきた。
一番大きいのは、マリナーズが一つの生きたチームとなっていたこと、ファンにとって魅力ある家族のようなつながりを感じるチームとなっていたことだ。

試合終了後、マリナーズの選手はグラウンドを1周した。
これは試合前、ミーティングで決まっていたようだが、それを提案できるワカマツ監督、そして実行に移せるチームの雰囲気がまたいい。
スタンディングオベーションの中、グラウンドを回る選手達から、にょきっと2つの頭が伸びてきた。
なんと、グリフィーとイチローが肩車をされているではないか。
グリフィーとイチローは、お互いを見やり、にっこり笑い、ファンに手を振っていた。

イチローは今シーズン、様々な記録を達成してきた。
WBCでの日本の優勝、MLB2,000本安打、9年連続200本安打。
2試合連続サヨナラ打、日米初の退場、2回の長期欠場、WBC決勝での最高の集中力から出た決勝打などなど。
燦然と輝く記録から印象に残る記憶までさまざまだが、まさか最終戦の、しかも試合後に、今シーズン最高の出来事が起こるとは思わなかった。
公式な記録ではないし、数年後、いや来年でも多くの人の記録にさえ残らないことだろう。
しかし、イチローが今シーズン成し遂げた記録の中で、このグリフィーと2人で肩車をされたことは間違いなく一番だ。

長年待ち望んてきたもの、それはこの日に代表されるケミストリーであり、家族的なチームである。
もちろん、家族的といっても、なぁなぁではなく、一人ひとりが自分の役割、今できることをきっちりこなすことで生まれるプロの家族だ。
ある意味、イチローが長年追い求めてきて、偉大な個人成績よりも達成が難しかったものでもある。
それを待ち望み、自分の出来ることを積み重ねてきたイチローがやっと手にできたもの。

試合後のコメントでイチローは語っている。
「単純に気持ちのいいチームでしたね。価値観を共有できている感じが、すごくうれしかった」
だからこそ、野球の喜びを体で表現するイチローがいたし、チーム力もアップした。
WBCで得た経験からイチロー本人は1ランク上のステージに上がり、それを支える高いプロ意識をチームメイトは敬遠するのではなく、吸収するようになった。
それが勝ちにつながり、さらに家族的なきずなは深まってきたようにおもう。

イチローが達成した一番大きなもの、それは最終戦の試合後だったというある意味、今年のイチローを象徴しているように感じる。
グリフィーの去就はまだ決まっていないようだが、なんとか来年も続けてほしいと願う。
そして、今年のマリナーズに感じたわくわく感や家族のような雰囲気が、来年もまた続くように祈りたい。
今日の光景を見て、それはぼんやりした夢では終わらない、なにか内定をもらっている学生のように来年の4月には存在する。
そんな力強い現実感を感じることができ、今シーズン見納めとなってもどこかしら満足感がある。
マリナーズ、そしてイチロー。
今シーズンお疲れ様でした。
まずはゆっくり休んでください。

シーズンが終わるのに合わせたように、週末に見せていたきれいな満月も徐々に欠け始めている。
ただ、今日イチローが達成できたこと、それは決して一人では成し遂げない記録(記憶)に、しばらく心の中のマリナーズは満月のままだ。
マリナーズという太陽は沈んだが、これからは、もうひとつの月が徐々に満ち始める。
そう、プレイオフだ。
月に例えるには、1試合1試合熱すぎる存在だが、こちらも注目しないわけにはいかない。
爽やかな気持ちのまま、プレイオフに突入できる幸せ。
この時期、野球ファンはたまらない。

posted by ballgame |23:56 | MLB | コメント(12) | トラックバック(1)
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2009-10-06 10:01 | 続きを読む
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今年一番の達成(イチローの記録づくめの中で)

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×づくめ 
〇ずくめ

posted by 日本 | 2009-10-06 06:00

今年一番の達成(イチローの記録づくめの中で)

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私が感じていたことを、それ以上の素晴しい表現力&文章で読ませていただきました。
感動を有難う!

posted by タバサの騎士 | 2009-10-06 09:17

今年一番の達成(イチローの記録づくめの中で)

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いや、最後にマスクかぶってたのは城島じゃなくてジョンソンでしょ?

posted by abd | 2009-10-06 12:14

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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今年のイチローの最後を飾るにふさわしい素晴らしい記事をありがとうございました。

posted by ume | 2009-10-06 15:12

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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MLBのドラフト制度を考えればM'sが浮上してくることは既定路線。いかに前GMが無能だったかが浮き彫りの今シーズンでした。
が、無能経営の傷跡か、最悪の時期が長かった割には目立ったプロスペクト(特に野手)がいないのも事実なんですよね。クレメントも出しちゃったしね。まあそれは現首脳陣だけど。
しかし意外とやるかも臭を漂わせる若手はそれなりにいる。一人出てきて、さらに外からまともな主軸打者を一人補強できれば・・・

イチローの今契約期間内にはPS進出以上のグッドニュースが現実のものになりそうな。

posted by pichco | 2009-10-07 00:34

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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でも、結局イチローは今年もプレーオフに出られず、最初の年以来、イチローがチームの中心になってから一度もプレーオフに出られません。結局チームが勝ってなんぼですから、、、。イチローちゃん、個人記録はすごいけど、チームを引き上げることのできるいいチームメートではないんだな、きっと。今年のシアトルは”気持ちのいいチーム”??? そんなことどーでもいい。ワールドシリーズでプレーしてから、偉そうなこと言ってちょ!
ミネソタ、デトロイトいい試合だった。
明日から我がヤンキースはそのミネソタとディビジョンシリーズ開幕!オクトーバーーー!!

posted by いち | 2009-10-07 11:25

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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殿堂入りも確定してると言って良いでしょうね。
チームが優勝しても、その長い歴史の中で
一々覚えている人は少ないでしょうけど、故人で
様々な記録を達成して、殿堂入りした方が人々の記憶に残るんですよね。

これからもイチロー選手応援してます!

posted by fss | 2009-10-07 11:38

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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下らない応酬は自らの品位を損なう。

posted by VLL30 | 2009-10-07 15:22

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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fssさん

日本では大騒ぎしているけどアメリカではほとんどのMLBファンはイチローの記録のことを知らないよ。
だって比較している選手が昔の誰も知らないような選手ばっかりだもんね。

なぜイチローの記録が話題にならないのか。
簡単です。
今も昔もクリーンナップや強打者なんて呼ばれるバッターは打数が少なくて200本安打なんて始めっから無理だし、そもそもそんな数字は狙ってません。

イチローみたいにシーズン650~700打数近く打つ打者なんてのはそもそもいないんだよね。
もし強いチームの3番バッターが200本安打を打っても単打ばかりだったら3番はクビでしょう。
このへんのところをよ~く考えてから話して頂けませんかね。

posted by よ~く考えてね | 2009-10-07 18:18

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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みなさん、たくさんのコメントありがとうございます。
早速訂正入れていただいた方も…失礼しました。
嬉しいお言葉も。
書いてて良かった、共感できてよかったとつくづく思います。
みなさんの冷静な節度あるコメントで、いろいろな見方があり参考になります。

ひとつだけ言わせてください。
イチローの記録が…というコメントですが、これもひとつの見方だと思います。
違う見方をすれば、強打者や3番打者だから200本安打より本塁打、打点を求められるのであって、イチローのようなトップバッターにはその役割は求められないのではないですか?
3番打者が単打ばかりでも打点が多ければ首にはならないでしょうし…どこかで打線の組み換えを図るでしょう。

4番だけでは勝てないように打線もそれに伴った役割があると思います。
イチローの記録はみな知らないかもしれませんが、球場で一番わくわくさせる選手はイチローだという人はたくさんいるでしょう。
これも見方の一つとして挙げさせてください。
他のコメントもなるほどなぁという広い視野を持っていただけると嬉しいです。

深呼吸ひとつ、節度あるコメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

posted by ballgame | 2009-10-07 21:58

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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ballgameさん、自分の感じたことが全て書いてあるような文章で感動しました。
勿論野球だけでなく全てのスポーツにおいて勝つことが大前提であって
いくら良い試合をして健闘しても負ければ「そこまで」です。
しかし最終戦に勝ち、肩車をされるイチローとグリフィー、担ぐ選手達、それを見守る観客
を見ていると、勝つことと別の何かがあることを実感しました。
イチロー選手だけで無く、このチームを応援してよかったと心から思いました。
彼らは最終日、この1年への達成感だけでは無く「来年はもっと高いステージに登らなければいけない」
と感じていたようです。
来年はまた多くが違うメンバーになっている可能性が高いですが
また昔のようにイチロー選手のいるシアトルマリナーズではなく
シアトルマリナーズにいるイチロー選手を応援できることは間違いないでしょう。

posted by nabe | 2009-10-07 22:39

今年一番の達成(イチローの記録ずくめの中で)

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ワールドシリーズで優勝を目指そうとする球団ではイチローを1番打者として欲しいと思う監督はいないんじゃないでしょうか?
今年もイチローが完全なボールを空振り三振したり,反対にボール球を強引にヒットしたシーンをたくさん見ました。試合序盤でも終盤でも関係なく自分のスタイルを貫く姿勢には,少なからず残念に感じます。
個人対個人の戦いのレベルの話なら打率・ヒット数の比較だけで良いんですが,そのイチローのバッティングスタイルは計り知れなく試合の結果に表れているんじゃないかと思います。
ボール,ストライクの選球を無視した野球とは?
相手が良いピッチャーであれば手玉に取られます。実際,エンゼルス相手ではボールを振らされた三振ばかり。。。。。
野球で勝つ為の基本とはボール球には手を出さない!------そう思いますが違うんでしょうか。
ボール球に手を出して簡単にアウトになってしまう。相手投手は楽ですね。
マリナーズの他の選手を見ても選球眼のない選手がほとんどです。チームリーダーの1番打者を真似してる訳ではないでしょうが,監督にとっては扱いが難しい選手だと思われます。
盗塁にしても,ここで盗塁をと期待する場面でも,なぜかしません。100%セーフになる自信がないと盗塁はしないと言っていましたが,それでは応援するファンとしてはガッカリでしょう。
すなわち,イチローの野球とはチームの勝利優先ではなく,イチロー自身の拘りだけでしている個人野球と言わざるを得ません。
もっと上のランクの野球を目指して欲しいのですが。 その結果チームは確実に強くなると思いますよ。 イチローの記録更新を見るのは楽しみですが,やはり何か釈然としない不満が残ります。
おそらく出塁率が打率+1割となった時,初めて全世界の人たちも惜しみない賛辞を送ってくれるのではないかと思います。

posted by 不満足 | 2009-10-13 12:31

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