life is ball play

メジャーで勝つということ(宮里藍の挑戦)

このエントリーをはてなブックマークに追加

今年の全英オープンは男女とも、勝利の女神が少しひねくれ者だったのかもしれない。
特に日本のゴルフファンはそう思った人が多いだろう。
そんないたずら好きの女神の存在とは別に、「メジャーに勝つには」何が必要かということを考えさせられた。

宮里藍は中盤(15H)までは、優勝のチャンスは十分にあり、応援しているファンには期待を持たせ続けた。
前週の優勝がフロックではないことを、しっかり証明していたゴルフ内容だった。
BBCの解説者が「ベストテンポ」と思わず言葉に出るスイング。
右手にまったく力が入っていないスイング。
トップの位置、そしてスイング後のフィニッシュの位置が他の選手より高いのが特徴だ。
太極拳を思わせるゆったりとしたスイング。
背筋を伸ばして、早いピッチで歩く姿や、鋭い鷹のような視線とともに、ギリシャの彫刻のような美しさを感じる。

そして同じ組で回った、韓国のシン・ジエ選手との英語での会話。
ティーショットを打ち終わり、セカンド地点まで行く間、二人は仲がよさそうに話していた。
ゴルフをしていると気づかなければ、緑の多い公園を散歩する女子大生のような雰囲気だ。
それほどリラックスしていた。
オンとオフの切り替えが明確で、集中力の高さを感じる。

宮里藍は好調だった。
同じ国の選手を応援したい自分たちファンの目を差し引いても、優勝する可能性は十分感じただろう。
なぜ優勝できなったのか。

原因はいろいろ考えられる。
4日間で6オーバーと叩きに叩いた苦手ホールである14Hの存在。
最終日も右のバンカーに入れ、ボギーとしてしまったこと(3日連続)
そして、いろいろな記事でも指摘されている17Hのダブルボギー。
追いかけるものがスコアを崩し、トップを楽にしてしまったミスだ。
一番の直接の原因はやはり17Hだろう。

しかし、間接的にそのスコアを引き出してしまった原因は、16Hにある。
むしろ、16Hこそが、宮里にとって痛恨のホールとなった。
スコアでみれば、パーで上がったこのホール。
しかし、パーで上がったというよりは「バーディを取れなかった」ホールと言える。

15H、パー5でのバーディで勢いをつけ、続けて16Hでも4,5メートルはあるバーディパット。
シン・ジエが同じラインからパットし、ラインは十分参考になった。
これを決めればトップと2打差。
十分プレッシャーをかけれる。
そのパットを宮里は外してしまう。
打てずにショートしてしまったわけではない。
オーバーしたが、打ち切れずスライスしたという表現、わかっていただけるだろうか。

決して距離の短い、やさしいパットではない。
しかし、この場面で決めなければ、メジャーは勝てない。
メンタル面での成長が著しい宮里のことだ。
この形に出ないミスを明らかに引きずっているわけではない。
宮里の心境を考えると、「逃してしまった」という気持ちが少しでも残っていたのだろう。
それが、17Hでのティーショットのミスにつながったと思う。
だから、敗因をあえて探すとすれば、直接の敗因は17H、しかしそれを引き起こした最大の山は16Hのバーディパットだったのだ。

メジャーで勝つということ。
最終日、バック9でどれだけチャージできるかにかかっている。
宮里も果敢にチャレンジした。
しかし、それ以上に爆発した選手、それが優勝したC・マシューだ。
彼女は13Hからの3連続バーディーで一気にスコアを伸ばした。
文字にすると単なる一文だが、実際に観戦していると、そんな言葉では足りない。
なにせ、13H、14Hと連続でラフに入れているからだ。
しかも、ファーストカットではなく、ギャラリーのいるあたりにまで球が行く半端じゃない曲げ方。
それが、連続バーディにつながる。
それだけではない。
2日目には、イーグルあり、ホールインワンまで出し、バック9を30というスコアで回る強運ぶり。

ラフに入れても、ギャラリーの踏んだ跡で、ひどくないライ。
そしてフックしてスライスしてという長いスネークラインもものともしないバーディ奪取。
後続が自滅していく絶好の展開。
スターを取ったマリオ状態、どうぞ優勝してくださいと言っているような流れをはっきり感じることができた。

「メジャーで勝つということ」
それは、普通のプレーをしていては女神はほほ笑まないということだ。
何か人智をこえた1つのショット、1つのパット。
そういったものが出なければ、メジャーでは勝てない。
やはり、選ばれたものが優勝する大会、それがメジャーだとつくづく感じさせられた。
男子の全英もそうだ。
シンクの最終Hのパットでさえ、奇跡的だったではないか。

トム・ワトソンが敗れ、宮里藍が力尽きた。
ファンが「優勝を願った」選手だ。
全英の勝利の女神が「優勝するに足りると選んだ」のは別の選手だった。

全英を見ているファンにとっては、梅雨明け後もぐずついた最近の天候のように、溜息が出るような、もやもやしたものが残った。
しかし、メジャーでの掟がより明確となった試合ともいえる。
ゴルフファンにとって全英は、夢と声援、与えてくれた大会だったが、「メジャーで勝つこと」この命題を考えさせられたファンの方も少なくなかったのではないか。
寝不足だけではなく、楽しさだけでもなく、考えさせられた興味深い大会だった。

守りのゴルフではなく、果敢に攻めた日本選手たち。
それが、無理なゴルフではなく、自分のゴルフを貫きながらプレーしているところに、優勝のチャンスが巡ってくるのはそう遠くないことを感じた。
これからも、必死にチャレンジする選手たちを応援したい。




1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
ゴルフ
タグ:

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

この記事にはまだコメントがありません

こんな記事も読みたい

全米プロに向けて石川遼選手が目指すものと相反するテレビ局のあり方【樫井ゲンノスケのマジックスポーツ!】

がんばれ イチロ ー 歯で勝つ「残念 藍ちゃん でも強い藍ちゃん復活を確信!全英最終日」【「心と身体と噛み合わせ」身体姿勢・動作と歯並び噛み合わせの関係】

【編集部発】宮里藍は届かず3位 マシューが初メジャーV=全英リコー女子オープン最終日【ゴルフブログ(スポーツナビ編集部発)】

ブロガープロフィール

profile-iconballgame

小さなころから球技を始める。
海の近くに生まれたのに泳げず。
なので水球以外は一通りやりました。
感じたことをそのままに書いてます。
好きなスポーツライター
:木村浩嗣、宇都宮徹壱など。

彼らのような興味深い文章で、いろいろな
スポーツの魅力を少しでもお伝えできればと
思います。
よろしくです。

ご連絡はこちらからどうぞ。
hakohit*gmail.com
(*は@)
  • 昨日のページビュー:28
  • 累計のページビュー:2983856

(11月30日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. イチローの日米通算安打記録よりも、すごさを感じる2つの記録とは
  2. 鉄壁対盤石、最強の盾と矛の戦い、世界最高の組み合わせの結末は(ウィンブルドン男子決勝、ジョコビッチ対フェデラー)
  3. 完敗の先に見えるもの(マイアミオープン決勝、錦織対ジョコビッチ)
  4. 脈々と続いていくゴルフの系図(全英オープンのフィルミケルソンと松山)
  5. 日本が逃した魚は想像以上に大きかった(サッカーアジア杯決勝、オーストラリア対韓国)
  6. 杞憂がすべて現実となった一日、日本サッカーの転換点となる「アレナ パンタナウの惨殺」(W杯、日本対コロンビア)
  7. 羽生の強さと、採点の妙(フィギュアスケート中国GP)
  8. 悲願は悲願のまま(全仏オープンテニス決勝、ジョコビッチ対ワウリンカ)
  9. みんなで創り上げる幸せな空間 ~テニスの魅力がすべて詰まった4時間の熱闘(ウィンブルドン、男子決勝戦ジョコビッチ対フェデラー)
  10. フィギュアスケートエキシビジョンで思うこと(魅せた町田樹、伝える浅田真央、そして不在のプルシェンコを思う)

月別アーカイブ

2017
08
2016
10
08
07
05
04
03
01
2015
10
09
08
07
06
05
03
02
01
2014
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2013
12
11
10
09
08
07
06
05
03
02
01
2009
11
10
09
08
07
06
04
03
2008
10
09
08
07
06
2007
11
10

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年11月30日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss