2010年08月26日
広島で思う
8月22日(この日は開会式のみ)から25日まで、広島県で「平成22年度全国中学校体育大会 第40回全国中学校バスケットボール大会」がおこなわれた。いわゆる「全中」である。今年の大会を制したのは、男子が新潟県新発田市立本丸中学校、女子が愛知県名古屋市立若水中学校だった。本丸中学校は2年ぶり2度目の全国制覇。若水中学校は初優勝だが、率いた杉浦裕司監督は千種台中学校、猪子石中学校でも全中優勝を果たしており、3校目、5度目の頂点だ。 中学校からバスケットを始めた小生は当時、「ゼンチュー」という言葉は知っていた。「どうやら全国大会があるようだ。出てみたい」。そんな気持ちで練習をしていたように思う。だが県大会で勝てない相手がいて、そこを倒そうと、一生懸命練習を重ねていた。今では当たり前のようにおこなわれている、右利きの小生が「ゴール下で相手のブロックをかわすために左手で打ってみよう」などと、自分なりに工夫していたことを思い出す。そんなことを考えながら、最後の中体連は、その中学校と当たる前に敗戦。ジ・エンド。結局、その中学校は全中で3位に入った。でも当時は出られない大会に興味などなく、どこでやったかさえ知らないほどだった(どうやら秋田全中だったみたい…)。
そんな思い出話はさておき、今年の全中。第2次世界大戦が終結して65年という節目の年に、40回の記念大会が世界で初めて原爆を投下された都市でおこなわれたことに何か考えさせられた。今年の中学3年生は平成7年4月~平成8年3月の生まれ。西暦にすると1995~1996年。終戦から50年が経って生まれた子たちだ。さすがにそんな話は聞けなかったが、この子たち(ここではあえて「選手」ではなく「子」とする)は「戦争」とか「広島に原爆が落とされた」といってもピンとこないだろう。メイン会場の広島グリーンアリーナは原爆ドームのすぐ近くだが、あの建物を見ても、大きく心を揺さぶられることもなかっただろう。もちろん広島県のすぐ隣の県、しかも広島との玄関口が出身地の小生でも、中学時代に戦争のことを深く考えたことはなかったけど…。
中学生の感性をどうこう言うつもりはない。むしろ自分自身がアラフォーと呼ばれる年になって、戦争のことを考えてみたり、逆に今、こうして平和にバスケットができる喜びみたいなものを、半ばこじつけみたいに考えてしまうわけだ。戦時中のスポーツとして、野球は映画に何度か取り上げられている。近いものだと、戦時中の早慶戦を描いた「ラストゲーム」(2008年)や、市川海老蔵が主演した「出口のない海」(2006年)がある。少し古いものだと「瀬戸内少年野球団」(1984年)もある。確かに野球は1871年(1872年とも)に日本に入ってきたスポーツで、バスケットはそこから遅れること30年強、1908年(1909年とも)に入ってきたスポーツ。根付き方が違っていたかもしれない。
でも、たぶん、8月6日に原爆が投下されたとき、広島でバスケットボール(戦中は「籠球」だったのだろうか?)をやっていた少年・少女はいたはず。今ほどボールもシューズもいいものではなかっただろうし、もちろん冷房の利いた体育館で練習なんてありえなかったと思う。でも、野球じゃなくて、サッカーでもなくて、バスケットボールを選んでいた人は間違いなくいたはずだ。それが一瞬にして消えてなくなる恐怖。被爆者を英霊と呼んでいいのかわからないが、バスケットを愛していた広島の英霊たちは、今年の全中をどう見ただろう。そんなことをぼんやりと考えながら、今年の全中を見ていた。
毎年思うのだが、中学生の運動能力は戦時中はもとより、小生の中学時代(今から20数年前)よりも確実に上がっている。スキルも格段の差である。驚かされてばかりの3日間だった。でも逆に言えば、上位チームになればなるほど、運動能力の差、スキルの差はなくなってくる。体力だって、よく鍛えられているからほとんど差がない。差が出るのはメンタル、つまりは精神力の差だろう。もちろん15歳の子たちに「精神力を鍛えろ」というのは酷な話だと思う。でも何かトラブルがあったとき、イレギュラーな状態に陥ったときに、一人ひとりが確固たる意思を持って、さらにはチームメイトが全員でカバーし合うことができるチームが勝利に近づき、結果、全国の頂点に立てるのだ。
女子の優勝校、若水中はそんなチームだった。決勝戦、精神的な柱であるキャプテンが3クウォーター早々にファウルアウト。そのとき同級生のポイントゲッターは「自分が強気に行こう」と強気モードのスイッチをオンにしたという。交替して出ていった下級生も「自分にできることをしよう」とコートに飛び出し、2人で交替しながらキャプテンの穴をしっかりと埋めた。途中、流れが悪くなり逆転を許す場面もあったが、ファウルアウトしたキャプテンがベンチから大きな声を出してチームを鼓舞し、その声に呼応するかのようにコート上の5人は集中力とゲームの流れを取り戻した。ベンチを含めた一人ひとりの思いが「全中優勝」というこの夏最高の思い出に到達させてくれたわけだ。
敗れはしたが、女子の準優勝校、福岡県北九州市立高見中学校も若水中と同じくらいの精神力を持っていたことを忘れてはいけない。
優勝候補と言われた昨年の鹿児島全中。高見中のポイントゲッターがファウルアウトをしてしまった。そこからゲームの流れを奪い返せずに決勝トーナメント1回戦で敗退している(もちろん、ファウルアウトだけが敗因ではない。相手チームも間違いなく強かった)。ファウルアウトしたポイントゲッターは当時2年生。今年の全中でリベンジを果たそうと燃えていた。しかし昨年の11月に左足の靭帯を断裂し、手術と6カ月間のリハビリを余儀なくされる。そして今年の九州ブロック予選から完全復帰し、昨年の全中で敗れたチームにもしっかりとリベンジを果たして、決勝へと駒を進めた。その決勝でも起死回生の3ポイントを何本も沈めている。試合後、彼女は「チームメイトが支えてくれたから」と答えてくれた。その笑顔がすごく印象的で、かつ強さの秘訣なのだろうなと実感した。
チームの勝利のために、自分ができることを精一杯やる。目指すところは「勝利」という結果だが、大事なところはそこにない。「自分にできることを精一杯やる」という過程こそが大事なのだ。全中の決勝に進むまでに敗れたチームは多々ある。いや、そっちのほうが間違いなく多い。でも敗れたときに笑顔で「精一杯やれた」と言えるか否か。笑顔でそういった高見中の選手たちにも称賛の拍手を送りたいし、たぶん、英霊たちも広島全中で一生懸命戦ったすべての後輩たちに、笑顔で「ようやったのう」と言ってくれているだろう。
ということで、本日も――
ご愛読感謝、Good Day & PEACE!
posted by Deco |17:12 |
中学バスケ |
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広島で思う
コメント投稿者ID : OOH00017671
今年 全中の出場できたチームの親です。
24チームの中に入れたことが すごいことだと気がついたのは 広島のグリーンアリーナに着いてからです。
上手な子どもたちが集まる私立とは違って、地元の市立中学校からの出場が珍しいということも 全く知りませんでした。
小学校のミニバスからの仲間で 続けてきて チームワークでここまで来ました。改めて ひとりではバスケはできない、そして同じ思いを持つ親たちが見守ってきたことも大切なことだと思いました。
結果は1試合だけ勝ち ベスト16でしたが ここまで来れた
ことは 本当に幸せなことです。
そして その息子は8月6日生まれ。原爆投下から ちょうど50年目に生まれました。名前に平和の平の字をつけたほどです。今年全中が広島と聞いて なにかつながるものを感じていましたが 本当に来れるとは…。
2日めで負けたので みんなで平和公園まで行きました。バスケだけでなく なにか得ることができたと思います。
この夏は 母も子も忘れられないものになりました。
posted by まっくろくろすけ | 2010-09-19 00:32
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