2008年02月26日

バスケットマンとして

 ドゥンドゥンドゥンドゥン・・・
 不気味な重低音を発するMRI室、それに合わせるかのように自分の鼓動も速度を増してくる。20分ほど身動きしない状態の後、MRIは終了し診断室へと向かう。

 まずはMRIの前に撮ったレントゲンのチェック。幸いにも骨には異常は見られないようだ。
 次にMRIの画像。医師による解説が始まる。
 「ここに黒く映し出された一本の太い線があるでしょう。これが後十字靭帯です。きれいにハッキリと見えるね。一方、こちらの画像を見てください。これが前十字靭帯ですが、黒い部分から始まっている一本の線が途中で見えなくなっているのがわかると思います。つまり、断裂しています。」



 覚悟はしていた。
 でも、ひょっとしたら、と期待する自分も、確かにいた。
 この画像を見る限りでは靱帯はつながっていない。受け入れなければならない現実がそこにはあった。

 医師「またこれまで通りバスケットを続けるためには手術が必要だけれども、手術を行うのは腫れがひいてからになります。少なくとも2週間は待つ必要があるね。それから手術するかの決断をしてもらって構いません。」
 参考までに聞いてみた。
 「サーフィンもするんですが、手術しないままだとサーフィンにも支障ありますか?」
 医師「バスケットは床の上で行う衝撃の多いスポーツであり、それに比べれば海で受ける衝撃は小さい。また接触も少ないため、サーフィンだけを行う分には今のままでも大丈夫でしょう。」
 続けてこうも言われた。
 「これからはサーフィンに専念する、という選択肢もあるね。」
 2週間後に改めて診察することとし、テーピングを巻き替えてもらってから病院を出た。

 心は決まっていた。結果的にバスケットをやれない状況になったならば仕方ないものの、自らバスケットを出来なくする選択肢は取れない。やりたいときに、やれる環境があるのに、大好きなことができないのは我慢できない。手術することによる代償は少なからずあるだろうが、バスケットができないことに比べたら天地の差に感じる。

 バスケ仲間に会った。やはり断裂していたことを告げたら、彼等はこう言った。
 「復帰まで半年か。リハビリのときは温泉通うと回復早いよ、たぶん。」
 「手術は出来るだけ早くやっちゃいなよ。」

 思わず笑ってしまった。彼等の中には、手術しないという選択肢すらない。
 こんな仲間とまたバスケットをやることが、自分にとっての最大のモチベーションとなる。

 29歳、手術を決意。自分らしくあるために。

posted by athok |01:45 | バスケットボール | コメント(5) | トラックバック(0)
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2008年02月22日

相対的な世界

 怪我してから3日経った。右膝の痛みは少しやわらぎ、歩くのも昨日・一昨日に比べれば随分と楽になった。

 たった3日なのに、周囲はかなり違ってみえる。
 こんなに速かったっけ?普段は一人で歩いていて追い抜かれることはほとんどないのに、今は自分の周りだけが重力が軽くなっているような錯覚に陥る。
 これまで、バスケットに、サーフィンにどっぷりだった。週末、一日は体育館に、もう一日は海に行くばかりの生活だった。平日も一回はバスケットをしていたし、体をつくるためにジムにも精力的に通っていた。
 その全てが、今はできない。

 まだ仕事があるだけ救われた気持ちになる。身体を使う仕事ではないだけに、やること自体に変化はない。もし、足腰を使うような仕事だったとしたら、そこでも自分の居場所を感じられなかったかもしれない。

 夜、家への帰り道、どことなく、なんとなくでしかないけれども、引き籠りになってしまう人や、傍からみれば意味もなく他人に被害を及ぼす行動を取ってしまう人の気持ちが、ほんの少しかもしれないが感じ取れたような気がした。
 彼等は、彼等もまた、自分が存在する意味を感じられなくなっているのではないだろうか。前者は心を折らされた結果として全てを諦めてしまい、後者はもがき苦しんだ結果として間違った方向で自分の存在をアピールしてしまう。。。

 今回の自分の場合は、あまりに急激に状況が一変しただけに、本当は周囲には何も変化がないことはわかっている。変わったのは自分の、しかもほんの一部分にしか過ぎない。その一部分により、自分の気持ちが折れているに過ぎない。周りのスピードが上がったわけではなく、たまたま自分のスピードが遅くなってしまっているだけだ。
 けれども、これが仮に客観的に理解できることではなく、いつの間にか、自分でもわからないまま徐々に変化していったとしたら、果たしてそう認識できるだろうか。自分の存在感が見出せない世界へと周囲は変化してしまったと思いこみ、自分ではどうしようもない流れに巻き込まれたと思ってしまうのかもしれない。

 でも本当は、たぶん、周囲の歩くスピードは変わっていない。
 変わったのは自分のスピードなのだけれども、それに自覚がなければ、周囲のスピードが速くなったと理解することにより自分のなかでの心の整理ができてしまう。

 もちろん、そうなってしまった事情は千差万別だろうから型にはめて考えるつもりはないし、気持ちだけではどうしようもない何らかの理由で仕方なくそうなってしまった人もいるだろう。仮にある程度当たっていたとしても、だからといって誰しもが解決できるような方法も残念ながら浮かんでこない。

 けれども、そうだとしても、少なくとも自分の中では、また新たな角度で物事を捉えられたようなこの感覚は一つの発見だった。
 怪我して得ることもあるはずだ。いつか思い返してみたとき、人生としてはプラスだったと思えるような、今回もそんな経験であってほしい。

posted by athok |22:46 | バスケットボール | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年02月21日

選手生命の危機

 右膝に痛みを感じて目覚めた。鈍角に曲がったくの字から、まっすぐに伸びることもなければもっと曲げることもできない。明らかに怪我した日よりも状態は悪くなっていた。まともに右足に体重をかけられる状態になく、歩くのもおぼつかない。
 肉離れのときでも病院には行かなかったが、さすがに限界を感じ、スポーツ整形外科のある病院に行くことにした。

 右膝を触診されたのち、一枚の紙を出され、説明が始まった。紙にはこう書かれていた。

 「膝前十字靱帯損傷」

 まさか。
 だって昨日は問題なく歩くこともできた。高校時代に左膝の内側側副靱帯を損傷したときは、怪我した瞬間歩くどころか左足を地面につけることすら出来なかった。それを考えれば症状はまだ軽いと思える。少なくともそう思いたい。
 説明書はこう続く。
 「切れた前十字靱帯はギプス固定などでは治りません。損傷後1ヶ月ほどで痛みはとれ、日常生活には支障がなくなることがほとんどですが、それは損傷に伴う炎症が落ち着いたにすぎず、靱帯は切れたままです。スポーツを行わない人ではそのままの状態でも支障がない場合もありますが、スポーツの続行を希望する人には手術を勧めます。近くの腱を採取して靱帯を再建するのが一般的です。」

 手術…。自分には縁がないと思っていた言葉が突然目に前に現れ、一瞬パニックになった。
 高校のときは、靱帯は切れてはおらず伸びただけで済んだので、手術することもなかった。おかげでその左膝の内側側副靱帯は伸びたままで、筋トレを怠ると時折痛みが出てくるが、それでも致命傷には至っておらず、バスケットもやれている。
 そのことを基準に考えれば、今回の怪我に関しては左膝以上の重傷はないと思っていたのだけれども、前十字靱帯になれば話は別なのだろうか。

 とにかく、まずは正確に症状を把握するために後日精密検査(MRI)を行うことになったのだが、医者にはこう聞かれた。「前十字靱帯が切れていた場合、手術しなくとも日常生活には支障はなく、軽くスポーツを行うこともできます。また本格的にバスケットをやりたいならば手術を勧めますが、そこまでやりますか?」

 そこまで?

 そうだろう、赤の他人から見れば確かにそこまでやらなくてもいいんじゃないかと思うかもしれない。別にバスケットで生計を立てているわけじゃないのだし。けれども、その言葉にはかなり違和感を覚えた。別にお金を稼ぐためにバスケットをやっているわけじゃないが、バスケットに本気で向き合うことで得られるものはたくさんある。それは間違っていないと思う。

 でも。「もちろん手術やります」とも言えなかった。いきなりだったこともある。まだMRIをやらないことには本当に手術が必要か分からないこともある。仕事への支障もある。
 けれども、同時に浮かんだ自分への疑問もあった。

 MRIの日程を決め、右膝をテーピングでガチガチに固めてから病院を後にした。歩く速度は極端に遅く、ほとんど右足を引きずって歩いている状態。最寄り駅から家までの帰り道、普通なら歩いて10分のところが30分近くかかる。黙々と歩いていると、病院でも浮かんだ疑問が何度も頭をよぎる。

 自分はどこまでやりたいのだろうか?
 何を目指していきたいのだろうか?

posted by athok |01:17 | バスケットボール | コメント(6) | トラックバック(0)
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2008年02月20日

思い描いた自分に近づいた瞬間

 2月のとある日曜日、もう一つの区の試合に出た。このチームは、これまで書いてきたチームとは主要メンバーが異なる上、今回は現役バリバリの大学生、そして大学卒業してすぐの、これまたバリバリの点取り屋が助っ人として駆けつけてくれた。

 区の大会に出場するようなチームは平均年齢が高いこともあり、必然的に試合のスピードも落ちてしまう。そんな試合ばかりだとそれが当たり前だと感じ、体もそれ以上に動こうとはしなくなる。そんな自分達をRefreshさせてくれる、とてもいい機会だ。
 彼等のプレイに引っ張られるかのように、自分の足も動いたような気がする。瞬間的に体が反応し、考える前に相手をかわしてシュートを決めた場面もあった。アップテンポな感覚は昔を思い出させてくれた。

 その試合中、途中から右膝に少し違和感があったのだが、こんなまたとない機会だ。少しでもコートの上にいたい気持ちもあり、特に気にせずにいた。そんなとき、相手チームの中でエースだと思われる選手にマークしていたとき、ディフェンスの自分から見れば右から左へのクロスオーバーに対応しようと右足に全体重をかけて踏ん張った瞬間、、、本来ならば半月板の下で接合されているべき骨と骨とが一瞬外れ、片方の骨が横にずれ、思わず尻餅をついた。


 フラッシュバックのように頭に浮かぶ、過去の記憶。
 高校最後の大会前、練習試合で左膝の靭帯を損傷したときも、同じようにディフェンスをしていたときだった。そういえば、あの日もかなり寒かった。
 自分では歩けず、チームメイトに抱えられながらコートサイドに出た、あのとき。病院に行ったらすぐに入院を言い渡された、あのとき。約10日間固められたギブスを取った瞬間、やせ細った筋肉のない左腿を見て絶望感を感じた、あのとき。大会に間に合わせるため、硬直した左膝をリハビリで無理やり動かしてもらい、怪我のときを遥かに超える苦痛に悶絶した、あのとき。大会中、勝ちが決した試合のラスト1分に出場し、ブザービーターを決めて仲間と抱き合った、あのとき。その次の試合で、出場することなくライバル校に敗れて絶望感を味わった、あのとき。
 その全てが、きれいに、見事に一瞬のあいだに、頭に浮かんだ。


 ずれた骨は一瞬で元に戻ったが、とてもまともに走れる状態になく、すぐさま交代することに。幸いにも、今回は自分で歩けるし、歩くだけならそこまで不自由もない。今回はきっと軽傷で済んだに違いない、そう思いながらも念のため氷で冷やしながらその日は眠りについた。

posted by athok |00:04 | バスケットボール | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年02月18日

突きつけられた現実

 どれだけ想いが強かろうと、努力を重ねようと、現実はときとして辛く、そして冷たい。

 今所属しているチームは、この大会が一つの区切りとなる。慣れ親しんだメンバーが去ることで、また違ったチームになることだろう。

 調子自体は悪くなかった。シュートは良く入ったし、チームとしてのリズムもよかったと思う。強いて言えば、チームは5人だったため体力面に難があったが、それは百も承知のことだった。前半は10点差で勝っていた。

 後半、どこかでリズムが狂い、どこかで相手のリズムが乗ってきたとき、その流れが変わることはなかった。いや、変えることが出来なかったのはなぜだろう。体力がなかったから?そこまで考えが及ばなかったから?
 いずれにせよ、必ず戻ってくると思っていたリズムは変わらないまま、試合は終わってしまった。

 もちろん、バスケットは5人でやるもので、1人で勝てるものではない。
 けれども、あの試合に関して言えば、自分の取り組み次第で、結果は違うものになったと思う。所詮は体力がなく、後半十分に考えられず動けなかったことに起因するかもしれないが、そんな状況下においても、もっと別のことができたような気がする。

 現実はやっぱり厳しい。努力は結ばれるというけれども、どれだけ努力すればよかったのだろうか。

 一つの区切りをあっけなく迎えることになり、意気消沈する自分。それでも、新たな目標を掲げて再出発に向けて歩み始めようと考えた矢先、もっと過酷な現実に直面することとなる。

posted by athok |23:22 | バスケットボール | コメント(2) | トラックバック(0)
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