2007年03月28日

中国の選手育成システム(1)

中国の選手育成システム

(1)	はじめに
中国のスポーツ選手育成システムが日本と異なることは、専門家でなくても感覚的に気づくであろう。

日本は、基本的に小中高、そして大学へと進む学校単位のクラブ活動から優秀な選手が選抜される「学校スポーツシステム」、そして各地域や全国単位で選手を集め、独自のシステムで選手を育成する「クラブチームシステム」が存在する。

日本において、最もオーソドックスなのが、いわゆる部活動・学校スポーツであるが、これは各級学校への進学時に指導が断絶するという欠点があった。この欠点を補う存在として生まれたのがクラブチームである。指導者が、進学等に影響されず、各年齢に見合ったトレーニング方法を課す点で、より“効率的”な選手育成が行えるとされる。前者は教育の一環であり、後者は選手から「クラブ費」を調整することが一般的で、商業的活動の一環であることが根本的な違いだ。

そして、各競技別に競技団体(協会・連盟)が存在し、オリンピックや世界大会の出場選手選抜は彼らがそれぞれ行う。競技によっては彼らが主催する地域・全国級のトレセン(サッカー等に代表される)が設置されることもあるが、それらは一時的なもので、基本的には選手はそれぞれの学校・大学・チームに所属する。

また選手たちは、基本的には、金銭的に全て自己責任でまかなうことになっている。現在は五輪出場選手の強化を狙って、「強化金」の支給等が行われるが、原則的には、大会参加や日ごろのトレーニング、指導者の選択等、全て自己責任が貫かれる。よって、彼らが五輪や世界大会に出場するのも個人の資格であるし、そこで優れた成績を収めれば、それは彼ら個人の功績となる。アマチュア選手として一定の制限はあるものの、商業活動が許されるし、海外の組織に転属するのも自由なのは、この「個人責任」という原則に基づくものである。

だが、中国は異なる。中国におけるスポーツ選手は国家が育て、国家のために競技を戦い、その成果は国家に帰することが原則となる。そのために、国家は彼らに基本的な衣食住と豊かな練習環境、指導者を提供する。最終目標はオリンピックであり、そこで金メダルを取って、中国の威光を世界に示すことである。その点については一切異論はない。選手たちがしばしば口にする「祖国争光」という言葉がそれである。

彼らいわゆるスポーツエリートは幼いころに選抜される。ある指導者に聞くと、彼は休日などに公園などを訪れ、遊んでいる子供たちを観察するそうだ。子供たちが跳んだり、走ったりする様子を見れば、その筋肉の使い方で、才能の有無はすぐに分かる。これだという子供を見つければ、保護者とコンタクトをとるのである。

この指導者は一般に地方の「業余体育学校」といわれるスポーツ専門学校のコーチである。「業余」とは「アマチュア」くらいの意味だ。この体育学校、そして体育技術学校と呼ばれる専門学校に入学すれば、彼らはスポーツエリートへの第一歩を踏み出したことになる。以前は、この体育学校は毎日休みなく、運動教育のみが行われていたようだが、現在は、午前中、教科教育を行い、午後から体育(すなわち彼らの専門)の授業というパターンが多い。

そこで優秀な選手は、今度は体育学校を抜け出て、地域ごとに集められ、地域代表選手として指導を受ける。いわゆる省・市代表チームである。そしてさらに優秀な選手が今度は北京に召集され、栄えある「国家チーム」の一員として、超一流のスポーツ英才教育を受ける。オリンピック、世界選手権などに出場できるのは、基本的にはこの国家チームの選手であり、アスリートを志す若者は、一握りのこのグループを目指して、日夜努力するというわけである。

この「体育学校」→「省・市代表」→「国家代表」というピラミッド型の選手育成システムを「三級制度」と呼んでおり、中国のアスリート養成の基本となっている。この三級制度は、何をおいてもオリンピックで金メダルを取るためのものであり、そのための「挙国体制」といえる。そして、このピラミッドに入れない者は、基本的にはアスリートの道から遮断され、スポーツとはほとんど縁のない生活を送ることになる。

かなりの割合の生徒が中学、高校時代に体育クラブに所属し、程度の差はあれ、チャンピオンシップ形式の大会に出場する経験を持つことができる日本とはかなり異なっている。すなわち、基本的には中学、高校には部活動といわれるものはなく、スポーツといっても、休み時間に遊び程度で体を動かすものであり、大学入試に向けた勉学に励むというのが中国人の若者の一般的な姿となるのだ。

つまり、日本はある程度スポーツの普遍化が進んでいるのに対し、中国はエリート化しているといえる。「三級体制」は例え、「その他大勢」のスポーツを楽しむ権利を奪ったとしても、「一人の天才」を見つけ出すのに非常に適している。一方、日本の学校・クラブを中心とするシステムは、間口が広く、誰もがアスリートの入り口に立てるが、一方で、資源の分散を招き、「天才」を見過ごし、埋もれさせてしまうこともある。だが、「1億人に一人」の「超天才アスリート」は日本には1人しかいないとしても、人口13億の中国には13人いるわけだ。中国がエリートシステムをとり、日本が学校・クラブスポーツシステムをとるのは、政治・経済体制の違いという国情の違いはもちろんだが、物理的な要因もあるだろう。

では、この中国の「挙国体制」はどのようにして形成されたのであろう。次の章では、その歴史的過程に触れてみたい。

 参考文献:胡小明 “挙国体制”的改革 華南師範大学、2002年1月
      薫兆祥 中国改革解放20年紀事 上海人民出版社 1998年
      赤勤  当代中国専業競技体制的特征与評価 体育科学 1999年
      韓丹 概述我国体育運行机制和管理体制的演化、ハルビン体育学報 1999年

posted by 朝倉浩之 |21:19 | 論文 | トラックバック(0)
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2007年03月27日

跳水王子、寂しく引退

 「跳水王子」にもう二度と光が当たることはなかった。

 中国「ドリームチーム」が華やかな演技を見せ、10種目中9個の金メダルを獲得した世界水泳選手権の「飛び込み」が終了したその日、一人さびしく、飛び込みの世界を去る「かつてのヒーロー」がいた。

 26日、新華社は「跳水王子」こと田亮が正式に引退したと報じた。地元、陝西省の体育局が明らかにしたもの。責任者によると、引退は、田亮自身と当局が何度か話し合いの場をもって決定したもの。引退にあたり、田亮は「国家チームと社会各界の自分への関心に感謝したい」と述べた。今後は北京の名門、清華大学の修士課程に進む予定だということだ。

 かつての「王子」はもう二度と、大観衆の前で、軽やかな演技を見せることはなくなった。

 シドニー、アテネと五輪で2度の金メダル。そして世界選手権を3度、ワールドカップで15度の優勝を飾った田亮。その風貌から、「跳水王子」と呼ばれ、CMやテレビ番組に引っ張りだことなった。2004年アテネ五輪で余裕の金メダルをさらって、その知名度は世界レベルに。

 だが、その後の「事件」によって、一気に彼は「体育当局の敵」に成り下がった。

 では、この「田亮事件」について簡単に振り返っておこう。

 アテネ五輪直後の2004年11月初め、次の”北京”に向けて再スタートを切る飛び込み国家チームの名簿の中に田亮の名はなかった。当局の説明によると過度な「商業活動(イベント、テレビ出演、CMなど)」を行ったため、とのことだった。実際、代表チームの合宿を欠席して、他の「商業イベント」に出席していた事実が明らかとなるなど、彼の行動は、その名声が高まるとともに、当局側の思惑と違う方向に向いていっていた。
 
 2005年1月26日、国家チームを統括する国家体育総局水泳センターは、田亮の国家チーム”除名”を発表。その年の10月に行われた第10回全国運動会(日本の国体に当たるが4年に1度開かれる)では、優勝したものの、その大会の結果を踏まえた発表された国家チーム名簿にも田亮の名はなかった。

 その後は大会に顔を見せず、2007年1月には、地元西安の体育学校のコーチに。そして2007年3月に、当局は「4月に開催される全国飛び込みチャンピオン大会に田亮は出場しない」と発表した。この大会は、オリンピックの選手選考、すなわち国家代表チーム入りにおいて出場が必須のものであり、実質的にこの時点で、田亮の「北京出場」はなくなった。先の全国人民代表大会で、田亮の代表復帰を求める異例の提案が出たが、それも功を奏さなかった。

そして、今回の「”任意”引退」である。

 ただ、3月に「実質的な五輪出場断念」が報じられるまで、一貫して、田亮はオリンピックに向け、トレーニングを続けると記者団に対して語っていた。ただ、すでに指導者としての地元、西安で動き始めていたため、「奇跡の復帰」は非常に難しいだろうと考えられていた。

 だが、やはりあの田亮の完成された美しいフォームがもう見られないと思うと非常に残念である。

 基本的には、彼が「干された」理由はその”商業的行為”である。中国の「ドリームチーム」とも称される世界最強の「飛び込みチーム」のエースとして、端正なマスクと豊かなタレント性を備えた彼は当然、マスコミの引っ張りだことなった。おりしも、スポーツの「市場化」が進み、ようやく西側並みにスポーツが「金になる」体制が整いつつあるころであり、まさに彼は「時代の寵児」だといえよう。彼がこれまでイメージキャラクターを務めた企業は30社あまり。また同じく飛び込みのアイドル的存在である郭晶晶とのゴシップをはじめ、スキャンダルにも事欠かなかった。

 中国はスポーツについて、「挙国体制」を強いており、いわゆる「三級体制」<体育学校を底辺に、省チーム、国家チームのピラミッド構造>をしき、才能ある運動選手たちは、この体制に入って、国家によって、育成され、最終目標であるオリンピックを目指すことになる。学校体育、クラブ体育の体制の中で基本的に「自己責任」によって五輪を目指す日本とは全く異なる。もちろん、今、そのあり方を見直す動きが起きているが、今のところ、中国のアスリートは「中国国家と人民のもの、財産」であり、その枠を抜け出て、「勝手な行動」を取ることは断じて禁止される。

 選手たちは今のところ、「国家チームの練習、大会出場に支障をきたさない限り」という条件の下で、いわゆる商業活動が許されるもので、それにしても、オリンピック2年前の去年からは「基本的には禁止」との当局の”お達し”が出ている。それくらい、当局側は、選手たちの商業活動に手を焼いているのだ。

 だが、選手たちにも言い分はある。国家チームに参加するアスリートたちは13億の中国人民から選ばれた特級のエリートだ。にもかかわらず、確かに衣食住は保証され、一般の人々よりはるかに恵まれているとはいえ、毎日練習に明け暮れ、待遇も決して十分に高いとはいえない。これまでの経済的に厳しい時代ならともかく、周りの彼らと同年代の若者が成功し、経済的に豊かになっていくのを見ていれば、自らの待遇に疑問も沸くだろう。加えて、スポーツ界にも進んだ市場化のおかげで、彼らアスリートの市場価値(広告価値)は著しく上がった。企業側も彼らをほうっておくはずはなく、次々の有名アスリートに触手を伸ばす傾向が、ここ10年ほどで顕著となった。

 その象徴的人物が田亮だったといえるだろう。確かに彼は人民、祖国の手によって育てられたが、それはすでに五輪の金メダルで十分に返したはず。このあとは自分の能力に応じて、欧米のアスリートたちと同じように、「豊かになる」権利があるはずだ・・そう考えてもやむをえないかもしれない。

そもそも、スポーツの「挙国体制」と「市場化」は矛盾する概念であり、共存させようとするところに難しさがある。現在の中国スポーツ界は変化の真っ最中であり、この矛盾を抱えながら、成長していかざるをえない。田亮は、この矛盾の狭間に入り込み、ある意味、その犠牲になったといえるだろう。

 この中国における「スポーツのあり方(誰のためのスポーツか)」と「スポーツを金にしてよいか?」という命題のすり合わせは、今後、中国が解決していかなければならない難題だといえる。その解決には、最終的には「三級体制」「国家チーム体制」そのものの是非まで考える必要があり、非常に難しい。

 もちろん、この一元的な体制には大きな問題はあるが、少なくとも中国をここまでの「体育王国」に育て上げたのは、この「挙国体制」があったからであり、逆に日本には、こういった「公のサポート」が不十分なため、選手育成に経済的、システム的な困難がつきまとい、またスポーツ政策が”後手”にまわることが多いのである。

 さて、話を元に戻そう。「ポスト田亮」だが、これが課題となりそうだ。今回の世界水泳選手権では、圧倒的な強さをみせた中国飛び込み陣がたった一つ、金メダルを落とした種目がある。それが田亮の得意種目、10m高飛込みである。すでに田亮の引退は織り込み済みとはいえ、この時期の引退発表は、非常に皮肉なものとなった。

 今年は五輪1年前の中国スポーツにとって鍵となる年。「スポーツとは何か」という根本的な点も含めて、今回の田亮の引退は、多くを考えさせられるものとなった。

posted by 朝倉浩之 |23:17 | 水泳 | トラックバック(0)
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2007年03月26日

世界フィギュア閉幕、申雪・趙宏博に中国のすごさを見た

また1週間、更新の空白を作ってしまった。出張等が重なり、このスポーツが面白い時期に中国スポーツをウォッチする機会を逃したのは残念である。ただ、時間の許す限り、テレビ観戦は行なった。

まずは何と言っても、東京で行なわれた世界フィギュア選手権だろう。日本としては、女子シングルの安藤と浅田の一騎打ちが大きな見所となったが、中国的にいえば、やはり伝統的に強いペア種目だろう。

ベテランの申雪・趙宏博組はSP(ショートプログラム)でのリードを守り、フリーでも抜群の安定感を見せて、計203.50を獲得し、優勝を果たした。また去年の覇者、ホウ清・トウ健組はSPでは3位だったものの、フリーで盛り返し、ドイツ勢を逆転して、2位に入り、健在ぶりを示した。ケガなどで十分な調整が出来なかった張丹・張昊組はSPで10位と出遅れたものの、フリーで挽回し、5位につけた。

 それにしても、申雪・趙宏博の演技は圧巻だった。SP、フリーともに、演技開始から、安定感を崩さない。世界一ダイナミックなペア、テクニックNO1ペアとも言われる二人のコンビネーション、力強さ、繊細さ。どれをとっても、演技の最初から最後まで抜群で、彼らには「緊張」という言葉がないのか、と思ってしまう。そういえば、時同じくして開かれている世界水泳選手権の「飛び込み」に出場する中国勢にも『取るべき金』を平然と着実に取ってしまう「精神的強さ」を感じる。その『精神面でのコントロール法』を彼らはどう会得しているのか、その選手育成法に大きな興味が沸く。

 申雪・趙宏博は、3度目の世界選手権制覇となった今大会を区切りに、一旦、『国家チーム』を離れる。ソルトレーク五輪で中国に初めての銀メダルをもたらし、トリノ五輪では、後続に先を譲ったものの、3位。中国フィギュアを引っ張ってきた最大の功労者といってもよい。演技終了後は、姚濱コーチと涙を流して、固く抱き合い、申雪は「これが最後」、趙宏博は「最終日のアイスショー以降の予定は未定」と述べた。

 15年間、コンビを組み、フィギュア界のベストカップルといわれた二人は、来年、結婚する。それまでも二人が恋人同士であることは、公然の秘密となっていたが、今大会終了後、これを公式の場で認め、公私ともに『ベストカップル』として、人生を歩むことになる。

男性の趙宏博は今年9月で34歳になる。フィギュアの世界ではベテランである。だが二人の競技人生にもう一つ、欠けているものがある。それは冬季五輪の金メダル。趙宏博は「もしも条件が許せば、2009年に復活して、2010年のバンクーバーに挑戦したい」と語った。その頃、趙宏博は37歳。だが、ソルトレークの銀メダルも「奇跡」といわれた。3年後にもう一つの『奇跡』が起きても、何ら不思議ではない。申雪・趙宏博のパワーあふれる演技は次のバンクーバーの舞台でもぜひ見たいものである。

posted by 朝倉浩之 |16:59 | 氷上競技 | トラックバック(0)
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2007年03月19日

世界フィギュア、中国の3組に注目

 「氷上の華」フィギュアスケートの最高峰、世界フィギュアスケート選手権が東京で開かれる。大会には40カ国が参加。ペアと男女シングル、そしてアイスダンスで世界一を争う。

 17日、中国フィギュア陣も機上の人となり、一路、東京へ向かった。中国のフィギュアスケートを統括する国家体育総局冬季スポーツセンターの任洪国副主任は、「目標はペアの金。3つのペアのうち2つがメダル圏内に入ること」と語った。

 ソルトレークで中国勢初の銀メダルに輝いた申雪・趙宏博、トリノで全世界を感動させる演技を見せ銀メダリストとなった張丹・張昊、そして去年、カナダで行なわれた世界選手権で優勝したホウ清とトウ健。いずれも世界トップレベルの実力を持つ3組を擁していることを思えば、この任氏の強気の抱負も当然のことといえよう。だが、選手たちの現状は決して上向きとはいえない。

 目下、最も好調を維持しているのは、今年33歳と32歳のベテランペア、申雪・趙宏博組。トリノでは、張丹・張昊に後塵を拝したものの、「中国第一人者」の貫禄はまだまだ衰えない。2002年、2003年のこの大会での優勝者でもある。今年は、趙(男性)がアキレス腱のケガが完治し、新プログラムに挑戦。先週のトレーニングでは最も安定した滑りを見せていた。16日午後、最後の訓練を終えた申雪・趙宏博ペア。すでに世界的にもベテラン選手の域に入っている二人だが、その表情はまるで新人のように真剣で、今大会にかける意気込みの強さを感じた。

 去年のカナダに続く、この大会の連覇を目指すホウ清とトウ健は、決して本調子ではない。この一年は、ホウ清(女性)にとって、病気や交通事故などがあり、決して順調な調整をしてこれたわけではなかった。だが、当然、今回も優勝を狙いにいく。目標はと聞かれて「自らに勝つこと」「今季の不調を取り返すべく、SPとフリー、いずれも丁寧に滑っていきたい」と答える。控えめながら、内に秘めた自信をのぞかせる二人である。

 張丹・張昊も今のところ、完成度は今ひとつというのが正直なところだ。この二人も今季は決して順調ではない。大学スポーツの祭典、ユニバーシアードでは余裕の優勝を飾ったものの、張丹(女性)は検査で心臓に異常が発見されたし、先週はかなり重い風邪にかかって、トレーニングが出来なかった。張昊(男性)は「今回は二人合わせての練習がほとんどできなかった。15日以前はほとんどペア練習ができていないのが正直なところ。恐らく皆さんを失望させるかもしれないが、許して欲しい」と、非常に弱気なコメントを寄せている。このようなことを記者団に語るところが、また張昊の憎めないところなのだが・・・。今回の大会は肩の力を抜いて、思い切った演技を見せて欲しい。この二人の目標はあくまでも2010年のバンクーバー五輪であり、そこでの頂点に向け、今は一歩一歩、階段を登っていく段階である。
<張丹・張昊については下記、筆者のコラムを参照>
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=0309&f=column_0309_005.shtml


 大会は20日のアイスダンスから始まり、開会式に続いて、ペア・SP(ショートプログラム)が行なわれる。そして21日にはペアのフリーが行なわれ、優勝者が決まる。日本の浅田、安藤らの演技とともに、この中国勢のペアにも注目していただきたい。


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posted by 朝倉浩之 |07:23 | 氷上競技 | トラックバック(0)
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2007年03月18日

シンクロ井村コーチは「裏切り者」か?”08年に分かってくれるはず”

中国メディアの報道から、日本の様子を知る・・そういうことが時折ある。だが、中国報道の特殊性から、その報道を鵜呑みにできないというのも事実だ。しかし、シンクロナイズドスイミングの中国代表コーチ、井村雅代氏についての記事は大いに気になった。

 現在、豪メルボルンで行なわれている世界水泳選手権。初っ端で行なわれたシンクロナイズドスイミングは中国・日本、いずれからも大きな注目を浴びている。いわずもがな、中国の新ヘッドコーチ、井村雅代氏(56歳)の動向についてである。

 18日の報道によると、井村氏は記者団に対して、「日本には、決して私の代表コーチ就任を快く思わない声がある。また国内の報道のなかにも、それは感じられる。私は中日の友好のために中国チームに来た。その選択が間違っていないことを信じている。彼らは2008年のオリンピックのあと、私の選択を理解してくれるだろう」と述べたそうだ。

 以前から、中国では、日本人の”多く”が井村氏のコーチ就任を快く思っていない、という報道があった。

 ただ私自身は、井村氏が中国代表入りするということは、シンクロ界のみならず、スポーツ界全体、そして広い意味での日中関係に大きな意味合いを持つのではないかと考えていた。だから、日本に帰国した折に、ぜひこの問題について、関係者と意見を交わしたいと思っていた。

 果たして、日本における井村氏は、どう捉えられているのだろう。

 私は北京在住のため、この井村氏の中国代表入りに対する、本当の意味での『日本の空気』を感じることができない。いくつかの日本の報道を見ていると、確かに井村氏を”利用”した『日中』の激烈なライバル争いを強調し、それを面白おかしくとりあげる内容が見られた。だが、本当のところの『国民感情』はどうなのだろうと、このインタビューの内容を聞いて、思った。

 井村氏は、12月にドーハで開かれたアジア大会の最中に、北京五輪で上位進出、できればメダルをと望む中国シンクロ代表チームに請われる形で指導者就任を受託。それがアジア大会で、日本が中国に「敗れ」て2位に終わったという残念な結果のあとだっただけに、その事実が衝撃的に伝えられた。

 その後、すぐに正式契約を結び、今年1月から計4度、チームを訪れ、一日6時間の猛練習を課して、チーム強化に励んできた。

 そして、迎えた今大会。当然、目標は1年半後の北京五輪であり、今大会はその前段階に過ぎないのだが、それでも、日中両国で大きな話題となって、ヘッドコーチに就任した井村コーチからすれば、「かつて感じたほどのないプレッシャー(本人)」は当然のことだろう。

 だがそれ以上に、日本メディアの報道ぶりがこちらのメディアでは大きな話題になっている。朝日新聞は専門の報道スタッフをつけ、『朝5時にはホテルで待機。本当にその熱心さにはあきれる(チームスタッフ)」といわせる力の入れ込みよう。中国代表チームを取材する記者の数は、ある報道によると1:4で日本が圧倒的に多いそうだ。ある記者が「日本チームについて、どんな印象か」と井村氏に聞くと(当然、出てきそうな質問だが・・)「彼女らの演技は見ていない。だから評価の仕様がない。今は中国チームの準備に専念している。あえていうならば、我々の中国チームが日本とどれくらいの差があるのか・・そこに大きな関心がある」と井村氏は答えるしかなかったとの報道もある。

 シンクロという日本が十分にメダルを狙える競技における「この時期の」移籍。そしてその行き先が、アジア大会で、若手主体で臨んだとはいえ、「アジアでは敵なし」を自負していた日本を打ち負かした中国である。日本と中国のスポーツにおけるライバル関係、これまでの様々な過程から見れば、この注目は当然のことだろう。

 だが、もし万が一、この井村氏のコーチ就任を日本に対する『裏切り』として捉え、非難する声が日本に多くあるとすれば、それには疑問を唱えたい。また、その”声”を利用するかのように、「井村・中国」と日本の対決を純粋なスポーツ対決ではない捉え方をする報道があるとすれば、そうあってほしくない。

 井村氏、いや他の多くのスポーツ指導者にとって、間違いなくいえることは「スポーツに国境はない」ということだろう。求められる場所があれば、そこにいって力を奮いたいと思うのは当然だし、国を挙げての五輪という舞台が今まさに始まろうとしている国に請われたとなれば、当然、そこで指導者としての腕を奮いたいと思うはずである。そのような人材交流は、サッカーや野球、バレーボールなどの例を挙げるべくもなく、何ら珍しい現象ではない。

 ちなみに、日本と中国のスポーツにおける指導者交流は、それほど真新しいことではない。古くはバレーボールの大松氏が中国代表を指導し、世界のトップレベルにまで引き上げたし、現在は柔道の山下泰弘氏が中国男子柔道を指導している。卓球の福原愛は中国卓球の力を借りて、ここまで成長してきのだし、野球文化の育成のため、中国プロ野球に対しては、日本が物心両面で支援を行なっている。

 さらに、「日本シンクロ」の”生みの母”が中国に招かれた・・という事実は、北京で中国スポーツを追いかける私も、思わず誇りに感じてしまうのだが、それは誤っているだろうか。日本のスポーツ界が大きな評価を受けた証である。

 
 さて、井村氏は、大会前に北京で行なわれた記者会見で「我々中国チームの力を世界に見せ付けたい」と抱負を語った。あの井村氏が、日本のライバルとして、中国を本当に率いるのだ・・ということを、私はこの言葉で実感した。これから始まる日本と中国のライバル対決がたまらなく楽しみになってくるのは私だけだろうか。

 ただ、私自身も、日本人として、理屈ではいえない複雑な思いを抱くのも事実。今のシンクロ、のみならずスポーツ界における中国勢の躍進ぶりはすさまじい。当然、五輪という大目標に向けて、なりふり構わない強化(それは日本の”国体”前の地方自治体のやり方に似ているが)の成果が出てきているわけだ。だが、以前から中国が強かった競技ならまだしも、日本が優勢を保っていた競技までも「喰われて」しまえば、何となく、『面白くない』という思いは十分に理解できる。

 だが、その「複雑な思い」を『国の裏切り者論争』には持って行きたくない。むしろ、そんな一流のコーチを迎えた中国勢の成長を楽しみにしたい。そして日本と中国がともにシンクロにおけるアジアの柱になり、ヨーロッパの牙城を崩すという将来の『スポーツ未来図』を思い描きたいと思うのだが、どうだろうか。

posted by 朝倉浩之 |19:07 | シンクロナイズドスイミング | トラックバック(2)
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2007年03月18日

女子サッカー混沌、新監督選びへ。W杯まで半年

中国女子サッカーを取り巻くムードが暗い。
アルガルベ・カップのグループ戦で史上最悪の10位という成績に終わり、
9月に自国で開くワールドカップに暗雲が立ち込めてきた。
先週水曜日には、格下のアイスランドにも1-4で敗れ、中国のスポーツメディアも
お手上げ状態といったムードの報道が続く。とにかく、過去2ヶ月、6連敗をし、
徹底的に勝てないのだ。

このアルガルベ・カップは毎年3月に行われ、中国女子サッカーにとっては、
冬場のトレーニングの成果を試す場であり、またヨーロッパの強豪が参加することから
「世界との差」を測る上での絶好の機会となっている。あくまでも親善試合に過ぎないものの、
だからこそ、負けるべきでない相手には、絶対に負けてはならない大会ともいえる。
そんな中での、この惨敗は中国女子サッカーの大きな問題点を提起するものといえるだろう。

かつての中国女子は世界有数の強豪だった。女子サッカーワールドカップの第一回は中国で
行われているし、これまで2度、銀メダルを獲得している。だが、その後は成績も下降気味で、
世界ランキングも10位前後まで落ちていった。2004年アテネ五輪でドイツに0-8で大敗したときは
国内が騒然となった。

この最近の体たらくの最も大きな原因は「指導者問題」である。
これについては、ここのブログ記事でも何度かお伝えしているが、要はここ4年ほどの間に
5人の代表監督が生まれているのである。
最も記憶に新しいのは、前監督の馬良行(ま・りょうこう)氏。心臓病を理由に、突然の休養、そして
「更迭」は現場とフロントの確執が原因であるとして、さまざまな憶測を呼んだ。

去年冬、中国は、現在の男子五輪チーム(U22)を育てたことで実績のあるクラウセンを
チーム顧問として、代表に招きいれ、馬と「二人三脚」でチーム指導を行わせようと考えた。
だが、「両雄並び立たず」というわけで、馬はチームを離れ、その後、クラウセンも突然の帰国。
結局、彼らの下でコーチとなっていた孫海鳴氏が代理監督に就任し、トレーニングを続けた。

そして今回の成績不振。だが、これで王海鳴代理監督を責めることはできないだろう。実際、
あのゴタゴタが何とか収まってから、一月半。その後、エースの王暁旭の欧州行き等もあり、
非常にバタバタとしていた感を否めない。

だが、ここでもまたフロンは動き出した。早くも新監督の招請を明言し、ヨーロッパでの実績のある監督を中心に選出作業に入っている。
確かに、王海鳴氏の指導力に疑問がつくのはやむをえない。
だが、W杯まであと半年。この段階で、しかもチームと何の縁もない外国人監督をその実績だけで
ひっぱってくるのは、どうも得策でなさそうな気がする。
日本の例でもそうだが、外国人監督は当然、言葉の障害、コミュニケーションの難しさがあり、
最低1年は「様子見期間」がある。その間に、選手との信頼関係を徐々に築いていくわけだ。
もし、時間的に難しいならば、チーム事情をよく知る内部の人間がチームを指揮するほうが
「よりまし」なのは、誰もがわかるところだろう。それでもあえて、外国人監督にこだわるところが、
現在の女子サッカーフロント陣と現場との「チーム構想の食い違い」の表れであろう。現実に
選手側からは、王海鳴コーチ”でいいから”早く決めてほしいという思いがメディアを通じて、伝わって
くる。

もうワールドカップは半年後、なのである。しかも、彼女らが全精力を傾けるべき2008年北京は
もう1年半後である。そこで「ベスト4入り」を目指すとしている中国女子サッカー。そのための
試金石としてワールドカップでは是が非でもベスト4をとりたいところ。だが、今、こんな状況では・・。
中国のサッカーファンの中でもあきらめムードが漂っているのが、ウォッチャーとして、
残念でならない。

posted by 朝倉浩之 |10:16 | サッカー | トラックバック(0)
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2007年03月17日

香港スポーツに理想を見た

ブログの更新を1週間後無沙汰してしまった。
先週終わりから、香港に滞在し、しばらく取材等を行っていて、北京に帰ってからも
2,3日、執筆に手がつかなかったのである。
実は、私にとってははじめての香港。大陸暮らしを何年か続けた身にとっては、
まさに別天地のような雰囲気のする香港はかなりのカルチャーショックを受け、
「一国二制度」のすさまじさを十分に感じた。
交通、街づくり、商業地の様子など、どれをとっても、日本の東京以上の「効率が高い」町であり、
聞いていた以上の”都会”。私などは、北京から上ってきた田舎者という感じで、
香港のビル街に圧倒されたというのが正直なところだ。これが日本からの観光客として
香港入りしていれば、また異なる感覚を得たのだろう。

 さて、今回の目的の一つが、「香港スポーツ」の現状について探るというものであった。
香港はご存知のとおり、スポーツの世界では独立した組織を持っており、
五輪組織委員会、サッカー協会など、いずれも大陸とは一線を画した存在となっている。
だからサッカーW杯等でも、中国香港は独立した選手団を派遣して、メダル争いを
繰り広げることになる。大陸のメダル量産の影に、香港はやや影の薄い存在となりがちなのだが、
さあ、一体、香港スポーツの現状はどうなのだろうか・・・これが今回のテーマであった。

 これについての詳細な分析は後に譲る。ただ、香港市内のさまざまなスポーツ施設等を視察、
見学して受けた印象について、述べるに留める。

 私自身は非常にスポーツ的には豊かな町という印象を受けた。

 香港は面積も狭く、競技場等も十分なスペースが取れない。たしかに『香港コロシアム」等、
競技場はあるものの、一般の人たちが利用するいわゆる「社会スポーツ」の場となる
運動場や体育館の不十分さがよく指摘されていた。そのため、少人数によるバスケットボールなど
比較的、小さい面積でも体を動かすことが可能なスポーツが好まれるという。
だが、その条件の悪さをカバーするように、豊かな社会スポーツの土壌が生まれ育っている印象を受けた。

 私が訪れたのは競馬のメッカ、「ハッピーバレイ競馬場」。この日は、競馬の開催はなく、パドックもレース場も静かに芝を休めていた。だが、その中には、巨大なサッカー・ラグビー場が2面あり、それらをもう2つに区切って、計4面の芝の競技場を作り上げていた。そして、そこではまさに老若男女がスポーツに汗を流していた。15,6歳の中華系の少年少女のチームがサッカーの試合をしている隣では、4,50代の中年男性たちがボールを追いかけていた。彼らはどうやら、西洋系の白人と中華系の人たちの混成チーム同士のようだった。
 
 面白かったのは、ある少年チームが着用していたユニフォームだった。彼らの服は深いブルー。そして胸には、どこかで見たエンブレムがついてあった。そう、それは日本代表のつけるマークである。私はてっきり、香港在住の日本人の子供たちだと思ったが(肌の色も同じで見分けはつかない)、実は全員、中華系。コーチに話を聞くと、もともとの指導者が大の日本代表好きで、ユニフォームもそれで揃えたというのだ。もし大陸ならば、日本代表のユニフォームを模した服を着て、試合に出場するなど、ありえず、確実に社会問題となるだろうが、もちろん、ここ香港ではそんな心配はない。
 
 そしてもう一つのエリアでは、4,5歳前くらいの、就学前の子供たちがラグビーを楽しんでいた。大部分はイギリス人のようだったが、中には中華系の子供たちが混じっていた。そして周りでは、親たちが集まり、父親たちはコートの脇に作られた「即席ビアガーデン」でジョッキを持ちながら、母親たちはおしゃべりに花を咲かせながら、子供たちのプレーを見ていた。チームには専門のコーチがおり、非常に体系的な指導がなされていた。コーチや子供たちの顔には笑顔が絶えないのが印象的であった。ハッピーバレーだけではなく、香港市内では、週末のこのような光景をいたるところで見た。
サッカー、ラグビーという組み合わせがイギリス植民地時代の流れを色濃く感じさせるが、この点については、「プラスの遺産」といえるだろう。
 
 このような風景は日本でも良く見られるようになっている。いわゆる「社会スポーツ」であり、地域の人たちが作るクラブチームとして、学校スポーツとは別個の存在におかれる。学校スポーツのもたらす弊害を取り除く(すなわち「過度に教育目的に重点が置かれる」等)スポーツのあり方として、必要が叫ばれている形態である。
 
 だが、これらは大陸においては、まだまだ見ることができない。ようやく学校スポーツの重要性が今、言われている段階である。(この点についてはホットな話題であり、後ほど取り上げる)そしていつも言うように、オリンピックに出場する「国家代表」を頂点とした「エリートシステム」の構築により、
スポーツの世界を日常生活の別世界に仕立て上げてしまっているというのが現状である。
 
 もちろん、これはスポーツを国家発揚に利用してきたということによるものである。だが、この現状を変えていかねばならないという認識は、当局にもあり、最近、いわゆる「スポーツ人口」の増加に向けたキャンペーンが北京では行われている。
 
 香港の現状を見ていると、やはり経済的なゆとりというものが、どれだけスポーツに豊かな環境をもたらすか、ということも良く分かる。決して、五輪でメダルをとれなくても、週末に多くの人たちが気軽にスポーツを楽しめる環境があるのは幸せなことだ。
 
 一国二制度下において、香港は大陸と異なる経済体制のもとにあり、また歴史的経緯からしても、比較すること自体が無意味ではある。だが、メダル争いに国家の威信をかけ、エリートスポーツを徹底して推し進める大陸のこれまでのやり方は、今後、少しずつ改善していく必要があるのは確かだ。今年の中国スポーツのテーマである「学校スポーツの充実」を推し進めるとともに、2008年の北京五輪が、「スポーツを我が手に」取り戻そうとする大陸の人たちにとって、大きな節目となってほしいと願っている。

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posted by 朝倉浩之 |10:07 | スポーツコラム | トラックバック(0)
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2007年03月07日

世界水泳選手権、井村シンクロは・・競泳は・・中国からの見所

 今月17日から、オーストラリア・メルボルンで第12回世界水泳選手権が開催される。競泳、飛び込みなど5競技が行われる今大会は、来年の北京五輪を控えて、という意味合いはもちろんだが、中国にとってはそれ以上の大きな意義を持つ大会となる。中国の水上スポーツを統括する国家水泳センターは昨日、世界選手権の出場選手名簿を発表した。

 今大会の中国選手団は179人で史上最大規模。そのうち、世界選手権初出場の選手が半分を占めるフレッシュな構成となる。毎回、記者会見の席上では話題となる目標メダル数だが、今大会に関しては「目的は、若い選手たちに国際経験を積ませることと、海外の選手の状況を把握すること(水泳センター・李樺主任)」としている。

 まず最も大きな注目を集めるのは競泳だろう。第一人者だった羅雪の引退後、最初のビッグ大会であり、中国競泳が世界でどれだけ戦えるかを占う上で大切な大会となる。「ポスト羅雪」は、何と言っても斉暉(サイ・キ)であろう。女子200m平泳ぎと200m・400mメドレーに出場する。

 競泳については、各選手の調整不足が心配される。今季は12月にアジア大会があったため、恒例の「冬合宿」も、例年の6分の1ほどの期間しか時間をとれなかった。またケガ人も多く、本来なら金メダル有力と見られていた4×200m自由形も出場予定だった3人がケガのため出場できないなど、厳しい情勢だ。また期待の吴鵬(ゴ・ホウ)も胃腸の不具合を訴えるなど、本調子でないらしい。今のところ、斉暉のメダル獲得が最も期待されており、吴鵬には、何とか早く本調子を取り戻して欲しい・・という状況だ。



 続いて、大きな注目を集めるのが、去年末、日本の「シンクロの母」井村雅代氏を監督に迎えたシンクロナイズドスイミングである。ただ、彼女自身は日本のクラブチームとフランスの指導も続けており、中国チームに対する指導は「片手間」というのが現状のよう。今のところ、1ヶ月に一度、来中するのが精一杯で、だいたい1週間滞在して、代表チームの指導を行なっている。ただ井村氏が中国にくるときは、空港からプールへ直行し、帰りもプールから空港へ直行。一切、休暇等をとらずに、中国チームの指導に当たるなど、その熱意について、こちらのメディア、チーム関係者から評価されている。井村氏は「まだ指導期間は短く何ともいえないが、メダルを狙いにいく。シンクロ強国に対して、我々の力を見せ付けたい。選手たちは、非常にストイックな練習に励んでおり、その表現力はすでに世界レベル。目標はもちろん2008年の五輪のメダルである。今回はそのための重要なステップ」と述べた。指導期間が短いとはいえ、「井村体制」を敷いて、最初の国際大会。「勝てば絶賛、負ければ罵倒」の手厳しい中国だけに、非常に大きなプレッシャーがかかる大会になるのは間違いない。

第12回世界水泳選手権は3月17日~4月1日まで。

posted by 朝倉浩之 |16:38 | 水泳 | トラックバック(0)
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2007年03月04日

中国一学歴の高いチームがプロリーグ参戦

中国のプロサッカー、トップリーグCSL(中国超級リーグ)が3日開幕。今年は上海の2チームが合併し、チーム数が15チームに減少するという改編があり、開幕前から大きな話題を集めた。だが、より大きな注目が集まっているのは、そのCSLの下部リーグ、すなわち日本のJ2に当たる甲級リーグ(3月31日開幕)に今年初参戦する北京理工大学であろう。

そのほかのチーム全てがプロチームという環境の中、大学生と大学院生で構成する北京理工大学がどんな戦いぶりを見せるのか・・去年、下部リーグを破竹の勢いで戦い抜き、大学チームとしては初の甲リーグ入りを決めたときから、この開幕まで、中国サッカーファンの大きな話題となっていた。

北京理工大学サッカー部は2000年9月創部とまだ日は浅い。だが、これまでに3度、全国大学生サッカーリーグ優勝。2003年と2005年にはユニバーシアード大会に中国を代表して出場して7位とまずまずの成績を挙げた。そして2006年、乙級リーグ戦に出場し、見事、今季昇格を決めたというわけだ。

日本でも、現在、J2の下部にあたるJFL(アマチュア)に流通経済大学が参戦するなどしているが、さすがにプロリーグに参戦した大学チームはない。

北京理工大学は、文字通り、理系主体の大学である。毎日、練習は午後3時半から5時半まで。当然給料もないし、学業と練習の両立が要求される。関係者の話では、大学の試験も全て受けるし、他の学生と評点基準は同等。一切の特別措置はない。また仮に大学の勉強と練習や遠征などが重なる場合は、勉強のほうを優先させることが原則となっているそうだ。

北京理工大学サッカー部の金志楊監督は言う。「部員は他チームのプロ選手より身体能力は劣っている。また個人技術もまだまだである。だが、彼らの知識や資質は、他チームより上である。彼らの理解能力は試合中、監督の戦術意図を正確に汲み取ることができる。これが我々の成功の要因だ。」

一流アスリートになるには、「頭も大事」というのは我々の共通の認識であるし、だからこそ文武両道という言葉が生まれてくる。大学チームがプロに混じってリーグ戦を戦うというのは、確かにすごいことだが、日本で仮に同じことが起きても、ここまで大きな話題にはならないだろう。

だが、中国では事情が違う。それは、今年の中国スポーツが抱える二つの重大課題が、理工大学の甲リーグ入りに大きく関わっているからだ。

ひとつは、スポーツ選手の「資質」の問題。中国では、スポーツ選手に「文武両道」が要求されない。ただひたすら練習に励み、最終的に五輪でメダルを取れば、なんら文句が言われない。だが、“引退後”は別だ。場合によっては、社会に対する何の知識ももたず、いわゆる「スポーツ馬鹿」で、社会で生きるための技術をもたないため、引退後、社会から排除されてしまう例も生じている。そのためスポーツ選手の学力を含めた「資質」向上が今のスポーツ界の大きな課題となっている。

二つ目は「学校スポーツ」の普及である。今年、スポーツ界では、この「学校スポーツ」という言葉が、幾度となく現れる。

いうまでもなく、学校で行われるスポーツ活動である。日本は良かれ悪しかれ、部活動を中心とした学校スポーツが今もアスリート養成の中核を成している。近年、コミュニティ単位のクラブチームに中心におく「社会スポーツ」の概念が推進されつつあるが、やはり学校スポーツの意味合いは大である。

だが、中国は学校スポーツがいまだほとんど存在していないといってよい。「アスリート候補生」は児童段階から、すでに選別され、体育学校と呼ばれる専門学校に入学し、ひたすら五輪を目指す。

一方、そのほかの児童・生徒は、朝から晩まで勉強に終われ、日本のような部活動などというものは、ほとんどないといってよい。全ては「大学入試のため」という学校生活が小中高と続く。

彼らは確かにバスケットやサッカーを好むが、それはあくまで暇つぶしの遊びに過ぎない。日本のように、アマチュアでありながら、チャンピオンシップ主義が支配する世界とは全く異なるのである。

その改善のため、例えば、今学期から上海の小中学校では、授業開始時間を遅らせ、その分を「遊び時間」に当てるなどの改革が行われた。これについては、いつか触れたいと思うが、この「学校スポーツ」の象徴として、今回の北京理工大学は、政府にとって、恰好の宣伝材料というわけだ。

理工大学の甲リーグ入りが、ここまで大きく取り上げられるのは、後者の意味合いが強いと考えられる。確かに、今後、中国のスポーツが発展していくためには、現在の育成システムでは限界があり、より裾野を広げる努力が必要となる。その第一段階として、学校スポーツの充実は必須となるわけである。

これまで、一本道だった中国のアスリートの育成。だが、この理工大学の「成功」は中国スポーツの多元化を予感させる出来事といえそうだ。

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posted by 朝倉浩之 |02:51 | サッカー | トラックバック(0)
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2007年03月03日

「お騒がせ」王濛、反省文と出場停止処分が下る

今年1月28日から、中国長春で開かれた冬季アジア大会。そこでさまざまな意味で「主役」となった女性の“処分”が昨日決定した。

2日、中国のスポーツを統括する国家体育総局冬季スポーツ管理センターは「第6回冬季アジア大会のレース後、チーム指導者に対して、攻撃を加える不穏当な発言があった」として、スピードスケートショートトラックの中国代表、王濛に対し、今年のスピードスケート世界選手権と世界団体選手権の出場資格を取り消すと発表した。

王濛とは、中国のショートトラックのエースで、トリノ五輪では金銀銅のメダル3個をとり、一躍、世界第一人者に踊りでたニューヒーローである。

この「不穏当な発言」とは、冬季アジア大会の1500m決勝で惨敗した後、王濛がCCTVの生中継のインタビュー内で「国家代表チームの指導陣はレース戦略を全く与えてくれない。私は地域のチームに帰りたい」と発言し、監督の李琰ら、国家チームの首脳陣をストレートに批判したもの。この成り行きについての詳細は、以下のブログ記事を参照してほしい。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/asa8043/article/18
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/asa8043/article/20
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/asa8043/article/21
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/asa8043/article/23

冬季スポーツ管理センターは先月27日、非公開の全体会議を開き、その中で王濛に「反省文」の提出を要求。昨日、国家チームの選手、コーチ陣らを前にして、王濛がその反省文を「朗読」して、反省の態度を示した。

この反省文の中で、王濛は「自らの過ちを十分に認識した。指導者の皆さんに、こういう機会を与えてくれたことを感謝したい。今後は練習にさらに力を入れ、チームメートを大切にし、支持に従い、多くの皆さんの期待を裏切ることがないようにしたい」と述べた。

「アスリートは国家のもの」である中国ならではの決着のつけ方であり、コーチ選びも個人との「契約」である日本のシステムでは、まず考えられないやり方ではあるが、それは差し置いて、やや納得のいかないものを感じてしまう。

確かに、テレビの生中継で、突然、指導者批判を行うというのは、決して利口なやり方ではなく、相手の面目を全く潰してしまう理不尽な行動である。

ただ、彼女の言動の裏には、スピードスケート国家代表の指導スタッフらが抱える大きな問題点が隠されている可能性が高い。それを明らかにする努力をせずして、根本的な解決とはならないはずだ。今朝のスポーツ紙のある評論で、王濛の件について触れていたが、彼女をはじめ、若い選手たちは全て「一人っ子政策」の世代であり、行動にも問題が多い・・として、今後、彼らに対する指導・管理を徹底していかねばならない、という論調であった。

だが、果たして本当に、今回の件が王濛の「一人っ子世代のわがまま」から出てきたものなのだろうか。

先ごろ、このブログで何度か触れたサッカー五輪チームの“乱闘問題”も含めて、なんとなく、最近スポーツ界におきている「事件」の数々は、深いところで根がつながっているのではないか・・それは、中国のスポーツシステムそのものの問題なのではないか・・と漠然と感じるのである。


posted by 朝倉浩之 |23:42 | 氷上競技 | トラックバック(0)
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2007年03月01日

中国女子サッカーの希望の星、馬暁旭が欧州移籍

監督の病気を理由とした戦線離脱、フロントと選手間の不仲、外国人顧問の突然の帰国など、9月に自国開催するW杯を前にして、いいニュースのなかった「女足」こと中国女子サッカー界に久々に希望の持てるニュースが流れた。

AFC(アジアサッカー連盟)の最優秀女子選手に選ばれた中国代表の馬暁旭(18歳・大連実徳所属)がスウェーデンの女子サッカートップチーム、Umeaクラブにレンタル移籍することが内定。馬はビザが取れ次第、週末にも渡航し、チームに合流する予定である。

馬暁旭といえば、去年のアジアカップで大会MVPにも選ばれたストライカー。去年のAFCアワードでは、女子選手として初めて最優秀ユースプレーヤーにも選ばれた中国の若きエースである。また27日には、世界で最も活躍した新人スポーツ選手に贈られる“ローレウス世界スポーツ賞”の2007年度新人賞にノミネートされた。これはロシアで行なわれたU-20世界女子サッカー選手権での活躍が評価されたものである。去年末のアジア大会では不発に終わったものの、今年の世界選手権、そして来年の北京五輪で是が非でもメダル獲得を目指す中国女子サッカーにとっては、大きな希望の星。その彼女が、ヨーロッパへの“武者修行”に赴く。

期間は5ヶ月間で、FIFA女子ワールドカップ2007(9月10日~30日・武漢、天津など5都市)の6週間前に代表チームに合流する計画だ。

ちなみに、馬が所属するUmeaクラブは、欧州でもトップレベルのクラブで、国内リーグ5度優勝、欧州チャンピオンにも輝いたことがある強豪である。

さて、中国選手が海外に移籍する際、いつも話題になるのが、その報酬である。中国では、「国家がスポーツ選手を育成する」システムをとっているため、自分の意思だけでは、海外チームに移籍することはできず、所属チームと体育当局の許可がいる。しかも、海外チームから得た報酬は一部を所属チームと政府に“育成費”という名目で「返却」しなければならない。(競技、選手ごとによって異なる。NBAの姚明は移籍当初、50%と言われていた)

で、Umeaは今回、馬暁旭に対して、月5000ドルを支払うとしているが、そこから税引きで3500ドル。それらは全て大連実徳(馬暁旭の所属チーム)に支払われ、改めて、馬暁旭に払われることになる。関係者は、この「最終的な金額」を“明らかにできない”としている。中国代表のスーパースターの馬暁旭の月給が1000元足らず(15000円ほど)といわれ、スポーツ選手の待遇改善が叫ばれているが、馬にどれくらいが渡るのか・・というのもおせっかいながら、興味深い。

 

posted by 朝倉浩之 |15:56 | サッカー | トラックバック(0)
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