2008年07月19日

この時期なぜ?中国サッカー五輪代表の監督更迭に思う

中国サッカーが末期症状だ・・・。

オリンピックまであと20日あまりと迫ったにもかかわらず、サッカー五輪代表のドゥイコビッチ監督(セルビア)が事実上、解任された。名目上、代表チームとの関係は残るようだが、実質的には更迭と考えていいだろう。

これだけの大規模大会の前に、監督が解任されるというのは前代未聞の事態。そういえば、女子代表もこの前、外国人監督が更迭され、中国人監督が就任したばかりだ。中国は男女とも、「オリンピックのため」の指揮官を失い、当初の予定になかった体制で、本番を迎えることになる。

「ドゥイコビッチは最初、“神”だと思っていた。だが、今は“人間”だと思っている」サッカー関係者の一人の言葉だ。

すったんもんだの末、選ばれたドゥイコビッチ監督は過去の実績(前回W杯でガーナをベスト16に導く)とそのサッカーに対する見識の深さが高く評価され、鳴り物入りで、中国五輪代表の監督という重大なポジションに座った。その後、国家代表についても「総監督」として実質的には最高指揮官の地位にたち、中国サッカーは、迫りくる五輪、W杯予選を全て、この一人の指揮官の肩に託すという選択をした。

だが、国家代表は結局「結果」を出せなかった。総監督という一歩引いた立場ではあるものの、選手起用、戦術面では完全に「傀儡政権」をコントロールしていたドゥイコビッチだったが、その選手起用法については、結果が出なかったこともあって、多くのサッカーファンから非難を浴びた。

ところで、先日、ドゥイコビッチが遠征先からバスに乗る際、ホテルの会計を忘れていたため、あわててバスを降り、そのため、チームの出発が「8分」遅れる、という“事件”があった、と地方紙が報じた。これによって、チームの不協和音が生まれた・・・というのだが、いうまでもなく、こういった「些細なこと」が「不協和音」に聞こえてくること自体が、もうすでにドゥイコビッチ政権の末期症状を示していたのだろう。

中国サッカーの「ご意見番」的存在である金志揚氏は、この解任について「やむをえないこと」とした上で、「すでに選手の中にもドゥイコビッチに対する不信感が生まれている。“被害”を最小限に食い止めるには、この時期にやめさせるしかなかった」とサッカー協会の決定を支持するコメントを出している。

私自身は、チーム内部の状況については門外漢であり、あれこれ言う論評をする資格はない。だが、それでも、この時期の監督交代は、オリンピックに、というより、中国サッカーの未来にとって、あまりにも痛手が大きいと思う。

ドゥイコビッチは、確かに戦術面、選手起用などで決して「目に見える」成果を挙げたわけではない。そして現実問題として、「結果」も出ていない。だが、チームに「戦う姿勢」を注入しようと努力したし、少しずつではあるが、チームを変えつつあった。もちろん、このまま五輪に突入すれば、決して理想的な結果は残せなかった・・のかもしれない。だが、それらの不協和音を何とか解消して、「最後の20日間」を乗り切る方法はなかったものか。

なぜなら、「一つのスタイル、理念を貫き戦って結果が出なかった」のと「それを貫き通せなかった」のとでは、同じ失敗をしても、全く意味合いが異なると思うからだ。一人の指揮官に国全体のサッカースタイルの改革を託したにもかかわらず、結局、それを大舞台で試すことなく、葬り去ってしまう・・・中国サッカーは多くの時間を無駄にしてしまった気がしてならない。

ドゥイコビッチは確かに神ではなく、人間だ。選手起用での失敗もあるし、戦術が結果に結びつかないこともある。それでも、「オリンピック」という最大の発表の舞台で、ドゥイコビッチがこれまでに築いてきた「何か」が見られるはず、と多くの人たちが楽しみにしてきたはずだ。その貴重な本番を失ってしまったことの損失は大きい。

魅力的な身体能力を持ち、大きな可能性を秘めているからこそ、私は、同じアジアのスポーツファンとして、中国サッカーに大きな関心を寄せてきたし、期待を持って、見つめてきた。だが、今回の出来事は、登りかかった木の上で、はしごを下ろされた気分だ。

また何より気の毒なのは、中国のサッカーファンである。祖国のサッカースタイルが少しずつ築かれていくのを彼らはここ数年、つぶさに見てきた。大いに辛口で文句を言いながらも、本番で、そのスタイルが花開くことを心のどこかで確信しながら、見守っていた。それが結局、相も変らぬ監督交代劇を見せられ、「またか」という思いの中、やりどころのない「あきらめムード」が漂ってきているのを、今私は肌で感じている。

中国サッカーはW杯予選敗退で終わったわけでも、北京五輪で終わるわけでもない。10年後、20年後に、この「歴史」を糧にして、花開くときがくる「はず」なのだ。だが、それを支えるのは、今のサッカーファンたちの「希望」であるはず。それを根こそぎ奪い、失望を与えた・・・今回の「中国サッカー」の罪は大きい。

posted by 朝倉浩之 |21:24 | サッカー | トラックバック(0)
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2008年07月19日

五輪運営スタッフも本番モード・・・「ノーというな」「政治宣伝には厳しく」

北京五輪まで、いよいよカウントダウンが始まる。今日は市内の地下鉄3線も開通。明日20日からは、五輪に向けた各規制が始まり、北京市内はオリンピックモードに突入する。

こんな中、北京五輪の運営側も最終段階を迎えている。この週末、北京五輪の各競技を運営するスタッフの最終研修会が北京各地で行われた。

北京五輪では各会場で組織委員会のスタッフ、ボランティアなど10万人以上が競技運営に携わる。会場での選手誘導、VIP接遇、観客対応、メディア対応、治安維持など様々な分野で多くの人員が集められており、北京五輪の成否は彼らにかかっているといえる。

そのうち、メディア対応のスタッフ研修が、18日から北京市内の大学で行われた。

本番前、最後の研修ということもあり、かなり具体的な事項も含めて、研修が行われた。参加したのは、組織委員会スタッフや大学生ボランティアなど70人。初日は、各持ち場の仕事の確認や注意点などがあった。非常に面白かったのは、各国の報道陣の特徴について、説明がなされ、日本の記者たちは「英語はほとんどしゃべれない。礼儀正しく、仕事熱心。必ず集団で行動し、記者席でもひとかたまりに座っている」となかなか的を射た分析がされていた。

また、基本的な英単語の確認や競技自体の細かいルール説明など、研修の内容も非常に幅広い。トラブルが生じたときの対処法なども、場合分けして、非常に細かくマニュアル化している。

印象的なのは、運営スタッフの原則が繰り返し強調されること。それは「相手(メディアや観客、選手等)のため、必ず“行動すること”。」「Noを言わないこと」の2点だ。五輪テスト大会のときにも感じたが、もちろん個人差があるものの、競技場内でのスタッフサービスは非常に行き届いていたし、仮に無理な要求をしても、今までの中国人のように「できない」の一言で終わらされることなく、きちんと向き合ってくれるスタッフが多かった。このあたりは、研修でしっかり叩き込まれているというわけだ。

最も時間を割いて確認していたのは、やはり「緊急事態」への対応。特に、観客や選手が「政治的メッセージ」を叫んだり、横断幕を掲げる等の「宣伝行為」をしたときの対応、爆発や火災などが起きたときの対処など、数十あまりの場面を想定して、細かく、その対処方法が定められる。大イベントの開催においては当然のマニュアル化だが、特に「チベット、台湾、ウイグル」、そして「宗教」に関して、事細かくシミュレーションがなされているのは、昨今の中国を取り巻く状況がそうさせているのだろう。

このあたりの説明になると、参加者の表情も真剣になってくる。みんな忙しくペンを走らせ、メモを取っている。迫りくる大イベントを前に、緊張感が漂う研修だった。

今後、最も早いスタッフは7月25日に競技場入り。その他のスタッフも開幕前の5日前後には全員配置につく。彼ら運営スタッフの「熱い夏」がいよいよ始まりだ。

posted by 朝倉浩之 |20:26 | 北京五輪 | トラックバック(0)
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