2008年08月30日

回憶 北京五輪(6)”劉翔離れ”へ 

比較的、冷静に劉翔の棄権を受け入れた一般の市民に対し、最も焦ったのは、劉翔を広告に起用している各企業、そして劉翔の試合を当て込んで競技チケットを購入した人たちだろう。

一説には、劉翔の出場する「予定」だった男子110m障害決勝のチケットは400元の2階席が20倍の8000元(12万円)まで高騰していたということだ。場合によっては、50倍以上に上がっているという話もあったから、その加熱ぶりは相当なものだ。

私が110m障害の2回戦に足を運んだとき、ある老人に出会った。彼は600元(9000円)のチケットを競技場近くにたむろするダフ屋から6000元(80000円)で購入したそうだ。劉翔の棄権を知った瞬間に、急いで売り払おうと、新たな「ダフ屋」を探したものの、いずれもその情報はとっくに察知済み。高くても2000元(30000円)といわれたので、それなら・・・と劉翔のいない鳥の巣にやってきたそうだ。残念そうな表情で、チケットの経緯を語っていたが、それでも、この日は走り高跳びで世界記録が登場するなど、なかなかの見せ場があり、このお年よりも、“それなりに”楽しんだようだ。

また20社あまりに上る劉翔のスポンサー企業は、この予想だにしなかった結果に戸惑いを隠せなかった。牛乳メーカーで、五輪オフィシャルスポンサーでもある「伊利」の広報担当者は「金メダルを取ったときの対応、取れなかったときの対応、いずれも想定していた。だがまさか“棄権”とは・・・」と唇を噛む。ある大手国際企業は、早くも看板のキャラクターを変更するなどの措置をとったとの情報もあるが、今のところ、各社とも「劉翔とは長い付き合い。復活に向けて、応援していく」として、様子見する姿勢を示している。ただ、以前は嫌というほど目にした劉翔のテレビコマーシャルは、五輪後、全く目にしなくなるなど、スポンサーの“劉翔離れ”は着実に進んでいるといえよう。実際、北京五輪では51人の金メダリストが誕生しており、現時点では、「敵前逃亡」した劉翔よりも商品価値が高いともいえ、各社とも見極めムードといったところではないか。

ただ最も最も大きな痛手をうけたのは、やはり中国陸上界だろう。

国家体育総局の責任者は今回の五輪について、「確かに金メダル数1位は大躍進。だが、陸上、水泳など競争の激烈な競技ではまだまだ中国は発展途上国。引き続き努力を続けていかなければならない」と語った。

今回の北京五輪に向け、中国は二つの施策をとった。一つは、アテネで好成績を取ってメダル獲得が有望視される選手の更なる強化。そしてもう一つは、他国が余り力をいれていない、いわゆるマイナー競技の徹底強化である。

後者については、今大会からというわけではなく、かなり以前からのスポーツ施策ではあったのだが、今回は予算投入の度合いも含めて、これが徹底された。結果的に、多くの種目で強化が実り、金メダルを量産できたわけだ。

一方、前者については、「チーム劉翔」まで作って、莫大な予算を投入して臨んだにもかかわらず、周知の結果となってしまった。これだけ110m障害に対する国民の期待が高まったにも関わらず、史東鵬が準決勝敗退するなど、決勝進出はゼロ。しかも、この二人の後を追う若手は登場していない。

これについて、ある体育関係者は「劉翔に頼りすぎた陸上連盟の失態」と断じる。この「チーム劉翔」の結果、本来ならば、アテネ後に次々と劉翔の後を追って、陸上短距離の門を叩く若者が生まれ、裾野が広がっていくはずだったにもかかわらず「ポスト劉翔が全く育っておらず、ヒーローが生まれた意味がなくなった(同関係者)」という結果を生んだのだ。この現象は、陸上だけでなく、他の多くの競技でも見られ、「金メダル獲得」のために、「北京後」をにらんだ育成をしっかりしてこなかった中国スポーツ界は今後、大きなツケをかぶることになるだろう。

中国陸上界は今後、「劉翔に頼らない」選手育成を進めていくことを暗に示している。いわば「劉翔離れ」が五輪後、ようやく始まったというわけだ。劉翔の専属コーチは、すでに110m障害の“秘蔵っ子”(17歳)を見つけており、次のロンドンは無理でも、2016年を目指して、育成を続けている。

経験がモノを言う障害競技だから、劉翔は十分ロンドンも狙えるし、本人も早くも気持ちを切り替えて、4年後に向けてスタートを切っている。だが、「新王者」デイロン・ロブレス(キューバ)の成長振りを見ていると、劉翔の復活は非常に厳しいのが現実。そこにまた、劇的な「劉翔・復活劇」が生まれることは期待してもいいのだが、そんな浪花節のストーリーに一国のスポーツ政策を託すわけには行かないのは当然だ。「ポスト劉翔」が急速に進んでいくのは間違いないだろう。

もし仮に・・・劉翔が金メダルをとっていたら、今頃、「チーム劉翔」は祝杯を挙げ、北京への4年間が全面的に肯定されて終わっていただろう。今回、陸上関係者が深刻に陸上の現状を受け止めていることは、中国陸上、いや中国スポーツ全体が変わる前兆とも受け取れる。

劉翔の棄権は、考えようによっては、中国スポーツを改革する大きなきっかけになるかもしれない・・・とも言えるかもしれない。

posted by 朝倉浩之 |08:10 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年08月29日

回憶 北京五輪(5)劉翔”ショック”その後 

26日、政治の中心地・人民大会堂で、北京五輪に出場した選手、役員らが集まる総括大会が行われた。ここに110m障害の劉翔がアノ事件後、初めて姿を見せ、報道陣の注目を浴びた。鮮やかな紅色のジャケットと黄色シャツに身を固め、コーチとともに会場に現れた劉翔。表情は笑顔を絶やさず、他の選手たちにサインをせがまれ、記念写真にも応じ、非常にリラックスした様子だった。ただ、報道陣がカメラを向けると、逃げるように足早にそこを過ぎ去ろうとする。席についてからも、顔をうつむき、明らかにメディアを避けようとしていた。もし、アノ時、「予定通り」劉翔が金メダルを手にしていたら、いつものように、くったくない笑顔を堂々とカメラの前で見せていたのだろう。スポーツの結果というのは、本当に残酷だ。

中国の英雄、劉翔の棄権はいうまでもなく、今大会最大の“事件”であり、中国全土の人たちに大きなショックを与えた。“事件”直後、ネット上の書き込みなどを中心に、「脱走兵」「国民の恥」など過激な意見が登場していたのも事実だ。

ただ、日本の報道を見ると、これについて、“自由な”ネット社会での意見が国民の大多数であり、リアル社会では国家の情報統制により、国民は沈黙している・・・という見方があるようだが、実際はそうともいえない。

私はその後、事あるごとに、中国人の若い人、年配の人、男女を問わず、この「劉翔事件」について問いかけてきた。そして、その数が何人かに達した時点で、それをやめてしまった。それは、ほぼ全ての意見が「確かにショックだし、残念だが、ケガならば仕方がない」という“許容”。そして「他に大勢の“英雄”が生まれた。劉翔だけが英雄ではない」という“無関心”だったからだ。

今大会、中国からは51人の金メダリスト、100人のメダリストが生まれている。劉翔が国民的英雄であることは間違いないし、その“戦わざる敗戦”は人々に大きなショックを与えたのは事実だ。だが、考えてみれば、それでもって、劉翔という一アスリート個人の「国民的批判」がなされることが、そしてそれが国民の大多数の意見となることが考えられるだろうか。

日本で、大会直前に、野口みずきが出場回避を決定したが、彼女個人に国民の批判は集まっているだろうか。むしろ、「次の手」を受けなかった陸連や指導者らの責任が大きく取りざたされているだろう。そして、野口みずきについては、「早くケガを直して、次に向けて頑張ってほしい」という気持ちが沸くのが自然ではないか。中国の人たちも、そんな「当たり前の感情」で“劉翔事件”に接していると思う。

たしかに、私がこれまで中国メディアに接していた経験からすれば、「劉翔問題について報道しないよう」という統制を国家が行っている可能性は十分ある。(ある国営メディアの友人は「そのような通達はなく、取り上げる“必要がない”から取り上げないだけ」と語っていたが)

だが、中国の人たちは実は、そんな「情報統制」で何かを見誤るほど単純ではない。国民的英雄の“失敗”を自然な感情を持って受け入れ、そして次には、それを「忘れ去ろう」としているのだ。

ヒーローは次々に生まれているのだから。

posted by 朝倉浩之 |08:54 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年08月19日

まさかの棄権に激震! 劉翔”事件”を現地レポート

国民的ヒーローの途中退場は、オリンピックムードに沸く中国の人たちを震撼させた。

18日、国家体育場(愛称:鳥の巣)で行われた陸上男子110m障害の1回戦。「加油!(がんばれ)中国」の大合唱の中で、スタート位置についた劉翔(中国)は、スタートの直後、第1ハードルの前で立ち止まり、その後、ナンバーカードを外して、大観衆の見守るコースを去っていった。

私はこの日、別の取材で、ある競技会場にいた。そこの運営スタッフを取材すべく、ちょうどお昼時だったため、彼らの胃袋を満たすスタッフ食堂で食事を頂いていた。劉翔が登場した瞬間、500人ほどが入る大食堂の全てが箸を止め、2箇所に設けられた大型モニターに見入っていた彼らは大歓声を上げ、国民的ヒーローを迎えた。そして、彼がフライングのあと、再びスタート位置に戻ることなく、控え室に帰っていった瞬間、何が何だか分からないというおかしな空気が漂った。「どよめき」と「ため息」が入り混じり、にわかにはその現実を受け入れられない彼らは、それまでの歓声がうそのようにシーンと静まり返り、ヒーローの様子を見守った。この「おかしな空気」は私にとっても一生忘れられない一シーンとなるだろう。この空気こそ、中国全土の人々がこの現実を目にしたときの気持ちを代表するものに違いない。

私は3年前、この一人の天才アスリートの走りを生で目にし、その肉声を取材したときから、彼は必ず北京五輪で優勝すると確信していた。別に専門的な根拠があるわけではない。ただ、彼は不世出の天才ハードラーであり、根っからの英雄だと私に思わせる何かを持っている男だった。だから、若くて強力なライバル、デイロン・ロブレス(キューバ)が登場しても、今年6月1日のニューヨーク陸上で退場し、右足の古傷悪化が伝えられても、また選手村入りした直後に病院で検査を受けたというニュースが入ったときも、私はそれらが全て、「天才・劉翔の物語」を完結させるためのサイドネタに過ぎないと思っていた。天才が最高の結果を迎えるときには、えてして、そんな逆境がつきものだし、それがあるからこそ、劉翔はヒーローなのだ・・・という妙な確信を持っていた。

だから、昨日の出来事は私にもにわかに受け入れることができないものだった。

ケガは「古傷」・・・アキレス腱疲労

この日、第6組2コースでウォーミングアップをしている劉翔は、いつもの自信に満ちた表情とは程遠く、眉間にしわを寄せながら、右足をしきりに気にしていた。そして号砲と共にスタートを切ったものの、他選手のフライングにより、レースはやりなおし。だが、劉翔は苦悶に満ちた表情で、太ももの「第2コース」を意味するナンバーカードを剥がし、一人向きを変え、選手控え室に通じる通路に引き返していった。

その後、劉翔は記者陣の前に現れることがなかったようだが、専属コーチの孫海平氏が記者会見に応じ、涙ながらに、その苦悶の選択の真相を語った。各メディアが報道する内容によると、劉翔のケガが悪化したのは、先週土曜日、練習中のことだったそうだ。孫氏によると、アキレス腱の傷はかなり前からのものであり、「古傷」であったようだ。

専門家によると、おそらく、これはアキレス腱の疲労がもたらしたものであり、頻繁に高い強度の練習とレースを繰り返し、その後、疲労回復しないままにトレーニングを続けたことが原因ではないかということ。その最悪の結果がよりによって、あの13億が見守る鳥の巣での本番中に現れてしまったというわけだ。

不世出のヒーロー、ケガと戦いながらの4年間

才能に溢れた若き劉翔が初めて世界の表舞台に登場したのは、2003年の世界選手権で3位に入ったときだろう。欧米、アフリカ勢が圧倒的優位を占める短距離界において、彼の潜在力は誰もが認める突出したものだった。

そして、アテネ五輪では12秒91を出し、アジア勢として初めて優勝。中国陸上、いやアジア陸上にとって、大きな一ページとなる出来事だった。

そして、祖国でのオリンピックを4年後に控え、そこで金メダルをとるという最大の目標のために厳しいトレーニングが始まった。だが、同時に、その直後から、彼の足は、あの「悲劇」に向けて、少しずつ負担を重ねていたのだ。

今から思えば、2005年夏、劉翔が全国陸上グランプリという国内大会に出場したときから、この悲劇の序幕が開いたといえよう。この大会で、劉翔は所属する上海代表の4×100mリレーのアンカーとして出場した。だが、得意のハードルと技術的に大きな違いがあるからか、レースの翌日、左足の腿がパンパンに膨れ上がったという。検査の結果は大事は至らないということだったが、このことが劉翔の足に大きな負担をかけていった可能性はある。

またこのころ、劉翔は右足に頻繁に出来る水ぶくれに悩まされた。その水ぶくれが破裂したあと、その部分がスニーカーとの摩擦で「たこ」になり、それが足の肌肉の中に入り込んで、常に違和感があったそうだ。ただ、それ自体は特に痛みがなく、トレーニングに支障をきたさなかったため、それほど大きな問題にはならなかった。

劉翔のケガで最も大きなものは、2006年初頭のことだろう。冬合宿の成果を試すため、全国室内陸上の上海大会に出場する予定だった劉翔だが、開幕3日前に、練習後、階段を踏み外して、左足を損傷してしまった。

その後、無事に復帰した劉翔だが、靴との相性からくる水ぶくれは続き、1週間ほど、練習がストップすることもあった。だが、ご存知のように仏ローザンヌの国際陸上で当時世界新記録となる12秒88の好タイムを出すなど、対外的には、北京五輪に向け、順調な調整ぶりを見せているように見えた。

そして2008年6月1日、ニューヨークグランプリ陸上に出場した劉翔だが、レース開始直前、太ももに違和感を覚え、棄権。当時、コーチの話によると、太ももの筋肉疲労ということだったが、すでにこのころから、劉翔の足は限界にきていたのだろう。

すでにこの鳥の巣に入ったときから、劉翔は走れる状態になかった。だが、それでも3人の医師を現場に置き、最後まで諦めなかった。劉翔は試合前、痛みを麻痺させようと、右足で壁を強く蹴りつける凄まじい姿が見られた。そこまでして、レーンに立とうとしたのだ。


スポンサーも対応に追われる・・・各界の反応は?

劉翔はアスリートとして一流であるだけでなく、「広告王」としても知られている。各企業がこぞって彼をCMやイメージキャラクターに起用しており、そのギャラは3億円をゆうに超えているといわれている。

しかも、その企業はそうそうたるメンバーで、スポーツ用品メーカーのナイキ、VISA、コカコーラなど国際企業をはじめ、国内ではレノボ、中国郵政EMS,中国移動通信など、15社以上。2004年のアテネ五輪後、ナイキと30万元(450万円)でCM契約を結んで以降、その数は爆発的に増え、町を歩いていれば、必ず彼の写真がデカデカとのったポスターや看板に出会う。

そして、彼らは一様に、北京五輪で劉翔が金メダルを獲得し、その「先行投資」が莫大な商品価値に成長することを見込んでのことだった。ライバルはいるものの、世界ナンバーワンの力をもつ劉翔はある意味「リスクの少ない」投資対象だったといえる。

特に劉翔が最初にオリンピックの舞台に姿を見せる8月18日以降は、その広告価値が最大になるときであり、各社ともテレビ、新聞、看板など大量の広告を出す予定にしていた。

この緊急事態に対し、一番早く手を打ったのは、ナイキだった。新聞「財経」によると、全国各地にある看板の内容を19日から、変更するとしている。ただ、変更後も主役は劉翔であることには変わりなく、ただテーマについて、若干の変更を加えるのみ、と説明している。

ただ困惑している企業もあるようだ。新聞「財経」によると、あるスポンサーは「金メダルを取ったときと取らなかったときのそれぞれの対応策については考えていた。だが、まさか棄権するとは・・・」と絶句しているという。このスポンサーは、2006年2月に3年契約で劉翔を起用。翌年11月からは、同社の社長と劉翔を並べた広告を打ち、話題となった。

いずれも今のところ、劉翔を契約を打ち切るなどの措置は表明しておらず、今後も、契約関係を続けていく方針を示している。これからの世論の動向や本人のケガの様子を見た上でということになるだろう。いずれにしても、全ての目論見が外れた各企業にとっては大きな痛手となることは間違いない。

また、ある専門家の分析によると、北京五輪で金メダルを取るか、取らないかは、10億元(150億円)以上のギャラの違いにつながるということだ。

これも、今後の「ストーリー次第」だが、いずれにしても「CM王」の座を続々と生まれている五輪ヒーローたちに明け渡す日が来るのは間違いないかもしれない。

ただ世論の動向は非常に同情的という感じがする。

日本の各報道や記者のコメントを見ていると、国内で非難の声が殺到しているとのイメージがあるかもしれないが、私の印象は異なる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080818-00000035-yom-int
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2008081800832

もちろん、祖国の英雄が金メダルを逃したことへの失望は大きいが、むしろ、彼のこれまでの功労を称え、また、不幸な結果に同情する声が大きいような気がする。上記にリンクさせていただいた新聞記事や、取材記者のブログ等がソースにしているネット掲示板での反応に関しても、実際に覗いてみると、決してこういう声が圧倒的多数というわけではないことが分かる。

もちろん、一部に過激な意見があるのは確かだし、大きなショックを受けたのは間違いないが、大多数は、マラソンの野口や土佐の棄権がもたらした日本での反応とそれほど変わらず、ある程度、冷静な受け止め方をし、むしろ同情を寄せる声が大きいのではないか。もちろん、劉翔目当てに高騰していた入場券を買い求めた人にとっては、たまったものではないかもしれないが・・・。


劉翔「もう一度復帰を」

彼は試合後、記者の取材を受けなかったが、ある記者がコーチを通じて、その肉声を伝えている記事を見つけた。劉翔は「すごくつらい。全国の人民の期待を裏切ってしまった。」と語ったという。

そのコーチによると、劉翔はアテネ五輪後の4年間、ほとんどプライベートで外出することなく、練習がないときは、一人部屋の中で、ネットをする毎日だったそうだ。華やかなヒーローの生活は「孤独」との戦いだったことが伺える。

劉翔は試合後、「多くの人たちの声援に感謝したい。ケガを出来るだけ早く直して、もう一度、帰ってくる」と語ったそうだ。

年齢的に今がピークであり、若いライバルが台頭していることからすると、「次」は非常に厳しいかもしれない。だが、これもまた「劉翔ストーリー」の一部だとすれば、もしかしたら、本当に「次」があるのかもしれない。一部では引退して、芸能界入りなどという話も噂されていたが、今後の劉翔がどうなるのか・・・引き続き、注目していきたい。

posted by 朝倉浩之 |10:42 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年07月21日

劉翔のライバル活躍で当局は弱気?

中国の英雄、アテネ五輪の110m障害の金メダリストの劉翔。北京五輪では誰もが彼の金メダルを信じているのだが、そのライバルがかなり好調である。

110m障害の世界記録保持者、デイロン・ロブレス(キューバ)が18日、仏パリで行われたパリ国際陸上で、劉翔の自己ベスト12秒88をマーク。自己の世界記録にわずか100分の1秒差という好タイムで優勝を果たした。

中国メディアの報道によると、このロブレスの絶好調ぶりについて、中国スポーツを統括する国家体育総局陸上競技管理センターの馮樹勇副主任は「今すぐ勝負すれば、(劉翔が)負けるかもしれない」と記者団にもらしたという。

一方、劉翔の専属コーチである孫海平氏は「調整はいたって順調」とライバルの快進撃にも意を解さないようだった。

posted by 朝倉浩之 |16:09 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年06月13日

劉翔の世界記録破られる・・・その時、劉翔は?

劉翔が“王者”の座を譲る・・・

現地時間6月12日、チェコで行われていた陸上のゴールデン・スパイクで、男子110m障害が行われ、21歳のデイロン・ロブレス(キューバ)が12秒87の世界新記録をマークした。これは、中国の劉翔(24歳)が2006年7月11日にスイスのローザンヌ国際で出した12秒88を0秒01縮めたもので、北京五輪を前に、“新王者”が誕生したことになる。

21歳のロブレスは2006年ユース世界選手権の110m障害で2位となり世界デビュー。劉翔より若く、同年代での成績は劉翔を上回っていることから、「最大のライバル」とも目されていた。今年の世界室内選手権では、判断のミスから予選落ちするなどしたが、今年は心身ともに充実しており、技術的にも急成長を遂げ、コンスタントに記録を伸ばしていた。

これまでの自己ベストは去年出した12秒92だったが、今回は、これを一気に縮める快走となった

一方の劉翔は、先週末のプレフォンテーヌ・クラシックで、フライングのため失格。先月末には太ももの筋肉の違和感で、スタート直前に棄権するなど、五輪を直前に控えて、雲行きが怪しくなっている。

中国の人たちのショックも大きい。世界記録保持者として「王者」の立場で、北京五輪を迎え、華々しく金メダルを取る・・・という筋書きが崩れてしまったわけだ。ネット掲示板の書き込みには「がっかりした」「(劉翔は)CMに出るのを減らしたほうがいいのでは?」という失望と批判が入り混じったものもあるが、また「記録が破られるのは当然。また破り返せばいいこと」「僕は劉翔を信じている」という激励の書き込みも続々と寄せられている。むしろ新聞メディアのほうが「北京五輪の結果を暗示しているのでは?」などという評論も見られ、「思わぬ展開」に戸惑いを隠せないようだ。

当の劉翔は今朝、記者の取材を受け、まずは「ロブレスにおめでとうといいたい」と語ったあと、「ロブレスに記録が破られるのは時間の問題だと思っていた」と平然と言い放ったという。「これで北京五輪では)最高の戦いが出来る。」と語り、「五輪では絶対に負けない」と健闘を誓っていたそうだ。

アスリートは、それぞれの思惑で北京五輪に向けて、コンディションを作っているのであり、一つ一つの大会の結果で一喜一憂する必要がないのは言うまでもない。ロブレスの身体能力における「最初のピーク」がここで到来したにすぎず、彼らレベルの次元において、この「王者入れ替わり」と北京五輪とは何ら関係はない。

ただ、それを分かった上で、敢えて野次馬的に言うと、これで大いに面白くなった、と思う。

劉翔はもう“王者”ではない。若くて伸び盛りの「キューバの星」に挑む挑戦者であり、彼にとっては五輪2連覇と世界記録の最更新という二つの目標がまたも目の前に現れたことになる。“王者”である劉翔は、プレッシャーを気にも留めていないようではあったが、それでも、国内外から寄せられる圧力は、見ていて気の毒なほどだった。そこから「挑戦者」と変わった劉翔が、そして新たな目標を持った劉翔が2ヵ月後の鳥の巣でどんな走りを見せるのか。ロブレスと劉翔の頂上決戦がますます面白くなってきたといえよう。

20080613-00.JPG
若手の台頭で金メダル争いはますます面白くなった。写真は劉翔



posted by 朝倉浩之 |16:24 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月25日

歓喜、そして悲劇・・・陸上「中国オープン」が最終日迎える

4日間にわたって行われた陸上の五輪テスト大会「中国オープン」も今日が最終日。北京五輪の舞台となる国家体育場で、さまざまな思いを持つ選手たちが五輪前哨戦を戦った。

主役はなんと言っても劉翔だった。当初予選でレーンの状況を確かめるだけかと思われていたが、準決勝と決勝、3レースを戦い、2階席まで埋めた観客の期待に応えた。

テスト大会とはいえ、これだけのプレッシャーを受けながら、きちっと勝ってくるところはさすがだと思った。

ちなみに、劉翔は準決勝と決勝、いずれもフライングをやった。

本人の話によると、一回目は「会場の雰囲気を高めるために故意に」、二回目は“わざと”ではなく、「スターター(中国人)のタイミングが国際大会と異なったから」ということだ。

だがコーチの話によると、「フライングをしたあとの緊張状態を体験しておくため」2回とも“わざと”だったはず、と分析した。世界の先頭を走り続けるアジアのハードル王・・・“テスト”の内容も並みではない。

20080525-02.JPG
期待通りの走りを見せた劉翔(中国)


四川大地震に遭遇しながら、今大会に出場した四川勢の頑張りぶりは印象に残った。特に、素晴らしかったのは、最終日に行われた男子400mリレーでは、四川省代表の最終走者のイン・フアロンが、遠く前を走っていた日本のアンカー朝原を怒涛の勢いで追い上げ、50m付近で競り、最後の1mで交わして優勝を果たした。

試合後、彼は「僕は四川代表。その思いが最後の1mで頑張れた」と興奮気味に語った。四川省の陸上代表の合宿所は、地震の震源地に非常に近いところにあり、少なからぬ影響があった。

幸い、大きなけが人はなかったものの、その10日後に元気に鳥の巣に登場し、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたアスリートたちに拍手を送りたい。

20080525-03.JPG
「最後の1mは四川代表としての気持ちで・・・」四川リレーチームは笑顔が絶えなかった



日本勢でいえば、何と言っても女子400mリレーの日本代表(石田、信岡、福島、高橋)だろう。予選では43秒67の日本新をマーク。この時点で、20位だった世界ランクが17位まで上がり、上位16チームに与えられる五輪出場権にあと一歩のところまできた。

全選手がリレーの練習に全精力を注いできて臨んだ今大会。「バトンの精度を上げれば・・・」と挑んだ25日の決勝では44秒11と目標としていた43秒5台に遠く及ばなかった。

20080525-04.JPG
不本意な成績に肩を落とす日本女子リレーチーム


レース後は悔しさを隠せなかったメンバーだが、「チャンスがある限り、(五輪出場は)諦めない」と気持ちを新たにしていた。



同じ「残念」組でも、中国陸上の第1人者、孫英傑にとっては本当に辛い大会となった。

昨年10月にドーピング違反による2年間の出場停止処分が終わった孫英傑は、マラソンでの五輪出場を目指したが、選考大会でブレーキとなり、出場を断念。トラックに切り替えてトレーニングを重ね、今大会は5000mに出場した。

だが、予選は思ったような記録を出せず、五輪標準記録にも到達できなかったため、陸上協会は「出場は無理」と通告。かつての「長距離の天才少女」は祖国での大舞台を踏むことを諦めざるを得なかった。

それでも25日行われた5000m決勝には出場。鳥の巣を埋めた大観衆の声援を受ける孫英傑は16分48秒37。レース後は目に涙を浮かべながら、記者のインタビューに答えていた。

20080525-05.JPG
画面中央が孫英傑


自己ベストから程遠く、その走りには、かつてのような力強さはなかった。

本来ならば、劉翔と並んで、「夏の主役」となるはずだった孫英傑。「ドーピング問題」や「体罰問題」で訴訟も起き、さまざまなドタバタに巻き込まれた「悲劇のヒロイン」は、レース後、悔しさをにじませながら、「五輪の舞台」から去っていった。

20080525-06.JPG
涙を浮かべて取材に応えた孫英傑。しかし最後は「次は全国運動会(日本の国体に当たる)のマラソンで金メダルを狙う」と競技を続ける意思を語った



posted by 朝倉浩之 |22:45 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月24日

夏の主役、劉翔が一足早く”鳥の巣”制す~陸上中国オープン

今夏の“鳥の巣”の主役が一足先にレース制す・・・

北京の五輪スタジアム、国家体育場で行われている陸上のテスト大会「中国オープン」の3日目、男子110m障害の決勝が行われ、世界記録保持者で五輪2連覇を狙う劉翔(中国・第5レーン)が13秒18で優勝を果たした。同レースには、内藤真人(日本・第4レーン)も出場し、13秒60で6位に終わった。また劉翔の国内唯一のライバル、史冬鵬(中国・第6レーン)は13秒29で2位だった。

20080524-11.JPG
先頭を走る劉翔


20080524-12.JPG
レースを終え、引き上げる劉翔


レース直前は、昨日、一昨日と同じく、「出囃子」代わりのVTRが流れ、2階席まで満員となった鳥の巣が「劉翔色」に染まる。いくら“格下”の選手が多いとはいえ、一発勝負の中で、「間違いのない勝利」を期待される、この大きなプレッシャー・・・それでも、時折、笑みを浮かべながら、観客に手を振る余裕さえ見せる劉翔の肝っ玉は大したものだ。

圧巻の勝利だった。「本気になった時の第1レーンまでのスピードはモノが違う」と日本の内藤が試合後、劉翔を評してこう語った。確かに、圧倒的なスピードだった。そして、余裕のフィニッシュラインを切って、大歓声の期待に応える。レース後は、今大会、最初で最後の場内インタビューまで行われた。それもこれも、劉翔だからこそ、である。

「あくまでテスト大会」と言った上で、「でも気分がいいね」と満面の笑みを浮かべた劉翔。硬いといわれる地面も、3度の走りで完全に感覚をつかんだ。

20080524-14.JPG
レース後の劉翔を取り囲む中国メディア


“夏の主役”はすでに準備万端、のようだ。

20080524-13.JPG
内藤真人のコメント
「やはり本気になったときの世界記録保持者(劉翔)のスタートダッシュは違う。1台目(のハードル)までが速かった。まだ僕はあそこまで体を動かせていない。ただ、そこから大きなヒントもつかんだ。8月に向けてトレーニングを重ねていきたい」



posted by 朝倉浩之 |22:38 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月24日

陸上テスト大会、劉翔より大声援を受ける選手?

今日の北京は日中の予想気温が31度。だが、外は確実に35度前後の真夏の暑さとなった。これまでは、袖の長さを迷いながらだった街角のファッションも一気に夏モード。日傘を片手に汗を拭き吹き、歩く人たちの姿が目立った。

そんな中、熱い戦いが繰り広げられている陸上の北京五輪のテスト大会「中国オープン」。今日24日は大会3日目を迎えた。110m障害の劉翔が完全に主役を担っている今大会だが、日本人選手もがんばっている。男子200メートル予選は日本記録保持者の末続慎吾(ミズノ)が総合トップの20秒92をマーク、また高平慎士(富士通)も同タイムで、ともに25日の準決勝に進出した。劉翔だけが目立つ今大会だが、日本の実力派のアスリート達の健闘にも期待したい。

さて今大会、実は劉翔と同じくらい、いやある意味、それ以上の大きな歓声を受けながら競技をしている選手がいる。しかも一人や二人ではない。今大会に46人エントリーしている四川省の選手たちである。

今大会は、劉翔が出場し、また日本のトップレベルの選手が派遣されているものの、全体的には、中国の国内大会的な雰囲気が強い。エントリーしているほとんどの選手が中国国内の選手で、彼らは全て、「中国の」ではなく、所属する省・市でコールされる。例えば、劉翔は「上海」所属である。

そんな中、「来自四川(四川省からきた)・・」と選手名がコールされると、毎回、場内に割れんばかりの拍手が起きる。

昨晩、女子100mで13秒22で優勝した劉静もその一人だ。また男子110m障害のイ靖(四川省)は、大会期間中に誕生日を迎えた。劉静はそもそも人気選手で、陸上ファンにはお馴染みの選手なのだが、今大会、彼女に送られる声援はまたいつもと異なる。いわずもがな、未曾有の大災害を乗り越えてレースを戦う彼らへの「がんばれ!四川」という声援である。

四川省の陸上代表(中国では、各省・市ごとに代表チームを持つ)の合宿地は、今回の震災の震源地であるブン川に程近いところにある。地震が発生した5月12日14時28分は、選手たちは、午前のトレーニングと食事を終えて、昼寝の時間だった。その瞬間、大きな音が遠くから聞こえ、ある選手は「結婚式の礼砲」かと思ったそうだ。すぐに選手全員が外に逃げ出し、高跳びの選手が腿に軽いケガを負った以外は幸い、大事には至らなかった。その後、選手たちは室内トレーニング場の中で、高跳び用のマットをベッドにして、2晩を明かした。だが、その後はすぐに、「中国オープン」に向け、練習を開始したという。合宿所は倒壊等はなく、少しヒビが入った程度だったそうだ。

こんな大きな大災害を乗り越えて、国家体育場に姿を現した四川省の選手たち。恐らく、大会の出場そのものをどうするか考えただろうが、ここで彼らが大歓声を受けながら走る姿を見ていると、出場は決して間違いでなかったと思えてくる。

今大会はCCTV(中国中央テレビ)の五輪チャンネルを通じて、全国に中継されている。昨日の劉静の100mももちろん、四川省に届いている。400mハードルで優勝した黄瀟瀟も四川省の選手だ。「今大会に出場したのは、四川省の人たちに希望を与え、諦めない気持ちを感じてもらうため」と語る。自分たちの走りが、少しでも被災者の皆さんの心の慰めとなり、明日への希望を持つことが出来れば、ということだろう。

四川大地震の被害の全貌はいまだ完全には明らかになっておらず、まだ本格的な復興への道を口にするのは早いかもしれない。だが、震災にもめげず、最高のパフォーマンスを大舞台で披露する四川の選手たちの姿は、四川市民たちに大きな力を与えるに違いない。

posted by 朝倉浩之 |17:38 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月22日

陸上「中国オープン」余裕の予選通過!劉翔の一問一答(現地レポ)

陸上の五輪テスト大会「中国オープン」の初日、男子110m障害の1次予選が行われ、世界記録保持者で五輪2連覇を狙う劉翔(中国)が4組目で登場。13秒63(総合2位)で余裕の勝利を果たし、2次予選に駒を進めた。また劉翔を追う中国勢の一人、史冬鵬も13秒58(総合1位)で通過。

また日本勢では内藤真人(ミズノ)が13秒79(総合6位)、大橋祐二(ミズノ)が13秒88(総合10位)でいずれも2次予選に駒を進めた。

ホームストレッチを間近に臨むメインスタンドは満員に埋まった。そして、予選4組目、劉翔がトラックに姿を見せた瞬間、うなるような歓声が鳥の巣を包んだ。スタート前には、なぜか、このときとばかりに、劉翔のこれまでを振りかえる「中国飛人 劉翔」と題するVTRがオーロラビジョンで流れる。これだけの“出囃子”特別につけて登場し、また、それに相応しいと思えるのは、13億の英雄・劉翔ならではだろう。ウォーミングアップで、2,3個のハードルを飛んだだけで、また大歓声が飛ぶ。ただ、スタート前の劉翔には笑顔がある。あくまでもトラックの感触を試すだけの「テストレース」だから、というのもあるだろうが、こんなとてつもないプレッシャーを与えられて、それでも笑顔でいられるのが劉翔なのだ。

颯爽とした音楽と共に、劉翔の名前がコールされ、さっきにも増して、歓声が包む。劉翔の笑顔は消えない。余裕の表情だ。そしてきれいなスタート。国家体育場(鳥の巣)で最初の一歩を踏み出した。そして、ハードルを一つ、二つと越えていく。いつものように、なめらかな足運びでハードルをクリアしていく。

20080523-00.JPG


そして最後は流しながら、余裕のフィニッシュ。13秒68で、まずは軽いウォームアップをしたという感じだ。

20080523-01.JPG
レース直後の劉翔


20080523-02.JPG
電光掲示板を見つめる劉翔


レース後、劉翔は初レースの感想を語った。

20080523-03.JPG


――今大会はどんな気持ちで臨んでいる?
劉翔「気持ちの中では、すごく重視している。周りは国内選手が主で、海外からも少し。それほど大きなプレッシャーはなく臨めた。」
――国家体育場(鳥の巣)の印象は?
劉翔「設備、サービスともに、海外の一流の競技場と同じレベルだと思う。」
――トラックが硬いといわれているが・・・
劉翔「今回、硬さを体感して、それによってシューズを調整することにしている。走った感じ、それほど悪くない印象だ。」
――今日も大歓声があった。五輪の時はもっと大きくなると思うがプレッシャーは?
劉翔「僕にとって、ハードルは自分との戦い。プレッシャーは感じない。僕は楽観的な人間だから、気楽にレースに臨むし、それは五輪の時も同じ。むしろ、観客の皆さんとコミュニケーションをとるのが好きだ。」
――四川大地震についてはどう思うか?
「被災者の皆さんのことが本当に心配だ。だが、まず立ち上がることが大切だと思う。起きてしまったことは仕方がない。過去のことは過去のこととして、気持ちを楽にすれば、何かが変わってくると思う。」

110m障害の準決勝は明日夜行われる





posted by 朝倉浩之 |23:02 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月22日

陸上「中国オープン」、朝原は2次予選で敗退(現地レポ)

陸上の五輪テスト大会「中国オープン」の初日、男子100mの2次予選が行われ、日本の塚原直樹(ミズノ)は10秒37、上野 政英は10秒40で通過。しかし、ベテランの朝原宣治(大阪ガス)は10秒55で予選落ちした。

20080523-06.JPG
朝原は2次予選で敗退


20080523-08.JPG
塚原は予選通過を果たした


朝原「風邪で寝込んだ」

大会4日前から風邪で寝込み、本来の体調が戻らないまま、鳥の巣での大会に臨んだ朝原。「力が入らなかった」と振り返るレースは、中盤以降、失速し、4位に沈んだ。「このままじゃだめ」と語る朝原は6月の日本選手権に向けて、気を引き締めているようだった。

20080523-07.JPG
「体調が万全でなかった」と語る朝原



posted by 朝倉浩之 |21:39 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月22日

陸上中国オープン、劉翔を待つ国家体育場(現地レポ)

鳥の巣の中は、夕暮れ時になって蒸し暑さがぐっと増してきた。

陸上の北京五輪テスト大会「中国オープン」の初日、夜の部の試合が7時からスタートした。前回の競歩、マラソンと違い、今回は初めて国家体育場(鳥の巣)の観客席が2階席まで全て開放され、9万人を収容するビッグスタジアムがいよいよ本領発揮となる。

20080523-05.JPG
今日の国家体育場(鳥の巣)


午後7時現在、1,2階席ともパラパラというお客さんの入り。メインスタンドの側は結構、埋まってきた。今日は夜9時(日本時間10時)から、110m障害の世界記録保持者、劉翔が初お目見えする。一足早く、間近で劉翔を見たいという北京市民たちだ。そして、おそらく、これから劉翔目当てのお客さんが、仕事を終えて、続々と鳥の巣に集まってくるのだろう。

20080523-04.JPG
ホームストレッチ側のメインスタンドは満杯


先ほど、担当者に聞いたところ、すでに今日発売のチケットは全て売り切れ。北京市民の注目度の高さが伺える。

最初の競技である女子100mの予選1回戦が始まった。華やかな音響と軽快な中英2ヶ国語のアナウンスが会場を盛り上げる。オリンピックの華・陸上の本番が2ヶ月あまりあとここで行われる。そのときは、この雰囲気にさらに輪をかけて、華やかなフィールドとなるのだろう。

劉翔が出場する110m障害の1回戦は夜9時のスタート。日本からも内藤真人(ミズノ)、大橋祐二(ミズノ)が劉翔とは違う組で出場する。何とか次に進んで、「中国の英雄」との対戦を果たして欲しいものだ。

そして男子100mでは、午前中の1次予選を勝ち抜いた朝原宣治と塚原直貴もいる。




posted by 朝倉浩之 |20:18 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月22日

中国陸上、ドーピング”陽性”で永久追放

今日22日から、陸上の五輪テスト大会「中国オープン」が国家体育場(愛称:鳥の巣)で行われる。

それを前に20日、陸上の国家代表らは国家体育総局で「反ドーピング活動 署名式」に出席した。これは、北京五輪において、中国陸上代表はドーピング行為を絶対に行わないという誓約書にサインするもの。もしも、期間中のドーピング検査で「陽性」が出た場合、選手、指導者ともに「陸上界から“永久追放”」されることに同意する、という非常に厳しい内容だ。

特に、ドーピング問題の「多発地帯」である陸上競技にとっては、非常に大きな問題。ここ数年、中国は国家を挙げて、ドーピング撲滅に取り組んでおり、まさに「威信をかけて」防止をするということを形で示したことになる。

「陽性」が出た場合は、「永久的な試合出場禁止」「国家代表から追放」「報酬の返還」、そして「所属チームの全国運動会(日本の国体に当たる)出場禁止」という重罰が待っている。選手個人だけでなく、その所属チーム(一般的には各省の代表チーム)にも厳罰が下ることになっており、非常に厳しい内容といえよう。

すでに、国家代表の合宿所では、食品の完全管理を行っており、外からの持ちこみは全くダメ。ついでにアルコール類も禁止という厳格な管理が行われている。

posted by 朝倉浩之 |10:49 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年05月22日

劉翔も出場の陸上オープンが開幕!問題山積の鳥の巣は?

未曾有の大災害となった四川大地震の「哀悼期間」が明けた。まだまだ被害の全貌が分からないという大変な大惨事だが、悲しみに暮れた中国全土は少しずつ、オリンピックに向けて、進もうとしている。

22日朝から国家体育場(愛称:鳥の巣)で、陸上中国オープンが始まった。去年8月から始まった五輪テスト大会の大詰めとなる大会。110m障害の世界記録保持者、劉翔も出場することになっており、非常に注目度の高い大会となった。

今大会は、46種目(4つのパラリンピック種目含む)が行われ、14の国と地域から932人が出場している。(うち海外からは154人)。メディアの注目度も高く、200社2200人の記者が世界中から訪れることになっている。

初日は9時から始まり、大地震犠牲者に対する哀悼の式典が行われたのち、女子7種競技(ヘプタスロン)の100m障害から幕を開けた。

なお、劉翔が出場する110m障害は、今日夜9時(北京時間)に予選が行われ、準決勝が23日(金曜日)、決勝が24日(土曜日)にある。トラックが劉翔のホームグラウンドより固く、一部に「記録が出にくいのでは?」という声もあるようだが、今大会は劉翔にとって、その硬さに慣れる最初で最後の機会となる。

また国家体育場(鳥の巣)にとっては、五輪前最後のテスト大会となる。前回のマラソンの際、「雨漏り」が発生し、大きな問題となった。これについて、施設担当者は「開幕式のために試験的に打ち上げた花火の火花が落ちてきた際、天井に穴を開けた」ことが原因と説明している。すでに、技術者を派遣して、「補強」を行ったということだ。

また前回のテスト大会では、座席に大量の“砂ぼこり”が落ちているという状況もあった。鳥の巣の最大の特徴が、お椀型のスタジアムにもかかわらず「高い通気性」にあるということだが、それが逆にアダとなり、北京を包む春の「砂」が大量に舞い散ったというわけだ。これについて、担当者は「周囲で工事が行われていたことが主な原因」としており、現在は「万全の対策」を施したとしている。

国内外でさまざまな環境のスタジアムを目にしている筆者としては、「多少のことはいいんじゃない?」と、揚げ足を取られているような“鳥の巣”が気の毒に思えてくるが、国家の威信をかけて開く北京五輪のメインスタジアムだけに、より“完璧”を目指したいということだろう。

その最後のテストが、いよいよ今日から始まる。

posted by 朝倉浩之 |10:34 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年04月22日

マラソン『ウェア真っ黒』報道への違和感

大気汚染などが懸念される北京五輪マラソンのテスト大会が20日、天安門広場をスタート地点に行われ、日本からは去年の世界選手権3位の土佐礼子(三井住友海上)を始め、尾方剛、佐藤敦之(ともに中国電力)が出場した。また同じく出場が決まっている大崎悟史氏(NTT西日本)は大会には出場せず、視察のみを行った。

コースは本番と全く同じコースで、北京市中心部の天安門広場をスタートし、世界遺産にも指定されている天壇公園を経由したのち、市西部を北上して、最後は東に向かってメインスタジアム国家体育場(愛称 鳥の巣)にゴールするというもの。

レースは土佐礼子が2時間38分04で4位。佐藤敦之が2時間16分55秒で6位などとなった。

さて、日本での関心の高いマラソンで、しかも本番と同じコースが設定されているということで、日本からも新聞、テレビ各メディアが大挙して訪れた。レース後に行われた記者会見での記者団の関心は軒並み「大気汚染」と「硬くて悪い路面」。それらは日本で最も関心の高いことだから、問題はないのだが、その翌日の報道を見ると、大きな違和感を覚えた。

各新聞の記事には「ユニフォームが真っ黒 北京五輪マラソンを日本代表が試走」、「ウェア真っ黒、道デコボコ」「ユニフォームが真っ黒。大気汚染の影響だと思う」「服が真っ黒!大丈夫か?」という言葉が踊っていた。

これはレース後に行われた記者会見で、選手全員が質問に答えた中、代表の一人、尾方剛選手が口にしたコメント。「帰ってきたらユニフォームが真っ黒になっていた。大気汚染の影響なのかなと思った」という言葉が伝えられたものだ。

これ自体は選手が口にしたコメントであり、伝えることに問題はないが、実際には、選手たちが口を揃えて、この大気汚染問題を“否定”していたのだ。だが、この部分は触れられている記事をあまりみかけない。

『あまり空気が悪いとは感じなかった。(土佐礼子)』『走っている間は特に(大気汚染を)感じなかった(尾方)』『見た目には空気が悪そうだが、走ってみると、そうでもなかった』というのが各選手のコメント。尾方選手は、先ほどの『真っ黒発言』の直前に、こう答えているのだが、この部分は、触れられている記事を見かけない。

この日は、あいにくの雨模様で、空気も“洗い流され”、現実には、レース中の大気状況の把握は難しい。だから、彼らのレース中の感想から単純に『北京の空気は大丈夫』とも言えないが、逆に言えば、尾方選手の『真っ黒発言』も決して額面どおりには受け取れないはずだ。普通に考えれば、足元の泥土が跳ねるなどの結果、『真っ黒』になったと考えるべきであり、もし仮に『雨水の影響』ならば、それをきちっと検証して、表現をすべきだろう。いずれにしても、他の選手の発言を紹介することなく、この『真っ黒発言』だけを取り出して、センセーショナルな報道を行う日本メディアの記事には違和感を覚えた。

また『硬い』『デコボコ』の地面というコースに配する批判報道も見かける。確かに、北京の石畳やレンガ状の地面は非常に硬い。また、選手がいうように『マンホールによる出っ張り』があるのも事実だろう。(これは我々北京在住者も街中でよく目にする)だが、選手たちは、決して、これらのコースに対して“文句”や“苦情”を語っているわけではない。あくまで、北京のコースはそういう特徴を持つコースだという「感想」を述べただけであり、自分自身の、それへの対応が必要と語っているのみである。

マラソンなど『ロードレース』は、あくまでも競技場の外で競い合うもの。あらゆる路面の変化があり、地形の変化があり、その環境の中でアスリートたちは戦う。これに対応するため、シューズを改良し、足の運びやペース配分の戦略を立て、レースに臨む。ここがマラソンの面白さであるはずだ。この『当たり前』の道理からすれば、各メディアの『地面がデコボコ』『硬い地面』など、北京のマラソンコースを批判する論調の記事には首をかしげざるを得ない。

むしろ、一人の選手は「その硬さが逆に心地よくなってくる」と感想を語っている。地表やコースを自分の味方につけた選手こそが、そのレースを制するはず。それは選手達が一番良く分かっているのだ。

もちろん、非常に素晴らしい記事を書かれる諸先輩、記者の方々も大勢いるから、ひとくくりにして批判をするつもりはない。また一方で、マラソンの一現象をとりあげて、北京の環境や様々な事象に無批判でいろ、というわけではない。

だが、一連の報道は「批判ありき」「批判のための批判」になっていないか。

このようなレベルの報道では、これから迎えようとしている北京五輪の持つ本当の問題点を見誤ることになると思う。




posted by 朝倉浩之 |16:11 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年04月19日

“鳥の巣”初大会の競歩,「コースが長く、硬かった」

北京五輪メインスタジアムの国家体育場(愛称:鳥の巣)での初大会となる競歩の五輪テスト大会は、今日の男子50キロで全日程を終了した。

昨日午前に行われた男子20キロには、エースの山崎勇喜をはじめ、日本人3選手が出場し、五輪コースの試走を行った。

ゴール後の日本人選手が語ったコースへの感想は「直線が長い」「路面が硬い」という2点だった。

競歩のコースは、国家体育場をスタートしたあと、外に出て、スタジアム西側の直線コースを往復するというもの。この直線コースが非常に長く、選手たちにとってみれば、限りなく続く道を歩き続けているような感じとなる。

20080419-00.JPG
折り返し地点 この延々と続くコースを往復することになる


次々と風景が変わっていけば競技中も気分転換になるのだろうが、このコースは、国家体育場などのメイン施設が入っているオリンピック公園の中であり、見える風景も非常に単調で、かわり映えしない。ここを走破するのは相当の忍耐力を必要とするだろう。

もう一つ、選手たちを悩ませたのが硬い路面である。路面は全て石畳が敷かれており、これがかなり硬い。『後半は足の裏が熱くなってきた』という山崎は「8月はもっと厳しくなる。シューズメーカーと相談して対策を考える」と語る。
20080419-01.JPG
硬い路面が選手たちを悩ませた


私も選手たちが歩くのと全くおなじ石畳を彼らと同じように歩行してみた。

シューズも彼らとは違うし、単純には比較できないのだが、確かに、近くにあるアスファルトの路面が若干の柔らかみを足裏に感じるのに対して、この石畳は足の甲の部分に『ズンズン』と跳ね返りが加わり、衝撃が強い。

特に、北京は雨が少なく、乾燥しているからだろうが、表面に湿り気が全くなく、硬い表面の衝撃がそのまま足に伝わってくる気がする。山崎選手は『滑りやすいということはなかった』というが、これだけ乾いていれば、シューズの質と路面状況によっては、ズルリと足裏がすべるような感覚も受けるかもしれない。

『直線が長い』コース設定は対策のしようがないが、路面の衝撃については、今後、シューズの改良や歩行フォームなどにより、対応することは可能だろう。五輪100日あまり前のこの時期に、コースを実際に歩けた意味は非常に大きい。万全の対策を練って、本番に臨んで欲しいと思う。




posted by 朝倉浩之 |14:16 | 陸上 | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加