2008年08月12日
北京南側の豊台スタジアムで行われる女子ソフトボールは世界最強の8チーム(中国、日本、中華台北、アメリカ、ベネズエラ、カナダ、オランダ、オーストラリア)が参加して、12日、開幕する。
総合力ではアメリカが一歩リードしているが、打線に課題がありつつ、世界最速ピッチャーの上野を擁する日本が悲願の金メダルを目指し、それを開催国の中国、オーストラリアが追いかける。
日本は今日行われる初戦のオーストラリア戦が大きなポイントとなるだろう。幸い、暑い日中を避けられ、夜の試合となったことは、投手を中心とした守りに重きを置く日本としては追い風となる。
第1戦は9:30にプレイボール。中華台北vsカナダから幕を開ける。
さて、選手もさることながら、会場運営もいよいよ本番を迎えることから、昨日は大いに緊張感のみなぎる雰囲気となった。
観客席の椅子は、清掃の係員が一つ一つフキンで丁寧に磨き、観客の来場に備えた。また場内整備のボランティアたちは、外野スタンドのあたりからホームベース方向に向かって、目視でゴミや石などが落ちていないかどうかを確認して回る。撮影記者が使用する木製の重いベンチが大量にネット際に置かれるのだが、若いボランティアが額に汗をにじませながら、両手に抱えて、運び込んでいた。
かなり以前から、本格的な準備が始まって以来、だんだんと作業は細かくなってきている。いずれのスタッフも何だか落ち着かない表情だ。
試合を終えた選手を取材するミックスゾーンの担当スタッフが、スタジアムの外にいた。彼らは、何本かのポールを立て、その間にロープをはって、選手と記者を隔てる“ついたて”を作る練習をしていた。試合終了の瞬間に彼らの仕事は始まる。指定の場所にポールを等間隔に並べ、そこにロープを張り、選手たちの誘導ラインを作る。この作業は早く終えないと、記者たちの不満を買う。何度もシミュレーションを繰り返し、50秒以内にミックスゾーンが作れるようになった。
だが、それでも心配だと、グランドの外に出て、何度も練習をしているのだ。責任者のスタッフに「いよいよ明日ですね」と聞くと、彼は「そうですね。まだまだ不安で」と答えた。これだけ長い時間、準備を続けてきても、彼らにとって、オリンピックという舞台は初めて。今が一番、緊張の時間なのだろう。記者たちにとってみれば、当たり前のものがそこにあるだけ、かもしれない。だが、そんな「小さなこと」を“当たり前”にするために、何度も何度も練習をする。裏方ならば当然のことなのかもしれないが、それがこの五輪を支えているのだと改めて実感する。
夜になると、記者会見で司会を担当するスタッフが私に話しかけてきた。日本人選手の名前の読み方を教えてくれ、というのだ。記者会見では、まず出席した選手と監督の名前を紹介しなければならない。彼女がこだわったのはアクセントだ。エースの「うえの」は平たく読むのか、それとも「う」を高く読むのか・・・。また姓と名はどちらを先に呼んだほうがいいか・・・私は「英語では名・姓で呼ぶが、我々は中国と同じく、姓・名の順に呼ぶ。国際慣例は知らないが、日本人の立場からいえば、できれば姓・名で読んでほしい」と伝えた。
夜も更け、静かな住宅街のスタジアム周辺は人も歩いていない。だが、スタッフたちの
準備は続く。
大丈夫・・・自信を持って臨もう!「準備好了(準備オーケー)」あとはプレイボールを待つだけ・・・いよいよプレイボールだ。
posted by asa8043 |10:43 |
ソフトボール |
2008年08月11日
各競技で次々と金メダリストが誕生し、スタジアムは大いに沸いている。中国は、射撃の第1人者、杜麗がメダルを逃し、がっかりさせた以外は順調に有力選手がメダルを重ね、10日時点で中国の金メダルは6個でトップ。まだ米国が強い陸上が始まっていないものの、中国としては幸先のいいスタートといってもいいだろう。
さて、今大会で私がぜひ注目したい競技はソフトボールだ。2012年のロンドン五輪では正式種目から外れることが決まっており、今大会は一応「最後の五輪」。それもあって、優勝候補の米国、日本、そして比較的強い中国もかなり気合が入っている。
この大会にかける思いが強いのは、選手たちだけではない。会場の豊台ソフトボール場で大会運営にあたるスタッフ、ボランティアも同じ気持ちだ。中国では決してメジャーとはいえないソフトボール、野球だが、「最後の五輪」となれば思いは格別となる。
あるスタッフがその決意表明のとき、「この大会が成功すれば、“次の次”からソフトボールが復活するかもしれない」「IOCの人たちに素晴らしい大会を見せたい」と意気込みを語っていた。もちろん、中には「ソフトボールって何?」というレベルのボランティアもいるが、選手と一丸になって大会を成功させようという機運は盛り上がってきている。
12日、ソフトボールの第1戦が始まり、21日の決勝まで熱戦を繰り広げる。
10日は、生中継を担当するBOB(国際映像を制作する会社)のカメラ信号テストにあわせて、運営スタッフの最後のシミュレーションが行われた。
今にも雨が降りそうな天候の中、フィールドでは、ブルーの服に身を固めたボランティアたちが「選手役」をし、実際にソフトボールをやって、テストを行った。設定は、決勝戦で、米国対日本。このあたりは非常にリアルだ。
ボランティアによる”模擬試合”が行われる
ゲーム開始の円陣から、音楽に乗って選手が登場するシーンなど、全て本番どおりに「演じる」。日本と異なり、子供のころから野球に親しむ機会がない中国では、何とも危なっかしいソフトボールだったが、一生懸命にボールをおいかけ、楽しみながら「演じて」いる様子は微笑ましい。シミュレーションでは、米国が日本に勝ち優勝。表彰式では、「選手役」たちにメダルをかけ、国旗が空にたなびいた。
試合終了後の選手取材から、記者会見の流れまでの流れも予行練習が行われ、私も急遽、日本人記者の「役」として、架空の質問をする役割を仰せつかった。
スタッフに笑顔は絶えないものの、一つ一つの動きを確認しながら、最終チェックを重ねる姿は真剣そのもの。「結果」は何となく気に入らなかったが(笑)、日本の優勝シーンは本番までとっておこう。
今日は、午前中、監督会議などが行われ、明日いよいよプレーボール。選手にとってはもちろんだが、運営スタッフにとっても試練の10日間が始まる。
私は、単なる試合の一喜一憂ではなく、一つの会場に密着して、現場にある人々の思い、苦労を一つ一つ拾って、日本の皆さんにお伝えしたいと思っている。
posted by asa8043 |11:05 |
ソフトボール |
2008年07月24日
4年後のロンドン五輪では実施競技からはずれ、現状では最後の開催となるソフトボール。その会場となるのが、北京南側にある北京豊台ソフトボール場(収容13000人)を訪れた。
北京豊台ソフトボール場
すでに受け入れ態勢は万全
北京五輪開幕まで20日あまりと迫った先週末、会場では内装の最終段階が行われ、また運営スタッフの最後の研修も実施された。今月半ばには、会場内でのテロ行為など突発事件に対する総合シミュレーションも行われ、すでに「受け入れ準備」は万端となっている。
最終の打ち合わせを行うスタッフ。25日から運営体制に入る
2006年6月に竣工、その2ヵ月後には世界選手権が開催されるなど、「中国一早く完成した五輪競技場」は、ようやく待ちに待った本番を迎えるというわけだ。
大会は12日9:30の中華台北vsカナダから幕開けとなる。日本はその日19:30のオーストラリア戦を皮切りに、翌日は中華台北との対戦。メダルを狙う中国と日本の対戦は16日に予定されている。
日本のエース上野を待つマウンド
記者会見場はまだコンクリートがむき出しだ
posted by 朝倉浩之 |10:11 |
ソフトボール |
2007年07月06日
シンクロの井村雅代に続き、ソフトボールでもあの人を招へいか?
中国がソフトボールの元日本代表監督の宇津木妙子氏(54)を指導者に招聘する動きがあるとの報道が日本メディアから流れ、中国国内でも波紋を呼んでいる。
宇津木氏といえば、かつて中国代表の任彦麗との「子弟愛」が話題となった。任彦麗はその後、日本国籍を取得し、宇津木麗華と改名して、日本代表の主力となった。日本ソフトボール界の「カリスマ」的存在の指導者だ。
これについて、宇津木氏本人も「正式な依頼があれば、前向きに考えたい」と話しているという。
この「サプライズ人事」を進めているのが、中国ソフトボール協会の顧問、李敏寛氏。中国の「ソフトボール育ての親」とも言われている中国スポーツの功労者で、日本にも住んでいた華僑。大学などで野球のプレー経験もある。1996年アトランタ五輪まで、中国ソフトの代表監督を務め、世界でも実力派の一角を占める中国の礎を築いた人物である。李氏は個人的にも宇津木氏と親交があり、また宇津木氏の手腕を高く評価している。これまでも何度か電話などを通じて、個人的に“ラブコール”を送ってきた。だが、今回は中国ソフトボール協会の役員の一人としての立場で、公式に宇津木氏に意向を確かめたということだ。
李氏は「長期的にというわけにはいかないだろうが、短期間の臨時コーチとしてでもいいから来てほしい」という意向を持っており、また宇津木氏本人もかなり前向きな姿勢を見せているという。
中国はアトランタ五輪で銀メダルに輝いたものの、その後は低迷。北京五輪ではメダル獲得が至上命題となっており、「起死回生」を狙った招聘といえる。
シンクロの井村雅代氏の代表チーム監督就任の際もそうだが、海を越えて、一流の指導者が技術交流を行うことは、スポーツ界全体の発展にとって素晴らしいこと。もちろん、シンクロと違って、ソフトボールは日本と中国の実力が接近しており、五輪でも最大のライバルとなることは間違いないため、日本人としては何となく複雑な思いを抱くのは確かだが、日本の誇るべきスポーツ指導者が今、一番スポーツに力を入れているといえる中国に招かれることは、誇るべきこと、と考えればよい。
ただ、一方で中国サイドにたって、もしも宇津木氏が監督に就任したら・・という仮定で考えてみると、私は、決していいことはないと考える。
中国代表はこの7年で7人の指導者が入れ替わり立ち替わり、監督を務めている。そのうち外国人監督は3人。このことは、国内ではすでに選手、コーチ陣にとって大きな不満となっている。「方向性が不統一であり、何を信じていいのか分からない」というのが彼らの声であり、この不信感が今の成績につながっている可能性は大きい。またある関係者は「今の中国代表チームに必要なのは戦術ではなく、“基礎”だ」として、このタイミングで、強力な指導者が降って湧いてくることは無意味だと考える。言い方をかえれば、宇津木氏が指導することは「宝の持ちぐされ」というわけだ。
北京五輪までの時間も短すぎる。まだまだ発展途上のシンクロと違って、ソフトボールは少なくとも、中国がかつて“一時代”を築いたスポーツだ。いろいろな面で、いったんすべてを「白紙」に戻し、「宇津木イズム」を浸透させるには、時間がなさすぎる。かえって、選手、首脳陣の戸惑いを招く可能性が高い。日本で「宇津木時代」を築いた当時のチーム事情とは少し異なると思う。
今のところ、正式な「代表監督就任」ではなく、技術コーチとしての招聘となる可能性が高いとの報道もあるが、来年の向け、「全てにおいて万全を期したい」と考える協会側が正式に監督就任を打診した場合、宇津木氏本人がどのような結論を下すかは分からない。ただ、やみくもな指導者交代は決して、選手のためにならない・・これだけは確かだと思う。
posted by 朝倉浩之 |15:32 |
ソフトボール |