2010年02月05日

卓球女王の引退騒動から見る「アスリートの引き際」

 先月31日の記者会見で「引退」をあいまいな形で否定した卓球女王、張怡寧。だが、きのう、マレーシアのメディアが「すでに北京市体育局に対して引退届を提出した」と報道し、メディアが右往左往している。

 去年10月の結婚以来、表舞台にほとんど姿を見せなくなった張怡寧だが、その間に、すでに北京体育局の副局長に直接引退の旨を伝えているというのだ。報道では、その際、孫学才副局長が「引退後、北京代表は大丈夫か?」と問うたのに対し、張怡寧は「大丈夫。丁寧がいますから」と答えたという。

 丁寧は1990年生まれの弱冠20歳。去年行われた全国運動会(4年に一度行われ日本の国体に当たる・山東省)で張怡寧、郭炎と北京代表チームを作り、団体優勝を成し遂げた新進気鋭の選手。
 
 この短期間での相反する状況に対し、メディアは「裏とり」に右往左往している。
 
だが、北京代表チームを管轄している体育学校の関係者は「引退届は絶対にあり得ない」と否定する。スポーツ選手を国家・地区が管理する中国では出身校や所属チームの指導者が知らない間に「引退届」を提出することは、例え「世界レベルの選手」であろうと「絶対不可能」なのだそうだ。

 また北京市体育局の広報担当も、この「引退届」の事実は全く知らないという。

 この「引退届」というのは、日本では考えられない概念だが、ある一定レベルのスポーツ選手は、これが受理されないと引退することはできない。受理までには、コーチやチーム関係者、スポーツ局の担当者など各方面の「意見」が付され、その結果、ようやく引退が「許可」されるという仕組みになっている。国家・地区が多額の費用をかけて育成してきた以上、勝手に身を引くことは許されないというわけ。だから、いきなり体育局のトップに「引退の意向」を伝えることなど、いかにトップ選手でもありえないそうだ。

 この「引退」は、たいてい、面倒な沙汰になることが多い。なぜなら、国家代表レベルの選手も含めて、全ての選手は、それぞれの「省・地区」に所属しており、その選手の成績は、そこの「体育局」の成果となるからだ。予算配分やスポーツ官僚の出世にも影響するため、各省・地区の体育局は、選手をなかなか「解放」したがらない。例え、年齢的に競技が厳しくなっても、一流選手ならば、国内レベルである一定の成績を上げることは可能だからだ。

 だから、各方面の思惑が複雑に絡み合い、日本のように「引き際」を非常にきれいにすることは、極めて困難なことが多い。

 今回の張怡寧の「あいまい会見」が果たして「本人の気持ちの揺れ」によるものなのか・・・。もしそうならば、世界最高のアスリートとして十分に悩んで、答えを出してほしいと思う。  

 だが、様々な利害を持つ人々の思惑の中で、結論を明確にできず、ずるずると引っ張られているのだとすると、中国スポーツの構造的問題が生んだ「悲劇」になりかねない。

 国の仕組みがどうであろうと、アスリートの「最初」と「最後」の時は、アスリート個人が決めるべきだと思うのだが、どうだろうか。
 

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posted by asa8043 |08:47 | 卓球 |
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