2008年03月27日
W杯サッカー予選、”両刃の剣”だった標高1900mの試合
「もし予選突破できなければ全責任を負う。全てのサッカーファンに謝りたい」 昨日行われた2010年サッカーW杯アジア3次予選のオーストラリア戦を終えて、シャオ・ジアイーが発した言葉だ。今日、中国メディアのスポーツ面の多くを飾ったのがこの言葉だった。 試合終了直前まで両チーム無得点。最後の最後に得たPKをエースが外す・・・古今東西のサッカーを見ていれば何度となく目にするこの『悲劇』だが、彼の様子を見ていると、中国国民をまさに『代表』しなければならない中国のアスリートのつらさを実感した。中国はアスリートを国家の力で育てる。それは、クラブ制度が充実してきたサッカーでもやはり同じ。国家代表としてのミスは全国民に対して謝罪しなければならない『重大事』となってしまうのだ。 PKを得たとき、ピッチにいる選手の中で最も経験があり、最もキックの精度が高いのはシャオ・ジアイー・・・。エースの鄭智もピッチを降りている中、その人選は当然のことだった。だが、無常にも彼の放ったキックは相手GKの足に当たって跳ね返った。サッカーに「もし」はありえないが、「もし」このPKが決まっていれば、ほぼ間違いなく『勝ち点3』は中国のものになり、“大金星”が中国に転がり込んでいた。 1900mの高地である昆明に試合場を設けたことは、「とりあえず」は功を奏した。前半は完全にオーストラリアのペースだったものの、高地に対応して体力の温存を考えたのか、それほど積極的な攻撃は見られなかった。後半は、完全にオーストラリアの足が止まり、「時間を待つ」ようなサッカーとなった。 そして、試合終了直前、積極的に相手陣営に飛び込んでいった途中出場の曲波が相手GKに倒され、キーパーにイエローが出た。(この判定には論議があるが・・・)ここで、1点が入って値千金の1勝が中国にころがりこんできていれば、今回の“策”は大成功となったのだろう。その意味では、『戦犯』がPKを外したシャオ・ジアイー一人となってしまうのは、やむをえない部分もある。 だが、高地での試合は一方で、中国代表にも大きく影響した。ポストになっていたFW韓鵬がいなくなり、エースの鄭智が後半途中に、スタミナ切れでベンチに下がったあとは攻め手がほとんどなくなった。ほとんどの選手が空気の薄い高原に慣れる為、20日以上前に昆明入りしていたが、ケガから復帰したばかりの韓鵬と海外クラブから直前に帰国した鄭智は結局、それに対応できなかった。またそれ以外の選手も、やはり決して、いつもの状態ではなかった。明らかに高地での悪条件の影響だろう。 高地での試合は『両刃の剣』だった。両チームとも過酷な条件の中で必死に戦い、その結果、最後のPK「しか」得点機がなかった。結果的にそれを外したシャオ・ジアイーにゲームの全責任がかぶさるような格好になったが、この場面に至るまで、両チームとも点が取れなかったことこそが問題であり、その理由はやはり「高地での試合だったから」というほかない。 では「もし」この試合を北京や広東省でやっていたらどうなっただろう。鄭智はフル出場できただろうし、イラク戦でやろうとしていた“速いパス回しのサッカー”の片鱗が見えたかもしれない。一方で、屈強なオーストラリア選手の猛烈な攻撃に合い、勝ち点どころか、大差で敗れていた可能性もある・・・というか、その可能性が高い。 だから、0-0で試合を終え、勝ち点1を手に入れた中国にとって、高地での試合は成功であった。だが一方で、『自分達のサッカー』ができなかったという点で失敗でもあった。PKの失敗は、その流れの一要素に過ぎず、むしろ、責められるべきは、そこに至るまで『1点』がとれなかった攻撃陣と『高地』を戦術面で生かしきれなかった首脳陣ということになるのだろう。 W杯は本選に出場し、そして勝たねば意味のない大会だ。そのために、各国はあらゆる手段を使うのであり、今回の『昆明』という試合会場の選択も、なりふり構わぬ中国代表の姿勢の表れだった。その必死のせめぎ合いの中で、そして皮肉にも、『昆明』を選んだことによって、さまざまな喜怒哀楽が生まれる。だからサッカーは面白い、と思う。 次は6月2日のカタール戦。イラクとオーストラリアが相手の2つの引き分けは、中国にとって『失望』ではなく、『希望』であることは間違いない。標高1900mの極限の試合環境の中で、強豪を相手に勝ち点1をもぎ取ったことを自信として、次に臨めるか・・・1億サッカーファンの期待を背負う中国代表の『死の組』での戦いが続く。
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posted by 朝倉浩之 |11:51 |
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