2007年08月29日

<プレ五輪>8月を振り返る・・・運営編

さて、競技編、設備編、に続いて「運営面」についてレポートしたい。

8月20日から26日までオリンピック公園でアーチェリーのプレ五輪「アーチェリー国際トーナメント」が行われた。それを視察した国際アーチェリー連盟の会長は「施設は素晴らしい。あとは“人”だ」と北京五輪への課題を示した。彼はプレ五輪の運営について、「コミュニケーションとコーディネーション」をより高めるよう要望したのである。

今回のプレ五輪において、運営面の中核を担ったのは、間違いなく若いボランティア諸君だと思う。彼らの頑張りについては、スポーツナビ本体の以下のコラムを参照して欲しいが、非常にきびきびと動き、スマイルを忘れず、元気に挨拶をしてくれ、「大会の顔」としての役割を十分に果たしてくれた。

著者コラム「五輪を1年後に控えた北京の動向~野球だけじゃないプレ五輪シリーズ」
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/other/column/200708/at00014309.html

全般的に言って、今回のボランティアの働きは本当に素晴らしかったと思う。私は日本でもいくつかの国際大会を取材したことがあるが、これだけ「至れり尽くせり」で大会運営のために働くボランティアを見たことはない。そんな彼らの素晴らしい活躍を評価した上で、あえて、いくつかの課題を挙げたい。

ある競技会場では、上記コラムにも記したように、それぞれのボランティアがそれぞれ言っていることが異なり、それをまとめる人がいない・・ということで、選手が戸惑うといったことが起きていた。特に、外国人選手の間で、そういう声は、いくつか聞かれた。当然、言葉や文化の相違から来る部分が大いにあるだろうが、数多くのボランティアが「烏合の衆」とならないよう、きっちりとまとめる存在が必要だ。今回はそれが会場によって、機能しているところと、そうでないところがあったような気がする。

また会場に多数いる「オレンジ色のポロシャツ」を着たボランティア全てに、最低限の基本的な知識を持って欲しいと思う。いくつかの会場で、あえて「メディア入り口は?」「A口はどこ?」などと、そのあたりを歩いているボランティアに問うてみたが、特にメディア関係の質問には答えられないボランティアが多かった。「制服」を着ている限り、全員が「大会の顔」・・・せっかくなのだから、そこまで突き詰めて欲しいと思った。

ただ、今大会の「言語環境」は素晴らしかったと思う。上記のコラムでレポートしたように会場によっては、日本語の通訳がつかなかった・・という選手もいたが、それ以外のほぼ全ての会場では、選手たちに専属の日本語通訳、そして記者会見のための通訳、また取材陣のための通訳が用意されていた。ある選手に聞くと、大会専用のホテルにも常時、日本語通訳が待機していて、何らかの問題があれば対処してくれたという。他の言語はともかくとして、英語に次いで多くの「言語人材」を抱えている日本語については、かなり高いレベルの言語環境を保障できているといえる。

その言語環境に関連してだが、大会中、組織委員会はボランティアによる電話案内サービスを提供している。その言語は、中国語だけでなく、英語、日本語など8ヶ国語。番号は「96105」である。筆者も試しに、雨模様となったアーチェリーの決勝戦の朝、この番号にかけて、試合の進行具合について問い合わせてみた。「もしもし」と敢えて日本語で言葉を発した瞬間、「ちょっとお待ちください」と英語で言った後、流暢な日本語を操るボランティアが電話に出た。口調から、中国人なのか、日本の留学生か何かかさえ、わからないくらいの美しい日本語で、また的確に、当日の試合の状況について、答えてくれた。この点については、非常に感心させられた。

また試合進行も全般的に非常にスムーズだった。アーチェリーのある選手は「他の国際大会と異なり、時間が非常に正確」と大会を評した。まさにそのとおりで、分刻みで予定が組まれており、ほぼそれと違わぬスケジュールで試合が行われた。特にボートやアーチェリーなど個人競技に関しては、選手たちのパフォーマンスを引き出す上で、この「時間に正確」ということが非常に大切となる。本大会でも、ぜひこの点は継続して欲しいと思う。

これらの「よかった点」はいずれもボランティアなどスタッフの「人海戦術」によるものが大きい。とにかく、数多くのボランティアが大会に関わっていた。観客よりも多いことさえもあった。だが、冒頭に述べたように、この「人材の豊富さ」は、使い方を間違えれば、「烏合の衆」となりかねない。この点を改善していけるかどうか、今後のプレ五輪を見守っていきたい。

ちなみに、そのほかの点で気になったことをいくつか挙げておく。一つは「オリンピック公園」の知名度が低すぎる。私の出会ったタクシー運転手のほとんどが、この場所を知らず、「通り」の名前を行って、何とか、たどり着いた。ここにはホッケー、テニス、アーチェリーなど多くの種目の競技場が集まっている。ある意味、北京五輪のメイン会場といえる場所だ。それをタクシー運転手が知らない・・というのは少しがっかりした。少なくとも、私が利用したタクシーは全てだ・・。もちろん、これから少しずつ、知名度も高まり、来年までには何とか・・ということだろうが、運転手の「英語教育」などといっている前に、この「メイン会場」の場所を覚えることのほうが先ではないか。

また、オリンピック会場と市内の主要地点を結ぶ「オリンピック専用バス」は素晴らしい試みだと思うが、外国人にとっては、きわめて利用しにくい。というのは、その多くが地下鉄駅と接続していないからだ。来年の本番では、訪れた外国人のほとんどはタクシーを利用する可能性は高い。だが、おそらく慢性的なタクシー不足に陥り、公共交通機関を利用せざるを得ない場面もでてくるだろう。そのときに、より利用しやすい「専用バス」と整備された地下鉄(今後、いくつかの地下鉄が新たに竣工する)があれば、訪れた観客もより快適にオリンピックを楽しむことが出来ると思う。

以上、3回にわたって、8月のプレ五輪について、感じた点をレポートした。これを中国語でなく、ここでお伝えする意味は、現地でしか感じ得ない問題点を列挙することで、来年に向けて、「発展途上」の北京の様子を日本に伝える際の「観点」を示すこと、そして、この現場の空気を感じてもらうこと、さらに「環境汚染」や「食品安全」などステレオタイプな「北京問題」だけにとどまらないものを皆さんに知ってもらいたいという理由からだ。

今後もぜひ、北京で行われる「プレ五輪」の様子に注目してほしい。

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posted by 朝倉浩之 |00:19 | プレ五輪 |
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