2007年07月11日

シンクロ井村氏が「中国への思い」語る

 このブログ記事で以前、PRをさせてもらったが、先月27日、中国の対外向け放送局である中国国際放送局のインターネット放送で「日中ネット対話」という番組が放送された。詳しくは下記をご覧いただきたい。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/asa8043/article/90

 今年から中国シンクロナイズドスイミングのナショナルチーム監督に就任した井村雅代氏が出演。現在の心境、監督を引き受けたいきさつなどについて語った。今回の番組は中国語の同時通訳がついて、中日両国語で放送されたほか、関連の番組を中国国内のFMでも制作し、中国でも大きな注目を集めた。井村氏自身も、ぜひ中国の人たちに生放送で語りかけたいという思いから積極的に中国メディアの出演をOKしてくれたのである。

 今回の「ネット対話」の中で井村氏は、非常に率直に心境を語ってくれた。そして、日中のスポーツ交流に対する強い思いを伺うことができた。放送から、すでに2週間が経ったので、ぜひ井村氏の思いを多くの人たちに知ってほしい、という願いを込めて、あくまで「個人的に」インタビュー録を掲載した。なお一問一答形式をとっているが、実際の放送では、パネラー4人による対話形式の番組である。

(引用開始)

――日中スポーツ事情の違いについて

日本の選手は朝が弱いということ。(笑)私も北京でトレーニングしているときは、朝早く起きて、天壇公園にいって、太極拳を練習した。できれば中国滞在中も太極拳ができるくらい心の余裕が欲しいと思うが、実際、今はそれどころじゃない。


――指導していて、中国人と日本人の違いはあるか

違いはある。中国人選手を見ていると自分の若い頃を思い出す。彼女たちに「できない」という文字はない。日本人は辛抱強さが欠けている。疲れそうなことは「逃げ」から入る若者が増えてきているような気がする。共通している点は、指導者に対して、非常に敬意を払ってくれるということだ。だが、逆に中国人選手は「痛い」とか、「やりにくい」といったことを我慢して言わない。今の状況の中で、「理解できないこと」を私の方にぶつけてほしいのだが、直接、言ってくれない。それが今の悩みだ。


――言葉の壁はあるか?

言葉の壁はないといえばウソになる。ただスポーツに言葉が要らないのも事実。通訳もいるし、どなったら、一緒にどなってくれている。(笑)ただやはり言葉の壁は大きい。一番困るのが、“オンタイム”で声をかけられないこと。通訳を通すと必ずワンテンポ遅れる。「その動作を」「この部分を」という指導ができない。そんな時は、中国語を勉強しなければと思う。ただ選手もだいぶん日本語を覚えた。中国人が最初に覚えた日本語は「だめ」だったが・・・(笑)


――スポーツの“日中交流”への意義

日中の間には悲しい歴史がたくさんある。だが、スポーツには、それらを「ちょっと」横に置いておく、ということができる。互いの習慣が違っても、本気で勝負し、強い人が勝ち、弱い人が負ける。そして自分より強い人に対して、尊敬し、讃え、多くのことを学べる。戦いの後、憎しみを残さない。同じ人間だということを実感する。それを言葉抜きに、感じられること・・それは本当に素晴らしいことだと思う。


――日中両国のシンクロチームの比較

日本のシンクロの技術力は本当に高い。中でも、“パワー”は日本の最大の武器。一方で、中国は「これだけ手足の長い選手をよく揃えたなあ」というくらい“体型”がすばらしい。演技の中でジャンプを担当する選手が、中国チームでは166センチの選手に決まった。この身長は日本では大きい方。だが、中国チームはその他の選手がみんな170センチ台で非常に背が高い。この「高さ」は魅力で実に美しい。だが美しいだけでは勝てない。今の課題は「美しく、たくましく」である。


――中国代表のヘッドコーチを引き受けた理由は?

まずはっきりさせておきたいのは、2004年アテネ五輪で日本代表のヘッドコーチはやめたということ。その後は自分のクラブ(井村シンクロクラブ)で若手の育成にあたっていたから、決して途中で、日本代表の指導を放り投げて、中国にいったというわけではない。私が中国に行くことを決めた時、一部のマスコミで、反対の意見があったことは知っている。だが、何をするにも賛成・反対がある。ただその中で、「日本の技術を敵国に売るのか」という趣旨のコメントもあった。私は、スポーツが国際化された時代に、この考え方は間違っていると考える。その言葉を聞いて、私は一瞬、「私のしていることは、人の道に外れているんだろうか」と思ったが、私はやはり「外れていない」と思う。自分の技術を必要としてもらえるという“立場”があり、それを必要としてくれる場所があれば、私は行くべきだと思った。ただシンクロも含めて、スポーツは結果がすべて。今は、北京五輪が終わってから、「素晴らしい交流だった」と言ってもらえるように、頑張るしかないと思っている。


――番組で日中両国において行ったアンケートでは70パーセント以上の人が井村さんの中国行きに賛成したが・・・

アンケートの結果を聞いて、これだけ多くの方が私の考えに賛同してくれていると知ってうれしい。私としては50パーセントくらいだろうと考えていたから、今はもっと元気になった。


――ヘッドコーチを引き受けた過程は?

中国側はまず私に「中国は北京五輪でメダルを取りたい。」と切り出した。私は「どの種目で、何色のメダルですか?」と聞いた時、「メダルの色は何でもいい。種目も何でもいい。そのために努力をしたいが、我々には経験がないので、どう努力したらいいか分からない。あなたの経験と素晴らしいコーチ力が必要なのだ」と言われた。
日中友好とはいうが、日本にいると、“そうでない”報道が多い。にもかかわらず、自分の開催国のオリンピックという大切な大会で、あえて、日本のコーチに依頼してきたというのは、「絶対に失敗ができない」ということ。そんな状況の中で、私に頼んできてくれた。私は、シンクロに関しては、日本が世界のトップをいくという自負を持っている。そうであれば、この依頼を断るわけにはいかないだろう・・政治的な色々なものがある中で、「私たちに力を貸してくれ」と、ここまで言ってくれたのに、断るわけにいかない…。自分が今までやってきたことが中国の役に立つんだ・・そして、それが日中友好に結びつけばこんな素晴らしいことはないではないか、と考えた。そして、いい結果に導いてやれれば、それは私の手柄ではなく、日本シンクロのコーチング力の手柄である。私の中では、中国と日本の交流を前面に出すのではなく、結果的にそうなればいいと考えている。


 ――日中がメダルを争うことになれば複雑な心境では?

私は日本をそんなに意識していない。もちろん、中国と日本の争いも意識していない。ただ、私の唯一の目標は「アジアの一位が世界の一位でありたい」ということである。だから、どちらに勝ってほしいということは一度も考えたことがない。オリンピックは真剣勝負の場だ。その勝負が終われば、必ず「さわやかな」思いになるはずだ。そのためにがんばっていきたい。
(引用終わり)

なお、もし番組を聞いてみたい、という方がいれば、ホームページで公開されているので、ぜひ聞いてみてほしい。アドレスは以下のとおりである。
http://japanese.cri.cn/other/07chi-jpn2/index.htm

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posted by 朝倉浩之 |18:30 | シンクロナイズドスイミング |
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Re:シンクロ井村氏が「中国への思い」語る

コメント投稿者ID :

中国に居なければよくわからない中国のスポーツ事情を、これだけわかりやすく詳細に伝えていただきありがとうございます。
 特に、今回紹介されたシンクロ井村氏の番組を聞いて、感動しました(井村氏の発言に)。
 このブログで紹介されなければ、このような番組があることを知らずに過ごしたことになったでしょう。
 朝倉さん、これからもがんばって、中国のスポーツ事情を伝えて下さい。楽しみにしてます。

posted by pian gang | 2007-07-12 01:32