2007年06月29日
すっかりご無沙汰してました。歩行を考える第二弾です。このシリーズ少し腰を据えて書かねばならないと思っています。分かったつもりで済まさずに、じっくり考えていきたいテーマだからです。拙速にならず、一つ一つ確かめて論を進めていきますので、ご理解下さい。お願いします。
さて、歩行の力学的解釈については様々な研究発表・論文があると思います。そして、一様に定説として述べられている事が多いと思いますが、ここではブログテーマ通り、再考をしていきたいと思います。
今回は問題提起のみしていきます。矢上面(真横からみた)における歩行動作と床反力の図を見てみましょう。
右足が地面に着いた瞬間を、Initial Contactとしています。その時の床反力は概ね緑の線に示したベクトルとされています。そしてこの時踵で床からの力を受け止めていると解釈されています。一方次の図をご覧下さい。
左足が床から離れる瞬間を示しており、これを左足のTerminal Stanceと呼んでいます。つま先がまさに床から離れる際に床を蹴り出して、前方に進む推進力の助けとしているというのが一般的な解釈です。床反力は茶色で示すベクトルです。
さてここで疑問です。実は上記二つのフェイズ(相)は、同じ瞬間です。右足にとっては着地の瞬間、一方左足にとっては離床の直前です。合わせて示すと以下の通りです。
すなわち、二つの足圧中心とそれに伴う床反力が存在しており、これがそれぞれおよび重心との関係で身体が前方へ進む事になります。先程述べた事を組み合わせると、左足で蹴り出しつつ、右足で受け止めて(決して受け流してはいません!?)いるという事です。この瞬間だけを取り出すと確かにそうかもしれません。しかし、動きはあくまで静的な組み合わせではないと考えると、どうなるでしょう?
右足はこの後足裏全体で受け止める、ある意味踏み込みの形を取ります。一方左足は蹴り上げる形と言うよりは、そのまま前方へ振り出す動きへとつながります。
本当に左足は蹴り上げて、右足で受け止めているのでしょうか?
なぜこの様なある人にとっては愚問のような質問を投げかけるのかと言えば、「走る」という動作との比較と、現在の走行に対する解釈とを参考にすると理解してもらえるのではないかと思います。
詳しくは次回に説明したいと思いますが、走るという事は床を蹴り上げてより歩く時よりも速い前方への動きを引き出していると考えたくなりますが、実は必ずしもそうとは言えないようなのです。あくまで床についた足を踏み込んで、後ろ側の足は早くに前方に振り出す(蹴り出すのではなく)動きが速い走りを生み出すという事が言われています。定説(誰もが認める異論の余地がない説)にまでは至っていないようですが・・・まぁこの点は次回にもっと詳しく歩く事と共に考えてみましょう。
posted by 朝野裕一 |22:37 |
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2007年06月01日
さて、6月になってしまいましたぁ。早いですねぇ。結局今回のシリーズは5月に一度も更新記事書いてませんでした。すみません。今月は本題に力を入れよう!題して、『本筋月刊』とでも言っておきます。
そこで早速、動的安定を考えるに当たって、今回は最も基本的な動作の一つとも言える歩行を走行と比較して考えてみたいと思います。
いわば、歩くと走るの比較です。
以前から述べていますが、歩いている(走っているでも同じですが)時、重心(の鉛直線と床の交点)は両足の間のどこかに常に存在し、決して両足の裏面に乗りはしません。その前に足は床から離れ次の足が接地されます。次回改めて図でお示しします。これは歩くと走るの共通点です。
では相違点は?歩いている時は必ず左右どちらかの足が接地しています。当たり前ですね。しかも、両足が同時に接地している時間も一定の比率で存在します。しかし走っている時はそうではありません。まず両足とも接地していない、いわば宙に浮いている状態が必ず存在します。しかも両足同時に接地することはありません。
※これに対し、常に両足接地が存在してなければならないのが陸上競技の競歩です。これはこれでとても難しい動作ですね。ーーー補足でした。
では床を蹴って推進し、足を踏み込んでブレーキをかけるという形(パターン)は同じでしょうか?
実はこの上の仮定自体に、私は疑問を持っています。
足を踏み込んで加速し、床をつま先で蹴るのではなく支点としての作用で止めている(保持している)のでは?そしてこの仮定を考える時に走る動作と比較してみるとより理解しやすいのではないかと思っているのです。
大分話が脱線したかもしれませんが、少し寄り道しても良いでしょう!
この後しばらくシリーズで、歩くと走るを比較していきましょう。
では本日はこれにて終了。
posted by 朝野裕一 |19:55 |
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2007年04月27日
久しぶりの上記シリーズです。今回も動的安定を考えるに当たって確認すべき点を中心に述べたいと思います。まず下図をご覧下さい。これは中枢部が左右に動く時、末梢で支持できないと倒れてしまうというものです。
一方次の図は、末梢のストッパーで止めることができると、中枢部は倒れずにすむという模式図です。その代わり末梢部の動きは制限を伴います。
すなわち、中枢部が不安定だと末梢でのコントロールの必要度が大きくなり、末梢の運動自由度が制限される-逆に中枢部が安定していると、末梢が比較的自由に動かすことが可能であるという概念です。この概念を説明するために上記図を用いてみました。この考え方は次回以降も引き続き説明していきます。
posted by 朝野裕一 |18:17 |
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2007年04月10日
今回のシリーズは、動いていることと安定することについて考えてみます。以前書いたように、動くということは安定を崩して行われます。しかし、崩れたままでは、バランスを崩し求める動作を達成できない、場合によっては転倒する危険性が生じます。すなわち、動いていてかつ安定するという相矛盾する要素を満たさねばなりません。そのためには、一言でいえば重心の位置のコントロール、さらに言い換えると重力の制御が必要になってきます(地球に済んでいる以上逃れられません)。その理由を考えるに当たり以下のことを説明しておかなければなりません。
まずは、動き始めてから動き続けている時に身体に加わる力を挙げてみましょう。力を身体外部の力(以下、外力)と内部の力(以下、内力)に分けます。
外力としては前回までの復習で考えると、重力・床反力があります。さらに、慣性力・慣性モーメント(回転力)、床と足の摩擦力(詳しく述べると足と靴下、靴下と靴の内底、靴裏と床との間に加わる全ての摩擦力が関与します:靴がいかに大事か分かると思います;これについてはいずれ述べるでしょう)があります。
内力は筋力、また靱帯や腱の張力(筋力同様外力を調節します)があり、その他骨や軟骨にも剪断力やしなりの力など様々な力が加わり、その形を微細に変形させ外力を受け取ります。
身体にある力が働き、動きが開始されますが、それに関わる力として重力と床反力が重要な役割を果たすことは前回述べました。この二つの力は、動き続けている時も人の身体に加わり続けます。実は床反力計で測定すると、先程書いた床と足(靴)の間に加わる摩擦力も床反力に含まれてきます。力はその大きさと方向で表される(ベクトルといいます)ので、摩擦力は進行を妨げる方向への力のベクトルで分かります。
次に慣性力と慣性モーメントについても補足しておきます。慣性力とは言ってみれば見かけの力で、以前述べた慣性の法則からすると一旦動き出した物体は動き続けるので止まるために別の力(ブレーキ力とでも言う)が必要になりそのときに質量に応じて動き続けようとします。その時に関与する力が慣性力です。
また人の関節および身体は、ある軸を中心とした回転運動を含んでいるため、慣性モーメントという回転力が生じます。すなわち、回転し出した物体はその物体の質量と回転軸の位置に応じた慣性モーメントを発生し、回転をし続けようとします。人の身体もある質量を持った物体の特性を当然有しているので、これらの物理量が加わります。なんだか面倒くさくなってきました。もうちょっとお付き合い下さい。
もう一つ大事な力があります。それが身体内部から発生する筋力です。筋力についても過去にシリーズで述べましたね。前述したその他の組織の内力は外力を受けて生じる力であるのに対し、筋肉はその性質以外に、自ら力を外に発生させることが可能です。以前は車のエンジンに例えました。必要に応じ、比較的瞬時に大きな力が必要な時は(ダッシュして走り出す時など)、このエンジン=筋力に頼ることもあります。しかし、これもすでに筋力再考シリーズで述べましたが、効率の良い=燃費の良い動きには適しません。なぜなら強い力は筋疲労により、その出力を保てないからです。したがって、筋力以外の力、すなわち重力(および床反力)をいかに利用できるかが、効率の良い動きに必要となります。言ってみれば、エコカーの様なガソリンエンジンの出力だけに頼り切らない車は燃費が良いわけです。そして筋力も実は、自らの出力とは言え、外力を制御する時に最も重要な役割を果たします。
結論からすると、重力をいかに利用できるか=重力の制御が、人の全ての動きにとっていかに重要かということがお分かりになりましたか?う~ん・・・・色々な枠組みと側面で説明しなければならず難しい!でも一回は説明しておかないと。というわけで、前振りとしては回りくどくなってしまいましたが、次回から人の身体が運動・動作をいかに安定させて行っていくのか、について引き続きシリーズで述べていきます。
posted by 朝野裕一 |11:56 |
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2007年04月02日
今回は、静止して立っているところから、歩き出す時の状態を説明します。前回までに書いたことをまとめると、
- 静から動へ転ずるには一定の力が必要となる:慣性の法則と関係
- 静止している時の足圧中心と重心との関係
さて、今回は歩き出しの時、どのような現象が起きているかを見てみましょう。下の図をご覧下さい。
真ん中の丸印はあくまで足圧中心(COP)です。重心(COG)ではありませんので間違えの無いように!
そこで、この足圧中心の動きをよく見ると、降り出す側の足に一度動きます。その時の重心の位置は示していませんが、おそらく足圧中心にやや遅れて動く;すなわち両足の中心に近い位置にまだあると考えられます。ということは、前回お話しした内容の復習になりますが、身体は軸足側の方へ(この場合左の方へ)倒れる力が加わることになります。
さらに、足圧中心の軌跡は、比較的後側を通って左に向かっていますね。そうすると、身体は重心の位置との差で(重心はまだ足圧中心より前方にあると考えられます:前回の復習)、前方に倒れようとする力が働きます。
この二つの事象を組み合わせると、結果として『身体は左前方に行く力が働く』事になり、右足が降り出されると同時に前方に歩き出しが可能となる訳です。
これらのことが瞬時に(どのくらいの時間かはデータを調べてないのでここでは言えません)行われ歩くことができるのです。ではまた次回。
参考図書:『GAIT ANALYSIS-Normal and Pathological Function-』written by Jaquelin Perry
posted by 朝野裕一 |13:34 |
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2007年03月22日
今回は、人が静止して立っている状態を考えます。前回書きましたが、実は静止している(ここでは、マクロで見るとと表現します)ようで常に重心(COG)および足圧中心(COP)の位置は変化しています(ここではミクロで見るとと表現します)。図1.をご覧下さい。人が静止して立っている状態を真横(側面→解剖学では矢上面;しじょうめん;といいます)から見た図です。
青色の丸で囲まれた部分を拡大し、重力と床反力を模式的に表したのが図2.です。
さらにオレンジの丸の部分を拡大し、足関節回りの重力と床反力のモーメント(ある点を中心にした回転運動を表す:回転力をトルクという)を示しだのが図3.です。
ここで足関節回りの重力モーメントはW×a、床反力モーメントはR×b、で表されます。静止して立っている時は、W=Rなのでaとbの長さの違いが、モーメントの違いの決定因子となります。また、aは足関節の中心から重心(COG)までの距離を、bは足関節の中心から足圧中心(COP)までの距離をそれぞれ示します。
さて、マクロで見ると静止している様でも、ミクロで見ると常に動いている理由は、前述の両モーメントが常に等しくはないからです。仮にミクロでW×a=R×b、だとすると、
図4.の左上のように完全に静止状態になります。そして、これは重心と足圧中心が同じ位置にあるということを示します。しかし、実際はこの状態は瞬間的には存在しても継続しません。図4.の真ん中のように重心線が足圧中心より前方に落ちているとW×a>R×b、となり、身体は前方に傾きます。
その結果として足圧中心も足の前方に移動していき、重心線より前方に位置するとW×a<R×b、となり、身体は後方に傾こうとします。
マクロでの静止は、ミクロでのこの様な繰り返し(前傾したら元に戻し、戻しすぎると後傾しまた元に戻ろうとする)で、常に足首(足関節)の回りで実は動いているのです。元に戻ろうとする力源は下腿三頭筋(いわゆる「ふくらはぎ」の筋肉)です。したがって。ふくらはぎの筋肉はマクロ的に静止して立っている時でも常に活動しているのです。ちなみに、この様な足首回りの重心(および足圧中心)調節機構を、ankle strategy(アンクル・ストラテジー)と呼びます。これはバランス機能にとって重要な機構の一つです。これに関してはいずれまた詳述する予定です。
今回は少し専門的になりましたが、運動に関する基礎ですので覚えておくと動作の理解が深まると思います。さて、次回は静から動の最終章です。今回述べたモーメントの調節を(例えていうと)壊して、マクロで見る静止から運動へ変化していく様態を説明します。
参考文献:”Biomechanics and Motor Control of Human Movement” 3rd edition written by David A. Winter
posted by asa20 |17:13 |
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2007年03月12日
前回まで足圧中心(COP :center of pressure)と重心(COG :center of gravity)、さらに床反力(GRF :ground reaction force)について書いてきました。これらが関係して(別の力もありますがそれはいずれまた述べます)人の動きが起こります。
さて、皆さんは慣性の法則という言葉を聞いたことがあると思います。「物体は新たな力が加わらなければ、元の状態を維持する:静止している物は静止し続け、動いている物は一定の速度で動き続ける」という物理法則です。人の動きもこの物理法則が当てはまります。すなわち、人が静止している場合には、何らかの力が加わらなければ動き出さないということです。実はその力が、主に重力と床反力なのです。
以前、足圧中心と重心(厳密に言うと重心線と床との交点)の位置は異なると述べました。つまり、床反力の作用する点と重力が床面に加わる点が異なるわけです。この力の作用点の違いを利用して、私たちは止まっている場所から歩き出すことができるのです。
その前に、もう一度止まっている(静止している)状態を考えてみましょう。実は止まって立っている時でも、常に重心の位置(と足圧中心)は微妙に動いています。重心動揺計という器械の上に乗って立つと分かりますが、常に重心は基底面の中を動いています。ですから厳密な物理的現象として捉えると、人は常に動いているということになります。ここでは、もっと広く(マクロに)人の静(止)と動(き)を捉えていきたいと思いますが、「静から動へ」を説明する際にも必要なので、次回は微妙な重心動揺がどの様に起きているかをまず説明していきましょう。
posted by 朝野裕一 |09:21 |
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2007年03月01日
今回は、予告通り足圧中心(center of pressure)と床反力についてお話しします。まずは図の左を見てください。
これは、床に接している足に加わる圧力を簡略化して見せたものです。この様に、床からの反発力が接している足裏に無数に加わっているわけです。しかしこれでははっきりと足に加わる力を判別できません(力学的な計算はできません)。そこで加わる圧の中心(床に接している足裏面にかかる無数の力と無数の力点を座標化して平均すると、ある一点に一つの力が加わっていることと力学的には同じ事を意味することになります)とその合力をベクトル(=力の強さと方向を示す)として示したのが右の図です。こうして表すと、足裏に青矢印で示したような力が床から加わっていることが分かります。これを床反力と言います。そして床反力の加わる点(ポイント:黒丸で示した点)を、足圧中心(center of pressure)と呼びます。
さて、この床反力と足圧中心は、体重のかかり方と床に接している足裏面(→基底面の一部になる)の範囲(:部分の広さ)により、大きさと方向、位置を変化させます。例えば歩いていて、振り出した足が踵から接した時、足圧中心は踵の部分に存在し、その点から床反力が上方のある方向へある大きさで発生します。そして、足全体が床に接すると、足圧中心は足裏を後方(踵の部分)から真ん中の部分を経て前方(つま先の部分)へ徐々に移動し、足が床から離れます。そのときの床反力の大きさと方向も刻々変化していきます。さらにそのとき、前回お話ししたように、重心も移動していき身体は前方に進んでいくわけです。???なんだか分かりにくいかなぁ???まぁこの事はまたいずれ詳しく図示で説明したいと思いますが、一つだけ!動いている時は、足圧中心と重心の位置は一致しない!(これも実はエレベーターから降りる動作のことを説明した回:「続・素早く動くとは?」で書きました)ということです。
とにかく、今回は床に足を接して体重をかけると、図のような力が床から足に加わるということを頭に入れておいて下さ〜い。この事実を知っていると、様々な運動・動作を力学的イメージで捉え易くなりますので・・・次回はこれまで説明してきた事柄を利用して、静止している状態からどうやって動き出すのか(静→動)を解釈してみましょう。
posted by 朝野裕一 |09:09 |
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2007年02月24日
今回は、以前お話しした基底面(base of support : BOS)と重心(center of gravity : COG)の関係を説明します。
図の左側をまずご覧下さい。これは立位(立っている状態)での基底面と重心の位置を示します。静止して立っている時は、この基底面内に必ず重心(正確には、重心から床面に落ちる垂線=重心線と床面との交点)が存在します。さらに両足で立ったまま、前後左右にある程度(→基底面内に重心が存在する範囲)重心を移動させることができます。立って腰を前後左右に移動してみて下さい。また、重心を上下にも移動できます。いわゆるスクワット動作やしゃがみ立ち動作などはこの典型です。
しかし、この重心移動も基底面内を越えると、転倒の危険が生じます。それを防ぐためにヒトは様々な反応をします。詳しくは後にふれますが、主に足首(足関節)と、股関節、および膝関節を使った方法で、何とか重心を基底面内に止めようとします。それでも転びそうになると、基底面自体を移動させてそこに新たに重心を落とします。それら全てが「動く」ということを表しています。右の図は、一歩右足を前に出して進んだ状態を示しています。この連続が歩行という動作になります。
すなわち、歩行とは基底面を常に移動させながら重心を移動させる動作ということになります。(これも以前申しましたが)「動く」ということは、静的安定(=止まっていること)を崩して、連続的に重心を移動させることになります。しかし、転ばずに進めるという意味では安定しているとも解釈できます。そこで、同じ安定でも、動きながらバランスを保っている状態を、動的安定(dynamic stability)と呼び、止まっている状態と区別して表現します。何だか少し専門的になりましたが、お分かりいただけますでしょうか?
ヒトの動き(=動作・運動)を重心と基底面で解釈していくと、分かりやすくなるので、もうしばらくお付き合い下さい。今後は、基本的な動作をこの重心と基底面から解釈してみましょう。その前に次回は、足圧中心(center of pressure : COP)のことにも触れなければなりませんので、なるべく分かり易くをモットーに説明を試みます。ではまたぁ。
posted by 朝野裕一 |09:31 |
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2007年02月16日
前々回、二軸動作の話をしましたが、同僚から教えてもらったゴルフの雑誌からの情報をお話しします。誰のお話かというと、あの宮里藍ちゃんのお父さん、宮里優氏のゴルフ雑誌の漫画「宮里道場」内での説明についてです。氏は下半身一軸・上半身二軸を提唱しています。
う~ん?今までの話とまた違うなぁ!・・・と思われた方もいると思いますが、氏の話はあくまでゴルフのスウィングをいかに巧く行うかのコーチングとしての説明で、確かにこの方が実はゴルファーには分かりやすいと思います。
「回転運動のイメージ図2」を見ていただくと分かると思いますが、両股関節を二軸として使えないと、単に左右への身体の横移動(側方移動)が大きくなり過ぎ、いわゆる『スウェイ』した状態になってしまいやすいと予想されます。一方、一軸での回転運動は側方移動が少なく済みます。しかし、身体がぶれない分、動きは固定されます(固くなります)。
二軸で!と言うとついつい、横移動が大きくなりやすく、本来の二軸動作を逸脱してしまうということです。しかも、腰(骨盤)から両肩までの上半身を一体にして動かすことを意識していると、上半身を二軸で(→一軸で固めず)・下半身を一軸の『ぶれ(スウェイ)』のない動きで、と言った方がピンとくる!ということでしょう。
この様に、動きを習得させる際の説明は、科学的事実(現象)と必ずしも一致した厳密な言い方ではない方が、効果的なこともあるということです。すなわち、氏の説明は厳密にいうと私の考えでは事実とは異なるのですが、実際の動きの感覚を説明する時には正解になる訳です。しかも、氏はさらに、樽の中でスウィングすることをイメージさせてさらに分かりやすく説明しています。
「回転運動のイメージ図3」を見てください。点線で囲まれた樽の中で身体を回転させる時、正しく二軸回転できれば樽の中でスウィング可能ですが、間違ったイメージで動かすと樽の中では回転できなくなります。
この様に、運動を学習するというのは理論的背景と同時に、求める動きを再現してもらうための工夫が必要になってきます。我々理学療法士は、常にその事を念頭に仕事をしています。同じ動きを説明するにも、相手の理解度や性格・年齢・運動経験度、運動障害の程度などにより、方法や手段を変えて、頭での理解より身体感覚での学習を目指しています。だからこそ面白い仕事でもあります。ではまた次回をお楽しみに。
posted by 朝野裕一 |15:45 |
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