2007年05月15日

運動科楽の眼~不世出の奪三振王:ノーラン・ライアン~

 少し間が空きましたが、運動科楽の眼の今回は再び投球に関係するものです。先日NHK-BSの「スポーツ大陸」でMLBが生んだ、最高のピッチャーの一人であるノーラン・ライアンを特集していました。

 元々野球関係の方で知らない人はいない「ノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブル」というトム・ハウスとの共著本でも有名な投手です。この本は発表当時画期的な内容で(現在では当然といわれている内容でも、当時は非常識と思われていたらしい)、かの松坂大輔投手も高校時代むさぼるように読んでいたそうです。

 さて、このノーラン・ライアン、改めて画面で投球を見ましたが、腕の振りが速くて速くて・・・いつの間にかボールはキャッチャー・ミットの手前まで来ているといった感じの、凄まじい速さのボールを見てしまった(初めて見たわけはありませんが久しぶりに見たので改めて)!!!これ以上の感想はありません。

 しかし、彼もニューヨーク・メッツ時代はコントロールが悪すぎて、エンジェルスにトレードされたくらい期待されていなかった投手だと初めて知りました。しかしそこから、下半身のウェイトトレーニングと投球フォームの修正などを行う過程で、通算27年間で7度のノーヒット・ノーランを成し遂げ、通算5,714もの三振を取る投手へと変貌していったのです。

 今回話題にしたいのは、このコントロールの悪い時期と修正された時期の投げ方の特徴を比較した部分の説明です。番組では、左軸足側に体重が流れていって右足が一塁側へ回転していってしまうことが、原因と説明されていました。確かに、メッツ時代の投げ方は投げ終わった後に右足が一塁側に回って、体重も左へシフトしています。それに比較してその後の投球画像では一塁側への回転のない=左へシフトしていない、とここでは説明している、投げ方をしています。しかし、右足(右投手の場合)が投球後に一塁側へ回転していく投げ方をする投手は結構多く、かの松坂もよくそのような投げ方をしています。

 番組が指摘する原因の説明では納得がいきません。事実その後ノーヒット・ノーランを成し遂げた時のノーラン・ライアンの投げ方はさっきまで指摘していたコントロールの悪い時代の投げ方そのものでした。

 原因は実は番組後半にトム・ハウスが分析して再び説明している、頚部および体幹の左側への傾斜こそ、その大きな要因だろうと思います(下図:左)。ボール・リリースの手前までは体幹が左へ傾斜しすぎていない時(下図:右)ほどフォァボールが少なかったようです。

20070515-00.JPG
 これらのことが全ての投手に普遍的なことではないかもしれません。ノーラン・ライアンの投球の特徴は、ワインドアップ時に左足を非常に高く(顔に付くくらいです!)上げ、その左足が着地してから、右の肩外旋時から内旋へそして肘が伸び対角線上の床につくかと思われる振り下ろしフォロースルーまでの一連がとても速く感じます。そしてこの投球後半の支点として左の股関節が重要な役割を果たしていることは想像に難くありません。ですから下半身のウェイト・トレーニングが重要な役割を果たしたのでしょう。また上記、腕の振りの素早さには、ブレーキングとしての肩回りの小さな筋肉が重要な役割を果たすので、そのエクササイズもその後大きく注目されることになりました。さらに食事のバランスなどを含めたコンディショニングについても言及され、バイブルと言われた理由も良く分かります。それまでこの様な本は発表されていなかったということでしょう。共著のトム・ハウスの存在の大きさが伺われます。  結局、46歳まで投げ、最高速度が全盛期は終速(終速ですよ!)162km/h、後年でも150km/h台(これはきっと現在でも計測されている初速でしょう)を出す「超特急」と言われた大投手は、身体のメイテナンスを欠かさずに、常に努力を重ねていたということです。素質と努力できる能力が重なるとこの様な選手が時に(もう出てこないかもしれませんが)世に出てくるんですね。


posted by 朝野裕一 |18:19 | 運動科楽 | コメント(2) | トラックバック(0)
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ピッチャーズ・バイブル

こんばんは!
ノーランライアンのピッチャーズ・バイブルは私も高校時代に読みました!トレーニングのことだけではなくメンタルや食事の部分にも言及されていて、文字通り熟読した覚えがあります。
(ただし、食事の面は食文化の違いのことも考えて、敢えてあまり参考にしなかった記憶がありますが・・・)

今回のNHKの特集は残念ながら見ていなかったのですが、引退寸前の頃、ちょうど何試合かTVで観ていました。特有の全身を使った投球フォームとボールの軌道にただただ感動していました。下半身を中心としたフォームは、日本人選手に近いなと感じたのを覚えています。

いま思えば、下半身からの一連の運動連鎖の流れの中で腕を振っていたため、リリースがわかりづらかったのではないでしょうか?腕を振っている軌道の中でボールの方が腕から勝手に放れていくような感覚です。ゴルフやバッティングなどのスイングでもそうですよね、たしか。投球動作のリリースと打撃動作のインパクトは似ているなと感じています。「リリースがわかりづらい」という表現が動作とリンクしてそうで気になりますね。。

長くなってしまったので終わります。ほんとに考え始めると面白いですよね!またコメントさせていただきます。

posted by へぼP | 2007-05-16 00:16

ヘボP様へ

コメントありがとうございました。ヘボP日記も見てますよ。今回の説明だけではちょっと不足しているので、補足近日中に載せますね。ビデオあるので今度貸しますよ。とにかく速いからぁ~。腕振っているうちにボールが打者の近くまで行っちゃってるからね。おそらくバッティングでのインパクトおよび投球でのリリースの瞬間とその前後に重心がどう制御されているか?この辺に個人差を超えた真実が隠されているような気がしてます。また気がついたことがありましたらいつでもコメントで教えて下さい。よろしく。あんまり根つめすぎないように頑張って下さい。

posted by 朝野裕一 | 2007-05-16 17:48

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