2007年04月10日

人の動きを再考します~その九:動的安定とは?を考えるに当たって~

 今回のシリーズは、動いていることと安定することについて考えてみます。以前書いたように、動くということは安定を崩して行われます。しかし、崩れたままでは、バランスを崩し求める動作を達成できない、場合によっては転倒する危険性が生じます。すなわち、動いていてかつ安定するという相矛盾する要素を満たさねばなりません。そのためには、一言でいえば重心の位置のコントロール、さらに言い換えると重力の制御が必要になってきます(地球に済んでいる以上逃れられません)。その理由を考えるに当たり以下のことを説明しておかなければなりません。

 まずは、動き始めてから動き続けている時に身体に加わる力を挙げてみましょう。力を身体外部の力(以下、外力)と内部の力(以下、内力)に分けます。
 外力としては前回までの復習で考えると、重力・床反力があります。さらに、慣性力・慣性モーメント(回転力)、床と足の摩擦力(詳しく述べると足と靴下、靴下と靴の内底、靴裏と床との間に加わる全ての摩擦力が関与します:靴がいかに大事か分かると思います;これについてはいずれ述べるでしょう)があります。
 内力筋力、また靱帯や腱の張力(筋力同様外力を調節します)があり、その他骨や軟骨にも剪断力やしなりの力など様々な力が加わり、その形を微細に変形させ外力を受け取ります。

 身体にある力が働き、動きが開始されますが、それに関わる力として重力床反力が重要な役割を果たすことは前回述べました。この二つの力は、動き続けている時も人の身体に加わり続けます。実は床反力計で測定すると、先程書いた床と足(靴)の間に加わる摩擦力も床反力に含まれてきます。力はその大きさと方向で表される(ベクトルといいます)ので、摩擦力は進行を妨げる方向への力のベクトルで分かります。
 
 次に慣性力慣性モーメントについても補足しておきます。慣性力とは言ってみれば見かけの力で、以前述べた慣性の法則からすると一旦動き出した物体は動き続けるので止まるために別の力(ブレーキ力とでも言う)が必要になりそのときに質量に応じて動き続けようとします。その時に関与する力が慣性力です。
 また人の関節および身体は、ある軸を中心とした回転運動を含んでいるため、慣性モーメントという回転力が生じます。すなわち、回転し出した物体はその物体の質量と回転軸の位置に応じた慣性モーメントを発生し、回転をし続けようとします。人の身体もある質量を持った物体の特性を当然有しているので、これらの物理量が加わります。なんだか面倒くさくなってきました。もうちょっとお付き合い下さい。
 
 もう一つ大事な力があります。それが身体内部から発生する筋力です。筋力についても過去にシリーズで述べましたね。前述したその他の組織の内力は外力を受けて生じる力であるのに対し、筋肉はその性質以外に、自ら力を外に発生させることが可能です。以前は車のエンジンに例えました。必要に応じ、比較的瞬時に大きな力が必要な時は(ダッシュして走り出す時など)、このエンジン=筋力に頼ることもあります。しかし、これもすでに筋力再考シリーズで述べましたが、効率の良い=燃費の良い動きには適しません。なぜなら強い力は筋疲労により、その出力を保てないからです。したがって、筋力以外の力、すなわち重力(および床反力)をいかに利用できるかが、効率の良い動きに必要となります。言ってみれば、エコカーの様なガソリンエンジンの出力だけに頼り切らない車は燃費が良いわけです。そして筋力も実は、自らの出力とは言え、外力を制御する時に最も重要な役割を果たします。

 結論からすると、重力をいかに利用できるか=重力の制御が、人の全ての動きにとっていかに重要かということがお分かりになりましたか?う~ん・・・・色々な枠組みと側面で説明しなければならず難しい!でも一回は説明しておかないと。というわけで、前振りとしては回りくどくなってしまいましたが、次回から人の身体が運動・動作をいかに安定させて行っていくのか、について引き続きシリーズで述べていきます。

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posted by 朝野裕一 |11:56 | 動作 | コメント(0) | トラックバック(0)
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