2009年06月04日

運動科学(楽)の旅:第1章 物性としての身体の動き(8)~重心の移動④

前回までの、体重心を(例えば)右に移すとき、一瞬左の荷重が増すことを述べました。どうも分かりづらいとのご意見も頂きました。
もう一度そのことについてお話しします。

今、サッカー(バスケでも構いません)の選手がボールを左に持っていきながら、自分の右にいる敵をフェイントでかわす場面を考えてみましょう。その時重心は当然自分の左へ持っていくことになりますが、その前に一回右で地面を踏ん張る必要が出てきます。そうでないと、左へ素早く(ボールとともに右にいる)敵から身をかわす事ができません。

イメージでは下手な図ですが以下のような感じです。

サッカーのフェイント


以前は体重計に乗って左に重心を移す課題でしたが、同様に地面を踏むことに変わりありません。もちろん鉛直方向へ踏むわけではありません。

※鉛直方向にきっちり踏むとすると、きっと重心のある位置との関係で
回転モーメントが生じ左に体が倒れ込む動きが生じ始めると思います。この辺は趣旨から少しずれて分かりにくいので無視して下さい。

さぁどうでしょうか?イメージがわきましたでしょうか?

ここで最終的に言いたいのは以前も書きましたが、左に重心を移すことと、そのために右に荷重をかけることが、一連の動きとして必要なのですが、その際それをどう言葉で説明するか?
左に重心を移す=左に体重をかける?
右に体重がかかる=右へ重心が移動する?
必ずしも瞬間的な場面ではそうならないのですが、これらがいわゆる「ごっちゃ」になって動きを指導する際に相手に伝わりづらいのではないか?その可能性を考えてみようということです。
何度も言いますが、重心を移動することと荷重をかけることはある場面では一致しないということに気を付ける方が、良いだろうという提案です。どうでしょうか?このような「ごっちゃ」になる場面を経験された方はいないでしょうか?
ではまた~続きます。


posted by asa20 |18:52 | 動作 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年04月18日

運動科学(楽)の旅:第1章~物性としての身体の動き(7)~重心の移動③

前回までの結論としては以下の通りでした。
↓
立っていて体重を一側へ移動した時に生ずる現象:
一瞬重心を移動するのと反対側の体重計が増加し、その後重心移動側の体重計が最終的に増加します。
すなわち、重心の移動と体重のかかり方は必ずしも一致しない→ある場面では、重心の移動≠体重の移動というわけです。

ということでした。

これは慣性の法則に関連することでした。
すなわち、静止している物体は何らかの力が加わらなければ動き出さないということです。
体重を一側に移動する動きにもそれは当てはまります。
ではその時の初動を促す力は何でしょうか?
それが、床反力の発生点である足圧中心と、重心の位置の差異による力(モーメント)によるものです。


asa20-83133.jpg


ここでのCOPとは足圧中心を、COGとは重心の鉛直線の床と接する点を、BOSとは支持基底面のことを指します。

この現象(は側面から見た前後の動きを示した説明でした)が正面から見た左右の重心移動にも当てはまる訳です。

さて、ここで何を一番言いたかったかというと、
よく、「重心を○○へ移動させて」とか「体重の移動をスムースに」など
重心と体重もしくは荷重などという言葉を運動指導の際によく使います。しかし、今まで見てきたように、“必ずしも体重・荷重のかけ方と重心の移動とは一致していない”ということなのです。

実際の場面で指導する時には、難しいことを行っても理解しづらくかえって動きを制限してしまう可能性があるので、足圧中心や床反力、重心線、基底面などという言葉は使いませんが、指導する側はよくよくこの原理を知って混乱を招かないように、理解しておく必要があると思います。そうでないといつの間にか指導する側が混乱を来してしまい、誤ったメッセージを選手などに与えてしまう場合があると思うからです。
※実際に説明する時には各人に分かりやすい言葉を使い分けて指導することも必要になると思います。

このことについてはもう少しお話しします。次回へ~


posted by asa20 |13:04 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年03月11日

運動科学(楽)の旅:第1章~物性としての身体の動き(6)~重心の移動②

 先週の問題の答えを、お示しします。


asa20-75538.jpg


上図の時、体重計はどの様な動きを示すでしょうか?が問題でした。
答えは、
asa20-75540.jpg


です。
一瞬重心を移動するのと反対側の体重計が増加し、その後重心移動側の体重計が最終的に増加します。
すなわち、重心の移動と体重のかかり方は必ずしも一致しない→ある場面では、重心の移動≠体重の移動というわけです。
皆さんもお家の体重計を使って(2つ無いと出来ませんが・・・)やってみて下さい。
例えば先程の例だと『右には絶対体重をかけないで左に重心を移すぞ!』と頑張れば頑張るほど、無情にも右の体重計の値が増えます。もしどうしても右の体重計の値を増やさないようにするのなら、太極拳のごとくゆっくり、しかも左の腕を外に挙げるなどして重心の移動を補助する動きを混ぜていけば、もしかしたら増えないかもしれません。

さて、なぜこの様な現象が起こるかは、既に歩き出しの時に説明していますが、次回もう一度ふり返って考えてみましょう。


posted by asa20 |18:42 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年03月07日

運動科学(楽)の旅:第1章~物性としての身体の動き(5)~重心の移動①

 物性としての身体の動きからもう一度考えますと、人の身体が動くということは→慣性の法則からすると、何らかの力が加わらなければなりません。

 もちろん地球に住んでいるいじょう、重力は鉛直方向に常に受けています。それ以外の方向への動きに関しては、重力方向以外の力が加わらなければなりません。

 さて、ここで皆さんに質問です!
今、一人の人が立っています。両側の足にほぼ均等に体重をかけています。そこから重心の位置を(両足で立っている範囲で)左へ移動してみます。

asa20-74408.jpg


上から見ると、こうなります。


asa20-74414.jpg


※正確に言いますと、は重心からの垂線(鉛直線)と床との交点、です。

 さて、この時両側に体重計を置きその上に乗って同じ動きをしたとします。
問題:重心を左へ移動する時に体重計の目盛りはどの様な動きを示すでしょうか?
何、当たり前のことを聞いているの?質問の意味がわからん!
という方がおられますでしょうか?あまり詳しく説明すると答えになってしまいますので、もう少しだけ書きますと、左へ重心が移動する瞬間に体重計の針はどの様な動きをするでしょうか?と書き換えても良いと思います。
※今時アナログ体重計か?とおっしゃらずに、デジタル目盛りの動き、と言い換えても構いません。
 ヒントは、以前お話しした、歩き出しの時の現象の項を思い出してみて下さい。

◎問題の答えは来週早々にも、掲載致します。その間少しお考え下さい。ではまた来週。


posted by asa20 |13:33 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年02月28日

ここで念のため確認を・・・

今まで、そしてこれからもですが、運動の科学≒科楽をなるべく面白くかつ可能な限り正確に述べていこうと考えています。

“面白く”という点に関してはまだまだで、これから何とか努力して伝え方を考えていこうと思っています。

“正確に”に関してはこれまでも注意して書いてきたつもりですが、ここで再度以下の点について確認させて頂きます。

◎私個人の感覚的な(感じたことに関しての)記述は、あくまで個人的な感覚であることを表明した上で掲載していきます。
◎他人のデータや業績を勝手に使用は致しません。引用先は必ず掲載します。
◎個人的に公に発表されていることに関して、何らかの批評等に言及する場合は、そのことを予めご本人に確認した上で、そのことも明記して掲載します。
◎誰とは言及せずに一般的に公になっている情報を紹介する場合も、その旨ことわった上で掲載します。
◎個人的な確信を抱いた考えについても、断定的な書き方はせず、上記のようにあくまで個人の考えである事を明記します。
※根拠を示すデータなどを自分で有していればそれを掲載する場合もあります。

いずれにしても、何か偏った意見だな?おかしい記述だな?明らかに間違った論述だ!と分かった場合は、どうかお知らせ下さい。こちらも後に誤りと分かった場合にはお詫びと訂正を掲載させていただきます。

◇なぜ改めてこの様なことを書いたかといいますと、自分でも以前より気になり、また気を付けてきたことですが、
(最近聞いた話などから、)
現在、余りにもブログやインターネット上の情報が氾濫しすぎており、医療やその他の情報を一次情報として利用する方が増えてきているようで、そういう方々に誤解を招く記事に関しては、極力載せるべきではないと感じるからです。

ブログはそもそも日記風の記述で、自分の感じたままを綴るものですが、内容によっては科学的論拠があまりにも欠けていることに関して自分の感覚だけで記述することの危険性を、ブログを書く者も、見る者も双方が気を付けねばならない、と感じます。

面白さと正確さは常に忘れてはならないバランス感覚ではないかと思います。これからもご愛読下されば嬉しい限りです。

付記:しかしいかに面白さを正しく伝えるか?これは大変しんどいお題です・・・まだまだチャレンジの途上なので、よろしくお願いします。

posted by asa20 |17:05 | その他 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年02月19日

運動科学(楽)の旅:第1章~物性としての身体の動き(4)

さて、身体に関わる物理的な要素を述べてきましたが、ここで
「なぜヒトは動く(動ける)のか?」という問題と「動くということはどういう事か?」についてできるだけまどろっこしくなく、説明していきたいなと思っています。

動く事を考える前に物理の基本法則である、慣性の法則を思い出してみて下さい。

物体は力を加えられない限り動きませんし、一度力が加われば、動き続けます。もちろん、地上では摩擦力や空気抵抗などが常に物体に加わっているので、いつか止まってしまいますが・・・

さて、身体の物性に戻りましょう。

asa20-71421.jpg


この最後のつり合い=バランスをもう少し説明すると・・・

静定なバランス(static balance)動的なバランス(dynamic balance)に分けられると思います。

以前書いたような静止立位(厳密には完全には止まっていません)の状態をと捉えることができます。

実際の物に例えてみると、動的バランスは、コマやヤジロベエ、また以前特集した振り子などに例えて考えてみると分かりやすいかもしれません。



asa20-71422.jpg


asa20-71425.jpg


では動的なバランスを保ちながら人の身体はどの様にして動いているのでしょうか。次回に進みます。


posted by asa20 |19:45 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年02月13日

運動科学(楽)の旅:第1章~物性としての身体の動き(3)

重心(正確には物体の質量中心)と支持基底面は前回ご説明しました。

さらに、床反力=床から受ける反発力
足に加わる力→足圧および足圧中心のことは過去のブログをご参照下さい。

また、床反力・足圧と重心の関係についても、一昨年三月のブログに詳しく書いていますのでご参照下さい。

次に、関節に加わる回転力=関節モーメント慣性力および慣性モーメントについて書く予定です。

posted by asa20 |09:24 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年01月30日

運動科学(科楽)の旅:第1章~物性としての身体の動き(2)

物体が地面に静止している状態を考えてみます。

その物体の質量の中心=(地球上では)重心が存在し、そのものを受け止める面が形成されます。これを支持基底面と呼びます。

asa20-68356.jpg


左の図が筒状の物体が地面におかれた状態です黒丸(●)が重心(質量の中心)、下の円が支持基底面を示しています。支持基底面上の黒丸(●)は重心から垂直に地面に降ろした線が地面と接する点を示しています(重心支持基底面への投影点)。

右側は人の略図です。左の物体と同じように重心(●)、支持基底面=この場合両足で囲まれた面全体です、重心支持基底面への投影点を示しています。

人が静止して立っている時はこの様に、重心とその投影点は静止しています→厳密にはわずかずつ支持基底面内で動いています。

次週は床反力関節モーメントの復習です。


posted by asa20 |18:08 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年01月28日

雑感~運動の迷宮

 人が『生きる』(人生の営み)上で、『動く』ということは言うまでもなく、密接に結びついています。

意識的にせよ、無意識的にせよ、人は何らかの目的を果たすために動きます。

そしてそれは単に移動することだけではなく、何らかの表現・表出としての動き→絵を描く、文章を書く、踊る、演ずる・・・も含められます。

人はいかにそれらの目的や環境に応じて(適応して)動きを習得(運動学習)していくのか?

また、成長の段階でいかに運動の発達(運動発達)が成し遂げられていくのか?

これらを探る旅はかなりの迷宮入りを覚悟しなければなりません。しかし同じ旅でもハイウェイを効率的に移動するのに比べ、大変だし、しばしば混乱を伴いますが、そこにこそ面白みがあるのではないかと思います。

ここ数十年医療の世界でも、あらためて根拠が問われることが多くなっています。しかしそこで言う根拠とは何を示すのか?良く考えなければならないと思います。

結論から言うと、それは決して最終的に数字で帰結されるものではないだろうということです。
なぜなら、何かを行う=行為の根拠を問う場合、そもそもその行為は何を成果として定義しているのか?をまず問わねばならないからです。そしてその定義された成果を何で示すのか?は次に考えねばならないことです。

成果を安易に数字に帰着させてしまうと、いわゆる“成果主義の弊害”になってしまいます。真の成果とはまず概念的なものでなければならない所以です。そしてそれを意識しない限り、真の根拠ある行為は成し遂げられないだろうと思います。

21世紀は間違いなく“質の時代”です。質をいかに汎用性のある・普遍的な評価として定義していくかがテーマになると感じています。

これからも試行錯誤の、運動にまつわる迷宮の旅へ歩を進めていこうと思います。



posted by asa20 |19:32 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年01月23日

運動科学(科楽)の旅:第1章~物性としての身体の動き~

 まずこの章では、身体の運動の構成体としての身体の物性について述べていこうと思っています。

ここでどうしても無視できない環境要因として、地球上の1Gの重力があります。身体物性を語る上ではこれらの力とそれに伴う作用をまず考えねばなりません(“力学の世界”)。

それに加えて、以前も述べましたが、地面から受ける作用力床反力があります。

そして重力がかかる重心点とそれを支える支持基底面という考えも重要です。

さらに運動が発生する場面では、関節回りに働く回転力=関節モーメント、関節内に働く関節内力から力の作用を考える場面も出てきます。

また、力の加わり方という点では、慣性による関節の回転力である、慣性モーメントなども重要になってきます。

来週これらをまとめて図示してみましょう。

posted by asa20 |20:05 | 運動科楽 | コメント(0) | トラックバック(0)
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