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コラム「『2020年 東京五輪』サッカーで輝きを期待させる大器たち」

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河治良幸=文

■主役は97年生まれの選手

 6年後の東京五輪はサッカー界にとっても一大イベントになることは間違いない。U-23の選手(本大会はオーバーエイジ枠として3人を加えることができる)に出場資格がある男子サッカーで、“東京五輪世代”の中心を担うのは1997~98年生まれ。現在は16歳から17歳で、ちょうどJリーグや大学に進む一歩手前の選手たちだ。



 昨年9月に行われたU-17ワールドカップに出場した日本代表は“96ジャパン”の愛称が付いていた。その名の通り、出場資格の最高年代である96年生まれの選手が主体となるチームだったわけだが、21人の内6人は97年生まれだった。チームを率いた吉武博文監督によれば「僕が言うまで知らなかった」そうだが、その後は選手たちに確かな自覚が芽生えた様子だ。
 97年生まれの1人であるFW杉森考起(名古屋グランパスU-18)は「最初は気付かなかったけど、話を聞いて東京五輪に出たい気持ちは強くなった」と語る。大会の予選にあたるU-16アジア選手権の頃から1年で約10cmも身長が伸び、成長痛を抱えていた杉森は3試合目に先発したものの、思うように実力を発揮できなかった。
 それでも高い技術と動き出しのセンスを持つ彼の評価は高く、クラブはトップ昇格を決定。3月に開幕する新シーズンでは“高校生Jリーガー”として飛躍を目指す。6年後にどのレベルまで上り詰めているかは分からないが、現時点で最も東京五輪に近い選手の1人だろう。
“96ジャパン”は日本の特徴を最大限に活かす連携にフォーカスした組織的なチームであり、育成年代ながらA代表でザッケローニ監督が目指すスタイルに通じる。その中で97年生まれの攻撃的MF三好康児(川崎フロンターレU-18)やボランチの鈴木徳真(前橋育英)も確かな才能を示した。日本が本質的にパスワークを主体に攻め、組織で守るスタイルを追求する限りにおいて、下部年代からそうした高い意識や技術を積み上げてきた彼らの何人かが、五輪世代でも中心を担う可能性は小さくない。

■将来性を感じさせる未完の大器たち

 粗削りでも将来が楽しみなタレントは“96ジャパン”の外側に多い。ドリブル能力やスピードに優れるアタッカー、意外性に富むファンタジスタ、1対1に強さを見せるセンターバック。そうした“素材”がここから精神的にも成長し、協調性も身に付けていけばU-20、そして五輪代表でも中心を担う候補として台頭するはず。
 その1人に挙げられるのが高木彰人(ガンバ大阪ユース)だ。昨年は1年生にして高円宮杯U-18プレミアリーグWESTで6得点を決めたアタッカーは、ドリブルの突破力が高く、勝負度胸も満点。すでに世界のビッグクラブを視野に入れた向上心も、成長の糧になっていきそうだ。
 サイ・ゴダード(トッテナム・ホットスパー)はイギリス人の父を持ち、生まれも育ちもイングランドという異色のタレントだ。日本語はほとんど話せないそうだが、昨年の8月に豊田国際ユースを戦ったU-16代表に招集されると、卓越した個人技と共にコンビネーション・プレーでもクオリティを感じさせた。
 イングランド育ちらしくキックもしっかりしている。個人でもユニットでも違いを生み出せる能力は“香川真司のような”と言ったら現時点では大袈裟かもしれないが、順調に伸ばせば、上の年代でも強みになっていきそうだ。
 攻撃にセンスを感じさせる選手は数多いが、守備的なポジションで早い段階から高い存在感を発揮する選手はなかなかいないもの。その中にあって庄司朋乃也(セレッソ大阪U-18)は長身で骨格も強さを感じさせ、スピード系の選手にも強い同年代では“規格外”のタレントだ。
 GKでは“96ジャパン”にも名を連ねた阿部航斗(アルビレックス新潟ユース)はセービングとフィールディングの両面でスキルが高く、危機的な状況での勇敢さも将来性を感じさせるが、すでに190cmを超える長身GKのオビ・パウエル(JFAアカデミー福島)はまさに“未完の大器”だ。

■選手権からも“五輪候補”が続々

 年末年始に行われた全国高校サッカー選手権では、3位になった京都橘のDF小川礼太が98年生まれながら、正確なビルドアップと鋭い守備で堅守速攻のチームに攻守両面で質をもたらしていた。大舞台を経験したことで、今年のプレミアリーグで実戦スキルを磨けば世代屈指のサイドバックとして大成するかもしれない。
 準優勝した星稜の阿部雅志も98年3月生まれだが、すでに高い攻撃ビジョンを見せる。今年は主軸としての活躍が期待される小さな大器だ。履正社の林大地も1年生ながら先発出場し、右サイドから圧巻のドリブルでベスト8進出の主翼を担った。なお同校は他にもDF安田拡斗とMF槙野寛太がスタメンに名を連ねており、向こう2年間は彼らの成長と共に、楽しみなチームになりそうだ。
 他にも小柄だが視野の広さと一瞬の攻撃センスを兼ね備える98年生まれの佐々木匠(仙台ユース)、爆発的な突破と決定力を武器に、中学年代で得点を量産して飛び級でU-16代表に選ばれた99年生まれの中村駿太など将来が楽しみな逸材は多い。

■過度な期待は時期尚早だが

 オリンピックの東京開催が決定した直後、複数のメディアで“東京五輪の主役候補”として取り上げられたのはFCバルセロナの下部組織に所属する12歳の久保建英だった。現実的には久保くんは2024年の大会にも出場資格がある年齢でもあり、思春期も超えていない彼に過度な期待をかけることには疑問があるが、楽しみな存在であることは間違いない。
 もっとも東京五輪まであと6年あり、その間に各カテゴリーの代表やクラブ、高校サッカー部、さらにはプロの世界でしのぎを削っていくことになる。アクシデントや挫折、悔しい経験、飛躍的な成長につながる恩師との出会いなど、多くのイベントが彼らを待っている。
 2008年の北京五輪で主力となり、日本を代表するサイドバックまで駆け上がった長友佑都は各年代の代表と無縁の選手だった。他にも10代では“無名”でありながら、五輪代表で主力の座を掴んだ選手は枚挙にいとまがないのだ。
 ここに挙げた選手から、東京五輪のメンバーが1人でも多く出ることを願うと同時に、U-17日本代表の吉武監督が“大外”と表現する隠れた逸材が6年後までに何人も出現することを期待したい。

河治良幸(かわじよしゆき)/ライター
東京都出身。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で日本代表を担当。海外サッカー専門誌の『ワールドサッカーダイジェスト』や『フットボリスタ』にも寄稿し、2014年ブラジルW杯は開幕戦から決勝まで取材予定。プレー分析を軸にグローバルな視点でサッカーの潮流を見続け、セガ『WCFF』シリーズで手がけた選手カードは5000枚を超える。著書は『勝負のスイッチ』『サッカーの見方が180度変わるデータ進化論』など。Twitter IDは @y_kawaji

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