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コラム「グラチャンバレー 女子日本代表の注目選手は22歳のサウスポー」

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田中夕子=文

■若手を試す絶好の場

 バレーボール女子日本代表にとって、今季最終戦となる国際大会「ワールドグランドチャンピオンカップ2013」(略称:グラチャン)が12日、名古屋・日本ガイシホールで開幕した。
 オリンピック、ワールドカップ、世界選手権がバレーボールの三大大会であり、グラチャンはオリンピック翌年ということもあり、出場各国の主力選手のすべてが代表メンバーに名を連ねているわけではない。
 上位2位までにオリンピックの出場権が与えられるワールドカップや、出場国数が最も多く歴史も長い世界選手権と比べれば、グラチャンは大会の位置付けとしてそれほど高いわけではない。だが、裏を返せば3年後のオリンピックで戦力となり得る若手選手や、新しい攻撃パターンを試す絶好の場でもある。
 ロンドンオリンピックで28年ぶりに銅メダルを獲得し、リオデジャネイロオリンピックへ向け、木村沙織が新キャプテンとしてチームを率いる新生日本代表。3年後、さらには7年後の東京オリンピックまでを視野に入れ、ぜひとも注目してほしい若手選手がいる。
 22歳のウィングスパイカー、長岡望悠(みゆ)だ。



■切れ味鋭いスパイク

 東九州龍谷高校(大分)在学時には、エースとしてインターハイ、国体、春高と高校バレーの三冠タイトル獲得に貢献した。武器は、サウスポーから放つ切れ味の鋭いスパイク。フォームもしなやかで、スイングも速く、スピードを生かした攻撃、特にライトからストレートに放つスパイクを得意としてきた。
 高校卒業後はVプレミアリーグの久光製薬へ。2年目のシーズンまでは、ワンポイントでの出場機会のみに限られていたが、昨季、チームの指揮官に就任した中田久美監督は、長岡の才能を見逃さず、開幕戦からスタメンに起用した。同じチームと4度対戦するリーグ戦の中で、データを集められ、相手ブロックやディフェンスシステムに苦戦する場面もあったが、得意なコースに打つだけでなく、ライトからセンターに切り込む攻撃や、バックアタックのパターンも増やすなどコツコツと工夫を重ねた。その結果、Vプレミアリーグを制しただけでなく、天皇皇后杯全日本選手権、黒鷲旗全日本選抜選手権大会と、女子チームとして初の三冠タイトルを獲得する原動力となり、Vプレミアリーグでは最優秀選手賞にも輝いた。
 最高の成績を収め、今季、眞鍋政義監督のもと、新たに始動した日本代表に長岡も召集された。海外遠征や、国内でのワールドグランプリ、来年行われる世界選手権の予選など、多くの経験を積んだ。試合出場の数が増えるたび、自身では「手応えよりも、見つかるのは課題ばっかりで…」となかなか及第点とはならないようだが、眞鍋監督は「今だけでなく、これからのチームにとっても間違いなく必要な選手」と高く評価する。

■若さゆえの課題も

 ウィングスパイカーといっても、木村沙織や新鍋理沙のようにサーブレシーブもして、攻撃もしなければならない選手もいれば、江畑幸子や迫田さおりのようにサーブレシーブは免除され、攻撃面で主軸となるタイプの選手もいる。
 長岡も後者に属する。久光製薬に入ってからサーブレシーブの練習も始めてはいるが、まだまだ実戦でサーブレシーブの布陣に入れるほどの安定感はない。加えて、前述の江畑や迫田が、レシーブが崩れた時に、セッター以外の選手が上げる二段トスを打ち切れるパワータイプのアタッカーであるのに対して、長岡は高いトスよりもやや低めのスピードのあるトスを打つことを得意としてきた。
 相手のサーブやスパイクをレシーブし、セッターが上げやすい状況での攻撃ならば何の問題もないが、二段トスとなれば、当然相手のブロッカーに攻撃は読まれやすい。2枚、3枚と並ぶブロッカーに対しても、屈せずパワーや高さを生かした攻撃をする江畑、迫田と比べ、長岡は常に劣等感を抱いてきたという。
「これもできない、あれもできない。できないことばっかりなのに、私はココにいていいのかな、と思うこともありました」
 殻を破る、1つのきっかけになったのが今夏の世界選手権予選だった。
 日本と同様に、多彩なコンビバレーを展開するタイとの最終戦に出場した長岡は、レシーブが崩れた場面で、積極的にセッターを呼んだ。
 当然相手も、この試合で日本の得点源となっていた長岡をブロック、レシーブでマークする。以前ならば、空いているスペースを探してフェイントを落としていたが、この試合では違った。前衛、後衛と攻撃位置に関わらず、得意のストレートコースに何本も何本もスパイクを打ちこんだ。
「こういう場では、逃げちゃいけない。エバさん(江畑)のように、力強いスパイクは打てないけれど、苦しい時こそ、自分の得意なコースに思いっきり打てばいいんだ、と思いっきり打ちました」
 試合後の記者会見の席上、タイのキャテポン・ラッチャタギャングライ監督はこう言った。
「長岡は素晴らしい。きっと、これからの日本にとって必要な選手となるでしょう」
 そして、笑顔でもう1つ。
「とてもキュートな選手なので、私も個人的に応援しています」

■グラチャンでさらなる飛躍を

 グラチャンで、女子日本代表チームは新戦術を披露する。
 新たな取り組みに挑戦した長岡は、力強く言った。
「何が通用して、何が通用しないのか。たとえ相手に止められたとしても、逃げずに、やってきたことを思い切りぶつけることが一番大事なこと。コテンパンにやられても、とにかくプラス思考で戦います」
 相手チームの監督もお墨付きなキュートな笑顔で、日本期待のサウスポーが、初めてのグラチャンに挑む。

'<著者紹介>
田中夕子(たなかゆうこ)'
神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に「海と、がれきと、ボールと、絆」(講談社)。「SAORI」(日本文化出版)、「夢を泳ぐ」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」(カンゼン)など、女子アスリートの著書では構成を担当。

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