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コラム「強いのか? 弱いのか? セレソンの現状」

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竹澤 哲=文

(スコラ—リ体制初の公式戦)

「我々はクラブではないし、また州のために戦っているのではない。我々はブラジルなのだ」

 5月14日、スコラーリ代表監督は招集メンバーの発表に先立ち、セレソンの下に国中が一つにまとまるよう、訴えた。

 昨年末に代表監督に就任したスコラーリ監督にとって、今回のコンフェデ杯は初の公式戦であり、そしてワールドカップを1年後に控え、真剣勝負で戦えるたった1回の実戦の場でもある。それだけに結果を出さなければならない重要な大会であるはずだ。



 しかし結果だけを重視するのであれば、現在、アトレチコ・ミネイロにて大活躍、絶好調のロナウジーニョやベテランのカカーをメンバーに含めたはずだ。選ばれた23人はあくまでも若手主体のメンバーだった。

 それについてフェリポン(スコラーリ監督の愛称)は次のように説明している。

「今回選ばれた選手の中には、まだ代表で公式戦を戦ったことのないものも含まれている。勝ち点を競い、タイトルをかけて戦う大会を若手に経験させるのはとても重要なことだ」

 ジーコもそれを支持するコメントを出している。

「予選がないだけにコンフェデ杯はとても重要だ。仮に優勝できなくても、より重要なのは若い選手が強豪国を相手にタイトルを競うのを経験することであり、それはワールドカップに向けてとてもよいことだ」

(FIFAランクは史上最低の22位だが…)

 これまでたくさんの親善試合が組まれ、多くの選手がテストされてきた。コンフェデ杯の招集メンバーが発表されるまでは、5試合を戦い1勝3分1敗。招集した人数は44人に上る。テストと割り切れば結果は重要ではないかもしれないが、しかしその影響か、ブラジルはFIFAランキングにおいて22位まで順位を下げている。これまでブラジルが記録したことのない最も低いものである。

 バルセロナでプレーするダニエウ・アウヴェスはそれについて次のように話している。

「僕らはみんな異なったリーグで、そして異なったチームでプレーしていて、スタイルも異なる。だから合わせるまでには時間が必要なんだ。でも僕らは偉大な選手の集まりだから必ずいいチームができあがるはずだ。フェリポンはいつも僕らにブラジルの国旗に書かれている文字、『秩序と進歩』というものを引き合いに出すんだ。僕らは今、秩序を作っている段階だけど、これから進歩していくとね」

 スコラーリ監督の下で02年優勝を果たしたメンバーの一人、そして現在、テレビのコメンテーターをしているデニウソンはスコラーリ監督の実力をとても高く評価している。

「02年大会の時は、今とは比べられないほど危機感をみんなが抱いていた。予選を通過することさえ危ぶまれていたんだからね。そんなときにフェリポンが監督に就任した。セレソンがまだ安定していないという意味においては、状況は今ととても似ているね。あえて強豪国との親善試合を多く組んでいるのは、今の段階で弱点やミスをさらけ出し、修正するためにもいいことだ。02年大会の再現となり、優勝してほしいね」

(上昇の兆しが見えてきた)

 ブラジル国内の評論家は、ブラジルが絶対的なワールドカップ優勝候補であるとは考えていない。「自国開催だからチャンスはあるが、現時点ではスペインやドイツの方が上だ。特にドイツは強い」という意見が一般的であるようだ。

 ブラジル代表はコンフェデを前に約2週間の合宿を行った。これほど長い時間をかけて準備するのは、スコラーリ監督となってからは、初めてのことだ。この間に親善試合も2試合組まれた。2日に行われたイングランド戦には引き分けたものの、9日に行われたフランス戦は3対0で快勝している。ブラジルの多くの新聞が、「理想にはまだ遠いが、明らかにセレソンはよくなってきている」と書いた。

 フェリポンは02年大会において示したように、短期間でチームをまとめるあげることには定評がある監督だ。デニウソンは今回もその兆候が見えるという。

「今後、若干の入れ替わりはあるものの、フェリポンはコンフェデ杯で選んだ選手をベースに考えているはずだ。GKのジュリオ・セザルはイングランドのそれほど強くないチームでプレーしているため、忘れられた存在だった。そんな彼を呼び戻したのもフェリポンらしい。『一緒にワールドカップへ行こう』と言われた選手は、僕もそうだったけど、モチベーションを大きく高めているはずだ。02年大会の時、僕らは何をする時もいつも一緒だった。それだけまとまりのあるチームをフェリポンは短期間で作り上げたのだ」

(コンフェデ杯を団結の契機にしたい)

 スコラーリ監督は02年大会前、親善試合をあえてブラジル国内の田舎で行った。それは海外でプレーする選手たちに改めて、人々のセレソンに対する愛情を感じさせるためだった。

 現在のセレソンを取り巻く状況は、けっして楽観的なものではない。代表にまつわる汚職の噂が後を絶たないことも影響し、国民の反応も冷ややかであるようだ。それだけに国内で行われるコンフェデ杯を契機に国が一つにまとまっていくことが大切だとフェリポンは訴えたのだろう。

「サポーターにはブラジル代表を信じてもらいたい。国民とセレソンが一体となり、ブラジルというものを外国人にも示すのだ。各国の代表が重圧をそれによって感じるような雰囲気を作り上げることも重要なのだ」

 セレソンが今回のコンフェデ杯で、どれだけ人々を引きつける戦いができるか。それが、ブラジルが来年のワールドカップで大きな力を発揮できるかの重要な試金石となることはまちがいない。



<著者紹介>
竹澤哲(たけざわさとし)

フリーライター。ブラジルやポルトガル関連の記事を多く手がけている。
著書に「ジンガ、ブラジリアンフットボールの魅力」、「クリスティアーノ・ロナウド、ポルトガルが生んだフェノメノ」などがある。

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