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「ホンダ不振の理由とF1界が抱える問題」Text 尾張正博

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■7年ぶりF1復帰も期待外れ

 2015年、日本人ドライバーが姿を消したF1で、日本のファンが注目したのは、7年ぶりにF1に復帰したホンダの活躍だった。その理由は古豪のマクラーレンとパートナーを組み、23年ぶりにマクラーレン・ホンダが復活したからだ。  マクラーレン・ホンダという名前に特別な思いを寄せていたのは、日本人だけではない。なぜなら、ホンダがマクラーレンとコンビを組んだ5年間で、4度もドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を制した最強のタッグだったからである。その中でも伝説といえるシーズンとなったのが、1988年。この年、ホンダはマクラーレンとともに16戦中15勝を達成し、シーズンを席巻した。このとき記録した勝率9割3分7厘はいまだに破られていないF1界の金字塔になっている。  しかし、2015年のホンダの戦いぶりは、かつての栄光とは程遠い内容となってしまった。優勝はおろか表彰台を争うこともなく、入賞したのはわずかに6回。獲得したポイントも27点にとどまり、コンストラクターズ選手権でも10チーム中9位に低迷している(18戦終了現在)。  この成績がいかに期待外れな結果だったかは、ホンダの過去の歴史を振り返ればわかる。1964年に初参戦したホンダがF1に復帰したのは過去に2回ある。1983年と2000年だ。1983年はシーズン途中から復帰だったため、今回と同じようにフルーシーズンを最初に戦ったのは1984年と2000年の成績と比較してみたい。  1984年は入賞回数自体は7回と今シーズンと大きく変わらないが、その7回の中には優勝1回、2位1回が含まれており、内容がまったく異なっていることがわかる。2000年は開幕戦で2台そろって入賞し、現在より2戦少ない全17戦中、じつに10回の入賞を果たしていた。

■ホンダを苦しめた二律背反

 F1に初めて参戦したわけでもないホンダがなぜ、これほどまでに厳しいシーズンを送ることになってしまったのだろうか。そこに、現在のF1が抱える問題が見え隠れしている。  F1は2014年からエンジンに関する技術的なレギュレーション(規格)が大きく変わった。これまでの自然吸気エンジンから、ターボと2つの回生エネルギーシステムを併用したパワーユニットと呼ばれる次世代の動力機関に移行したのである。 この新しいシステムがいかに画期的なものであるかは、2種類ある回生エネルギーシステムのうち、MGU-Hと呼ばれるターボの排気熱を利用して作り出される熱エネルギー回生システムが、世界中の自動車メーカーもいまだに市販車として導入していない未知の技術であることが証明している。そして、その先進性がホンダがF1に復帰した主な理由でもあった。  ところが、現在のF1は80年代、2000年代初頭とは異なり、テストが制限されているだけでなく、開発を自由に行うこともできない。それが7年ぶりに復帰したホンダにとって、大きな足かせとなっている。というのも、80年代にホンダが築き上げたいくつかの栄光の影には、本社の膨大な資金力を利用した開発力があった。しかし現在は、開発費の高騰によってチーム運営が苦境に立たされている小規模チームを救う目的から、F1は新しいパワーユニットを導入するにあたり、開発に制限を加えたのである。だが、それがF1自体の魅力を失わせ、自分で自分の首を絞める結果となってしまった。

■革新的技術を追い求めるからこそ必要なルールがあるのではないか

 今シーズン、マクラーレン・ホンダとともに、苦しい戦いを強いられている元ワールドチャンピオンのフェルナンド・アロンソは、現在のF1を取り巻く状況がいかに異質であるかを次のように語っている。 「ほかのスポーツを見ればいい。どんな競技も選手は練習をしている。ところが、いまのF1はドライバーがマシンをテストできないだけでなく、エンジニアがパワーユニットを開発するのも制限されている。まるでサッカーやテニスの選手が1年間、練習しないで試合しているようなものだ」  F1という戦いは、コース上で一番速いドライバーが誰であるかを決めるスポーツであると同時に、そのドライバーに少しでも速いマシンを提供するために、チームが高額な資金を調達して、優秀なエンジニアを集めてマシンを開発する経済的な戦いでもある。にもかかわらず、その経済的な戦いを自ら放棄してしまっては、たとえ経済的に苦しい小規模チームの経営が改善されたとしても、F1本来の魅力は半減し、結果的に多くのチームが商業的に苦しむことになるだろう。  F1の「F」とは「フォーミュラ=規格」であり、その規格の中でのナンバーワンが、F1である。その名に相応しいルールづくりを望んでいるのは、ホンダだけではない。

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