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コラム「2ステージ制への移行よりも広報戦略の見直しを」text 江藤高志

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 今季からJリーグは2ステージ制に移行し、シーズン終了後に行われるチャンピオンシップというプレーオフによって年間王者を決める事となった。  やると決まった以上、その決定は尊重したいと思う。ただ、チャンピオンシップありきになったため、少しばかり複雑なレギュレーションになっているのが気になる。サッカーに詳しくない人に大会方式を説明するのが非常に難しい仕組みになってしまった。



 年間勝ち点で首位であっても、あるいはファーストステージ、セカンドステージの両方で優勝した完全優勝チームも、チャンピオンシップで敗れる可能性があるのも解せない。ただ、そう決まった以上、それは受け入れなければいけないだろう。  Jリーグ年間王者決定方式については、実際の運用を踏まえて改めて議論すればいいと思うが、そもそもプレーオフを導入することでしか世間の関心を引くことができないJリーグの現状に一抹の不安を感じてしまう。   ■地上波の力を利用すべき

 ぼくの知っているある川崎フロンターレのサポーターは、サッカーを見るきっかけとなったのが2010年のワールドカップ南アフリカ大会だったという。代表チームがきっかけだったにせよ、サッカーに興味がなかった人をサポーターにするだけの力をサッカーが持っていたことになる。ただし、Jリーグには地上波で放送できるだけの商品価値がないという現状認識も悲しい現実として受け止める必要がある。  かつてテレビ朝日系列で放送されていたニュースステーションではJリーグが手厚く取り上げられていた。月曜日の夜に、週末に行われたJリーグの結果を報じていた。このサッカーコーナーは番組の終了と共に無くなることとなった。速報とまでは言わないが、前日か2日前のJリーグの結果を面白く編集し、流してくれていたこの番組が無くなったことは、サッカーを知らない層にJリーグの魅力をアピールする上で広報戦略上の大きな損失といえる。  ネット全盛となった現在、それでも地上波の影響は侮れない。僕はTVKという神奈川県のローカル放送局に出演してフロンターレの話をしていたことがあるが、ほんの数分間の出演にも関わらず放送直後はサポーターからよく声をかけられた。テレビのスイッチを付ければ、動画が無料で視聴できる地上波の影響力は依然として大きい。

■サッカーに接する機会を増やすべき

 Jリーグは、100年以上の歴史がある欧州や南米のビジネスを模倣している。しかし、長くプロ野球に親しんできた日本人にとっては、サッカーが無くては生きていけないというところまでには、まだ達していない。そうした事実をまずはしっかりと受け止め、サッカーに接する機会を増やすことから始めるべきではないだろうか。  テレビ局がJリーグの中継映像とそれに関連する映像を使用する場合、少々煩雑な手続きが必要だ。また、映像の利用方法の規定により使用区分が定められ、使用料が細かく設定されている。もちろんJリーグの映像に価値があるのは間違いなく、またそうして徴収した料金で、映像を管理するために必要な経費をまかなっていることもわかる。しかし日本ではサッカーはまだ発展途上のスポーツであるのだから、放送してくれるなら喜んで提供するというスタンスでもいいように思う。映像を提供して行う広報活動という考え方だ。  現在、スポーツ/ニュース番組や応援番組に認定してもらった番組は映像が使いやすい一方、それ以外の番組での露出の際には「申請」、「報告」、「使用権料の支払い」という段階的な手続きが必要だ。もちろん野放図に映像を利用されないようにするのはわかるが、もっと簡単に放送してもらえるような方法論を開発してもいいのではないかと思う。たとえば包括利用契約方式にすれば、報じれば報じるだけ単価が下がる。そうすればJリーグの映像を報じるインセンティブが働く。それと同時に、どう報じられているのかを管理するために、事後報告と映像を納品してもらえば、酷い使われ方に対する歯止めにもなる。番組ごとにするのは合理的ではなく局ごとにすると間口が広すぎる、という意見もあるかもしれないが、一考の価値はあるのではないか。

■映像使用料を下げ、権利関係を緩和化すべき

 チャンピオンシップは小手先の対策にすぎない。もっともっと人の感情の深い部分に働きかけるには、地上波を使い、継続的にチームや選手個人に接してもらうのが一番。そういう意味で、もっと試合映像の使用料を下げ権利関係を緩和すべきではないだろうか。使いたい人から利用料を取りたい気持ちはわかる。ただ、地上波の影響力を考え、もっと謙虚に、Jリーグを宣伝してもらえるよう、映像を使いやすくする改革が必要なのではないか。  サッカーは世界中の人たちが認めたダントツに有力なコンテンツで、それ自体に大きなポテンシャルを持っている。たとえば、そんなサッカーの醍醐味であるゴールシーンを一定期間自由に使ってもらってもいいのではないか。

■地道に関心を広げて行くことが大切

 リーグの年間王者を決める新商品を開発し、実行する事で得られる巨額の放送権料を得ようとする考えは、金鉱脈を探すようなものなのだろう。しかしサッカーがまだ広く根付いていない日本では、地上波との連携で、Jリーグにまず関心を持ってもらうことが必要なのではないかと思う。つまり畑を耕し、種を蒔いて、穀物を育て、収穫する。時間はかかるが、地道な普及活動にもっと力を入れるべきではないかと思う。  日曜日の夜にJリーグのゴールダイジェストを報じるサッカー番組は現在もある。その番組関係者に聞くと、趣向を凝らしたコーナーよりも、実はJリーグの試合速報のほうが安定して数字が取れるという。Jリーグにも価値があるという証明だろう。  その価値あるものを、まだ世の中の人は知らない。地上波で中継する試合映像が数字を取れないのだからJリーグはまだ普及期だ。普及期だからこそ、より広い人たちにサッカーを知ってもらう努力が必要なのではないだろうか。

<著者プロフィール> 江藤高志(えとうたかし) 1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にフリーライターに。2004年よりJsGOAL川崎担当として取材を続けており、その経歴を生かしたWebマガジン「川崎フットボールアディクト」を2015年に開設した。 川崎フットボールアディクト http://www.targma.jp/kawasaki/ ツィッターアカウント @etotakashi

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